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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

YouTubeの”プレミア公開”は日本で徹底されるのかについての私見

今週記した、エド・シーラン「Shape Of You」のヒット分析についてたくさんの反響をいただきました。

その中で特に、音楽ジャーナリストの柴那典氏が弊ブログを引用していただきつつ、追記している内容に強い興味をいだいた次第。

なるほど、YouTubeの有料サービスについて整理しないとなあと思った矢先、柴氏が取材した記事が公開。非常に分かりやすいので紹介します。

音楽に特化したYouTube Musicというサービスには有料プラン”YouTube Music Premium”も存在。広告が出ず、バックグラウンド再生やオフライン再生が出来るという利便性の高さが特徴。他のストリーミングサービスが基本音声のみなのに対し、YouTubeの強みを活かしたサービスと言えます。そして、柴氏がツイートしたYouTubeの”プレミア公開”については。

「ミュージックビデオをYouTubeに公開する際、ライブ配信として公開するんです。予め時間を決めて、カウントダウンを経てファン同志がチャットをしながら同時に観る。この機能をリリースして以来、MV公開からの24時間の再生回数に次々と記録が生まれています。先日はアリアナ・グランデが「サンキュー、ネクスト」でその記録を作って、BLACKPINK、BTSがそれを塗り替えるようなニュースも出てきています」

フジロックでYouTubeライブ配信が実現した背景 | BARKS(5月28日付)より

ミュージックビデオ公開をイベント化することで、より盛り上がり再生回数も増えることが期待され、現にYouTubeプレミア公開を用いてアリアナやBTS等は記録的な数値を獲得。数値については各音楽メディアで報じられ、また弊ブログでの米ビルボードソングスチャート速報でも紹介しています。

 

そのYouTubeプレミア公開を用いて、昨日ミュージックビデオをアップしたのがケイティ・ペリーでした。

ゼッドとドリームラボがプロデュースした、ケイティ・ペリー単独名義且つクリスマスソング以外ではアルバム『Witness』(2017)以降久々のシングルとなる「Never Really Over」。ケイティは曲名のハッシュタグおよびジャケットを今週半ばにSNSで投稿し新曲の存在を匂わせ、そしてプレミア公開を利用。

あと何時間後にミュージック・ビデオが公開されるかが書かれており、常に世界中のファンが同ページのチャット・スペースで「早く観たい!」と「ポップ・クイーンが、私たちを癒すために戻ってきた!」など毎分毎秒コメントが流れている。現状、日本時間5月31日13:00になると、ここでミュージック・ビデオが公開される予定だが、動画左下の「リマインダーオン」を押しておくと、ミュージック・ビデオがYouTubeで公開された瞬間に通知を受信でき、公開と同時にビデオを瞬時に見ることができるのでオススメだ。

ケイティ・ペリー、約2年ぶりのニュー・シングルとMVを明日13:00に解禁 | Musicman-net(5月30日付)より

当該機能を用いてミュージックビデオ公開を、歌手とファンもしくはファン同士のつながりを深める(そしてファンではない方にとっても、タイムライン上に流れてくることで楽曲認知につながる)祭り状態にしていることがよく解ります。現段階で再生回数は900万を超えており、再来週火曜発表予定の6月15日付米ビルボードソングスチャートでどの位置に登場するか、非常に楽しみです。

 

 

たとえばアメリカでYouTubeプレミア公開が用いられる理由を考えるに、米ビルボードの集計期間に倣った発売日設定が徹底しているからではというのが私見です。米ビルボードのソングスチャートにおいてはデジタルダウンロードおよびストリーミングの集計期間が金曜からの1週間、ラジオエアプレイは3日後の月曜からの1週間であり、金曜にミュージックビデオ等を解禁し集計期間フルでカウントしたいという思いが歌手側に徹底されています。たとえばテイラー・スウィフトはこの春、インスタグラムで謎の数字をアップし、ホームページではカウントダウン行われていましたが(テイラー・スウィフト、謎のカウントダウンが公式サイトでスタート。4/26に何か発表か? (2019/04/15) 洋楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)参照)、インスタグラムの数字(イコール日付)およびカウントダウンが終了する日が金曜ゆえ新曲公開の可能性が高く、そしてその日、4月26日にブレンドン・ユーリーとの「Me!」を解禁したわけです。デジタル2指標が初加算された「Me!」が米ビルボードソングスチャートで2位に躍進したのはその解禁日設定の影響もあり、そして「Me!」でもYouTubeプレミア公開が用いられています(テイラー・スウィフトが新曲『Me!』のリリースを発表 YouTubeプレミア公開を予告 | ガジェット通信 GetNews(4月26日付)参照)。金曜に発表日が集中するゆえ、より目立ちたいという思いもあるのかもしれません。

 

他方、日本人の歌手でこのYouTubeプレミア公開を大々的に用いたという話はあまり聞こえてきません(自分が知らないだけかもしれませんが)。近い将来使用する方が出てくるでしょうが多くの歌手に活用されるかは難しいかもと考えています。日本ではミュージックビデオや音源解禁の曜日が未だバラバラの傾向があり、解禁日をタイアップ先の作品のタイミングに合わせる傾向があるため(ドラマ主題歌ならばそのドラマの放送曜日に、映画主題歌ならばその作品の情報解禁に即して、等)…というのが私見。もしくはテレビ局の朝の情報番組が強い情報源となるゆえそこで公開(がアナウンス)されるか、番組で紹介されるべく前日にイベントを用意することがむしろ主流のような気がします。そのほうが、特に映画では宣伝も兼ねられるし予算面でも一石二鳥という傾向があるのかもしれません。その点でいえば、今週火曜にミュージックビデオが解禁された米津玄師「海の幽霊」の、解禁前日に行なわれた上映イベントはその最たる例と言えるでしょう。

尤も、米津玄師さんは「Lemon」においてビルボードジャパンソングスチャートを意識したかの如く月曜解禁を徹底しており(タイアップ先のドラマ『アンナチュラル』(2018 TBS)が金曜放送だとしても各種解禁は月曜。米津玄師「Lemon」 シングルCDセールスに至るまでの絶妙なタイミング(2018年3月16日付)参照)、「海の幽霊」のデジタルダウンロードも6月3日月曜にスタート。イベントを今週月曜に用意したのは、月曜に口コミで話題が広がった分もビルボードジャパンソングスチャートに反映させる手段だったのかもしれず、だとしたらプレミア公開を用いていないとしてもその設定の仕方は実に巧いと思うのです(米ビルボードソングスチャートと異なり、ビルボードジャパンソングスチャートではTwitterも構成指標のひとつ)。

 

YouTubeプレミア公開ではショートバージョン(短尺版)は用いることが出来ないだろうゆえ、フルバージョンでの公開を望まない歌手が多い日本では同サービスが浸透しないとも言えるでしょう。しかし、ミュージックビデオを浸透させ再生回数増加につなげていく、それこそエド・シーラン「Shape Of You」が2年以上ロングヒットに至っている要因が動画再生とストリーミングの各指標にあるのであればまずはそこを徹底させ、さらにYouTube各サービスをきちんと活用することも視野に、歌手側とレコード会社側にはあらためてお願いしたいところです。

 

 

ちなみに、歌手側がYouTubeの活用を望まないのならば、ラジオを活用するのもひとつの手段だと思います(し、同時にラジオにとっても生き残るためには新曲のプレミア公開の徹底が必須だろうことは以前指摘しています。ラジオが生き残る可能性(2016年2月11日付)参照)。YouTubeに比べてインパクトが弱いと思うならば、ラジオで新曲が解禁された直後にそのラジオ番組のradikoタイムフリーのリンク先を即座に歌手側のSNSで掲載するのはどうでしょう。radiko側も率先してそのサービスを用意し、放送局が地元では無い場合にはradikoプレミアムに誘導することも出来るかもしれません。