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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

小袋成彬が指摘する日本の音楽業界の現状をaiko『aikoの詩。』で痛感する

RIRIさん、KEIJUさんとの「Summertime」が現在、資生堂アネッサのCMソングに起用され、現在イギリス在住の小袋成彬さん。

その小袋さんが、自身のラジオ番組『MUSIC HUB』(J-WAVE 金曜25時30分)の中で日本の音楽業界について厳しくも、音楽好きには至極真っ当な疑問を提示していたのが非常に興味深かったのでメモ。

疑問についてはみやーんさんが書き起こしされた内容を是非読んでいただきたいのですが、この話のきっかけとなったのが『僕は「aikoが聞けなかった」っていうのがすごく悲しいんだ』というもの。

 

事実、aikoさんは未だストリーミング解禁していないのです。たとえばApple Musicで歌手名検索すると。

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(最上位に出てくる”aiko”は同姓同名の別人です。)

また、YouTubeで公開されるミュージックビデオもその多くがショートバージョン。先週の『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)で披露した「milk」(2009)も短尺版で公開されています。

逆に「あたしの向こう」(2014)はトレーラー→ショート→フルバージョンと3バージョンもあり、公開されるバージョンは徹底されていません。近年の楽曲も、「ストロー」(2018)がaikoさんの公式YouTubeチャンネルではショートバージョンのみだったりするのですが、aikoさんの大ファンであるパオパオチャンネルの@小豆さんによる”踊ってみた”動画ではaikoさんサイドの了承を得て「ストロー」がフルバージョンで用いられています。

これにより、YouTube Premium会員が使用出来るYouTube Musicというストリーミングサービスにてオフライン再生が可能となり同会員は「ストロー」をストリーミングで聴取可能に。大ファンだという@小豆さんへの特別対応なのかもしれませんが、実際YouTubeでの再生回数が爆発的に伸びてチャートに再度エントリーを果たしており動画の影響は絶大。そして”踊ってみた”動画からシングルコレクションのベストアルバム『aikoの詩。』の購入に至った方もいらっしゃるはずです。

 

ただ、その『aikoの詩。』、ストリーミングが出来ないだけではなくデジタルダウンロードも不可という状況です。

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前週のB'z『NEW LOVE』から2週続けて、ビルボードジャパンアルバムチャートではデジタルダウンロード未配信作品が首位制覇という事態に(なお『NEW LOVE』については6月10日付ビルボードジャパンアルバムチャートを制したB'z『NEW LOVE』のデジタル未解禁を思う(6月8日付)で触れています)。

 

aikoの詩。』のデジタルダウンロード未配信については、全曲既発ゆえこれまでのシングルやアルバムで代替ダウンロード等可能だろうという考えか、パッケージでの購入を促進する意図があったのかもしれません。ただ『aikoの詩。』のディスク4、本人厳選によるカップリング集は代替ダウンロードが出来ません。1曲目の「未来を拾いに」が収録されたシングル「夢見る隙間」(2015)は。

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上記はiTunes Storeの状況ですが、シングル表題曲のみがダウンロード可能に。そしてそもそも、シングルCDの表題曲をデジタルダウンロード出来るのはここ数年分のみ。

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そうなるとたしかに『aikoの詩。』を買うのが最善かもしれませんが、全て揃えたいならばシングルCDを掘る必要があります。しかし昔のシングルCDを買うもしくは借りることは、廃盤(の可能性)や在庫状況を踏まえると難しいだろうことを考えると、代替措置がほぼないと断言してもよく、先述した意図は理解し難い…というのは自分だけではないでしょう。

 

シングルコレクションのリリースが入門編であり新しいファン拡大の目的があるならば、そこからさらに深く掘り下げられるようにデジタルダウンロードはきちんと解禁していただきたいですし、それを固辞するならばシングルCDを購入等しやすい環境の整備は必要でしょう。そして「ストロー」の”踊ってみた”動画が証明した動画再生のチカラを考慮してミュージックビデオフルバージョンを解禁すること、および小袋成彬さんも悔しがったストリーミングの解禁についてはきちんと議論していただきたいと切に願います。aikoさんのレコード会社であるポニーキャニオンは現在、Official髭男dism「Pretender」がストリーミング週間再生回数新記録を更新中であり、ストリーミングの効果を強烈に実感しているでしょうから尚の事です。

 

無論この問題はaikoさんだけではありません。未だ多くの歌手やレコード会社がパッケージリリースにこだわる意思は解るのですが、そこにこだわりすぎるあまりレコード会社がコピーコントロールCD(CCCD)という最悪の商品(いや、音質も悪くプレイヤーが壊れても補償しないというのですから商品とも呼べない代物でした)を生み、日本の音楽業界の失墜を招いた負の歴史が既にあるわけですから、パッケージへこだわりすぎることはやめて次の音楽の聴かれ方を考慮しないと世界の音楽市場において日本だけが置いてきぼりになると強く危惧します。