イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ライジングプロダクションがミュージックビデオ公開をショートバージョンに戻した事態を強く疑問に思う

先週末から事態が急転し、芸能界を震撼させ続けているのが吉本興業の問題。一方で同じく先週”圧力疑惑”が報じられながら、ジャニー喜多川氏の訃報に大幅な時間を割いたのとは対象的に先週末のワイドショーでほぼ報じられることのなかったジャニーズ事務所の件は風化させてはならない(きちんと考えないといけない、という意味で)と思い、月曜に下記エントリーを記載しました。

ちなみに吉本興業の問題については、社長と所属タレントの関係性が大なり小なりどこの組織でも当てはまるだろうことを踏まえるに、最善の解決策が社会で共有され、悪い意味での”オトナ”が減ることを願うばかりです。同時に、この件は実は大きな問題を孕んでいます。映画評論家の町山智浩さんが昨日放送のTBSラジオ『たまむすび』で語った内容が解りやすいので、多くの方に知っていただきたいと思います。

 

さて、ジャニーズ事務所の圧力、そしてそれ以上にあったであろうメディアの過度な忖度によって同事務所から離れた方、ならびに同事務所がライバル視する男性アイドルグループが”干される”という憂き目に遭っています。後者における代表格がライジングプロダクションだとして月曜に記載し、w-inds.を大きく取り上げました。その際、YouTubeで公開されたニューシングル「Get Down」のミュージックビデオがショートバージョン(短尺版)だったことを記載したのですが、どうやら同事務所のショートバージョン化はw-inds.にとどまらない模様で。

DA PUMPの次のシングルもショートバージョン化してきました。w-inds.ポニーキャニオン発なのに対しDA PUMPavexから…それゆえ、両者が所属するライジングプロダクションがショートバージョン化にシフトしたのではと考えるに至りました。

では同事務所所属の他の歌手はどうなのか、前作と比較しつつ確認してみます。発売日はシングルCDとしてのリリース日を指します。

 

DA PUMP「P.A.R.T.Y. ~ユニバース・フェスティバル~」(8月7日発売)

(前作) 「桜」(3月6日発売)

 

w-inds.「Get Down」(7月31日発売)

(前作) 「Dirty Talk」(2018年3月14日発売)

 

三浦大知「片隅」(6月12日発売)

(前作) 「Blizzard」(2018年12月19日発売)

 

・Lead「Summer Vacation」(7月23日発売)

(前作) 「Be the NAKED」(1月30日発売)

 

・フェアリーズ「Metropolis ~メトロポリス~」(7月17日発売)

(前作) 「HEY HEY 〜Light Me Up〜」(2018年2月28日発売)

 

・MAX「パルテノン」(6月26日発売)

(前作) 「#SELFIE 〜ONNA Now〜」(2015年7月22日発売)

フェアリーズおよびMAXの場合は前作もショートバージョンでしたが、6~7月に新作をリリースする(した)歌手の作品は全てショートバージョンでの公開となりました。たとえば三浦大知さんについて、「Blizzard」のひとつ前のシングル「Be Myself」までは基本的にショートバージョンでの公開だったことは以前記載していますし、それが実力や内容とチャートアクションとの乖離を招く一因だと断言しました。

一方、「Blizzard」はビルボードジャパンソングスチャートで長期エントリーを果たし今年度の年間トップ40入りが見込めるヒットとなりましたが、ミュージックビデオがフルバージョンとなっていたこともヒットの要因になったことがCHART insightから読み取ることが出来ます。

ちなみにDA PUMPの昨夏の大ヒット曲「U.S.A.」も実はショートバージョンでの公開でしたので、ライジングプロダクション所属歌手の作品は昨年終盤あたりまでショートバージョンでの公開が主体だったものと思われます。

となると、ライジングプロダクションが新曲をYouTubeでアップする際にフルバージョンで公開したのは昨年終盤からおよそ半年間と推測出来ます。いや、月曜のエントリーでも紹介したw-inds.の名曲「We Don't Need To Talk Anymore」(2017)等はフルバージョンで上がっており、歌手によって戦略等に差を設けていたのかもしれません。w-inds.の場合はそのフルバージョン化のおかげで好事家を中心に曲の良さに気付いた方が増え、音楽面の高さに注目が集まったように思います。

そのw-inds.ですらミュージックビデオをショートバージョンに”せざるを得なくなったのでは”と思うと、至極残念に感じる自分がいます。

 

ショートバージョン化の理由…これは邪推の域を超えませんが、フルバージョン化した半年間が異例の措置だったこと(実験期間等)もあるでしょうし、ミュージックビデオは本来CDに同梱される映像盤で観てほしい、すなわち”商品”として売られるものを無料でアップするのは違うという考えがあるのかもしれません。「U.S.A.」「Blizzard」のヒットでCDとしてのセールスが増えただろうことも後者の考えを加速させているのかもしれません。しかし、ショートバージョンとフルバージョンでCDセールスに大差がないことは、(曲のタイアップや内容を精査する必要もあれど)たとえばMrs.GREEN APPLEの件で証明されているように思います。

そしてコアなファンは確実にCDを購入する(ことに加えて先行配信分も買う)だろうことを踏まえ、以前このように記載しました。

むしろその歌手のファンというわけではない、曲に興味はあるが迷っている等の”ライト層”はCDやデジタルダウンロードでの購入以外にも単曲のダウンロードやストリーミング、CDレンタル等幅広い手段(そして所有のみならず接触も)が選択肢にあるはずで、ミュージックビデオのフルバージョンを収録した映像盤を同梱したCD購入一択ではないはずです。コアなファンからの支持を受け続けていくことも大事ですが、ライト層をどう取り込むか、そしてCDを売ることが利益や成績面で第一義という考えからどう変えていくか…海外展開等も踏まえればレコード会社や歌手側の意識の速やかな変革は必須だと考えます。

YouTubeではショートバージョンしかアップされていないからCDを買ってフルバージョンをチェックしようという考えよりも、なぜショートバージョンしか存在していないのか、しかも前の曲はフルバージョンだったのに…という不満のほうがライト層に噴出するものと考えます。ミュージックビデオのフルバージョンでの公開は動画再生やストリーミングの再生回数増加のみならずダウンロード、もしくは映像盤を同梱したCDの購入にもつながっていく可能性があるゆえ、ショートバージョンでの公開はそれらの流れを断ちかねないと思うのです。

 

ショートバージョンによる売上やチャートアクションの差異については、上記ショートバージョン疑問視エントリーでも触れた三浦大知「片隅」にひとつの解を見いだせるかもしれません。

上記ブログエントリーではビルボードジャパンソングスチャート6月24日付までの動向を記載していますが、シングルCDセールス指標が初加算された週に22位を記録した翌週、「片隅」は100位圏外(300位以内)に急落しています。また動画再生指標は射甘mで一度も300位以内に登場していません(片隅 / 三浦大知 | CHART insight | Billboard JAPANを参照)。こちらについてはテレビ出演の遅れ等もあるでしょうが、動画再生指標が再び弱い状況に戻っていることはショートバージョンでの公開が大きく関わっていると言えるでしょう。

ライジングプロダクションはこの曲のみならず、今回のブログエントリーで新曲として紹介した楽曲と前作とをきちんと比較しチャートアクションが伸び悩むならば、またCDセールスが良くならないならば、フルバージョンに戻すことを強く願います。

 

最後に、三浦大知「片隅」について、改善策を考えるエントリーへの反響としてソングライトを担当したKokiさんへの疑問が一部に見られたことに違和感を覚えています。

内容で評価するならばともかく、人物が嫌いという穿った感情をそのまま曲につなげてしまうのは至極悲しいことですし、吐き捨てる物言いを平気で出来る人がいることも残念に思います。