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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新7月29日付ビルボードジャパンソングスチャート、Official髭男dism「Pretender」から見えてくるチャート構成8指標の特徴

7月15~21日を集計期間とする、7月29日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートは日向坂46「ドレミソラシド」がトップに立ちました。

トップ10は7曲が入れ替わる大波乱。米津玄師「Lemon」が先週からポイントを伸ばしながらも、昨年2月26日付で2位に登場して以来はじめてトップ10から陥落しました。ただトップ3がいずれもチャート構成比におけるシングルCDセールス指標が高く(日向坂46は8割、TWICEは8割以上、祭nine.に至っては9割以上)、次週どこまでとどまるかは微妙な状況といえ、次週「Lemon」のトップ10返り咲きは十分有り得るでしょう。

 

さて今回はOfficial髭男dism「Pretender」の動きをあらためて確認。

「Pretender」は前週、史上初となるストリーミング500万回再生を突破しましたが、今週はさらに数値を伸ばしています。

前週、週間ストリーミング数500万回を突破したOfficial髭男dismの「Pretender」は、前週5,087,110回から5,383,336再生へと増加、ダウンロードも14,272DLから14,518DLと増加し、ストリーミングが牽引するその勢いは衰えを見せず。当週発売開始タイトルに押されて総合順位を3位から5位に落としたが、まだまだ上位を維持する見込みだ。

その結果、「Pretender」は過去2番目に高いポイントをマーク。

3週以上7000ポイントを超えれば大ヒット、と以前書きましたが、「Pretender」はそれを大きくクリアしています。

シングルCDセールス加算前週の段階で既にトップ10入りを果たしていましたが、シングルCDセールス指標が加算されてから10週間で74000ポイント程を稼いでいる「Pretender」。ではストリーミングも含め、チャートを構成する8つの指標はどう動いているのでしょう。

※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は※で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

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  順位 P 前週比 CD DL ST RA LU TW MV KA
2019/3/25 -  

          79    
2019/4/1                    
2019/4/8 -             -    
2019/4/15                    
2019/4/22 -         4   -    
2019/4/29 26 1595   16 54 4   56    
2019/5/6 21 1821 114.2%   19 20 5   87    
2019/5/13 20 1827 100.3%   20 18 3   94    
2019/5/20 8 3494 191.2%   13 8 2   42 82  
2019/5/27 3 7986 228.6% 9 2 2 1 6 21 11 -
2019/6/3 2 7267 91.0% 29 2 1 2 5 24 5 86
2019/6/10 4 7490 103.1% 40 3 1 4 6 44 5 47
2019/6/17 4 7669 102.4% 33 4 1 8 7 23 6 14
2019/6/24 6 7430 96.9% 33 5 1 6 6 46 8 12
2019/7/1 4 7254 97.6% 28 8 1 22 5 40 6 10
2019/7/8 3 6684 92.1% 44 8 1 22 11 50 4 8
2019/7/15 3 6874 102.8% 55 8 1 47 8 45 4 3
2019/7/22 3 7524 109.5% 84 6 1 34 8 39 4 3
2019/7/29 5 7806 103.7% 80 8 1 64 7 27 4 3

8つの指標の特徴が、実によく解る動きとなっています。

【シングルCDセールス】は初登場時に9位を記録しながらもトップ10入りはわずかに1週、最新では80位にダウンしており、この指標だけでヒットを判断するのが如何にリアリティのないことかが解ります。一方、シングルCDをパソコン等にインポートした際にインターネットデータベースにアクセスした数を示す【ルックアップ】は一度だけトップ10から漏れたものの最新では7位。映画やドラマのタイアップ作品はCDレンタルされることが多いため、売上順位との乖離が高くなる傾向があります。ルックアップは【ダウンロード】に近い動きをしていますが、ダウンロードの(シングルCDセールス加算以降での)序盤の順位は高く、シングルCDセールスとルックアップを合わせた動きに近いかもしれません。

【ストリーミング】はシングルCD発売、且つタイアップ先の映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』公開日が集計期間に含まれる5月27日付で2位となり、その翌週から9週連続で1位をキープ。タイアップ先の浸透度や口コミの影響力が高い再生回数を維持した一方、前週再生回数で記録を更新したのは次のシングル「宿命」がさらなる刺激を与えたから…ということは前週ブログで記しています。

ストリーミングでは票割れが起きない一方、【ラジオエアプレイ】は調査する放送局が固定され総放送時間も一定のため、票割れがどうしても発生します。次のシングルの登場で代替され(それも「宿命」は総合で7位に初登場を果たす前週の段階で同指標首位を獲得)、流行をいち早く紹介したいという特性もあることから、好位置で登場したとしても早々に落ちていく傾向にあるのです。

【動画再生】はフルバージョン効果により高い順位で推移し、こちらはストリーミングと似た動きをしています。接触を示す指標は口コミにより広がり、タイアップや楽曲の力で長く愛されていく傾向にあるといえます(その点でいえば、ルックアップも接触の意味合いが大きいことが解ります)。【カラオケ】も同様ですが、配信開始のタイミングや楽曲の浸透度が影響するため上昇度合いは他の接触指標より鈍くなっています。

最後に、口コミ的な指標である【Twitter】については順位がどうしても安定しません。アイドル等特定のジャンルに属する歌手が大半を占めるようになり、彼らのメディア露出や新曲情報解禁等により上位に多数流入/流出することで不安定な動きにつながっています。

そんな中でも50位以内を保っているのは曲の力と言えるかもしれませんし、逆に言えば今後テレビ露出があればより伸びる可能性はあります。これまではツアーを行っていた関係で露出が少なく、大きく浮上する機会は少なかったかもしれませんが、安定したチャートアクションにさらなる刺激を与えるならばこの指標をどうするかが大事になってきます。

 

ちなみに「Pretender」は先行解禁を行っていますが、シングルCDセールスの加算開始に伴いダウンロード、ストリーミングそして動画再生が大きく伸びているのが解ります。シングルCDをリリースするのであればCDセールスが他指標を加速させることを見越して配信の先行解禁等を行い、またシングルCDをリリースするしないに関わらず各指標の動きを見据えたスケジュールを策定することをレコード会社や芸能事務所には勧めます。Official髭男dismの場合、人気作品のタイアップ効果で大ブレイクの波に乗ったのは間違いないでしょうが、先行解禁や「宿命」の登場タイミングの巧さによりその波を自ら作ったと言えるわけで、彼らのマーケティング力は実に素晴らしいと思うのです。