イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

8月19日付ビルボードジャパンソングスチャートにも大きな影響を与える『ミュージックステーション』への願い

8月5日~11日を集計期間とする、8月19日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートは三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE feat. Afrojack「SCARLET」が首位に立ちました。

「SCARLET」のシングルCDセールス指標は2位。同指標の首位をBEYOOOOONDSのデビューシングル「眼鏡の男の子」に譲りながら『シングル・セールス26,783枚差をダウンロードとストリーミングが牽引した他指標で逆転』した形(『』内は上記記事より)。4指標がトップ10入りしている「SCARLET」に対し、「眼鏡の男の子」はルックアップ11位となるなどシングルCDセールス以外にトップ10入りした指標がなく、次週の動向が気掛かりです。

 

今週特筆すべきは、『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜20時)の影響力。まず、Official髭男dismの動向を見ると。

「Pretender」は通算11週目、「宿命」は初の7000ポイント超え。良曲を牽引する指標はストリーミングおよび動画再生であり、その理由は集計期間中に『ミュージックステーション』出演したことにあります。

「Pretender」は、ストリーミングでは前週5,358,332再生から当週5,754,179再生と再生数を伸ばして12週連続で1位を守り、動画再生数も前週4,011,480回から当週4,466,744回へと数字を伸ばしている。テレ朝系『Mステ』出演効果も後押しして「宿命」はダウンロードを前週12,053回から当週19,629回へ、ストリーミングは前週2,631,150再生から当週3,431,577再生へ、動画再生は前週1,561,547回から当週2,821,465回へとポイントを伸ばし、ロング・ヒットのフェーズに移行しつつある。

番組で披露したのは「宿命」ですが、「Pretender」も併せて聴取/視聴する流れが出来ています。これは新曲リリースのタイミングで過去曲が伸びる動向と似ていますね。

同じく先週放送の『ミュージックステーション』に出演したRADWIMPSにおいては、「愛にできることはまだあるかい」が5位をキープし、三浦透子さんとの「グランドエスケープ」が1ランクアップし9位に。ストリーミング未解禁曲はポイントを維持しにくい傾向がある中、ゴスペルクワイアを採り入れたパフォーマンスもインパクトを与えたか、「グランドエスケープ」のポイントは前週比107.6%を記録しています(ちなみに「愛にできることはまだあるかい」は前週比88.6%)。

ちなみに「グランドエスケープ」には公式なミュージックビデオはなく、YouTubeでつみさんという方のアカウントが発信している動画が最上位に来るのですが、動画説明欄の”この動画の音楽”にRADWIMPSの所属事務所名がクレジットされていること、この曲の動画再生指標が今週4位に入っていることやランクインしたタイミングを踏まえれば、おそらく違法アップロードされたものが半ば”公式”ミュージックビデオと化したことで、ヒットの一翼を担っているものと思われます。

 この2組と共に、『ミュージックステーション』に出演したフジファブリックも話題に。

志村正彦さんの映像を交えて披露された「若者のすべて」がチャートを急伸。

歌詞の”最後の花火に今年もなったな”の影響か、この曲は毎夏チャートを上昇する傾向があります(チャートアクションは若者のすべて / フジファブリック | CHART insight | Billboard JAPANをご確認ください)。今回は昨年9月10日付の35位以来となる高位置に登場しています。

 

これらを踏まえるに、『ミュージックステーション』がチャートに与える影響は非常に大きく、レコード会社や芸能事務所そして視聴者の双方を大きく動かしていると言えます。チャートを良方に動かすならば、『ミュージックステーション』に出演する意義は大きいと捉えるのは自然なことでしょう。

そんな『ミュージックステーション』が今秋から時間帯を1時間遅らせると言われています。関係者発言レベルであることや、移行すれば毎週ジャニーズ事務所所属歌手が出演する『ミュージックステーション』と同事務所所属の中居正広さんの番組とが完全に被るという問題もあり、ゆえに移行は信じ難いという印象が拭えません(尤も、近年のジャニーズ事務所所属タレントは最近被りがちな印象があり、大きな問題ではないのかもしれません)。しかしながら、現段階においても一昨年と昨年との『総放送回数を比較すると約10%減(32回→29回)』であり、また『そもそも最近のMステ自体が迷走気味と言いますか、何を基軸にするかよくわからないまま“音楽バラエティ番組化”が進んでいる』(『』内は数字が物語っていた!『ミュージックステーション』出演回数で見る、AKB48・乃木坂46・欅坂46の勢い – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC(8月12日付)より)状況を踏まえれば、仮に放送枠が移行したとしてもこの姿勢は変わらないかもしれません。ですが、テレビ朝日の特番攻勢等の影響で放送回数が5週に3回のペースで推移し、現在毎回挿入されるバラエティコーナーの影響で出演枠が1枠以上減っていると思しき状況は、音楽業界的には死活問題と言えるかもしれません。

 

仮に枠を移行させるならば、19時および20時台に据えられるらしい2つのバラエティ番組を特番化させる際には『ミュージックステーション』枠を侵食しないでほしいものです。また『ミュージックステーション』の視聴率が局の平均視聴率を下回るとしても、テレビ朝日全体で視聴率が好調に推移しているため他の番組で視聴率を補ってほしいですし、利益面においても他の番組にみられないようなレコード会社やサブスクリプションサービス等のスポンサーを獲得すれば、視聴率に頼らずに済むものと考えます。バラエティ化をやめてよりストイックに良質な音楽を伝える番組を目指せば一時的に視聴率は下がるかもしれませんが、視聴率以上の信頼を勝ち得ることが出来るでしょう。

先週放送の『ミュージックステーション』がチャートを大きく動かしたという自負を番組側が抱き、より良質なものを作る原動力にしてほしいと切に願います。