イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ミッシー・エリオットの復活、そして客演参加したゴスペル曲とそのメッセージ

日本時間の先週火曜に開催されたMTVビデオ・ミュージック・アワードでミッシー・エリオットが自身の音楽史の集大成とも言えるパフォーマンスを披露。受賞に相応しい素晴らしさで現役感を示してくれました。

ヒットメドレーの冒頭を飾った「Throw It Back」はこのタイミングでリリースされた最新EP『Iconology』収録曲。現役感というより、完全なるカムバックですね。

フルアルバムにも期待がかかります。

 

そのミッシー・エリオットが最近、客演として参加した作品が同じく先月リリースされています。それがゴスペル歌手のキエラ・シアードによる「Don't Judge Me」。キエラはかつてキエラ・”キキ”・シェアードとして日本ではラジオを中心に親しまれた歌手(ですがそのプロモートの際、ゴスペルを前面に打ち出されていませんでした)。ゴスペルにも柔軟に参加するミッシーの振り幅の広さ、そしてキエラの姿勢も見事ですね。

ちなみにミッシー・エリオットは2003年にもゴスペル界への客演参加を果たしているのですが、それがカレン・クラーク・シアード(シェアード)の「Go Ahead」(アルバム『The Heavens Are Telling』収録→Apple Music)。名前でも解るように、ミッシーはシアード母娘との共演を果たしたことになります。

 

「Don't Judge Me」の曲調から、昨年日本でヒットしたジャネット・ジャクソン feat. ダディー・ヤンキー「Made For Now」をふと思い出したのですが、この2曲のプロデュースともハーモニー・サミュエルズが関わっています。

ハーモニー・サミュエルズは主にR&B畑のプロデューサーで、アリアナ・グランデ feat. マック・ミラー「The Way」等でお馴染み。

その彼がゴスペルというのには驚きましたが、聖俗共に歌うファンテイジアを手掛けたり、ミシェル・ウィリアムズによるデスチャ擬似再結成曲「Say Yes」もハーモニーによるもの。彼もまた、聖俗を柔軟に歩んでいく方なのです。

 

さて、キエラ・シアード「Don't Judge Me」はミュージックビデオも公開。こちらにミッシーは不参加ですが、非常に興味深い作品となっています。

冒頭に登場するスマートフォンの映像は、キエラのパフォーマンス中にウィッグが外れた瞬間のものではないでしょうか。キエラはその映像を提示することで、失敗は誰にでもあるから決して非難するな(”Don't Judge Me”)、唯一裁ける存在は神様だから…というメッセージを込めているかのようです。これを観て考えたのが、一度の失敗を何度も繰り返して流し完膚なきまでに叩き潰す、いや何の落ち度もなくとも自分より下(の集団)に属するというだけで叩くことをよしとする…ここ数ヶ月で急速に息苦しくなった社会。それに対しこの曲が一石を投じるのではないかと思うのは自分だけでしょうか。裁くのはその専門の者に委ね、過ちを犯した当事者が更生することを願い、社会を好くするためにどうするかを考える…これらに徹するほうが遥かに素晴らしいことだと思うのです。

 

キエラ・シアードは軽やかに、優しく、でもしっかりと”Don't Judge Me”という思いを謳います。日本でゴスペルの概念自体なかなか伝わりにくいかもと思いつつ、ポジティブな空気を醸成する一助にこの曲がなってほしいと強く願います。