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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

メイベル「Don't Call Me Up」のチャートアクションにみる、ラジオ局の"守りの姿勢"問題

先週水曜に発表された、最新9月16日付ビルボードジャパンソングスチャート。総合では100位未満(300位以内)ながらラジオエアプレイで6位に入っているメイベル「Don't Call Me Up」は非常に特殊なチャートアクションとなっています。

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この「Don't Call Me Up」の日本における盛り上がりは三度あり、現在が最大のピークとなっているのですが、個人的にはここに大きな引っ掛かりを抱いた次第。

 

メイベルが2017年秋にリリースしたミックステープ『Ivy To Roses』を今年1月にリイシューした際、追加収録となった曲のひとつが「Don't Call Me Up」。2月にリミックス集がEPとしてリリースされたこともありイギリスでヒット。3月14日付ソングスチャートで最高位となる3位に達し、延べ10週間トップ10入りを果たしています。日本ではこのイギリスのチャートアクションにいち早く注目したであろうラジオ局が反応したことで、ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつであるラジオエアプレイで最高70位を記録(3月11日付)。この最初のピーク後、レコード会社のホームページにてメイベルとは何者かの特集が組まれました。

二度目のピークは6月。6月17日付ビルボードジャパンソングスチャートのラジオエアプレイで突如32位にカムバックを果たしています。5月末にYouTubeMusicの"Artist On The Rise"に選出されたこと、ビルボードジャパンで特集が組まれたこと(下記リンク先参照)、そして新曲「Mad Love」のリリースタイミングに合わせて在阪のFM802でヘビーローテションされたことが要因とみられます。FM802が新曲ではなく「Don't Call Me Up」を選んだ理由は判りかねますが、大都市圏のラジオ局が選出したことがチャートアクションに大きく作用したことは間違いないでしょう。

そして三度目は8月に入ってから。8月2日にイギリスでアルバム『High Expectations』をリリースしたことが契機となっているのでしょうが、その頃日本では徐々にといったところ。アルバムの国内盤が1ヶ月遅れて9月4日に発売されたタイミングで、現段階で最高位となる6位に達したのです。

アルバムリリースのタイミングで、「Don't Call Me Up」が12のラジオ局でヘビーローテションに選出(「Mad Lobe」や「Bad Behaviour」も1局ずつ選出)。しかし「Don't Call Me Up」のヘビーローテションを8月に据えたのはわずか1局のみであり、他11局は全て9月に設定しているのです。

 

国内盤リリースのタイミング(およびそれに伴うラジオ局のヘビーローテション時期)が遅れたのは、メイベルが日本盤リリースの翌日に日本でショーケースライブを開いたことが影響しているのかもしれません。

とはいえ、ラジオ局の「Don't Call Me Up」の選出は遅いと言わざるを得ません。イギリスでヒットした時期に日本ではあまりかからなかったのみならず、ヘビーローテション選出局の大半が大量OA月間を輸入盤ではなく国内盤リリースのタイミングに据えたことも、流行を積極的に追うのではなくヒットが確約されたからかけるという守りの姿勢が見て取れます。現在はデジタルで海外と同時に配信され、インターネットで海外の流行を即座に調べられる状況ゆえ尚の事です。

 

このメイベル「Don't Call Me Up」1曲だけで断言するのは危険かもしれませんが、しかしながらラジオ局が新しい流行を伝えるもしくは作るという気概や理念は薄れているのではないかと考えてしまいます。レコード会社から強力なプッシュがあった曲を取り上げること(今回がそうとは限りませんが)はたしかに必要でしょうが、これは絶対流行するから先取りする!もしくは局をあげて流行らせる!という意気込みで選出は出来ないものでしょうか。それこそ局によってはDJを"(ミュージック)ナビゲーター"と呼び、良い曲を伝導する意味合いを強めているのですから尚の事です。

ちなみに「Don't Call Me Up」、現段階でラジオエアプレイ以外の指標で100位以内はおろか300位以内に入っている指標はゼロ。総合でも100位以内に入ったことはなく、ラジオを聴いてダウンロードやストリーミングに至った人が少ないことを痛感します。新しくそして好い音楽を自信を持って紹介する姿勢を強固にすれば、ラジオ局を信頼して聴く方が増え、ラジオ局から新しく好い音楽を学び所有や接触行動につなげていくはず。その意味でも、ラジオ局にはプライドを持っていただきたいと強く思います。