イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

スピッツ、星野源、嵐…サブスクリプションサービスでの”限定”解禁について見解を述べるならば

毎週木曜は、前日に発表されたビルボードジャパン各種チャートをで紹介しているのですが、昨日はソングスチャートを構成する指標のひとつ、ストリーミングに関する大きな出来事がいくつかあり、そちらを優先して紹介。ストリーミング指標はサブスクリプションサービスの再生回数に基づくもので、そのサブスクリプションサービスと”限定”との絡みについて述べていきます。

 

スピッツサブスクリプションサービス解禁も実は1曲のみ解禁されていた

昨日リリースされたアルバム『見っけ』はCDセールスにおいて、渋谷すばる『二歳』およびOfficial髭男dism『Traveler』との激戦が始まっています。そして、スピッツはこのタイミングで過去曲を全てサブスクリプションにて解禁しています。

しかしながら、今回の一挙解禁に先駆けて、1曲だけ先行で解禁された曲が。それがドラマ『なつぞら』(NHK総合)テーマソングの「優しいあの子」。

サブスクリプションサービス解禁はシングルCDリリースの後であり、ストリーミング指標が初登場したタイミングでこの解禁について触れています。

最新10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートでは40位と比較的好調に推移していますが、とはいえストリーミング指標の順位は高くありません。下記CHART insightにおいて青の折れ線グラフがストリーミング指標を示します。

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以前のエントリーで指摘したように、”CDリリース後時間を置いて解禁したこと”と”解禁の周知徹底不足”に問題があったものと思われます。サブスクリプションサービスで全曲解禁するのであれば『見っけ』リリース前、「優しいあの子」のリリースタイミングで行うほうが、個別の楽曲のチャートアクションも好くなり、アルバムへの期待感がより高まったのではないでしょうか。

 

星野源 feat. スーパーオーガニズム「Same Thing」、Apple Musicのみで先行解禁した結果は

先週金曜、突如リリースがアナウンスされた星野源さんの新たなEP『Same Thing』。10月14日のデジタルリリースに先駆け、発表当日にスーパーオーガニズムを迎えた表題曲「Same Thing」がApple Music限定で解禁されました。リリースについてはEPの発表日にブログに記載しています。

その「Same Thing」、10月14日付ビルボードジャパンソングスチャートにランクインを果たしています。

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ストリーミングサービスをApple Music限定で公開したこと、おそらくは世界標準となる金曜リリースに合わせたことが順位に影響したと言えます。月曜集計開始の日本のチャートでは金曜解禁は不利であるゆえ、それでもこの順位を獲得したことは立派かもしれません。また、全曲をサブスクリプションサービスにて解禁した際に日本人で初めてBeats 1 Radioを担当し、Apple Musicとの密な関係性があるゆえ同サービスに先行解禁を許可したと考えられます。しかし、たとえば自身の「アイデア」がロケットスタートを切り2週連続でチャートを制したことを踏まえれば、その順位は少し低すぎる気がしなくもありません。尤も「アイデア」のリリース時はサブスクリプションサービスが未解禁の状態でしたが。

 

・嵐、サブスクリプションサービス解禁&公式YouTubeアカウント開設も現状デジタル化は5曲のみ

昨晩、突如飛び込んできたのがこのニュース。

とはいえサブスクリプションサービス解禁、およびYouTubeチャンネルで公開されたミュージックビデオは「A・RA・SHI」「Love so sweet」「Happiness」「truth」「Monster」の5曲のみ。これではスピッツが「優しいあの子」を公開したときとさほど変わらない気がします。それでも大きな話題になるのは、ジャニーズ事務所がこれまでデジタルに明るくなかったことの反動ゆえでしょう。

それでもやはり気になるのは5曲のみの解禁。ラグビーがワールドカップで盛り上がっているにも関わらず、日本テレビ系列の中継テーマソングである「BRAVE」が漏れていることが不可解でした。しかし、嵐ファンらしき方の”興味持った人がミュージックビデオ集やベストアルバムを購入するならばプロモーションとして良いやり方”的なツイートを見て。

超が付くほど限定的なサブスクリプション解禁はCDや映像盤等フィジカルセールスのための施策であり、歌手やレコード会社側にとってはあくまでフィジカルが最優先なのかもしれません。渇望の度合いを高めるそのやり方は戦略としては正しいかもしれませんが、果たしてそれで満足出来る方がどれだけいるのかが気になります。

 

 

サブスクリプションサービスの限定解禁についてはback numberが以前行っていました。LINE MUSICで限定解禁した後、サブスクリプションサービス全体で解禁するもベストアルバム『アンコール』までの旧譜のみに限定しています。

サブスクリプションサービス未解禁のアルバム『MAGIC』に収録されたドラマ主題歌「HAPPY BIRTHDAY」を、同じくドラマ主題歌等条件の似たあいみょん「今夜このまま」と比べてみると、サブスクリプションサービス解禁/未解禁はミュージックビデオフルバージョン解禁/未解禁共々、チャートアクションに大きく影響していることを以前提示しました。

これらを踏まえるに、サブスクリプションサービスを一部に”限定”して解禁することも、一部楽曲に”限定”して解禁することも大きな意味を成さないという結論に至っています。back numberの例を踏まえれば、何が最善か解るものと考えています。

 

 

スピッツが1曲”限定”で先行解禁した曲がチャートアクションの下支えになったとは断言出来ないこと、星野源さんのApple Music”限定”先行解禁曲がチャート上で勢いがあるとは言い難いこと、そして嵐の”限定”解禁が好くない方向に考えられること。邪推と言われればそれまでですが、”限定”とした理由がおそらくフィジカルを売るため、もしくは一つのサブスクリプションサービスと密な関係性を築くためというのは分からなくはありません。しかし、厳しい物言いを敢えて用いるならばそれらは歌手やレコード会社側の都合を優先し過ぎたものではないでしょうか。曲数限定ではなく全曲を、サブスクリプションサービスを区別することなく総じて解禁させることが大前提であり、そして遥かにユーザーフレンドリーです。