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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

アイドル新曲の気掛かりな動向、Official髭男dism『Traveler』首位獲得、そしてヒゲダン完勝を阻んだBiSHの戦略…10月21日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

昨日発表された最新10月21日付ビルボードジャパン各種チャート、ソングスチャートを中心に注目点を紹介します。

 

・坂道グループはピークを過ぎた? 日向坂46シングルCDセールス加算2週目の動向が気掛かり

先週首位に立った日向坂46「こんなに好きになっちゃっていいの?」が10位に後退。トップ10にとどまっているものの、総合ポイントの前週比が12.9%という極めて低い水準となっていることが気掛かりです。

【シングルCDセールス加算2週目における総合ポイント前週比】が極度に下がるというのがアイドル全体の特徴であり、この1年ほどのAKB48は5%未満、ジャニーズ事務所所属歌手は一部例外を除き10~20%の間に収まる一方、坂道グループは安定して20%前後を叩き出していたのですが、今回はあまりにも低いと言えます。

今年の春の段階でのAKB48および坂道グループの水準を記載したのが上記エントリー。その後AKB48サステナブル」が3.2%、乃木坂48「Sing Out!」が16.2%、「夜明けまで強がらなくてもいい」が20.1%となった一方、日向坂48は「キュン」こそ20.8%と20%超えを果たしながら、続く「ドレミソラシド」が16.6%、そして今回が12.9%と順当に低下しています。

「こんなに好きになっちゃっていいの?」を指標毎にみると特に気になるのは動画再生指標が前週の段階で100位未満ということ、そして2週目のシングルCDセールスが前2作より少ないこと。特典との兼ね合いもあるでしょうが、シングルCDセールス加算2週目における総合ポイントの前週比が他のアイドルとさほど変わらない自体を踏まえるに、ライト層を獲得出来ていないのではと思うのです。この動きが他の坂道グループにも波及するようならば、坂道グループ全体がピークを過ぎつつあると言えるかもしれません。

 

Official髭男dism、アルバムチャートほぼ完勝

Official髭男dismのメジャーファーストアルバム『Traveler』が、スピッツやBABYMETAL、渋谷すばるさん等との同日対決且つハイレベルな戦いを制しました。

ストリーミングで21連覇を成し遂げた「Pretender」をはじめ、「宿命」や「Stand By You」、「イエスタデイ」等を含む『Traveler』はアルバムCDセールスを制したのみならず、レンタル解禁日が後日にもかかわらずルックアップも制覇。ダウンロードは惜しくも2位でしたがほぼ完勝と言えるでしょう(ダウンロードについては後述)。またソングスチャートでも強く、今週100位以内には8曲がチャートイン(うち『Traveler』収録は6曲)。さらにストリーミングチャートに目を向ければ。

あいみょんさんが『瞬間的シックスセンス』(2019)をアルバムチャートに初めて送り込んだ週等の17曲ランクインには及ばなかったものの、強烈なインパクトを誇ります。

また当週は、過去曲を含め計16曲がトップ100にチャートインしており、その総再生回数は2,674万回に及ぶ。この数字は、10月14日付チャート(集計期間:9月30日~10月6日)で自身が更新した、同一アーティストによる週間総再生数の最高記録(2,434万回再生)を超える記録となる。

ストリーミング全体が伸びている中にあって自身の記録を上書きするのですから凄いことです。特に「Pretender」は総合チャートでも大ヒットの基準である【3週以上7000ポイント超え】を大幅に上回り、今週は22週目を記録。今年を代表するヒットと断言出来ます。

 

・BiSH、『アメトーーク!』視聴者の熱が冷めないうちに鷲掴みする戦略でアルバムチャート上位独占

Official髭男dism『Traveler』のアルバムチャート構成3指標の完勝を阻んだのはBiSHでした。

当週大きく注目すべきなのは、BiSHの再浮上だ。2016年1月リリースの2ndアルバム『FAKE METAL JACKET』が総合5位に入ったほか、6位に『CARROTS and STiCKS』、7位に『Brand-new idol SHiT』、8位に『KiLLER BiSH』、9位に『THE GUERRiLLA BiSH』、10位に『GiANT KiLLERS』が入っており、過去発表された全アルバムがトップ10内にエントリーする形となっている。

これは、10月10日に放送された『アメトーーク!』の企画“~クセがすごい女性グループ~ BiSHドハマり芸人”が大きな話題を呼び、さらに翌日11日、iTunes Storeでこれら6作品が1日限定価格300円で配信されたことが大きく影響したと思われる。ダウンロードでは『FAKE METAL JACKET』が15,869DLを売り上げて1位となり、他5作品が3位から7位までを独占した。

アルバム300円廉価販売については下記にも詳しく記載されています。

たしかに廉価販売は以前も行われています。

この手法は、たとえばアメリカのソングスチャートにおいてダウンロード指標のウェイトが高かった時代に、推したい曲を69セントに値下げし売上を伸ばすという戦略に似ていますし、所属レコード会社のエイベックスでは44曲収録の浜崎あゆみ『A COMPLETE ~ALL SINGLES~』(2008)を900円でデジタルリリースし好成績を収めています(アルバムのCHART insightはこちら)。これら戦略を踏襲し今回廉価販売を断行、それも"1日限定"とプレミア感を出したことで、『アメトーーク!』の視聴者をガッツリ取り込むことに成功していると言えるでしょう。他方、今週はストリーミングソングスチャート100位以内にランクインしていないため、今後ライト層にまで人気が拡大するかは接触指標の上昇にかかっていると思われます。

 

・嵐、デジタル解禁の5曲と「BRAVE」に明暗

先週水曜に突如サブスクリプションサービスおよびYouTubeにて解禁した嵐の5曲が好成績を収めています。ただし裏腹な動きが。

"ストリーミング解禁に至らなかった理由"については先週推測しているのですが。

ラグビーワールドカップが盛り上がり、日本テレビの中継テーマ曲に選ばれている「BRAVE」が2→5→22→28→59位と順当に下降している状況。仮にデジタルが解禁されていたならば…と思うと非常に勿体ない気がします。これはB'z「兵、走る」とは相反するものゆえ尚の事。

尤もB'zはサブスクリプションサービス未解禁ゆえ、嵐の5曲がダウンロード未解禁同様こちらも片手落ちの状況ではあるのですが、しかしいわば両手落ちの「BRAVE」が復権するかどうかは微妙なところ。今年の彼らをではなく広く世間を代表する曲に昇華するためには今の順位をどう押し上げるかが重要となりそうですし、そのためにはデジタル解禁は必須でしょう。