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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

ビルボードジャパンソングスチャートを構成する8つの指標について、ウェイトならびに中身見直しを提案する

弊ブログで毎週その動向を追いかけているビルボードジャパンソングスチャートは、時代毎に集計対象となる指標を増やしたり指標毎のウェイトを変えることで、今の社会の真のヒットとは何かを常に自問自答しています。今年度はカラオケ指標を導入し、チャートを構成する指標は8つとなりました。 

さて、この1年のチャート動向を踏まえるに、次回のチャートポリシー変更時に各指標毎のウェイトおよびその中身を変えてほしいと思う点がいくつかあり、今回のエントリーとさせていただきます。

各指標毎にウェイトを変更したほうが良いと思う理由は下記に。

 

●シングルCDセールス:↓

シングルCDセールスにばかり長けた作品が同指標初加算週に上位(首位を含む)を獲得しながら翌週には急落する現象が毎週のように発生し、週間チャートの順位と社会的ヒットとの乖離が甚だしいのです。最近ではAKB48や、IZ*ONE「Vampire」が顕著な例であり、また当該指標初加算週にトップ5入りするも翌週100位圏外となる曲も少なくありません。

この現象はアイドルやK-Pop楽曲等に多く見られますが、しかしこれらが入れ代わり立ち代わり首位に立つことで、長く上位をキープしながら終ぞ1位を獲れない楽曲が多く発生していることに疑問を抱きます。昨年度は年間2位のDA PUMP「U.S.A.」が、今年度はOfficial髭男dism「Pretender」が最高2位止まりとなっており、時代の顔が週間チャート未制覇という状況ではビルボードジャパンソングスチャートが社会的ヒットの鑑になっていないと捉えられるかもしれません(ゆえに、弊ブログではシングルCDセールス加算2週目の順位も見るべきと記載しているのですが)。

シングルCDセールス指標では係数を掛けて算出しています(一定枚数以上の売上に対して導入すると聞きます)。係数の導入により2018年度からのチャートはかなり正常化してきましたが、係数の概念はそのままにさらに全体を何割か下げる必要があるかもしれません。

 

●ダウンロード:→

ダウンロードに特化した楽曲はシングルCDセールスのみ特化の楽曲に比べてヒットしている傾向は以前示しています。

今後はシングルCDリリース自体が減少しデジタルのみに移行する歌手が増えることが予想されるため、ダウンロードは上昇させてもよいかもしれません。ただ、たとえばアメリカのビルボードソングスチャートをみると、ここ数年で週間10万を超えるダウンロード数がほぼなくなりストリーミングに移行しているため、日本でもサブスクリプションサービスが今以上に台頭すればダウンロードは減少するでしょう。ダウンロード指標のウェイトを変えずとも、自ずとダウンしていくものと考えます。

 

●ストリーミング:→

ここでいうストリーミングとは特定の歌詞サイト閲覧もありますが、そのほとんどはサブスクリプションサービス(以下サブスク)での再生回数によるもの。サブスクがこの2年近くで急成長を遂げていることは前週のチャート振り返りで紹介しています。

となると、ウェイトを横ばいにしてもストリーミング指標が拡大していくことは確実であり、特段調整する必要はないでしょう。ただし見直す必要があるのではと思うのはその中身。

現在この指標において、SpotifyおよびAmazon Prime Musicはカウント対象外となっています。その理由はおそらく、Spotifyには無償と有償サービスが混在し、Amazon Prime Musicは無償であるためと思われます(有償サービスのAmazon Music Unlimitedはカウント対象であるため尚の事)。無料で音楽を聴くのはどうかという見方は歌手やレコード会社にみられると聞き、自分たちに利益が入るのか等の疑念が一部歌手のサブスク未解禁に繋がっている可能性があるでしょう。ビルボードジャパン側もそれを見越して未カウントとしたのかもしれませんが、ならば米ビルボードが昨夏導入したような、有償サービスと無償とでウェイトに差を設ける制度の導入を勧めます。米ビルボードの現在の集計方法は下記に。

Spotifyは無料であるため若年層からの支持を受けているのみならず、SNSでの話題性に基づくバイラルチャートが存在することで彼らの流行の変化が可視化されています(ちなみにバイラルとは、『Webマーケティングにおいて「情報が口コミで徐々に拡散していく」さまを形容する語』のこと(バイラルとは何? Weblio辞書より))。Apple MusicにはないWebブラウザ等PCでの使い勝手の良さも人気の理由ではないでしょうか。それゆえSpotifyを外すのは、特に若年層の動向が見えにくい点において勿体ないと思うのです。近年ではTikTok発のバイラルヒットが増え、SNSSpotifyのリンクを貼る方も多いので尚更。ゆえにSpotifyの導入は必要であり、無償サービスの導入を好ましく思わない歌手等がいらっしゃるならば有償と無償とでウェイトの差を設けるべきだと考えます。

また、日本レコード協会側には、CDやダウンロードにおけるミリオン認定と同種の認定基準をサブスクにも設けるべきと提案します。サブスクの興隆は音楽業界の再興に一役買っていますが、"ミリオン"等の解りやすく使い勝手の良い基準を設けることで、何がヒットかがより見えやすくなるはずです。

 

●ラジオエアプレイ:↓

敢えてこの指標をダウンすべきとしたのは、ラジオ業界のいわば"尻に火をつけたい"と考えるゆえ。旧態依然のメディアと指摘されながら、またサブスクの台頭で音楽の聴かれ方が変化しつつありながらも、ラジオ番組やDJの質がそれらに負けまいと向上しているように見えない、且つシステムが追いついていないと思うゆえ。

数年前、ラジオエアプレイチャートがビルボードジャパンのホームページから消えたことで同指標のウェイトは減少したと捉えており、他指標と比べて総合チャートとの乖離が著しいことを踏まえればこれ以上下げても仕方ないかもしれません。日本のラジオ局では新曲をいち早く流しリリース週でピークを迎えて急降下する、もしくは認知度は高くないものの有望株をいち早く紹介する等の傾向が乖離に繋がっています。

この指標についても精度の上昇が必須と考えます。まずはサンプル対象局拡大が急務でしょう。現在のサンプル局は都心部中心の32局にとどまっており足りないと考えます(各局のOA回数に人口や聴取率を加味して独自の指標を作成)。微力ではあれどコミュニティFM等もあるため、それらを拾い上げることも必要でしょう。そのために必要なのは、デジタルのみのリリース作品でも解禁当日からOA出来る環境を作ること、そしてOA楽曲リストをその日のうちに局側が送信し一箇所に受信する仕組みを整えること。システム整備はビルボードジャパンソングスチャートでのラジオエアプレイの重要度を保つのみならず、ラジオ業界全体のシステム向上と音楽人としての意識付けの強化になるはずです。それらが出来ないならばダウンも免れないでしょう。

 

●ルックアップ:→ or ↓

シングルCDセールス指標のウェイトを減少させるならば、CDをパソコン等に取り入れた際にインターネットデータベースにアクセスする回数を示すルックアップ指標も下げるべきかもしれません。ですが、当該指標は日本独特のレンタル(文化)を測る上で欠かせない指標であり、レンタル数の推移が週毎の増減が激しいシングルCDセールスよりも安定していることを踏まえれば安易に下げるのは厳しいかもしれません。ただしレンタルCD店舗数が緩やかに下がってきており、ダウンロード同様この指標も自ずと減少していくものと思われます。

 

Twitter:↓

ひとつのツイートに歌手名および曲名を併記していれば対象となるTwitter指数は、そもそも米ビルボードソングスチャートには存在しません。歌手名のみを対象としたSocial 50チャートはありますが、そのSocial 50チャートではK-Popアクトが非常に強い状態。その傾向は日本でもどんどん強くなっています。

今年1~6月最終週付のTwitter指標トップ20を定点観測するとアイドルやK-Pop等の歌手が大挙エントリーし、総合チャートとの乖離が目立ちます。もしかしたら少なからず、三浦大知「Blizzard」で顕著だったファンによるTwitter活動(通称ブリ活)の動向を注目した弊ブログエントリーが他の歌手のファンの方々へのチャート上昇のヒントになったかもしれません。しかし当時に比べてTwitter指標が総合チャートと乖離していくこともさることながら、たとえば星野源さんの楽曲におけるTwitter指標の取り組みを紹介した際、別の歌手のファンの方が弊ブログエントリーを参考にするのは良いとしてもその紹介時に"星/野/源"と書き、星野さんの楽曲をカウントさせまいかの如きツイートを見つけるに、(たとえそのような無礼な書き込みはごく一部としても)Twitter指標はどこかのタイミングで縮小させるべきではないかと考えるに至っています。

推測の域を出ませんが、ビルボードジャパン側がTwitter指標を取り入れたのは、たとえば『ミュージックステーション』(テレビ朝日 金曜21時)が視聴率以上につぶやかれていること、および同番組に毎回出演するジャニーズ事務所所属歌手がデジタル未解禁を続けるゆえ彼らに対する救済措置としてだったのではないでしょうか。しかし同事務所でも一部歌手(ジャニーズ事務所運営レコード会社以外)はわずかながらデジタル解禁していたこと、また嵐が今月突如サブスクおよび動画再生を解禁したことでジャニーズ事務所の姿勢も変わってきたと考えるに、救済措置だったTwitter指標は下げても差し支えないでしょう。もしかしたらその役割は終焉を迎えつつあると言えるかもしれません。

 

●動画再生:→

ビルボードソングスチャートではサブスクおよび動画再生を合わせたストリーミング指標が他指標(ダウンロード、ラジオエアプレイ)より大きなウェイトを占めています。日本でも同様の位置付けとなっていくだろうと考えるに、特段下げる必要はないでしょう。

ただしショートバージョンやティーザー、広告を(本編後ではなく)本編中に挿入する作品は対象から外すことを検討してほしいというのが私見です。とはいえISRC(国際標準レコーディングコード)が付番されている動画がカウント対象となるわけで、無論ショートバージョン等にもISRCは付いています。システム的にショートバージョン等を除外するのはさすがに無理があるかもしれません。

 

●カラオケ:↓

より良い曲、社会的ヒット曲が支持され可視化されているのがカラオケ指標ではないかと考えます。しかしその一方で、支持される曲がロングヒットとなりチャートの風通しが悪くなるという点も。同指標の最高位は導入以降ずっと米津玄師「Lemon」であり、硬直性を踏まえればウェイトは下げるべきと考えます。

 

カラオケ指標に関連して提案したいのは、ロングヒットと化した曲を載せ続けていいのか検討をお願いしたいということ。たしかにカラオケやサブスク、動画再生でヒットしているとはいえ総合チャートで2年以上ランクインし続けるのもまた硬直性があると言えそうです。たとえばエド・シーラン「Shape Of You」はランクインからまもなく3年に。米ビルボードソングスチャートでは、一定週数以上チャートインしている曲がある順位を下回ればチャートから除外するというリカレントルールを採用しており、「Shape Of You」や、最近ではホールジー「Without Me」等が外れました。リバイバルヒットが少なくない日本においては外すことに異論もあるでしょうが、一度考える必要があると思います。リカレントルールも含め、「Shape Of You」については以前記載しています。

 

ビルボードジャパンソングスチャートは残り数週で今年度のソングスチャートが終了します。次年度以降どうするか、チャートポリシーを変える変えないも含めた議論は既に行われているかもしれず、この提案は遅きに失した感も否めません。しかし常に自問自答し社会的ヒットの鑑を目指す同チャートの姿勢を踏まえるに、勝手ながら叱咤激励の意味を込めて記載しました。参考になれば幸いです。