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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

ラグビー特需があったとはいえない? 嵐「BRAVE」のチャート動向を前作およびサブスク等解禁の5曲と比較すると

最新ビルボードジャパンソングスチャートでOfficial髭男dism「Pretender」が遂に首位を獲得したタイミングで、その首位獲得曲のほとんどはシングルCDセールス指標に特化したもの多いことを一昨日のエントリーで示しました。その上で、そのようなタイプの楽曲が翌週以降急落する状況を踏まえ、ビルボードジャパンに対しシングルCDセールス指標のウェイト減少を検討することを提案しています。

その際、『ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)』と書きました。首位獲得はならずとも嵐「BRAVE」はジャニーズ事務所所属歌手の楽曲でも特筆した動きをみせている一方、しかしその「BRAVE」の動きは芳しくないのではという思いを抱き、今日のエントリーでまとめてみます。

 

「BRAVE」がタイアップに用いられた、日本テレビラグビーワールドカップ中継は視聴率が軒並み高く、対スコットランド戦は39.2%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)を叩き出しています。

ならばその視聴率とまではいかなくとも、嵐「BRAVE」がこれまでの彼らの楽曲以上に注目を集めるのではと思ったのですが、チャートをみると思ったよりもラグビー特需はないと考えます。昨秋リリースの『君のうた』(ドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日)主題歌)とでリリースタイミングでのCHART insightを比べると、各指標も総合でも順位はさほど変わりません。シングルCDセールス加算前後の11週の動向を抽出すると。

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では数字の上ではどうでしょうか。

 ※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

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総合ポイントは「BRAVE」が「君のうた」を上回るものの、今年度カラオケ指標が導入されたタイミングで各指標毎のウェイトも変更された可能性があるため単純比較は出来ません。突出しているのはシングルCDセールス加算初週の売上枚数ですが、加算2週目以降の4週間の売上は「君のうた」が39817枚に対し「BRAVE」が38776枚となり、「BRAVE」が敗れています。ラグビー特需があるならば、日本が敗退した直後あたりまで「BRAVE」が売れ続けてもよかったはずです。

「BRAVE」のシングルCDセールス加算初週の売上が「君のうた」の185.1%となったのは『封入されたシリアルナンバーを使ってコンサート(ツアー)予約が可能なことから、複数買いが生まれた』ものと捉えています(『』内はシングルCDセールス2位も総合で逆転、米津玄師「馬と鹿」が嵐「BRAVE」に勝った理由は? 9月23日付ビルボードジャパンソングスチャート"頂上決戦"をチェック(9月19日付)より)。ただし、今回抽選予約対象となるコンサート【ARASHI SPECIAL SHOOTING "5×20" at Tokyo Dome 2019.12.23】については、『2019年9月11日(水)発売『BRAVE』ご購入者様かつ、嵐ファンクラブ会員様』のみ応募可能であり、CDに封入された『ユーザーコード【1つ】と、嵐ファンクラブ会員番号【1つ】で、【1回】のエントリーが可能』というシステムとなっています(『』内は2019年12月23日(月) 「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」開催決定!!「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」 チケット抽選応募エントリー/申し込みのご案内 | J Storm OFFICIAL SITEより)。コンサートがツアーではなくプレミアム感があること、CD購入者且つファンクラブ会員でなければ応募出来ないこと、さらにCD封入のユーザーコードを使った(事前の)チケット抽選応募エントリーの締切が9月15日日曜いっぱいでありビルボードジャパンソングスチャート(およびオリコンシングルCDランキング)のCD加算初週の終了時間と重なることを考えると、今年1月末で250万、現在では280万とも300万とも言われているファンクラブ会員の大半が前倒しでCDを買ったことが『BRAVE』のシングルCDセールス初週売上増加、および以降のセールス微減につながったと考えられます。

(ちなみに、活動休止発表直後に会員数は激増し、1月末の段階でおよそ250万であると報じられています(嵐休止発表ファンクラブ爆増10万人 国内外に波紋 - ジャニーズ : 日刊スポーツ(1月29日付)。一方でジャニーズ事務所所属歌手やタレントのファンクラブ会員数はあくまで累計数であるという話を耳にします。それでも現在も加入している会員数が100万を大きく上回るようで、その数字には驚かされます。)

シングルCDセールスの上昇については仮説を立てることが出来ましたが、しかしこれではコアなファンの動向判明にすぎず、歌手や楽曲に興味はあれど必ずしも購入するわけではないライト層の動向はシングルCDセールスにはっきり示されているとは言えません(尤も、コンサートの応募総数が判明すればそこからコアなファンの数を引いたライト層の購入数がある程度想像出来ます。またコアなファンが前倒しで購入した分、シングルCDセールス指標加算2週目以降はライト層が少なからず売上を支えた可能性はあるでしょう)。そのライト層の動向、通常はシングルCDセールスよりも接触指標群(サブスクリプションサービスでの聴取およびYouTube等での動画視聴、それらが反映されるストリーミングおよび動画再生が主な指標)に表れるのですが、嵐については『BRAVE』は未解禁。しかも彼らはシングルCDリリース後の10月9日に突如、ダウンロード未配信はそのままながら5曲をサブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁したものの、そこに『BRAVE』は含まれていませんでした。

5曲限定での解禁はあくまで『CDや映像盤等フィジカルセールスのための施策であり、歌手やレコード会社側にとってはあくまでフィジカルが最優先なのかもしれません』というのが上記エントリーでの自分の見方。事実、ベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』は限定解禁日を集計期間に含む前週のチャートではOfficial髭男dismやスピッツ等の新譜やBiSHの大量エントリーに阻まれ順位を落とすものの、今週は3週ぶりにトップ10に返り咲いています。

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また最新10月28日付のオリコンのDVDおよびBlu-rayランキングではミュージックビデオ集『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』が初登場1位となり、今年最高の売上を達成しています。ちなみにこのミュージックビデオ集に『BRAVE』は含まれていません。

サブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁された嵐の5曲は前週のビルボードジャパンソングスチャートで躍進していますが、「BRAVE」は裏腹にダウンしてしまったのは、まさにライト層を中心に接触指標群を動かしたかどうかが如実に解る証明と言えます。

前作「君のうた」と動きが重なっている「BRAVE」はコアなファンの動きを活性化させてもライト層を動かしたと断定出来ない、且つライト層の動向は接触指標群に如実に反映されることを踏まえれば、「BRAVE」にラグビー特需があったとは言い難いでしょう。接触指標群の中でジャニーズ事務所所属歌手の作品を唯一上げることが出来るルックアップは3位以内をキープしていますが、前作「君のうた」とは大差ないように思われます。またラジオエアプレイは前作より伸びていますが、OAする曲を選ぶのがラジオ局である点において他の指標群とは性質が異なります。

 

仮に「BRAVE」が5曲同様に解禁されたならばチャートでも有利に働いただろうことを考えると、歌手側やレコード会社はなぜ「BRAVE」をサブスク等で解禁しなかったのかが気になります。おそらくはシングルCDセールスを伸ばすための解禁見送りだったと想像出来ますが、解禁効果でCDやミュージックビデオ集が売れ解禁楽曲もチャートを上昇していることを踏まえれば、むしろ解禁したほうが売上増、チャート上昇という双方の活性化につながったのではないかと思うのです。