face it

青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

米バイラルチャートを制したアント・サンダース「Yellow Hearts」、代表曲が生まれ変わった加藤ミリヤ「SAYONARAベイベー feat. SKY-HI」…男女の掛け合いがチャートを盛り上げる

男女の恋愛には感情の一方通行がつきもの。好意を抱かれたと勘違いする男性、別れたくても別れられない女性。そんな情景を描いた作品が日米で話題になりつつあります。

 

SpotifyTikTokといった新たなメディアの興隆が新しいヒットの形を築き、実績を上げた歌手はスターダムに上り詰める…「Old Town Road」が米ビルボードソングスチャートで史上最長となる19週連続首位を獲得したリル・ナズ・Xが顕著な例ですが、「ROXANNE」がレコード会社未所属ながら米Spotifyデイリーチャートを制したアリゾナ・ザーヴァスはソニー傘下のコロンビアと契約を締結し新たな成功例となりました。こちらについては昨日、Real Soundにて記事が公開されましたので是非ご覧ください。

そしてこのふたりを追うかの如く登場したのがアント・サンダース。「Yellow Hearts」はSpotifyデイリーチャートで19位まで上昇、さらにSNSでの口コミを示すSpotifyバイラルチャートでは「ROXANNE」を押さえ首位を獲得したのです。

「Yellow Hearts」のブレイクのきっかけは「ROXANNE」同様TikTokなのですが、投稿された動画にはこの曲のメロディラインを追いかけるように合いの手的なメロディが加えられたものが多く、そして歌っているのは女性。

アメリカでも絵文字が“emoji”として定番化していますが、現地では黄色いハートは愛情ではなく友情的な意味を表すそう。「Yellow Hearts」の主人公は女性から黄色いハート付きで呼ばれたことで好意を持たれていると勘違いしているのです。男性特有の浮かれモードや情けなさが秀逸に描かれた歌詞(→こちら)の主語を置き換えて女性目線での歌詞を加え、男性の勘違いや通わない心をより浮き彫りにしたのがTikTokの動画というわけです。アントは自らのTwitterアカウントにて、その女性目線による歌唱動画を紹介しています。

「Yellow Hearts」の勢いを更に加速させたと言えるかもしれないのがリリカル・レモネードでの紹介。元はコール・ベネットが地元歌手を紹介するためのブログだったリリカル・レモネードは、コール自らミュージックビデオの制作に着手したところ、ジュース・ワールド「Lucid Dreams」(2018年)が米ビルボードソングスチャート2位、リル・テッカ「Ransom」(2019年)が同4位を記録する大ヒットに。ミュージックビデオにはリリカル・レモネードと書かれた紙パックが刻まれ、新世代のラッパーをフックアップするメディアとしてのステータスを確立しました。

そのリリカル・レモネードが11月に「Yellow Hearts」を取り上げています。ブログによるとアントは現在18歳、中学生で曲作りを開始し、ソングライトもプロデュースも自身によるものだそう。

リリカル・レモネードで紹介された11月4日付では米Spotifyデイリーチャート117位だった「Yellow Hearts」は、わずか8日後には最高位となる19位に躍進したのですから、リリカル・レモネードの影響力を感じずにはいられません。その勢いや才能を買われてでしょう、アントはソニー傘下のアリスタと契約を交わした…というのは先述したReal Soundの記事にある通りです。

「Yellow Hearts」のミュージックビデオはまだ登場していませんが、リリカル・レモネードが制作に関与するならば面白いですね。アントの今後、そして「Yellow Hearts」の動向に注目しましょう。

 

一方の日本でも男女の掛け合いによる曲が登場。加藤ミリヤさんが11月27日にリリースした2枚目のベストアルバム『M BEST II』に、2008年リリースのシングルでビルボードジャパンソングスチャートトップ10入りを果たした「SAYONARAベイベー」のSKY-HIさん参加バージョンが収録されています。サビでは別れたい女性と曖昧な言葉で濁す男性とを一人二役で演じていた曲が今回、SKY-HIさんと掛け合いすることによって男性の軽さがより際立つ構成に。しかしSKY-HIさんのラップパートでは男性の"本音"が見え隠れするのが実に面白いですね。

この「SAYONARAベイベー feat. SKY-HI」、LINE MUSICでは対象期間中最も多く再生した上位150名をプレミアムイベントへ招待する企画が用意されています。

実は以前、テイラー・スウィフトの来日プロモーションに合わせて同様の企画を実施したところ同サービスでの再生回数が急増、パニック・アット・ザ・ディスコのブレンドン・ユーリーをフィーチャーした「ME!」は11月4日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいて、サブスクリプションサービスの再生回数に基づくストリーミング指標では11位に、総合でも前週の100位圏外から44位に躍進しています。

他指標が伴わず直後に急落したこともあり音楽をきちんと推す施策になっているかは疑問が残るのですがしかし、LINE MUSICの施策はチャートのカンフル剤として効果的なことが判明したのは事実。今後はサブスクリプションサービス側、もしくはレコード会社や歌手側から同種の仕掛けが出てくることでしょう。とはいえこの企画がなかったとしても、今回の「SAYONARAベイベー」新バージョンが何度も聴いてみたくなる曲であることは間違いありません。