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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

ネットのバズがチャートを動かす、ただしそのためには接触指標群の充実は必須…12月16日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

 

12月2~8日を集計期間とする12月16日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのは、KinKi Kids「光の気配」でした。

シングルCDセールス初加算週のポイント推移は前作「会いたい、会いたい、会えない。」のシングルCDセールス初加算週の93.6%。比較的好調に推移していますが、チャート構成比の8割以上がシングルCDセールスと偏っており、またデジタル未解禁のため次週の急落は必至でしょう。事実、前週首位の関ジャニ∞「友よ」は13位にダウン、ポイント前週比は11.6%と、ジャニーズ事務所所属歌手によくみられる傾向(トップ10落ち、シングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比が10~20%の範囲)をなぞっています。

しかしながら、ジャニーズ事務所所属歌手にあって特筆すべき動向をみせているのが嵐「Turning Up」。

今週1ランクアップし11位に入ったのみならずポイントも伸ばし、ポイント前週比112.5%となっています。前週もポイント前週比126.9%であり、このときは『ベストアーティスト2019』(日本テレビ)でのパフォーマンスの影響が大きいと考えていました。しかし今週においては『FNS歌謡祭 第1夜』のみならず、こちらの影響もあると言えそうです。

SNS活動を一斉解禁した嵐が現在、ショートムービーアプリ「TikTok」上で、初デジタルシングル「Turning Up」の振り付け動画を公開している。「#ARASHIchallenge」として、嵐のアカウントをフォローの上、「踊ってみた」動画をアップすることを呼びかけており、さらに盛り上がっていきそうだ。

嵐、TikTokで振り付け動画を公開中 “踊ってみた”動画投稿でメンバーの目に触れるチャンス?|Real Sound|リアルサウンド テック(12月5日付)より

TikTok の”踊ってみた”動画に投稿を呼びかけたことで、ネット上でのバズを生み出す形となりました。TikTokにおける週間楽曲チャートを今週からビルボードジャパンが紹介しているのですが、動画で用いられた嵐「Turning Up」のChallenge Chorusバージョンが10位に入っています。

(ビルボードジャパンが、弊ブログで”新しいヒットの形”の上流にあるものとして紹介してきたTikTokを、ソングスチャートの構成指標とは関係なくとも紹介する姿勢は素晴らしいと思います。)

嵐「Turning Up」はストリーミングが14→12位、動画再生が12→10位と接触指標群が上昇。さらに所有指標であるダウンロードも12→8位と伸び、ネットでのバズが接触指標上昇に寄与するのみならず所有指標にも波及することが証明されました。この施策がなくとも年末の音楽特番で露出が増えれば曲の人気も安定することとなり、現に「Turning Up」において6週連続20以内に在籍していること、2週連続でポイントを伸ばしていることはこれまでのジャニーズ事務所所属歌手の曲ではほぼあり得ないことでした。ならば、他の同事務所所属歌手においてもデジタル解禁が最善と考えるのが自然なことではないでしょうか。

 

ネットでのバズやメディアでの露出をチャートで最大化させるためには、ストリーミングと動画再生という2つの接触指標を共に充実させることが必須だということは弊ブログで幾度となく申し上げており、最新12月16日付ビルボードジャパンソングスチャートにおいてもこれら2指標が共にトップ10入りしたのは6曲、そのうち5曲が総合で10位以内に入っています。が、この2指標が著しく乖離しているために勿体無い動きをしている曲が。それがLiSA「紅蓮華」(今週5位)、そしてback number「クリスマスソング」(同20位)であり、この2曲については先週も指摘しました。

back number「クリスマスソング」においては、ストリーミング9位まで上昇したにもかかわらず動画再生は300位未満で加算対象にすらなっていません。ミュージックビデオをショートバージョンにすると動画再生が伸びないことも幾度となく記載していますが(過去のブログエントリーについては、先週のブログにもリンク先を貼付しています)、back numberは『アンコール』(2016)後にリリースされた作品を未だサブスクリプションサービスで解禁していないことも含め、デジタル施策が不十分な状況(敢えてそうしているかもしれないこと)がチャートアクションをより高められない要因であり、勿体無く思ってしまいます。

そしてLiSA「紅蓮華」については。

TVアニメ『鬼滅の刃』のオープニング曲であるLiSAの「紅蓮華」は、前週15位から5位にジャンプアップを果たし、3回目となる最高位5位に返り咲いた。ストリーミングは4週連続で増加傾向を示しており、ストリーミング、ダウンロード、Twitterの3指標が牽引している。これは紅白への出演とYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』のパフォーマンスが大きな原因と思われる。

【ビルボード】KinKi Kids「光の気配」が総合ソング首位 LiSA「紅蓮華」は3度目総合5位に返り咲き | Daily News | Billboard JAPAN(12月11日付)より

この一発録り動画、THE FIRST TAKEについては月曜のブログにて記載しました。

ストリーミングは8位をキープし、ダウンロードは13→5位と躍進しますが、動画再生は81→71位とそこまで伸びませんでした。THE FIRST TAKE動画が12月16日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間中、国内だけで100万を超える再生回数を記録しているだろうことを踏まえれば、加算対象だったならばもっと動画再生指標が伸びたはずです。ゆえに、月曜のブログエントリーに対する自分なりの回答を出すならば、①の要件は満たしていないことになります。

ただ、推測の域を越えないとしても、ビルボードジャパンは今回のLiSA「紅蓮華」が最高位となる5位を獲得したこと(今回が通算3週目)についてはTHE FIRST TAKE動画が寄与したものとみており、嵐「Turning Up」の施策同様にネットを使った仕掛けが接触や所有指標を動かしたことは間違いないでしょう。ならばTHE FIRST TAKE動画が加算対象となるべく要件を満たすこと、この動画から「紅蓮華」のミュージックビデオにアクセスした方が満足出来るようミュージックビデオ(→YouTube)をフルバージョンで解禁することが必要でしょう(また複数バージョンを合算するよう、ビルボードジャパンがチャートポリシーを変更することも必要です)。仮にこれら必要条件を満たしていたならば、「紅蓮華」が最高位を更新したのはほぼ間違いないと捉えています。

 

昨日下記の内容をつぶやいたのは、チャートアクションにおける機会損失を踏まえてのこと。接触指標群が伸びないことは、歌手のファンではなくとも歌手や曲に興味は抱いているいわばライト層の取りこぼしを意味し、彼らがコアなファンに成る機会を逸するという意味で強く勿体無いと思うのです。

これは、解禁をカタログの一部にとどめている場合も同様。ミュージックビデオを映像盤として同梱したフィジカルを売りたいというレコード会社や芸能事務所の思惑は分からないわけではありませんが、長い目でみればどちらが得策かはチャートを追いかけている方からすれば明らかではないでしょうか。