face it

チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

ザ・ウィークエンド「Heartless」の米ソングスチャート急落新記録、実はそこまで憂える必要はないのでは

最新12月21日付米ビルボードソングスチャートにおいて、ザ・ウィークエンド「Heartless」が前週の首位から17位に急落し、首位獲得翌週の大幅ダウン記録を更新してしまいました。

上記ブログエントリーにおいて、この記録を『なんとも日本らしい記録』とあたかも不名誉と受け止められかねない表現で記載しましたが、ちょっと訂正したいと思い今日のエントリーをしたためた次第です。

 

たしかに「Heartless」は首位獲得の翌週、デジタル2指標を大きく落としています。ストリーミングは前週比31%ダウンの2060万(同指標2→18位)、ダウンロードは同90%ダウンの6000(同1→28位)の一方ラジオエアプレイは同47%アップの3850万(同38→19位)であり、ラジオエアプレイの上昇が他指標の落ち込みをカバーしきれていません。しかし、これを初登場した週から3週に渡る動向を追いかけると、違う流れが見えてきます。

ザ・ウィークエンド「Heartless」の総合および各指標毎の順位、ならびに数値は上記の通り。

f:id:face_urbansoul:20191221162613j:plain

「Heartless」のリリースは11月27日水曜であり、32位に初登場を果たした12月7日付ではストリーミングおよびダウンロードが2日間、ラジオエアプレイが5日間の集計期間となっています。これを踏まえて各指標の動向を確認しましょう。

まずは前週からの落ち込みが最も激しいダウンロードについて。

f:id:face_urbansoul:20191221161648j:plain

当該指標では"ダウンロード"という表現が用いられてはいますが、公式ホームページで販売されたレコードおよびシングルCD(以下フィジカル)のセールスが前週加算され(上記キャプチャはT H E W E E K N D S H O Pより)、その反動が今週に表れているといえます。初週における2日間の売上が10000に対し今週集計期間フルでの売上が6000ということから、フィジカル以外のセールスはリリース後間もなく購入されたことが見えてきます。

ストリーミングについて、たとえばSpotifyデイリーチャートでは下記の通り。

f:id:face_urbansoul:20191221163327j:plain

The Weeknd - Heartless - Spotify Chart History - kworb.netで日々の再生回数を追いかけることが出来ます。アメリカ(US)における再生回数は極端に落ちているわけではなく、また順位のダウンはジュース・ワールドの訃報やハリー・スタイルズのアルバムリリース(に伴う収録曲)、クリスマスソングなどに抜かれたことも大きいと言えます。

唯一の所有指標であるダウンロードは瞬発的且つ一過性のものであり、リリース直後に上昇し後にダウンする傾向がみられる(そして今回公式ホームページでフィジカルを販売したことがその傾向をさらに加速させた)一方、デジタルによるストリーミングは瞬発力もあれど接触指標で何度も触れられるためにダウン幅が低く、長く残る曲も少なくありません。他方ラジオエアプレイは集計対象局が多いこともあってか瞬発力には長けていませんが、多くの局で支持されるほど緩やかに上昇していきます。ストリーミングが思ったより高くないという見方もあれど(実は「Heartless」の2日後にリリースされた「Blinding Lights」も好調で、両者がバッティングしているだろうことが影響しているとも言えそう)、ラジオエアプレイの上昇に伴い再浮上する可能性は十分です。クリスマスソングが急失速する12月26日以降は順位的にも上昇すると捉えていいのかもしれません。

 

公式ホームページにおけるフィジカルの販売による前週のダウンロード指標上昇は、たしかにビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス指標の加算に似ているかもしれません。しかしながら今回「Heartless」が1→17位というワースト記録を更新したとはいえ、日本のような1→100位圏外という状況に陥らないのはストリーミングを構成するサブスクリプションサービスやYouTubeアメリカで定着しているゆえと言えるでしょう。

上記ブログエントリー内で取り上げた音楽プロデューサーの亀田誠治さんの講演にもあるように、アメリカでフィジカル戦略を実施しても急激に落ち込むことが少ないのはストリーミングの充実があってこそ。亀田さんはアルバムを例に取り上げていますが、ソングスチャートにおいてはラジオエアプレイも比較的大きなウェイト占めているわけで、個人的には日本の状況ほど憂える必要はないと思っています。

 

ちなみに、仮に2020年1月4日付米ビルボードソングスチャートまでマライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You (邦題:恋人たちのクリスマス)が首位を獲得し続けるならば、翌週は100位圏外になること必至と考えられます。この週の集計期間は3指標全てクリスマス以降となるため、マライアが「Heartless」の記録を更新するかもしれません。しかしながらこれはやむを得ないことと言えます。