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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

2020年の日本の音楽業界に求めたい、3つの"新しいヒットの形"

音楽関係者が選び、好事家の注目を集める『バズリズム02』(日本テレビ 金曜24時59分)の恒例企画、【今年コレがバズるぞ!BEST10】が1月3日の放送で発表され、Novelbrightが1位を獲得しました(詳細については同日付の番組バックナンバーをご確認ください(→こちら))。このNovelbrightがSNS上の口コミ(バイラル)で人気を博した「Walking with you」については、以前Real Soundにて取り上げました。

TikTokを用いてバズが生まれるスタイルは海外では自然な現象となりつつあります。重要なのはそのバズが自然発生的に生まれるのではなく、自分たちが仕掛けていくということ。下記記事からもその姿勢が見て取れます。

現在の音楽業界においては、楽曲の質や所属歌手の認知度にメジャーとインディとで大きな差はないと考える一方で宣伝力やそこに掛けられる予算が唯一の乖離だと感じているのですが、SNSでバズらせるにはそれほどの金額は不要であり、ネットへの知識やアイデアに長けた者が勝つのだと実感させられます。

Novelbrightは今日新曲「ランナーズハイ」をリリースしましたが、こちらには大型タイアップが。

地上波等で流れるのではなくWebCMへのタイアップにはなりますが、とはいえアサヒスーパードライという大型ブランドに用いられるのは凄いこと。この動きは、Spotifyバイラルチャートでヒットしデイリーソングスチャートへも波及したアリゾナ・ザーヴァスやアント・サンダースがメジャーレーベルと契約を交わしたことを思わせます。

このNovelbrightが自らをブレイクさせるに至った手法は"新しいヒットの形"の一環と捉えています。さて、日本の音楽業界においてはこの新しいヒットの形が今後生まれるでしょうか…いや生まれてほしいのです。そこで、今後生まれてほしい新しいヒットの形として3つを取り上げてみましょう。

 

TikTok発のバイラルヒットを自ら生む姿勢

先述したNovelbright「Walking with you」のようにバイラルヒットを経てビルボードジャパンソングスチャートで100位以内に到達する曲は昨年いくつかみられており、ちゃんみな「Never Grow Up」については以前ブログに取り上げました。

「Never Grow Up」の場合はちゃんみなさん自身が担当したラジオ番組が下地にあったと捉えていますが、Novelbrightの場合は先述したように自身が宣伝を行ったことがブレイクに影響しています。TikTokがバイラルヒットのきっかけになることは日米のチャートで証明されている以上、今後はそのバイラルヒットをどう仕掛けるかが重要と言えます。

仕掛けるのは何も歌手には限りません。エイベックスが日本のレコード会社では初となる包括契約TikTokと結び、昨年末にレコード会社としてアカウントを開設しています。

このように、バイラルヒットが生まれるのではなく"生む"体制を整え、実行していくことは重要でしょう。

 

② 解禁日をより注目させ、バズらせる工夫

模範となるのは、シングルCD未リリースながらビルボードジャパンソングスチャートで2連覇を達成した星野源「アイデア」。2018年8月20日月曜にリリースすることを事前アナウンスし、当日にはミュージックビデオも公開。発売日には『おげんさんといっしょ』(NHK総合)がOAされ、宣伝トラックを見たらツイートする企画も実施、ラジオエアプレイも同日解禁と、シングルCDセールスおよびルックアップ、そして当時未解禁だったサブスクリプションサービスでの再生回数を基礎とするストリーミング以外の指標を一気に獲得することに成功したわけです。

アメリカでは今年1月3日にジャスティン・ビーバーが「Yummy」をリリースしましたが、こちらも昨年の段階でリリースを予告。その予告解禁日についても予告しています。

「Yummy」が米ビルボードソングスチャートを制するかは分かりませんが、一斉であれ段階的であれ解禁日へ向けてどうやって注目を集めさせていくか、そして解禁日(以降)にどこまでバズらせるかの工夫が成されています。「アイデア」「Yummy」は日米ソングスチャート共に集計期間初日の解禁であり、初週により爆発的ヒットすべく設定されているのです(米ビルボードソングスチャートにおいてはラジオエアプレイの集計期間開始日はデジタル2指標の3日後となるため、厳密に言えば明後日発表のチャートではラジオエアプレイ3日間の集計分のみでランクインする可能性があります)。日本ではCDリリースが基本的に水曜であることからこの手法は難しいかもしれませんが、CDに頼らない解禁であれば出来なくはないはずです。

 

③ リミックスや客演等、追加バージョンの投入

ビルボードソングスチャートではもはやこの方式が戦略として当たり前の手法となっています。最近ではリゾ「Truth Hurts」にラッパーのダベイビーが参加したバージョン等を投入し、デジタルで初加算された週に自身初の首位に立ちました。

またビリー・アイリッシュ「Bad Guy」についてはジャスティン・ビーバーが参加したバージョンが後日公開。加算直後は首位に至れませんでしたが、スマートフォンを意識した縦型ミュージックビデオを追加投入し、初の首位獲得に至っています。

「Bad Guy」は昨年の米ビルボード年間ソングスチャートで4位となり追加投入も功を奏したと言えますが、しかし日本では縦型ミュージックビデオはオリジナルバージョンに合算される一方でジャスティン・ビーバー参加版はオリジナルバージョンと合算されません。これによりビルボードジャパン年間ソングスチャートでトップ50を逃したと考えており、改善は必要ではないかと今年ビルボードジャパンへ提案しました。

リミックスは日本でもよく用いられている手法であり、オリジナルバージョンをより多角的に楽しめます。リミックスとは異なるかもしれませんが、最近では椎名林檎宇多田ヒカル「浪漫と算盤」にLDN/TYOの2バージョンが用意されていたのが印象的でした。

リミックスや客演等、追加バージョンの投入は音楽の多角的な楽しさを伝え、ヒットの可能性を拡げるものだと思うのです。ビルボードジャパンソングスチャートが合算を許可したならば、このような手法がどんどん採用されていくものと考えます。特にラッパーが他ジャンルのリミックスの際に客演参加しやすくなり、他国に比べてチャートに登場しにくいヒップホップの勢力拡大につなげるチャンスではないでしょうか。

 

 

以上3点、日本ではまだまだ確立されていないと思しき"新しいヒットの形"をいち早く採用し、ヒットに至る曲が生まれることを望みます。