先週水曜に発表された、最新1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートは上位5曲がすべて『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)の披露曲で占められており、視聴率や内容如何にかかわらず紅白の影響力が絶大だと実感させられます。しかし、5強の指標別順位をCHART insightから辿ると、強い違和感を覚えるのです。
(King Gnu「白日」および菅田将暉「まちがいさがし」はシングルCD未発売のため、シングルCDセールスおよびルックアップの2指標はカウントされません。)
ビルボードジャパンソングスチャートでロングヒットする曲は、サブスクリプションサービスの再生回数に基づくストリーミング指標とミュージックビデオ等の再生回数に基づく動画再生指標が共に伸びる曲が多い傾向があると以前も記載しました。しかし、Twitter指標で首位を獲得したLiSA「紅蓮華」は動画再生指標30位にとどまり、昨年の日本レコード大賞を受賞したFoorin「パプリカ」に至っては動画再生指標100位はおろか300位以内にも入っていません。
(2曲のCHART insightにおいて、動画再生指標は赤の折れ線で表示。)
最新1月13日付ビルボードジャパンソングスチャートの集計期間(昨年12月30日~1月5日)とは若干ズレが生じますが、昨年12月27日~1月2日を集計期間とするYouTubeチャートでは、そのLiSA「紅蓮華」が4位に入っているのです。
【YouTubeチャート】ヒゲダン12週連続1位 SixTONESとSnow ManはTOP10入り目前https://t.co/mjKLcx7N9x
— ORICON NEWS(オリコンニュース) (@oricon) 2020年1月8日
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YouTubeチャート、ビルボードジャパンソングスチャート動画再生指標(YouTubeのほかGYAO!も含む)の双方ともに、様々なバージョンが合算され且つユーザー生成コンテンツが対象になるのですが、動画再生指標においては国際標準レコーディングコード(ISRC)が付番されたものが最低限の条件となるため、公式動画であってもISRC未付番の作品はカウントされません。この点を踏まえれば、ISRC付番/未付番の差が大きいのだと言えます。
実は以前から、そのようなことを幾度となく申し上げています。たとえばFoorin「パプリカ」の場合。
LiSA「紅蓮華」については”THE FIRST TAKE”バージョン(→こちら)にISRCが付番されていなかっただろうことが考えられ、「パプリカ」はNHK発のアカウントゆえISRCが付番されていなかったと言えるでしょう(「紅蓮華」についてはビルボードジャパンがバージョン違いを基本的に合算しないというチャートポリシーも影響しているかもしれません。合算についてはこちら等で記載しています)。しかしISRCは後から付番可能であり、きちんと付番したOfficial髭男dism「Pretender」、King Gnu「白日」および菅田将暉「まちがいさがし」はストリーミング指標と比例して動画再生指標も高いと言えます。また「紅蓮華」のミュージックビデオにはおそらくISRCが付番されていますが、「Pretender」等がフルバージョンでアップされているのとは対象的に「紅蓮華」がショートバージョンであることで再生回数が伸びなかったとも言えます。これは年末の需要が喚起されながらも他指標に比べて伸びなかったback number「クリスマスソング」を思わせます。
「クリスマスソング」において、昨年12月22日までの1週間を集計期間とする12月30日付ビルボードジャパンソングスチャートの動画再生指標は83位でありストリーミング指標(7位)と大きく乖離。翌週の動画再生指標は100位未満となってしまいます。
チャートのポイント取りこぼしはただただ勿体無いと思うのです。仮に取りこぼしを防ぐ役割をレコード会社が担うならば、調査分析チームを設けることは必要でしょう。ISRC未付番への対応、ミュージックビデオフルバージョンへの是正(フルでの公開が映像盤を同梱したCDの売上ダウンにつながると懸念するかもしれませんが、懸念を先立たせるよりも実験等を行い分析することが大前提です)、別アカウントから発信されたミュージックビデオのISRC確認等は必須ではないでしょうか。取りこぼしは曲や歌手をさらなる高みに押し上げられない点で機会損失だということを強く意識して、レコード会社は今からでもきちんと対応してほしいと切に願います。