イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2020年の音楽業界に対する10の願い+α

2020年がはじまってわずか半月ちょっとですが、前週は米ビルボードソングスチャートでジャスティン・ビーバー「Yummy」が2位に初登場したり、週末にはエミネムのニューアルバムが突如ドロップ。日本ではKing Gnu『CEREMONY』がCDセールスだけで初週20万突破を確実にしている等、濃いトピックが続々。今年はどんどん面白いことが起こりそうな予感がします。

さて、弊ブログでは年明けにビルボードジャパンソングスチャート、ヒット曲のアプローチ(”新しいヒットの形”という言葉を用いて)についての今年の希望を記載しましたが、その他にも望むところが多々あるゆえ、10の項目を記載してみます。

 

 

ビルボードジャパンへのリカレントルールの設定

これは先日書いた内容に追記する形にはなるのですが。

昨年のビルボードジャパン年間ソングスチャートを制したのは米津玄師「Lemon」でした。一昨年の年末以降、主題歌に起用されたドラマ『アンナチュラル』(TBS)の再放送~『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)での歌唱でさらなるヒットとなったわけですが、2019年産の曲のヒットが「Lemon」を超えなかったこと、そして旧曲が強い力をつけすぎてやいないかという点が気になります。前者については旧来の曲以上に大ヒットする曲が生まれてほしいと思うばかりですが、後者においては米ビルボードに倣った【リカレントルールの設定】を、ビルボードジャパンは導入するしないにかかわらず議論してほしいと思います。一定の条件を下回ればチャートから消えるというリカレントルールについて、こうすれば好いという提案があり興味深いゆえ、勝手ながら紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

 

② 米津玄師のオリジナルアルバムリリース

先述した「Lemon」以降、米津玄師さんは日本を代表する歌手としての地位を確立した感がありますが、オリジナルアルバムは2017年秋の『BOOTLEG』以来リリースがありません。これまでのアルバムのインターバルを踏まえればリリースされても好い頃ですが…未だダウンロードで解禁されていないFoorinへの提供曲「パプリカ」のセルフカバー、そして嵐「カイト」のセルフカバーも含むアルバムの登場が待たれます。アイドルやK-Pop、アニメ等以外でCDセールスに長ける歌手は珍しく、リリースの際にはCDとしての売上枚数も気になるところです。

 

 

サブスクリプションサービス未解禁歌手の解禁

その米津玄師さんは未だサブスクリプションサービス(以下サブスク)に曲を解禁していません。ビルボードジャパンソングスチャートにおいてサブスク未解禁の(ストリーミング指標が稼げない)曲が、CDの動きが一段落した段階で勢いをキープ出来ているか、楽観視はすべきではないと考えます(事実、「馬と鹿」は昨年ヒットしたものの、Official髭男dism「Pretender」やKing Gnu「白日」等と比べて勢いは劣っています。サブスク解禁と未解禁とで、翌週のポイント前週比が後者は8割を切ることも少なくありません)。サブスク解禁がCDセールスに悪影響をお呼びしかねないという危惧は抱いているかもしれませんが、解禁へ動いてほしいものです。

無論米津玄師さんに限らず、他にもサブスク未解禁の歌手は少なくありませんし、昨年解禁した嵐についても未だシングル曲に限られています。この未解禁の状況についてまとめられているブログエントリーがありますので勝手ながらですが紹介させていただきます(問題があれば削除いたします)。

広く世界中で視聴可能な昨年の『NHK紅白歌合戦』の大トリを飾った嵐がJ-Pop賛歌たる「Turning Up」を示したのならば、世界中にJ-Popの素晴らしさを示せない今の日本の音楽業界の解禁状況は矛盾と言わざるを得ません。

 

 

ジャニーズ事務所所属歌手のデジタル解禁

昨年の『NHK紅白歌合戦』ではジャニー喜多川さんの追悼企画に登場したCDデビュー前のSixTONESおよびSnow Man(そしてデビューは決まっていませんがなにわ男子も)を含め、8組ものジャニーズ事務所所属歌手が出演していましたが、サブスクリプションサービス解禁は嵐のみ(それも先述したように限定的)。世界中にジャニー喜多川さんの功績を紹介したならば、ジャニーズ事務所所属歌手の音源が世界に広まらないのは機会損失と言えます。ジャニーズ事務所が運営するレコード会社の稼ぎ頭がデジタル解禁に乗り出したのならば、少なくともソニーやエイベックスといった外部レコード会社(レコチョク等一部ダウンロードサービスでフル音源のダウンロードは解禁済)にデジタル解禁とその管理を託しても好いのではないかと考えます。

 

 

SixTONESSnow Manのスプリットシングルをレコード会社毎にカウントすること

ソニーやエイベックスといえば、先述したSixTONESおよびSnow Manの所属レコード会社となりますが、この2組は1月22日に同時デビューを果たし、しかもレコード会社の枠を超え、2組のスプリットシングルとして2社からリリースされます。となると気掛かりなのは、このシングルCDセールスがどうやってカウントされるのかということ。仮に、2組のファンの力でミリオンセールスを獲得したとしてもそれは“SixTONES vs Snow Man”としてのミリオン達成であり、グループ単独でミリオンと呼ぶのは違うと思うのです。

個人的にはソニー発(SixTONES)とエイベックス発(Snow Man)とでセールスを分けてカウントしたほうが好いと考えますし、Twitter指標の強さによりビルボードジャパンソングスチャートでは2組の楽曲が既に別々でランクインしているならば、分けて考えるのが自然なことです(ちなみに、レコード会社毎にvsの前後が入れ替わって表記されます。詳しくはこちらをご参照ください)。仮に一緒の扱いにして“ミリオン達成”と銘打つならば、そのやり方は話題性等を優先したためにチャートの客観性を捨てたとすら捉えてよく、チャートの信用を一気に失墜させる行為だと思うゆえ、チャートを扱う方は冷静客観な判断が必要です。

無論、シングルCDセールスと同時にダウンロードやサブスクリプションサービスが解禁されるかも注目で、同日解禁がなされなければジャニーズ事務所側は未だCD優先というドメスティックな手法を採り続けるとみてよいでしょう。

 

 

⑥ 『NHK紅白歌合戦』の名称変更も視野に入れた番組の意義の議論

さて、デビュー前のジャニーズ事務所所属歌手を呼び込んだ『NHK紅白歌合戦』は新時代に際し変わっていくでしょうか。昨年の内容が良かったという声はほぼ聞かれませんでしたが、賛否両論はあれどMISIAさんのパフォーマンスは彼女の一貫したLGBTQへのサポートの姿勢が伝わった(しかし説明不足ゆえ唐突感は否めず、でしたが)点で良かったと思います。また番組内の『おげんさんといっしょ』企画ではおげんさんこと星野源さんが以前紅白(男女)の枠について言及していたこともあり、番組の核にある“ジェンダーで分けること”が今の時代に求められる多様性に相応しくないだろうことは番組側も理解しているはずです。

紅白の採点方法の問題も未だ解消されないことも踏まえ、”紅白歌合戦“の名称も含めた番組のあり方や内容を議論し、変更してほしいと思います。

 

 

⑦ 嵐のデジタルシングルのフィジカル化

昨年の『NHK紅白歌合戦』まで4年連続で白組司会は嵐のメンバーが務めていますが、活動休止前の最後の年となる今年、果たして昨年披露した「Turning Up」等の楽曲はCD化されるのかが気になります。昨年ベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』をリリース済であり、ゆえに「Turning Up」等をオリジナルアルバムとして出す、またリプロダクション企画(「A-RA-SHI:Reborn」等)を企画アルバムとしてCD化するのかが興味深いところです。ひとつだけ気掛かりな点があるとしたら、『5×20 All the BEST!! 1999-2019』に新録曲を追加収録したデラックス・エディションとして後出しでリリースする可能性。日本でも昨年はTHE YELLOW MONKEY布袋寅泰さん、アメリカでもリゾ等がデラックス・エディション手法を用いており音楽業界の主流となりつつありますが、元のアルバムを買った方には納得いかないであろうやり方だと考えます。この点については以前指摘しました。

デジタルのみでリリースした楽曲がどのような扱い方をされるか、注視が必要です。

 

 

⑧ 日本の曲が”新しいヒットの形”の流れに乗り世界中で流行すること

年明けに“新しいヒットの形”として3つの希望を記載しました。

TikTokSNSでの口コミ→サブスクリプションサービス→総合チャートへヒットが伝播していく流れが確立された現在、たとえばアメリカでその流れに乗る曲はなにもアメリカで作られた曲に限らなくなっています。となると当然、日本の曲も世界中でヒットする可能性があるのです。日本の場合、サブスクリプションサービス利用率自体が他国に比べて低いためこの手のヒットは生まれにくいかもしれませんが、SNSでの口コミが自然発生であれ仕掛けられたものであれ、流れに乗る曲が1つでも登場するならば世界でJ-Pop全体が注目されていくきっかけになるものと考えます。

 

 

⑨ 日本におけるヒップホップの大ヒット

日本の音楽市場におけるヒップホップ(ジャンル)のシェアはアメリカ等に比べて著しく低い印象があります。インディから武道館公演を成し遂げたBAD HOP等成功例がありますがここは是非とも、メジャー所属のヒップホップアクトが大成功を遂げてほしいと思うのです。『ヒプノシスマイク』が人気コンテンツになったタイミングで、特にオオサカ・ディビジョンのどついたれ本舗に楽曲提供したCreepy Nutsが認知度を高め、実力も申し分ないことから近い将来チャート上でも結果を出すものと期待しています。このCMも痛快ゆえ尚の事です。

 

 

⑩ 不祥事を起こした者への反省と再興を促すマニュアルの策定

無論不祥事はあってはならないことですが、発生(発覚)した直後に店頭在庫の回収やデジタルサービスからの撤去という昔からの流れは変わっておらず、正直失望します。推定無罪の原則が活かされていないこと、芸術作品と人間性とを過度にリンクさせていること、撤回等には極めて前向きな一方で復帰についてはきちんと考えようとしないこと等は拙策と言わざるを得ません。

不祥事を起こした者(の関連作品)の復帰までのマニュアルを作成し、罪の大きさ等により二転三転させるのではないいわば核となるルールを作るべきです。結局二転三転させるそのやり方が、エンタテインメント業界において熟考する力や責任を持つことが宿らない癌であると言ってよいと思うのです。そしてエンタテインメント業界がきちんとしたマニュアルを作成出来たならば、他の業界、そして日本全体に”後悔ではなく反省を促す”風潮が醸成されるものと考えます。

 

 

以上10の願いや希望、今年はいくつ叶うでしょうか…と昨日までに書いたところで、昨日深夜に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日 日曜23時10分)、売れっ子プロデューサーが選ぶ年間ベスト10企画で2名が推した長谷川白紙さんに関してこんな感想を抱きました。

今の流行と未来の才能をマス向けに紹介する音楽番組の登場が、出来ればゴールデン帯に生まれることを、追加の願いとして挙げておきます。これはテレビに限らず、ラジオにおける平日の日中にも当てはまることです。