イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

SixTONES「Imitation Rain」およびSnow Man「D.D.」は真の社会的ヒット曲になれるのか? 2月10日付ビルボードジャパンソングスチャートから考える

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介します。

1月27~2月2日を集計期間とする2月10日付ビルボードジャパンソングスチャート、STU48「無謀な夢は覚めることがない」がシングルCDセールスを武器に首位を獲得しました。

初週のシングルCDセールスは自己最高を更新したものの、『他指標ではラジオ15位、ルックアップ11位、Twitter 16位と今少しの結果となり、コア・ファンから一般層への訴求には時間がまだまだかかりそうだ』(上記記事より)とあります。この点は2つの意味で問題です。

STU48は前作「大好きな人」が昨年8月12日付で首位を獲得しながら翌週には100位以内に残ることが出来ませんでした。今作はさすがにそこまでとはならないかもしれませんが、シングルCDセールスのみに突出した曲はライト層への浸透が出来ていないという点において”真に社会的ヒット曲に至ったとは言えない”ことは、これまでのブログエントリーからも明らか。次週の状況に注目しましょう。

 

さて前週は、SixTONES「Imitation Rain」とSnow Man「D.D.」が共に4万ポイントを超えるというハイレベルな戦いとなりましたが、今週は「D.D.」が「Imitation Rain」を逆転しています。CHART insightで総合1~5位、および曲毎にみてみると。

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『当週では「D.D.」がCDセールスで7,351枚差、動画再生でも359,984回差で「Imitation Rain」を上回った。「Imitation Rain」はラジオ、ルックアップ、Twitter、カラオケで「D.D.」を上回ったが、その差を逆転するまでには至らなかった』(上記記事より)とありますが、2曲のチャート構成比をみれば指標毎の割合はほぼ同じであり、毎週2曲が競い合いながら下降していくものと予想します。この2曲の、特にポイント前週比をみて真っ先に浮かんだのは、2組の先輩として2018年にデビューしたKing & Princeによる「シンデレラガール」でした。

「Imitation Rain」「D.D.」を「シンデレラガール」と比較すると。

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ツイートで”単純比較は出来ません”と書いたのは、2018年度にはカラオケ指標がなかったこと、「シンデレラガール」のミュージックビデオがフルバージョンではなく1分のティーザーであることが理由。Twitter指標においては今週も2組による6曲が4週連続で上位6位までを独占しており、ビルボードジャパンにおけるファンの積極的なTwitter活動が垣間見えますが、言い換えれば「シンデレラガール」の頃はそこまで積極的ではなかったと捉えることも可能(このファンによる動きは、三浦大知「Blizzard」以降目立ってきたという印象があります)。「シンデレラガール」のカラオケの火の付き方がどうだったかは分かりかねますが、今挙げた指標群を除けばこの3曲(3組)のデビュー曲の動向は酷似しています。なお、「シンデレラガール」の2019年度のカラオケ動向については先週触れています(→こちら)。

 

「シンデレラガール」が2018年度にビルボードジャパン年間ソングスチャートで12位を記録したことを考えれば「Imitation Rain」および「D.D.」が今年の年間ソングスチャートで上位に入ってくるとは思うのですが、シングルCDセールスの前週比が気掛かりなのです。「シンデレラガール」と今回の2曲では6%という壁が存在。これは2組が競い合うことで初週セールスに売上が集中したことの反動もあるでしょうが、「シンデレラガール」がドラマ主題歌であったためライト層への浸透度がより高く、シングルCDセールスに繋がったとも言えます。ジャニーズ事務所所属歌手は嵐以外サブスクリプションサービスで解禁されておらず、ゆえにライト層への浸透状況はシングルCDセールスやルックアップ(CDレンタルの動きが垣間見えます)に表れます。

ライト層への浸透の重要性は昨年の年間ソングスチャート(→こちら)を見れば明らかで、同年の年間シングルCDセールスチャート(→こちら)の上位10曲における総合ソングスチャートの最高位は欅坂46「黒い羊」の14位。総合ソングスチャートトップ10のうちシングルCD未発売(ゆえにシングルCDセールスおよびルックアップの2指標を獲得出来ない)が2曲あることを踏まえれば、ストリーミングや動画再生といった接触指標群がシングルCDセールスより重要な意味を持つことがよく解ります。そして総合ソングスチャートトップ10のうちドラマもしくは映画タイアップが6曲、『みんなのうた』(NHK総合ほか)に用いられたFoorin「パプリカ」を含めれば7曲という多さを考えると、主題歌というタイアップがライト層拡大に大きく貢献することもみえてきます。その意味では、「Imitation Rain」および「D.D.」が「シンデレラガール」並みに伸びていくのかは難しいのではというのが私見です。 

「シンデレラガール」が行っていなかった1分を超えるミュージックビデオの用意という武器はあれどフルバージョンではないため動画再生指標が大ヒットしているとは断定出来ず、ダウンロードおよびサブスクリプションサービスで未解禁の状況が続くならばライト層への浸透は高くないでしょう。ファンによるTwitter活動(ルックアップ上昇のための活動も行われていると聞きます)は押し上げ効果にはなれど、それが目立ちすぎればビルボードジャパンがウェイト減少を考えるかもしれません(個人的には、以前よりTwitter指標のウェイトは下げてもよいのではと以前から提案しています)。ならば、カラオケ指標の上昇も必要です(し現に上昇しているのは素晴らしいことです)が、ファンは彼らの所属事務所であるジャニーズ事務所に対し、ライト層の拡大のためのデジタルの充実を求めるのが最善ではないでしょうか。セルCDの実施店舗が減少し、またYUKIさんが今日全曲を、明日には嵐がアルバム全曲をサブスクリプションサービスにて解禁することで同サービスの関心がどんどん高まっていることを考えれば、ライト層の行動はCD所有からデジタルに移行していくのは確実。

勿論CD購入も選択肢のひとつですが、沼に招くにはその接点を増やさないといけないと思うのです。「そうは言っても声は届かない」という反論もあるかもしれませんが、見ている関係者は絶対にいるということは自分の経験談から断言します。