ここで真面目なことを書くことには若干の抵抗があるのですが、やはり書き記さないとといけません。新型コロナウイルス問題はその対策の杜撰さを更に極め、個人的には最悪の方向へ舵を切ったと捉えています。2週間前に自分はこのような願いを記載したのですが。
このエントリーの最後の一文で書いた願いとは真逆の対策が、昨日打ち出されてしまいました。
これで新型コロナウイルスを中国のせいだ!とする一部の者からの支持が出てくるのは本当に恐ろしいことです。さらに政府がそれを狙っていたならば尚更恐ろしい…総理や政府の根底に、中韓を貶して自らの優位性を示す姿勢が【日本を、取り戻す。】のキャッチコピー登場以来通底しているわけですから https://t.co/QRKYPQcFtM
— Kei / ブレストコナカ (@Kei_radio) 2020年3月5日
自分と同じ危惧を抱く方は少なくありません。昨日『荻上チキ Session-22』(TBSラジオ 月-金曜22時)に出演したジャーナリストの安田浩一さんのコメントはまさしく自分が危惧する部分でした。ラジオクラウドアプリでは音声が無料公開されておりますので是非チェックを。radikoタイムフリーは下記に。
【#追っかけ再生】3/5(木)ニュース「新型コロナ。中韓からの入国者に指定場所での2週間待機を要請」ジャーナリストの安田浩一さん▼特集「#新型コロナウイルス 。#失業 #休職 したらどうすればいいのか?」大西連×田中宝紀×赤石千衣子 https://t.co/NFt0mZfiuS #ss954
— 荻上チキ・Session-22 (@Session_22) 2020年3月5日
今回の政府の決定は、中韓との決定的な分断を生み、中韓を忌み嫌う人のヘイトスピーチを増やしかねません(そして安田さんによればこの決定がいわゆる”右(寄り)”の方々がウイルス対策の杜撰さで分裂していたことへの再結合的な意味合いがあるとのことで、その政府の、いや総理の自己都合的判断には呆れますし、極めて危険だと思っています)。一方で、その韓国の音楽が今や全世界を制覇しトレンドと化しているのですが、最悪の場合そのような文化すらもヘイターの声の大きさに掻き消され、拒絶されてしまう可能性があるわけです。今回の決定は文化の寸断すら招きかねないのではないでしょうか。
この、K-Popアクトの全世界制覇はごく最近達成されています。BTSによる最新アルバム『Map Of The Soul : 7』は最新3月7日付米ビルボードアルバムチャートをはじめ世界を席巻、米ソングスチャートでは「On」が4位に初登場を決めているのです。
ソングスチャートでみると、トップ10に3曲を送り込んだK-PopアクトはBTSが初、ソングスチャート100位以内に送り込んだ曲数が2桁に達したのも初であり、またBTS自体自己最高位を更新しています。さらにそのチャートアクションについて、数字以上に大きな意味があるということを音楽ジャーナリストの沢田太陽さんがまとめられています。
#BTS #MapOfTheSoul7 #偉業の内容 #ビートルズ #比較や似たところ #コリアンインヴェージョン
— 沢田太陽(Hard To Explain) (@_HTE_) 2020年3月5日
ビートルズとの比較も、もはや笑い事では・・・。BTSの今回の破格のチャート・アクションがこれまで以上に重要な理由|THE MAINSTREAM(沢田太陽) @_HTE_ #note https://t.co/4ITjqWICSk
他方、米チャートに絞ってみてみると、BTSに弱点があることは否めません。特にソングスチャートにおいては高位置に登場しても翌週には急落という状況が目立つのです。
これまでトップ10前後に入った「Fake Love」は10→51位、ホールジーをフィーチャーした「Boy With Luv」は8→40位。ニッキー・ミナージュをフィーチャーした「Idol」に至っては11→81位と急落しています。アメリカのソングスチャートはストリーミング、ダウンロードおよびラジオエアプレイの3指標で構成され、ストリーミングは急上昇もしくは徐々に上昇しなだらかに降下、ダウンロードは急上昇し急降下、ラジオエアプレイはなだらかに上昇しなだらかに降下するという特徴があります。今挙げた3曲はいずれも、収録アルバムが初登場したタイミングで曲単位でのダウンロードも伸びたために上昇しているのですが、ラジオが追いつかないうちにダウンロードが急落、ストリーミングも下降したことで総合チャートも急落した形です(なお「DNA」のみ、アルバム初登場週の翌週に順位を上げた形です)。いや、トップ10前後に到達した週から5週間の成績をみると、3曲ともラジオエアプレイで50位以内に到達していません。これらを踏まえれば、曲の持続力、アメリカの場合はとりわけラジオ中心に浸透させることが課題と言えます。
その対策としての意味もあるでしょうか、たとえばリル・ナズ・X「Old Town Road」にはメンバーのRMがリミックスに招かれ「Seoul Town Road」としてリリース、それが縁で今年のグラミー賞には「Old Town Road」のパフォーマンスにBTSも招かれています。更には今回のアルバムから「Black Swan」を先行リリースし、アルバムリリースから2週間近く経過した今週、ミュージックビデオを解禁しています。リル・ナズ・Xとの共演がどのような形(どちらのアプローチからか等)で決まったかは分かりかねますが、この1年で歌手としての認知度上昇を図るとともに、アルバムについてはこれまでにない長期戦略を行っていることが見えてきます。
米ビルボードソングスチャートを予想する、(フォローする方の多さから、幾分影響力を持っていると思しき)サイモン・フォークさんは、次週3月14日付米ビルボードソングスチャートではBTS「On」が50位に急落すると予想しています。
— Simon Falk (@simmnfierzig) 2020年3月5日
あくまで予想とはいえ、先に取り上げた3曲の急落という過去を踏まえればあり得なくはないと思いますが、「Boy With Luv」が8→40位と急落しながら翌週も40位をキープし、その後51→61位とそこまで一気に落ちることがなかったこと、そしてこの1年での施策を踏まえれば、「On」と「Black Swan」でラジオエアプレイが票割れを起こしたとしてもこれまでよりも結果を残す可能性は高いと言えます(仮に急落したとしても、再度トップ40へ復帰したならば素晴らしいことです)。そしてソングスチャートで結果を残すということは、彼らがコアなファンのみならずライト層にまで浸透したことを意味し、米チャートでの成功は世界的アーティストとしての地位を確立したと言っても過言ではないのです。次週以降のチャートアクションはチェック必至と言えます。
だからこそ、BTSが世界的な歌手としてステップアップすればするほど、冒頭で書いたように日本でその状況を素直に称賛出来ない状況になっていくことに恐怖を感じています。そして日本におけるその環境の醸成は、どんどん世界との乖離を生むばかりではないでしょうか。