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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

三代目J Soul Brothers「Rat-tat-tat」が今になって新たなミュージックビデオを発信した理由とは

三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEが今週、「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオを公開しました。

YouTubeの説明欄によると、今回のミュージックビデオは『昨年末に募集したラタタダンスを踊って三代目 J SOUL BROTHERSと一緒にスペシャルムービーを作ろうというラタタチャレンジ企画に参加した日本全国のユーザーの動画と「Rat-tat-tat」MUSIC VIDEOをミックスしたスペシャルムービー』とのこと。「Rat-tat-tat」は今日リリースされたニューアルバム『RAISE THE FLAG』に収録されていますが、元々配信リリースされたのは半年前。なぜこのタイミングで今回公開なのか、気になっていました。

実はこの「Rat-tat-tat」、近年の三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEの曲の中でも異質なチャートアクションを見せています。ビルボードジャパンソングスチャート、CHART insightをみると。

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昨年9月30日付で14位に初登場を果たし、計3回トップ20入り。先週発表された最新3月16日付では100位以内には入っていませんが、およそ半年の間エントリーを果たしています。この「Rat-tat-tat」を『RAISE THE FLAG』収録の他の曲と比べてみると。

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先行でシングルCD化された曲のうち、5曲のチャートアクションは上記に(ダブルAサイドシングルの場合、どちらか1曲にのみシングルCDセールスおよびルックアップ指標が加算されるため、「RAISE THE FLAG」および「White Wings」はシングルCDセールス指標等が加算されていません)。黒の折れ線で示される総合チャートおよび、総合チャートを構成するサブスクの再生回数に基づくストリーミング(青の折れ線)やYouTube等の動画再生(同赤)において、「Rat-tat-tat」が明らかに高く、また勢いを持続させていることが解ります。

 

これを踏まえるに、このタイミングで「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオが公開されたことにはいくつか大きな意味があるものと考えます。

理由の1つ目はアルバム『RAISE THE FLAG』のリード曲としての位置付け。実際にアルバムから直近でリリースされたのは「冬空」と「White Wings」のダブルAサイドシングルにはなりますが、より勢いのある「Rat-tat-tat」をアルバムの顔にしたほうが好いという判断ゆえでしょう。

2つ目は、ソングスチャートでの上昇という目的。ビルボードジャパンアルバムチャートで初登場を飾る週、収録曲がソングスチャートでも上昇する傾向があります。特にストリーミングおよび動画再生という接触指標群に長けた曲(もしくは歌手自体が接触指標群で大きな支持を集める場合)はその傾向が強く、最近ではOfficial髭男dismやKing Gnuが好例として挙げられます。今回、「Rat-tat-tat」を含むアルバム『RAISE THE FLAG』は発売と同日にサブスク解禁。

新たなミュージックビデオの報を聞いてアルバムにアクセスし「Rat-tat-tat」に積極的に触れる方が増えれば、最終的にソングスチャートで伸びることが期待されます。そしてソングスチャートでの上昇を機に収録アルバムの存在を知る人が増える…という好循環につながるだろうことを考えれば、この好循環を目的にソングスチャートを押し上げるべく採られた施策が「Rat-tat-tat」の新たなミュージックビデオ投入と言えるでしょう。

(ただし、YouTubeの説明欄には動画の著作権記載がなく、もしかしたら動画再生指標のカウント対象となるISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番である可能性があります。仮にそうだとすればチャート上昇が鈍くなるわけで、至極勿体無いと思うのです。)

そして3つ目はCDの購入促進。そもそも「Rat-tat-tat」はアルバム収録により初CD化。さらに今回のミュージックビデオにはTikTokに投稿した多数の方が登場するため、選ばれた方が記念に購入するという可能性も考えられます。TikTokでは曲に用いられる”ラタタダンス”がハッシュタグとして付けられた動画の再生回数が1月末の段階で2億を超えており(まさかのローランドも出演! 三代目JSB、爆笑コスプレ続出の「Rat-tat-tat」MV公開 – 音楽WEBメディア M-ON! MUSIC(1月29日付)参照)、ラタタダンスの参加者をCD購入に取り込む狙いもあるものと見られます。

 

「Rat-tat-tat」はCM起用やTikTokでの展開、今回の参加型ミュージックビデオの登場等、長期に渡る施策を展開しロングヒットに至らせています。この動きがアルバムの飛躍につながるか、そしてソングスチャートでも駆け上がるか…来週水曜に発表される3月30日付ビルボードジャパン各種チャートに注目しましょう。