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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

AKB48の弱さ/乃木坂46の強さをビルボードジャパンソングスチャートから分析…ただし「しあわせの保護色」では今後の課題が露呈

一昨日発表された、最新4月13日付ビルボードジャパンソングスチャート。前週首位の乃木坂46「しあわせの保護色」は4位に後退しましたが、「しあわせの保護色」の前に週に首位を獲得していたAKB48「失恋、ありがとう」は2週後(の今週)に早くも100位未満となっており、坂道グループとAKBグループとで大きな違いが浮き彫りとなりました。

上記エントリーには2週前の3月30日付までにおける、2017年度以降の乃木坂46AKB48のシングルCD表題曲におけるCDセールス初加算週とその前後1週ずつの動向をまとめ、また両者の特徴を挙げています。ここに直近のシングルCD表題曲の動向を入れて再度表にしてみると。

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上記がAKB48。そして下記が乃木坂46

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たとえば【シングルCDセールス加算前週の順位】【ダウンロードの順位】【総合ソングスチャート100位以内の在籍週数】、さらには【同時ランクインの曲数】において乃木坂46AKB48を上回っていることについては以前のエントリーで述べましたが(上記リンク先参照)、今回の「しあわせの保護色」と「失恋、ありがとう」ではその差がさらに濃くなっています。特に大きいのは総合ソングスチャート100位以内の在籍週数であり、「失恋、ありがとう」は先述したように1位獲得のわずか2週後に100位を下回っています。

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チャート推移(CHART insight)をみると、黒の折れ線で表示されているのが総合チャートの順位。100位以内の在籍週数はわずか2週であるのみならず、首位獲得の翌週に72位にまで急落しており、シングルCDセールスに係数がかけられるようになった2017年度以降のシングルCD表題曲ではダウン幅が最も大きくなっています。4月6日付ソングスチャートにおける「失恋、ありがとう」のポイント前週比は、同日付50位のポイントを踏まえれば3.2%以下となり、【シングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比】は2017年度以降のシングルCD表題曲で最低記録を更新してしまうのです。

AKB48「失恋、ありがとう」においてはシングルCDセールス加算2週目の前週比も最低記録を更新し、また首位獲得週には141万枚ものシングルCDを売上ながら同週6500枚未満のOfficial髭男dism「I LOVE...」にルックアップで敗れています(「I LOVE...」は1位、「失恋、ありがとう」は6位)。ルックアップとはパソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスした数であり、これが多くない理由としては、①そもそもパソコン等に取り込む方が少ない ②売上枚数に対する実際の購入者数(ユニークユーザー数)が少ない ③レンタル回数が少ない…という3つが考えられます。他方で乃木坂46「しあわせの保護色」が2週連続でルックアップを制していますが、こちらのレンタル解禁は今週末であることから、③においては現状AKB48が有利になるはず。しかし、特に②と③が少ないということは、歌手のファンではなくとも歌手や曲に興味は抱いているといういわゆるライト層が少ないと言い換えることが可能であり、コアなファンに強く支持されていることが解ります。この【シングルCDセールスとルックアップの順位の乖離】においても、AKB48の弱点を的確に示していると言えるでしょう。この点においては以前も別の歌手を例にして取り上げていますし、そこで述べた”コアなファンでとどまらせずライト層にも波及させること”こそが、AKB48においても弱点克服の必須課題だと感じています。

 

他方、乃木坂46においては【】内で取り上げた内容がいずれもAKB48に勝っているのですが、しかしながら【シングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比】が20%未満となっていること、サブスクの再生回数を基とするストリーミングも順位が高くないのが気になるところ。しかし最も気掛かりなのは、動画再生が100位未満で居続けることなのです。

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チャート推移(CHART insight)では赤の折れ線が動画再生を指しますが、4週前に14位に初登場しながら急落、この3週間は100位未満の状態が続いています。先程ストリーミングの順位が低いことを書きましたが、接触を示すストリーミングおよび動画再生の2つはロングヒットに欠かせない柱と言える指標だということは「I LOVE...」「Bad Guy」はロングヒット確定? 2月17日付ビルボードジャパンソングスチャートにみる大ヒット曲との共通項(2月13日付)等で述べています。ミュージックビデオの公開が早すぎたという指摘もあるかもしれませんが、この接触指標群の強くなさはライト層の多くなさに比例しかねないと考えます。

ならばライト層の維持、拡大を考える必要があるはずなのですが、実はこの状況下で乃木坂46は、「しあわせの保護色」のシングルCDに収録されている曲のミュージックビデオをショートバージョンに切り替えることを予定していました。切り替え予定日は3月25日、すなわちシングルCDの発売日であり、ミュージックビデオを手に入れるためには映像盤が同梱されたCDを買ってほしいということなのかもしれません。

しかしこの方法では先述した接触指標群は上昇しないどころかさらなる低下が見込まれますし、何よりミュージックビデオがフルバージョンで公開されないとなるとイメージダウンにつながってしまうのではないかと思うのです。そして以前述べた”ミュージックビデオイコール商品”という考えが未だにレコード会社や歌手側に強くあるだろうことを懸念します。 

ミュージックビデオは"商品"である、というのは理解出来ます。収録された映像盤をCDに同梱することが自然なことである日本(市場)においては、映像盤が購入の動機のひとつとなるゆえ尚の事です。しかしそれはあくまでCDを売るための施策としての"商品"という位置付けが主体になりすぎてはいないかと。デジタルダウンロードやストリーミングにつなげるための"プロモーション"(そして、ビルボードジャパンソングスチャートではそもそも動画再生がカウント対象となります)、そして歌手の芸術性を提示したり、その存在を日本のみならず諸外国へ発信する等、大袈裟かもしれませんが"文化"という意味合いで用いなければ、フル尺公開が常という諸外国側が日本のドメスティックなやり方を疑問視し触れたくても敬遠する可能性がありますし、逆に日本の音楽を世界に放つことも出来にくくなります(デジタル興隆により、音楽をフィジカルで輸出する必要がなくなったゆえ尚更)。無論チャートアクションにも影響するわけで、その点をレコード会社等は考えていただきたいと思います。

Mrs.GREEN APPLE「ロマンチシズム」がトップ10ヒットに至れなったことから考える、日本におけるミュージックビデオの位置付け問題(2019年4月21日付)より

仮に「しあわせの保護色」がミュージックビデオをショートバージョンに切り替えていたならば、今後の乃木坂46のチャートアクションも変わっていったかもしれません。