無論やむを得ないというのは理解出来てはいるものの、ビルボードジャパンソングスチャートを追いかける身としては”恐れていた事態が起きてしまったと”いうのが正直な感想です。
<総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”について>
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) 2020年4月10日
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、政府による緊急事態宣言などで外出自粛が求められている状況を鑑み、2020年4月14日発表分より当面の間、カラオケ指標の集計を取り止めることに致しました。何卒ご了承くださいますようお願い致します。
4月14日火曜発表分ということは、翌日水曜に発表される4月20日付ビルボードジャパンソングスチャートからカラオケ指標は一時的に消えるということなのでしょう。カラオケが国等の自粛要請対象となっているとはいえ、”集計を取り止める”という判断には驚いた次弟です。
このカラオケ指標も含め、一昨日のブログではビルボードジャパンソングスチャートを構成する8指標すべてがダウンに転じるという予想を記載しました。
この中ではカラオケ指標のダウンも予想しながら、『CDショップが閉まることやドラマ等の開始時期の遅れを踏まえて作品のリリースが延期されればダウンロードやストリーミング、動画再生やラジオエアプレイにも影響が及ぶ可能性』についても示唆しました。これを書く際に念頭にあったのが、一昨年はじめの米津玄師「Lemon」の成功例。本来ならば昨日初回が放送されるはずだった『MIU404』(TBS 金曜22時 放送開始日未定)の主題歌が米津さんによる「感電」であり、『MIU404』の脚本を務める野木亜紀子さんは『アンナチュラル』(2018 TBS)も手掛けていたため、「感電」のリリーススケジュールが『アンナチュラル』主題歌の「Lemon」の流れを辿るものと想像していました。
#MIU404special
— 【公式】金曜ドラマ『MIU404』 (@miu404_tbs) 2020年3月15日
このたび!#MIU404 の主題歌を#米津玄師 さんに担当して頂くことが決定しましたッ👏
書き下ろしの楽曲タイトルは
『感電』⚡
MIU404×米津ワールド
みなさま、どうぞご期待ください🎵https://t.co/iHcNmDJRHA#綾野剛 #星野源 #岡田健史 #橋本じゅん #麻生久美子 #tbs #金曜ドラマ pic.twitter.com/JPMA3uTGsk
「Lemon」のスケジュールは、同曲がはじめてチャートを制したタイミングでブログにまとめています。
「Lemon」の流れを踏まえれば、「感電」についてもダウンロード→ミュージックビデオ→シングルCD→レンタルの順に解禁される、もしくはシングルCDではなく「Lemon」以降の曲をまとめた来たるべきアルバムからのリードトラックとしての位置付けの可能性もあったかもしれません…が、それはあくまで想像に過ぎません。
ただ、「感電」の解禁スケジュールよりもはっきりと言えることは、米津玄師さんの曲がビルボードジャパンソングスチャートで50位以内から脱落する可能性が低くないこと、なのです。
「Lemon」は2018年2月26日付で2位に登場して以来(初の100位以内エントリー)、常に上位に登場。最新4月13日付の35位がこれまでの最低タイとなっています。2019年度にカラオケ指標が登場して以降、2019年11月11日付まで同指標を制し続けたのもこの「Lemon」でした。「Lemon」の最新チャートにおけるポイントは1731であり、そのうち2割強がカラオケ指標によるものであることが上記チャート推移(CHART insight)のチャート構成比で解ります(同指標は濃い緑で表示)。仮にカラオケ指標の占有率を2割ちょうどで計算するとカラオケ指標以外のポイントはおよそ1385、同週においては49位に相当するため50位以内の当落線上になってしまうのです。無論他の曲もカラオケ指標が除かれるわけで影響を受けない曲はほぼないのですが、とりわけカラオケ指標の恩恵を受ける曲は急落が必至と言えます。
米津玄師さんにおいては「Lemon」のエントリーの前にはDAOKOさんとの「打上花火」が、さらにその前には「ピースサイン」が50位以内にエントリーし続けていました。「ピースサイン」が2017年6月19日付で23位に登場して以来およそ3年近くに渡り50位以内をキープしてきましたが、カラオケ指標が次週より一時的にでもカウント対象外となり「Lemon」が50位を割り込めば、3年近く続いていた50位以内エントリーの記録がストップしてしまうのです(ただし提供曲は除きます)。
ちなみに、「Lemon」同様2018年にリリースされ、最新チャートにおいてカラオケ指標で20位以内に入った曲をみると、2つの違いが見えてきます。
4曲のうちチャート構成比に占めるカラオケ指標の割合が最も高いのが菅田将暉「さよならエレジー」ですがそれでもおよそ2割であり、「Lemon」より占有率は低くなっています。そしてこの4曲と「Lemon」との大きな違いは、サブスクの再生回数を基とするストリーミング指標が加算されるか否か。日本で未だサブスク解禁していない米津玄師さんにとってはさらに不利な状況に追い込まれると言っていいでしょう。5曲においてはカラオケ指標集計取り止めの影響を最も受け、ストリーミング指標未加算の「Lemon」が影響を最も受けやすいということが、よりはっきり見えてきます。
新型コロナウイルスが収束しカラオケという娯楽が復活することが最善策であることは間違いありませんが、「Lemon」においては、いや米津玄師さんにおいては楽曲をサブスクで解禁することが、チャートの面からも必要になるはず。自粛に伴いサブスクリプションサービスを使う(使い始める)方にとって米津さんの楽曲がサブスクに”存在しない”ことは、米津さんにとって機会損失だと思うのです。