イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ビルボードジャパンソングスチャートにおけるTwitter指標は偏ってきていないか? 最新動向を提示し、ビルボードジャパンに議論を求める

ひさしぶりに、ビルボードジャパンソングスチャートの構成指標のひとつであるTwitterについて取り上げます。

 

Twitter指標のカウント方法は、一部例外を除いて下記の通り。

「アーティスト名」と「曲名」の両方をつぶやかれているツイートを計測しています。ハッシュタグの有無は影響しません。また、リツイートやリプライも集計の対象です。ツイート内で集計対象となるキーワード数に上限はありませんので、1つのツイート内に複数の「アーティスト名」および「曲名」が記載されている場合、すべて集計対象となります。

【Billboard JAPAN Chart】よくある質問 | Special | Billboard JAPANより

この指標を用いた歌手の活動については星野源さんを、ファン活動については三浦大知「Blizzard」を例にこのブログにて提示してきました。しかしながら、徐々にTwitter指標が偏りつつあること、その点に危惧していることについて、下記エントリーにて記載しています。

上記エントリーでは、「Blizzard」が最高位となる2位を獲得した2018年12月31日付以降、毎月最終週のソングスチャートにおけるTwitter指標上位20曲の歌手を2019年6月分まで紹介したのですが、ではその後どうなっているのかをまとめてみました。

f:id:face_urbansoul:20200424071631j:plain

女性歌手より男性歌手が多い傾向は変わらず、そして今年に入ってからは男性アイドルの占有率が急上昇しています。これはSixTONESSnow Manというジャニーズ事務所所属歌手の2組、さらにはJO1がデビューしたことにより、シングルCD表題曲やカップリング曲が上昇。上で述べた加算条件において複数の曲名が入っていてもすべて対象とあることから、ひとつのツイートに推しの歌手名とCD収録曲名のすべてを記載するファンが多いことが、とりわけファンが積極的に行っているTwitter活動から察することが出来ます。

アイドルやK-Popアクト、アニメ系やLDHグループ等がTwitter指標を徐々に占拠するようになったことで、個人的に強い疑問が浮かんでいます。

f:id:face_urbansoul:20200424072216j:plain

f:id:face_urbansoul:20200424072225j:plain

f:id:face_urbansoul:20200424072432j:plain

f:id:face_urbansoul:20200424072233j:plain

Twitter指標の上位陣から、Snow Man「D.D.」(Twitter1位 総合19位)、SixTONES「Imitation Rain」(Twitter3位 総合26位)、『あんさんぶるスターズ!!』内ユニット、√AtoZによる「デートプランA to Z」(Twitter7位 総合28位)およびJO1「無限大」(Twitter9位 総合68位)の最新4月27日付ソングスチャートのCHART insightをチェックすると、チャート構成比に占めるTwitterの占有率がいずれも6割を超えています。たとえばSnow Man「D.D.」はおよそ7割を占めるTwitter指標だけで1800ポイント以上を獲得しており、男性アイドルの場合はシングルCDセールスおよびルックアップ指標が加算されないカップリング曲がTwitter指標だけで50位以内に登場することも目立っているのです。

Twitter指標の導入理由については、チャート・ディレクターを務める礒崎誠二氏が述べており、先に貼付したブログエントリーにて紹介しています。たしかにTwitter指標が"楽曲の話題性を図る指標という位置付け"であるとすれば、星野源「うちで踊ろう」がチャートインしたのはビルボードジャパンの考えが的確に反映されたゆえと言えるでしょう。下記は最新週における「うちで踊ろう」のCHART insight。

f:id:face_urbansoul:20200424073531j:plain

「うちで躍ろう」について星野源さんファンがどれだけ積極的につぶやいているかは解りかねますが、現在Twitter指標で20位以内に入っているものの大半はアイドル等所有指標に長けた歌手であり、彼らのファンがTwitter活動を積極的に、時に活動名を付けるなどして行っていることが散見され、さらにはその例となる活動をファン同士で共有する際に敢えてその歌手名を伏せる等して例示した曲をカウントさせないやり方を採っているのを見ると尚の事、Twitterは曲の話題性を図る指標とは言い難いと思うのですが如何でしょうか。

 

とはいえ難しいのは、Twitter指標をソングスチャートの集計対象から外して米ビルボードのSocial 50(歌手名がつぶやかれた回数に伴うチャート)のように別途用意するとなれば、先述した星野源「うちで踊ろう」や、サブスク解禁等よりも前にラジオ番組がきっかけで再浮上したaiko「カブトムシ」(今週デジタル解禁したaiko、既にビルボードジャパンソングスチャートで「カブトムシ」が再浮上している理由は(2月28日付)参照)のような、実際にSNSや社会で話題になった曲が反映されにくくなってしまうということ。ただ、現状のTwitter指標が総合ソングスチャート、いわば社会的なヒット曲と乖離してきたり、音源が未だ解禁されなくとも新曲のタイトルが発表されただけでランクインするという"曲を誰も見聞きしていないのにランクインする矛盾を孕んでいる"ことも踏まえれば、Twitter指標を見直すことは必須だと思うのです。

思いつく限りでは、シングルCDセールスのように【一定数を上回った場合係数をかける】ことや、【チャート構成比におけるTwitter指標を最大5割とする】、もしくは【音源がどこにも解禁されていない場合はチャートに登場させない】などがあります。ビルボードジャパンには一度議論のテーブルを用意してほしいと強く願います。