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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

瑛人「香水」がさらなるヒットのフェーズに入るために必要なアプローチを考える

前週発表の5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートで5位に急伸した瑛人「香水」について、インディペンデント歌手の配信を支えるTuneCore Japanの紹介を軸に記載しました。

明後日の最新チャートでは「香水」のさらなる躍進が予想されます。そもそも「香水」は『人気の発端は演奏動画だったが、現在TikTokでは様々なタイプの動画が増え始め、汎用性の高いBGMとしてもユーザーたちに愛されている』として、5月3日までを集計期間とするTikTokソングスチャートで15位に入り、初のトップ20入りを果たしています(『』は下記記事より)。次週は間違いなく伸びることでしょう。

TikTokのヒットはサブスクの再生回数を基とするストリーミング、およひ動画再生といった接触指標群に波及します。そのストリーミングでは次回5月18日付ビルボードジャパンソングスチャートの途中経過において、Official髭男dismを抑えて首位となっています。このまま同指標を制すれば3ヶ月ぶりに首位が入れ替わります。

総合では、YOASOBI「夜に駆ける」が平均すると5週続けて前週比120%前後での伸びをキープした一方、瑛人「香水」は前週が同284.0%の急伸を果たしています。次週はこの数値まではいかなくとも、「夜に駆ける」を超えるポイント前週比になることは間違いないでしょう。

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さて、ここから先は今後の話。ストリーミングでのヒットが総合チャートで大ヒットする兆しが徐々に生まれてきている印象がありますが、では実際にヒットに至るためにさらに必要なものは何か…それを上記CHART insightから察することが出来ます。

 

ひとつはラジオエアプレイ。CHART insightでは黄緑の折れ線グラフで示される指標であり、全国32のFMおよびAM局のオンエア回数を基にエリア別の人口や聴取率を加味して出される指標ですが、瑛人「香水」は同指標で未だ300位以内に入ったことがありません。YOASOBI「夜に駆ける」は300位のラインを行ったり来たりしています。他方、2週連続で総合ソングスチャートトップ10入りを果たしたヨルシカ「花に亡霊」は、最新週においてラジオエアプレイを制しています。

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ラジオエアプレイで上昇しやすい曲として、洋楽においては新作の期待値が高い歌手のニューアルバムからのリードトラックが該当するでしょう。邦楽においても同様ですが、その他期待の新人がラジオ局の後押しを受けてというパターンが多い気がします。ヘビーローテーションを設けている局の選曲基準もそこにあるように思いますし、新曲はいち早くオンエアする傾向がある一方で他指標よりも早く失速するのも特徴と言えます。

ヨルシカもYOASOBIも、かなりざっくりとした見方ですがネット発の歌手という位置付けでは同じでしょう。その両者でラジオエアプレイに大きな差が生じているのはヨルシカが数枚アルバムをリリースしたことがある一方YOASOBIにはないという実績の差があるのかもしれません。さらに、ヘビーローテーションの設定にはレコード会社や芸能事務所の働きかけがゼロではないと思われ(サンプル盤の発送等もその一環でしょう)、その働きかけの大小がラジオエアプレイに反映されるのではないかと考えます。その点において、冒頭で申し上げたTuneCore Japanのインディペンデント歌手へのサポート内容(→こちら)にはラジオ局向けの対策に関する文言が見当たりません。

ただ、ラジオ局でかからないのは歌手側の問題とは言い切れません。働きかける側ではなく、ラジオ局自体に現在そして未来の流行を発信するという自負や責任があるかも気になるところです。リクエストは少なからず来ているでしょうし、またTikTokの流行も無視出来ない存在になっているだろうことを踏まえれば、ヒットの芽をいち早く察知し、率先してオンエアするという姿勢が求められているはずです。サブスクでヒットを続けるちゃんみな「Never Grow Up」(2019)のヒットの初期にラジオの存在があったと以前分析しており、尚の事そう思うのです。

たとえばこの週末発表されたJFL系5局(J-WAVEFM802ZIP-FM、FM NORTH WAVEおよびCROSS FM)の音楽チャートをみると、瑛人「香水」がランクインしているのはCROSS FMのみ(5月10日付で18位に初登場)。この点からも、ラジオ局の嗅覚に疑問を覚える自分がいます。

 

そしてもうひとつはカラオケ指標の上昇。新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の発令でカラオケ指標の集計が現在取り止められていますが、TikTokで演奏動画から火が付いたことを踏まえれば、カラオケへの自粛傾向が弱まれば歌う人が徐々に増えるものと考えられます。しかし5月10日現在、DAM、そしてJOYSOUND共に瑛人「香水」は登場しておらず、現状のままでは集計が再開されたとしてカラオケ指標を獲得することが出来ないのです。

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もしかしたら既に作成中なのかもしれませんが、これもラジオエアプレイ指標同様、DAMおよびJOYSOUND側がいち早く流行を察知することを願います。TuneCore Japanのカラオケへの取組を調べると昨年春のこの記事が出てきましたが、事前募集されたミュージックビデオの中から厳選しJOYSOUNDのみで配信という状況であり、充実しているとは言い難いというのが私見です。

 

 

インディペンデント歌手においては、サブスクやダウンロードといった配信についてはTuneCore Japanの存在が非常に大きいということを先週お伝えしました。またYouTubeおよびGYAO!の再生回数を基とする動画再生指標においては、ミュージックビデオの制作というハードルはあれど、誰でも比較的容易にアップしやすいことも解っています。TuneCore JapanにはYouTubeコンテンツ収益化サービス(→こちら)もあり、サポート体制も整っています。しかし、一方でラジオやカラオケにおいてはハードルが高いのではないかというのが自分なりの結論です。レコード会社に属する歌手の場合、メジャーとインディの差は宣伝力やその予算と言われていますが、レコード会社に属さないインディペンデント歌手側は尚の事、ラジオやカラオケへのアプローチ自体が難しいのではないでしょうか。インディペンデント歌手のアプローチの難しさ、しかし一方ではTikTokやサブスクのヒットが増え総合ソングスチャートでも上がりやすくなっていること、SNSの普及で流行をより早く抑えないといけないこと等を踏まえれば、ラジオやカラオケは相手からのアプローチを待つのではなく自ら掴みに行き、なんならインディペンデント歌手とラジオもしくはカラオケとの橋渡しシステムを構築するくらいのことをしなければいけないのではないかとすら思うのです。