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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

5月18日付ビルボードジャパンソングスチャートでトップ3入りを果たした瑛人「香水」は、日本におけるリル・ナズ・X「Old Town Road」ではないか

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を、ソングスチャート中心に紹介します。

5月4~10日を集計期間とする5月18日付ビルボードジャパンソングスチャート。Official髭男dism「I LOVE...」が2週連続、通算7週目の首位を獲得しました。

ロングヒット中の曲のポイント前週比はその大半が9割台となっており、緊急事態宣言による店舗閉鎖や自粛等の影響が出ている印象があります。そんな中で勢いのあるのがYOASOBI「夜に駆ける」、そして瑛人「香水」。

前週はじめてトップ10入りを果たした瑛人「香水」は今週遂に、サブスクの再生回数を基とするストリーミング指標で「I LOVE…」を破り同指標を制覇。総合でも3位につけました。

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昨年4月リリースの曲が総合およびチャートを構成する指標群で300位以内に初登場したのはわずか2週前のこと。そこからの急伸は誰が想像出来たことでしょう。

瑛人「香水」の配信に携わったTuneCore Japanについては、前週のブログエントリーにて紹介しています。

インディペンデント歌手が、レコード会社に所属する歌手とデジタルの場で対等に渡り合えることを、TuneCore Japanそして瑛人「香水」が証明してみせたように思います。

 

さて、TikTok初のヒット、そして猛スピードでの上昇…これらから思い出したのが、昨年米ビルボードソングスチャートで史上最多となる19週ものナンバーワンを記録したリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」。この曲もTikTokの流行から火が付きました。

無名のラッパーにすぎないリル・ナズ・Xが発表した「Old Town Road」は、当然ながらリリース後すぐにチャートインすることはなかったが、その間に彼は同曲を宣伝するためのインターネットミームを用意し始めていた。ここで興味深いのが、かつて彼はTwitterでニッキー・ミナージュのファンアカウントを運営していた、ということ。つまり、彼はその頃にいくつものバイラルツイートを作成していた経験から、ソーシャルメディアでバズを起こす術を心得ていたのだ。

こうした仕込みが結実したのか、2019年2月頃から「Old Town Road」は動画投稿アプリ・TikTokでバズを起こす。同曲に合わせてカウボーイ/カウガールに扮する「Yeehaw Challenge」が次々と投稿されたことによって、「Old Town Road」はストリーミングでの再生回数を一気に増やし、さらには次々に投下される動画が手伝って、「Old Town Road」=カントリートラップというイメージも定着していくのだ。

リル・ナズ・Xは、なぜブレイクを果たした? 「Old Town Road」全米17週連続1位の背景 - Real Sound|リアルサウンド(2019年8月12日付)より

リル・ナズ・X並みに瑛人さんがバズを積極的に起こしていたとは、瑛人さんのTwitterでのリアクションを見る限りでは考えにくいのですが、TikTokがヒットの火付け役となったのは確かであり、そこから接触指標群(3つの指標から成る米ビルボードソングスチャートではサブスクや動画の再生回数に基づくストリーミング指標、8つから成るビルボードジャパンソングスチャートではストリーミングおよび動画再生指標)に真っ先に波及。「Old Town Road」は昨年3月16日付で83位に初登場を果たすと、51→32→15位と上昇し、登場5週目となる昨年4月13日付で早くも首位の座に就いたのです。登場3週目から首位獲得に至るまでずっと、ストリーミングで最も大きく上昇した曲と紹介されていたことから、TikTokがサブスクや動画再生に大きく飛び火したのは間違いありません。さらに首位獲得2週目(昨年4月20日付)にはビリー・レイ・サイラス客演版が大きく加算され、ストリーミングで1億4300万という新記録を樹立(同日付チャート解説はこちら)。先述した19週首位獲得の足がかりをつかんだのです。

これまで一度も米ビルボードソングスチャートでトップ10入りしたことのない歌手が5週という短さで首位に至るのは極めて珍しかったのですが、このリル・ナズ・Xの勢いと瑛人「香水」は同じ動きを示している気がするのです。ちなみに今年米ビルボードソングスチャートで初めて首位を獲得し、11週もの長期政権を樹立したロディ・リッチ「The Box」も、登場5週目となる1月18日付で初の頂点に立っており、TikTokが人気のきっかけだったという共通点があります。

4月初めにReal Soundにアップされたノイ村さんの記事ではミーガン・ジー・スタリオン「Savage」も取り上げられています(なお、「Savage」は今週登場8週目にして2位に上昇)。TikTokの人気がかなり早い段階で総合チャートに反映されロングヒットに至るという状況は、今後ますます増えていくことでしょう。そしてその動きが瑛人「香水」によって日本でも生まれつつあると強く実感出来ました。

 

リル・ナズ・Xは「Old Town Road」がブレイクの兆しを見せた3月にコロムビア・レコードと契約しており、瑛人さんも今回のブレイクを機にレコード会社に所属する可能性があるかもしれません。そうなると月曜のブログエントリーで取り上げた、「香水」がさらなるブレイクを果たすために必要なラジオエアプレイとカラオケ指標の増強について、そのレコード会社で戦略を立てることになるでしょう。

 

TikTok経由でのヒットにより、新人やインディペンデント歌手が大ブレイクを果たすまでのスピードはかなり短くなりました。それにより、レコード会社が原石を見つけ契約することも、ラジオ局やカラオケ業者がヒットの兆しを察知し自ら積極的に発信する姿勢も、テレビの音楽番組がいち早くフックアップすることもまた、一層のスピードアップが求められていくことでしょう。無論、チャートを分析する者にとっても同様であり、アンテナの感度を高めねばと感じた次弟。瑛人「香水」の急伸は誰も想像出来なかったかもしれませんが、これからの時代はこの動きが当たり前になっていくのだという確信を抱いています。