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青森県在住。毎週日曜日17時から、FMアップルウェーブ発の番組の一員として参加。音楽・ラジオ好きによる"日々の音"やメディアの話

未だにロングヒットを続けるエド・シーラン「Shape Of You」から、日本の音楽環境を考える

リリースから3年半が経過しようとしている曲が、今も高い人気を誇っています。

2017年1月6日にリリースされ同年の米ビルボード年間ソングスチャートを制覇、同月末に発表されたミュージックビデオの再生回数がもうすぐ48億回に届くというモンスターヒット、エド・シーラン「Shape Of You」。ビルボードジャパンソングスチャートでも強く、最新5月25日付ソングスチャート(→こちら)では44位にランクイン。年間ソングスチャートでも2位(2017年)→14位(2018年)→27位(2019年)と3年連続でランクインしているのです。この1年強でのビルボードジャパンソングスチャートにおける推移(CHART insight)は下記に。

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この「Shape Of You」については1年前、ロングヒットの理由を自分なりに分析しています。掲載時までのCHART insightもそちらに掲載しています。

「Shape Of You」は徐々に所有指標が低下し、サブスクの再生回数に基づくストリーミング、および動画再生という接触指標群でほとんどのポイントを稼ぐ形になってきましたが、そのストリーミング指標で昨年度末から加算されるようになったSpotifyをみると、サービスを展開する国々で最近最も順位が高いのは日本なのです。こちらのサイトから、”Weekly”および”Positions”(週間順位)をクリックし、下にスクロールすると最新の国別順位が登場するのですが、5月14日までの1週間をみると日本は唯一100位以内にランクイン。最新週では香港が突如7位に浮上しているのですが、高値安定しているのは日本であることに間違いありません。

 

1年前、「Shape Of You」のヒットの要因が4つあるのではないかと書きました。

① ミュージックビデオが面白く、再生回数を増やしている

② ストリーミングのプレイリストに多数引用されている

③ 曲調がジャンルレスであり使い勝手が好い

④ 日本のソングスチャートにはアメリカにおける”消える”ルールが存在せず、ヒットが可視化されている

”エド・シーラン「Shape Of You」はどこでそんなに聴かれているのか問題”に対する自分なりの回答(2019年5月26日付)より

しかし、先に紹介したSpotifyの国別順位の表を見ると、日本の状況が”異質”であることが判ります。

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2箇所の赤線はいずれも日本(JP)の週間順位。上はリリース日からの、下は2017年8月25日からの1週間を集計期間としていますが、他国ではリリース当初から大ヒットしていたのに対し日本でのヒットは極めて遅いのです。決して日本のSpotifyでの解禁が遅れたわけではなく(こちらがその証明に)、同年夏クールの連続ドラマ『僕たちがやりました』(2017 関西テレビ/フジテレビ)の挿入歌として流れ始めたことで認知度を高めたということが想像出来ます。

(ただ、先述したようにSpotifyビルボードジャパンソングスチャートで集計に加わったのが昨年度末からであること、また「Shape Of You」のストリーミング指標をみると立ち上がりは遅いものの2017年2月13日付で既に8位に上昇していることから、Spotifyが特段動きが遅いだけだったのかもしれません。)

 

「Shape Of You」は様々な歌手にカバーされたり、エド・シーランがONE OK ROCKのライブに参加し同曲を共演したことが話題となり、ロングヒットに至ったと考えられます。

さらにはCreepy Nutsがラジオ番組のネタコーナーにこの曲を使っていることも影響しているのかもしれません。

 

世界中でチャートを席巻しているときには日本でそこまでヒットに至らず(もしくはヒットしてもラジオ等限定的なため世間一般の認知度は高くはなく)、ドラマに使われることによって遅れて日本でヒットしロングヒットに至るケース…最近では『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』(2020 日本テレビ)に起用されたビリー・アイリッシュ「Bad Guy」が該当するはずです。

ドラマのみならずグラミー賞で主要4部門を独占したことも、ビルボードジャパンソングスチャートにおいて洋楽が37週ぶりにトップ10入りを果たした原動力となったわけですが。とはいえ、洋楽が広く日本で浸透するタイミングがドラマタイアップありきと言えるかもしれず、さらにタイアップに起用される曲がリリースから時間が経ってある程度認知されている曲であることに疑問を抱くのは自分だけでしょうか。良い曲が浸透するに越したことはなく、また一度火が付けば先述した4条件も相俟ってロングヒットに至れるわけですが、しかしその起爆剤がないと厳しいという事態は考えさせられるものがあります。

 

「Shape Of You」がロングヒットに至った要因を考えるブログエントリーをアップしてからほぼ1年ですが、未だヒットを続けています。

おそらくこの「Shape Of You」、④で紹介したリカレントルールがビルボードジャパンソングスチャートに用いられない限り、まだまだヒットを続けることでしょう。では仮に「Shape Of You」の勢いを阻止したいと考えるならば、必要なのは「Shape Of You」を上回る大ヒット/ロングヒット作品を生んで「Shape Of You」をチャートから押し出すこと、「Shape Of You」への興味を減らしていくことではないでしょうか。極めて難しいことは承知ですが、そのためにはストリーミングと動画再生という2つをきちんと解禁(後者においてはフル尺で掲載)し、「Shape Of You」と同じスタートラインに立つことが大前提となることは間違いありません。

”エド・シーラン「Shape Of You」はどこでそんなに聴かれているのか問題”に対する自分なりの回答(2019年5月26日付)より

大物歌手が未だにサブスクを解禁せず、またミュージックビデオは短尺版が多かったりもしくはフルバージョンにしても期間限定だったりという状況では、「Shape Of You」のヒットはまだまだ続くことでしょう。無論「Shape Of You」がヒットしているのは好いことですが、その背景を考えるとやはり日本の音楽環境の改善、意識改革は必須だと思うのです。