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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

「夜に駆ける」「香水」が他の動画発ヒット曲よりステップアップ出来た理由は? 6月29日付ビルボードジャパンソングスチャートから考える

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

6月15~21日を集計期間とする6月29日付ビルボードジャパンソングスチャート、前週首位のKing & Prince「Mazy Night」は5位に後退、KinKi Kids「KANZAI BOYA」がシングルCDセールスを武器に総合チャートを制しました。

「KANZAI BOYA」はショートバージョンでもミュージックビデオが公開されておらず、ゆえにデジタル指標群(ダウンロード、ストリーミングおよび動画再生)は未加算となっていますが、シングルCDセールスおよびTwitter指標を制覇。他方、ルックアップは2位にとどまり、この指標はKing & Prince「Mazy Night」が制しています。「Mazy Night」のシングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比はデビュー曲「シンデレラガール」(2018)に次ぐ16.2%。ロングヒットに至れるか注目していきましょう。

 

前週2位のYOASOBI「夜に駆ける」、3位の瑛人「香水」は共に順位をキープ。

サブスクの再生回数に基づくストリーミング、および動画再生という接触指標群が強いことが高水準を維持出来る理由ですが、たとえばこの2曲同様に接触指標群で高い、もしくは安定した人気を誇る曲が総合チャートでは思うほど伸びないことが個人的には気になるのです。たとえば。

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yama「春を告げる」は今週トップ10落ち。ポイントも100位以内に登場して以来、はじめて前週を割り込んでいます。また。

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最新チャートの集計期間である19日金曜に『ミュージックステーション』で披露されたRin音「snow jam」はポイント前週比116.0%となりながら、大きく上昇することが出来ませんでした。

Rin音さんにおいてはアルバム『swipe sheep』が6月10日に発売されたことで、ダウンロードを曲単位ではなくアルバム全体で行おうという流れがあったのかもしれません。しかしながらテレビ出演もあり、もっと伸びてもよかったのではないかと思うのです。チャート構成比をみて気になる点が浮かび上がり調べてみて、これらの曲の”弱点”が判明したように思います。

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上記は「snow jam」のチャート分析(ビルボードジャパンのCHART insight)から、総合チャート(黒の折れ線で表示)およびラジオエアプレイ指標(緑の折れ線で表示)の順位だけを抽出したものですが、ラジオエアプレイがこれまで一度として300位以内に入っていないのです。冬の曲ゆえ時期的に敬遠された可能性もあるかもしれませんが、接触指標群のストリーミングと大差が生じていることが、さらなる浮上に至れなかった要因ではないかと思うのです。これは上記「春を告げる」も同様で、ラジオエアプレイは前週まで4週連続で300位圏内(100位未満)に入りながら今週陥落したため、同指標でポイントを獲得することが出来ませんでした。

 

実はこのラジオエアプレイ、「夜に駆ける」や「香水」においてもチャート登場後しばらくは非常に弱い指標でした。5月11日付ビルボードジャパンソングスチャートを踏まえ、さらなるステップアップにはラジオエアプレイの上昇が必須であるとのブログエントリーを記しています。

この段階で2曲とも既に総合でトップ10入りを果たしていたのですが、翌週以降ラジオエアプレイで火が付き、その勢いと比例して総合チャートでも大ヒットに至っていることが、下記CHART insightからも解ります。

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他方、「春を告げる」そして「snow jam」はラジオが未だ強くない状況が続いており、スマッシュヒットから大ヒットへの移行が出来ていないと言えるでしょう。この2曲に限らず、動画発のヒット曲がさらなるステップアップに至れないのはおそらく、このラジオエアプレイの低さが要因だと思うのです。

 

ビルボードジャパンを構成する指標は所有(シングルCDセールスやダウンロー)と接触(ストリーミングや動画再生)に分けられ、ラジオエアプレイは接触指標の一種なのですが、受け手は聴取する放送局や番組を選ぶことは出来ても、聴く曲は選べません。ストリーミングや動画再生が能動的に曲を選べるのとは対照的に、ラジオエアプレイは受動的なのです。尤もストリーミング等でも、プレイリストを選んで聴いたところ予期せずその曲に触れたという受動的なたどり着き方は発生しますが、ラジオについては基本受動的といえます。このラジオ特有の特徴により、曲を知らなかった不特定多数の方に予期せずリーチさせることが出来るのです。以前と比べてラジオエアプレイ指標のウェイトは下がった模様ですが、それでも唯一無二の受動的接触指標にあたるこのラジオエアプレイは重要な役割を持っているものと捉えています。

 

「春を告げる」や「snow jam」等は、若年層を中心に既に高い支持を集めているものと思われ、次週からの集計再開がアナウンスされたカラオケ指標でも好位置での登場が予想されますが、総合的なチャート上昇のためにはライト層を”作る”ことが問われているのではないでしょうか。とはいえ、先のブログエントリーで述べたようにインディ等の歌手がラジオ局に働きかけることには限界があると思われますので、ラジオ局側の能動的な意識の変化も必要ではないかとあらためて感じています。