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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

King Gnu、ヒゲダン、Uru、milet、藤井風…ロングヒットするアルバムの共通項を探る

最新7月6日付ビルボードジャパンアルバムチャート、前週の1位と2位獲得作品に大きな差が生じてしまいました。

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前週、氷川きよし『Papillon(パピヨン) - ボヘミアン・ラプソディ-』がCDセールス首位ながらデジタル未解禁が響き、総合での首位の座を逃したことはお伝えしましたが、今週はCDセールス10位、ルックアップが100位未満(300位圏内)と落ち込み23位に急落しています。演歌の販売手法がCDセールス偏重であること(その手法は今作にも踏襲されたものと考えています)が影響を与えたであろうこのチャートアクション、至極勿体ない動きだと思います。

 

最新アルバムチャートではトップ10内に5作品が初登場。言い換えれば先述のmilet『eyes』ほか4作品がトップ10内にとどまったということに。そして留まった作品には一定の傾向があると感じ、今回のエントリーに記載します。

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個人的には藤井風『HELP EVER HURT NEVER』のトップ10返り咲きに、彼がブレイクしていることの手応えを感じています。

さて、トップ10内に留まった作品には2つの特徴があります。ひとつめは、CDセールスの加算3週目までに勢いがキープされていること。邦楽は基本的にCDリリースの3週(17日)後にレンタル解禁となり、3週目のチャートにはルックアップ(パソコン等に取り込んだ際、インターネットデータベースにアクセスする回数)がレンタル解禁直後の2日分、翌週からは丸一週間分が加算されます。ルックアップはアルバムチャートにおける唯一の接触指標でありレンタルの人気が反映されますが、言い換えればレンタル解禁までに所有指標主体にヒットが続いていれば、後にレンタルによるルックアップが加算されることでロングヒットに繋がりやすいのです。先述したmilet『eyes』は今週レンタル2日分のルックアップを反映し同指標が上昇していることから、次週以降の安定が予想されます。

 

今週トップ10内に残っている作品はいずれも、ひとつの指標だけに特化しているわけではないというのがふたつめの特徴です。リリースから間もない作品はルックアップがそこまで大きくないのですが(しかし藤井風『HELP EVER HURT NEVER』に関してはレンタル店の在庫が過少と感じるゆえ、思ったほどレンタルされていない気がします)、徐々にチャート構成比に占めるルックアップの割合が上昇するという形。Uru『オリオンブルー』は、ベストアルバム『YOUR STORY』が好調なJUJUさんの動きをなぞっていると言えます(リリースは『オリオンブルー』のほうが早いのですが)。

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一方で、ロングヒットを続けるKing Gnu『CEREMONY』やOfficial髭男dism『Traveler』は3つの指標がバランス良く配置されています。ルックアップの好調もさることながら、これらの大ヒット作品は、新曲をリリースすることで旧作に光が当たったり、アルバム収録曲がタイアップに起用されるもしくはテレビでパフォーマンスされることで、所有指標が刺激されています。特にテレビパフォーマンスにより、観た方が即座にデジタルで購入する流れも生まれることから、ダウンロード指標が高くなる傾向があると言えます。

今年度上半期アルバムチャートでは『CEREMONY』『Traveler』がワンツーフィニッシュを飾っていることもあり、今のチャートアクションの理想形はCDセールス、ダウンロードおよびルックアップという3つの指標のバランスの良さではないかと考えます。

 

なお、ロングヒットするアルバムのチャート構成比には例外もあります。

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浜崎あゆみさんのベストアルバム『A COMPLETE~ALL SINGLES~』はチャート構成比の9割程度をダウンロードが占拠。昨年夏の関連本、およびドラマ化により再度チャートを賑わせていますが、元来このアルバムが安価で売られていることが興隆の要因。ブログ執筆現在、44曲入り1000円で発売されており、その手軽さがヒットにつながった形です。

ロングヒット作品のチャート構成比は是非、CHART insightで確かめてみてください。

 

ちなみに、アルバムチャートの構成指標は日本とアメリカで異なります。米ビルボードアルバムチャートではルックアップがない代わりに、曲単位での購入やサブスクでの収録曲の再生について、購入曲数や再生回数(有料サービスと無料とで異なる)が一定数に達すれば1ユニットとなり、CDや(アルバム単位での)ダウンロードの売上と合算したユニット単位で算出します。今年に入り、YouTube公式動画の再生回数も加わることになりました。

では日本でもこの図式を導入するのか…ビルボードジャパンがTwitterにて、”#ビルボードポッドキャスト”を付けて質問を募集する企画を実施していたので投げかけてみたところ、ビルボードジャパンの見解が先週のポッドキャストにて発信されています。質問は以下に。

回答は、カラオケ指標の再開も発表するとアナウンスした先週のポッドキャストで聞くことが出来ます。その部分を書き起こしさせていただきます。

現状その可能性はないとお伝えしておきたいと思います。やりたいなという思いはあったりはするんですが、現状可能性としてはないかな、という。我々、いろんなデータを集めてチャートを作っているんですけれども、そのいただいているデータからこのユニットを察するというのは、結構いろんな類推をしないといけないんですね。推定というか。で、一回の推定ならまだしも、推定した数値を元にさらに推定するみたいな、二段階の推定というのがユニットを出すには必要でして、今現状いただいているデータから出すと。この推定に推定を重ねるというのはデータとして有効なのかというのはちょっと疑問が残るところですので。ある程度正確なデータとしてお出ししたいのでちょっと現状アルバムに関するチャートポリシーを変更するっていう可能性は現状ないということをお答えさせていただければ、というふうに思います。

マニアックな質問でしたが、回答をくださったことに感謝申し上げます。二段階の推測に強く納得した次第です。

仮にデータが正確さを増し、ユニット換算をビルボードジャパンでも採用するとなれば、今日紹介したロングヒット作品はさらに順位が安定することでしょう。