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チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

これからはインストゥルメンタルバージョンの時代? インスト版のリリースが増えていくだろう理由を考える

Official髭男dismが昨年の大ヒットアルバム『Traveler』のインストゥルメンタルバージョン(以下、インスト版)を配信リリースしました。

このリリースから半日後、強力なタイアップ曲3曲を含む『HELLO EP』を8月5日にリリースすることをアナウンスしています。

次作の発売までにインスト版を聴いて待っていてほしいという思いもリリースの目的としてあるのかもしれませんが、これからはインスト版の登場がムーブメントになっていくではないか?と個人的には感じています。

 

最近のインスト版のリリースは『Traveler』に限りません。さかいゆうさんが今月リリースしたシングル「Soul Rain」には、3月発売のアルバム『Touch The World』全曲のインスト版が同梱されています。

また4月にアルバム『シン・スチャダラ大作戦』をリリースしたスチャダラパーは、3種類全てに代表曲のインスト版を同梱。和楽器、オルゴールおよびボサノヴァバージョンにアレンジが施されており上記2作品とは傾向が異なりますが、ファンにはたまらない作品かもしれません。

 

このインスト版のリリースからは、歌手側のこだわりが感じられます。

『楽器のプレイを楽しむもよし!』といえば、近年は『関ジャム 完全燃SHOW』の影響で楽器のフレーズにスポットが当たることが増えています。Official髭男dism「Pretender」は昨年の年間ベストに選出され、最近の放送ではギタープレイの格好良さも紹介されています。曲を多面的に聴いて楽しむという見方がこの番組で生まれていることから、インスト版の存在はそのこだわりをさらに楽しむ上で有効ではないでしょうか。「Pretender」をはじめとする『Traveler』のこだわりは、インスト版リリースのタイミングで音楽コンシェルジュのふくりゅうさんも解説されています。

 

また、『歌うもよし!』といえば、歌ってみた動画の人気が浮かびます。昨日、ブログ【選択の痕跡】のしょーごさんが”なかなかない”と言っていた(ことを機に互いの見方を意見交換したのですが)、様々な「夜に駆ける」のカバー動画をYOASOBI自身が紹介するというのが面白かったですね。

個人的には香取慎吾さんの歌声の器用さに注目したいところ。『20200101』でも感じていたことですが、さらに強固になりました。

歌ってみた動画といえば、最新のビルボードジャパンソングスチャートでシングルCDセールスが加算され4位に上昇したあいみょん「裸の心」については、TikTok等での歌ってみたキャンペーンの開催がCDリリースまでの熱の持続に繋がったものと考えています。キャンペーンの目的もあってか、「裸の心」のインスト版も配信されています。

歌ってみた動画人気の高まり、”歌ってみた文化”の確立と言っても過言ではない動きは瑛人「香水」の大ヒットにも表れています。このように、関ジャム 完全燃SHOW』がもたらした曲の多面的な見方、そして歌ってみた文化…このふたつの醸成が、インスト版のニーズを高めているものと考えます。

 

Official髭男dismについてはさらに、今年2月にリリースされたライブアルバムが好調に推移しており、こちらにも注目したいところ。

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ライブアルバムはオリジナルアルバム以上にコアなファン向けという特性がありますが、注目は上記チャート推移(CHART insight)においてオレンジの折れ線グラフで表示されるルックアップの動向。CDセールス加算2週目までは、パソコン等にCDを取り込んだ際にインターネットデータベースにアクセスされる回数を示すルックアップにレンタル分が加算されず、レンタル解禁に伴い3週目(解禁から2日分が加算)にルックアップが上昇することは昨日のブログエントリーでも記載しました。その中で、Official髭男dismのライブアルバムはCDセールス加算3週目に急上昇し、以降最新週に至るまでルックアップは20位以内をキープしています。オリジナルアルバムもルックアップが強いことから合わせ借り(そのような言葉はないでしょうが)が行われているだろうことも考えられますが、彼らの演奏能力の高さや生声の素晴らしさを機にライブアルバムにたどり着いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。生の魅力を知るという意味では、ライブアルバムの人気もまた『関ジャム 完全燃SHOW』がもたらした曲の多面的な見方の高まりの結実と言え、インスト版の人気と幾分リンクする気がします。