イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

三浦春馬「Night Diver」は曲自体もさることながら、寄付という行動にも素晴らしさを感じる

あまりにも素晴らしかったので紹介します。

3連はサビの部分だけで用いられているゆえ、歌詞に従うならばよりループする感覚に陥るのです。この展開、本当に見事だと思います。

 

この曲、三浦春馬さんのセカンドシングルとして予定通り発売することになり安堵しましたが、この発表にはさらに嬉しくなりました。

「Night Diver」の売上の一部が、ラオスのラオ・フレンズ小児病院に寄付されることも発表された。寄付は三浦が毎年取り組んでいたチャリティイベント「Act Against AIDS」にて支援を続けていた認定NPO法人「フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN」を通じて行われる。

 

三浦春馬さんが参加していたAct Against AIDSは今月20日、四半世紀以上に渡る活動を終了しましたが、実はこの活動終了に違和感を覚えていた自分がいます。日本におけるAct Against AIDSの取組が成果を上げたのか、疑問に感じているためです。

Act Against AIDSHIVエイズの啓蒙運動であり、正しい知識を深め且つ行動を促すべく1993年から行われていましたが、HIV新規感染者数は2000年代後半まで増加、それも先進国の中では日本のみがという状況が続いていました。直近の2019年ではHIV新規感染者・エイズの新規患者ともに減少(前者は3年連続の減少)となりましたが、裏を返せば2016年までは増加するときもあったということになります。

 

Act Against AIDSが十分浸透していれば早々に減少に転じられたかは解りかねますが、しかし毎年12月1日に開催されるイベントは、年々その盛り上がりが聞こえにくくなったと感じています。桑田佳祐さんによる趣向を凝らしたライブが毎年メディアで取り上げられるものの、Act Against AIDSというイベント名は字幕処理で終わらせることが多かった印象が拭えません。これはメディアがAct Against AIDSの意義を軽視しているだろうこともさることながら、個人的には特定の芸能事務所が毎年主体となっていたことも原因ではないかと考えます。

 

さらには、正しい知識が深まらないために偏見が消えていないという、違和感というより不快感がくすぶっています。

アメリカでは4年前の事件を機に、男性同性愛者の献血についての見直しが議論され始めたと上記記事にはあります。記事の前年には『過去12カ月性行為を控えていた場合に限り、男性同性愛者も献血できる』ように改定されたものの未だ問題は残っています(『』内は上記記事より)。一方の日本では半年という期間が設定されていますが、たとえば異性間ならばひとりの方との性的接触は問題ないと読み取れる一方、男性同士の性的接触ならばひとりのパートナーだけでもアウトだというのは理解に苦しみます。

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7月24日21時の段階の表示をキャプチャしたのは、今後文言が変更されている可能性があるため(問題があれば削除いたします)。実際、2018年のHIV新規感染者のうち6分の1は異性間の性的接触が原因なのです。Act Against AIDSできちんとした知識を広く社会に身に着けさせることができたならば、同性愛者に厳しい差別的目線を与えかねない、それも公的機関が行う献血について、その可能者の範囲も、また文言も柔軟に変わっていったはずであり、日本におけるLGBTへの理解もはるかに進んだのではと思うのです。

(HIVエイズについてはこちらこちらの資料を参考にしています(リンク先はいずれもPDF)。)

 

減少しない新規感染者数、メディアの報じ方や特定の芸能事務所の域を超えないことによる啓蒙への疑問、そして献血等で差別が生まれかねない認識が残る現状…『「無知の状態からのエイズ啓発」において一定の成果をあげることができた』かもしれませんが、しかし『役割を終えさせていただきました』とAct Against AIDSが述べることには強く違和感を覚えるのです(『』内はAct Against AIDS活動終了につきまして - Act Against AIDS - エイズには「知る」ワクチンより)。

 

 

その状況下だからこそ、三浦春馬さんによる「Night Diver」の売上の一部が寄付に回ることを嬉しく思うのです。それもラオスの小児病院は、Act Against AIDSの寄付先としてホームページにも掲載されており尚の事。

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(Act Against AIDSのホームページが閉鎖される可能性を考慮し、キャプチャした次第です。問題があれば削除いたします。)

寄付が生前の三浦春馬さんによる意志かは解りかねますが、漏れ伝わってくる彼の人柄の素晴らしさを考慮すれば、きっとこの寄付を率先して行ったのではないか、そしてAct Against AIDSにも人一倍真摯に取り組まれていたのではと思うのです。また、Act Against AIDS的な取組を今後も続けないといけないと感じる方も芸能事務所の中にいらっしゃるのかもしれません。その意志が形となること、HIV新規感染者やエイズの新規患者を減らすべく動くことを願ってやみません。