face it

チャート愛好家。ビルボードジャパンや米ビルボードのソングスチャートなどを紹介します。

はじめに

(2020年9月8日更新)

ブログ【face it】担当のKeiです。チャート愛好家として、ビルボードジャパン最新チャートを様々な視点から分析し、記載しています。

お問い合わせやご意見、ご依頼などがございましたら、faceknk @ gmail.com宛にお願いいたします。もしくは、はてなユーザーの方は各エントリーにコメント出来ますので、よろしくお願いします。

 

外部メディアへの寄稿、および以前出演していたラジオ番組にて担当した音楽特集について一覧化しました。

 

2020年4月からは米ビルボード、およびビルボードジャパンのソングスチャートを紹介するポッドキャストBillboard Top Hits】も配信しています。

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Kanaria「KING」、Ado「うっせぇわ」…ボーカロイド関連作品の強さを支える指標とは

前週初めてビルボードジャパンソングスチャート100位以内に登場し、今週さらなる上昇を遂げた2曲。今後のブレイクの可能性を秘めたこれらの曲には、ある指標の急伸という共通点があります。

・Kanaria「KING」(11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート85→42位)

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・Ado「うっせぇわ」(11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート 74→58位)

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この2曲は共にボカロPによる作品。Ado「うっせぇわ」はsyudouさんがソングライトを手掛け、一方「KING」についてはKanariaさん自身がボカロPとして活動しています。

上記チャート推移(CHART insight)においては2曲ともに動画再生指標(赤の折れ線)が高く(「KING」4位、「うっせぇわ」7位)、他の指標も緩やかに上昇しはじめているのですが、特徴的なのは深い緑で表示されるカラオケ指標がここにきて上昇していること。「KING」は65→49位と推移、また「うっせぇわ」は(上記チャート推移からは分かりにくいものの)今週初めて300位以内に入り加点対象となっています。

 

 

 

今年のブレイク作品にはTuneCore Japan等の配信代行サービスを用いた曲が多いのですが、大ヒットに至るにはラジオエアプレイとカラオケ指標の拡充が大事ではないかということを、瑛人「香水」の首位獲得前のタイミングで指摘したことがあります。

一方でボーカロイド関連作品においてはこのカラオケが強いのが特徴と言えるかもしれません。バルーン「シャルル」がカラオケ指標を味方につけて長期エントリーを果たしているのは最も分かりやすい例でしょう。

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このボーカロイド文化の歴史を辿る上で、非常に参考になる記事がReal Soundで公開されたばかり。自分も以前担当していたラジオ番組でボーカロイドファンの大学生と話したことがあるのですが、彼ら世代にとっては小学生の頃からボーカロイド文化が当たり前のようにあったため、十年強で成熟し浸透したこの文化に幼少期から触れているならば間違いなく、新しい作品に触れることに積極的になったり名曲をそらで歌えるのだと納得するのです。

この文化がネット発ゆえ、我先に解禁しないと信頼失墜しかないとして通信カラオケ業者が積極的な解禁を行うのではないでしょうか。このことが、配信代行サービスを用いてヒットに至る曲が強くないカラオケ指標におけるボーカロイド作品の優位性と言えそうです。

 

ひとつだけ気掛かりなのは、カラオケ指標が再度集計取り止めとなる可能性。バルーン「シャルル」で明らかなように、カラオケ指標が今年一時期”断絶”という状況がありました。これはコロナ禍における緊急事態宣言発令を受けての措置でした。その時以上に新型コロナウィルスが流行する現在にあっては、いつ宣言が発令されるかが見えてきません。仮に宣言発令を受けてカラオケ指標が再度取り止めに至った場合、ボーカロイド楽曲はこの指標以外のポイントで補填しなければならず、ならばこの文化をボーカロイド好きな方以外にどう広めていくかが課題になるものと考えます。

Mステ恒例の”今年の1曲ランキング”は真の社会的ヒット曲を示している

昨日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日)にて、今年の1曲を街頭インタビューしたその結果が発表されました。いつ行われたや何名に聞いたのかがおそらくは不明であり信ぴょう性に疑問を感じる部分はあれど、この結果から世間一般に浸透したヒット曲が見えてくることから、実に興味深いアンケートだと毎年感じています。

 

今年の結果は以下の通り。

ミュージックステーション』みんなが選ぶ今年の1曲ランキング

1位 LiSA「紅蓮華」

2位 瑛人「香水」

3位 LiSA「炎」

4位 YOASOBI「夜に駆ける」

5位 NiziU「Make you happy」

6位 米津玄師「感電」

7位 Official髭男dism「I LOVE...」

8位 あいみょん「裸の心」

9位 嵐「カイト」

(下記はNHKYouTubeチャンネルで公開されたスペシャルムービー)

10位 DISH//「猫」

(下記はTHE FIRST TAKE ver.)

 

昨日のブログエントリーでは、2020年度のビルボードジャパンソングスチャートについて様々な定点観測を行った結果を発表しました。

ここから、週毎の1位獲得曲一覧表をあらためて表示すると。

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2020年度のビルボードジャパンソングスチャートで1位を獲得した曲は合計33曲ありますが、その中で『ミュージックステーション』ランキングに入った曲は5曲のみ。そしてその5曲と、Official髭男dism「Pretender」を除く27曲とは”首位獲得の翌週におけるポイント前週比が5割”というラインではっきりと分かれます。いや、27曲においては3割にも満たない曲がほとんどなのです。2位および3位獲得曲についても、今回の『ミュージックステーション』ランキングに入った曲のすべては翌週のポイント前週比が5割を上回っています。

(ただし嵐「カイト」のポイント前週比は22.3%ですが『ミュージックステーション』ランキングに入っています。これは嵐の活動休止前最後のシングルであること、昨年の『NHK紅白歌合戦』で披露され年初より注目されていたこと、米津玄師さんが提供したこと等の話題に伴う登場と言えるのではないでしょうか。)

DISH//「猫」についてはオリジナルバージョンがビルボードジャパンソングスチャートで最高9位、THE FIRST TAKE ver.が同11位となり、順位からはその強さが見えにくいかもしれません。しかし。

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仮にこの2バージョンを合算すれば19週もの間トップ10に在籍したことになります。また2バージョン共にストリーミングや動画再生といった接触指標群の強さが目立ち、これがポイントを長期に渡ってキープできる要因と言えます。

 

昨日のブログでは『トップ3入りした翌週のポイント前週比をみれば、先述したストリーミングに加えて動画再生やダウンロードといった指標群でトップ10入りした曲が高く推移していることが解ります』と書きました。『ミュージックステーション』におけるアンケート結果ではより世間一般に浸透したヒット曲が毎年トップ10内に登場しますが、ビルボードジャパンソングスチャート週間トップ3入りした作品ならびに「猫」の推移に照らし合わせると、今回のアンケートでのトップ10入り、ならびにチャートでのロングヒットしている曲の基準が、ダウンロードの強さもあれど【所有<接触】であることが見て取れます。

 

その一方では。

無論、このアンケートが最近のものであり、年度初めにリリースされた作品の印象度が最近の作品群に比べて高くないというのも影響しているかもしれません。しかしながら、CDセールスでミリオンを記録したとしても必ずしも浸透したと限らないことは先の表におけるポイント前週比から見えてきます。また、今年度最高となる初週CDセールスを「失恋、ありがとう」で記録したAKB48が今年の『NHK紅白歌合戦』に選ばれていないことからも明らかです(紅白選考についての私見以前記しています)。さらに、「Imitation Rain」「D.D.」はカラオケ指標の動向を踏まえるにライト層に浸透していないのではと以前指摘したのですが、そのことが今回のランキングである種証明されたと言えるかもしれません。

 

昨日今日のブログエントリーからは、接触指標群を充実させることが如何に大事かがよく解ります。これは来週金曜に発表されるビルボードジャパン年間ソングスチャートでも明白となることでしょう。

 

ちなみに、昨日のブログエントリーをTwitterで紹介した後にとあるやり取りがありました。ここから様々なことが見えてきたと思うゆえ、ここでスレッドの最初のツイートを紹介させていただきます。

日本の音楽業界全体が盛り上がるべく、サブスクやミュージックビデオのフルバージョンでの解禁がどの歌手においても必須になってほしいと強く願います。これは、その曲や歌手が世界から注目が集まった時にきちんと対応できる基礎にもなるものです。

2020年度ビルボードジャパンソングスチャートを”定点観測”…特筆すべきこととは

2020年度のビルボードジャパン各種チャート発表をちょうど1週間後に控えた今日は、ソングスチャートを様々な面から定点観測してみます。

 

今年は新型コロナウィルスに伴う緊急事態宣言の影響で、CDショップ等の自粛やCDリリースの延期もしくは中止という事態が発生。カラオケ指標は4月20日付~6月29日付の計11週もの間、集計を取り止めました。これらはソングスチャートの推移に影響を与えています。

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ソングスチャートの1位、10位および50位のポイントを定点観測したのが上記。カラオケ指標集計取り止め期間は多くの週で2万ポイントを下回りました。このグラフから1位を除いたものがこちら。

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カラオケ指標集計取り止め期間のポイント落ち込みが目立つものの、10位そして50位のポイントはこの一年で上昇していることが解ります。

 

では、ソングスチャートのポイント上昇(もしくは底上げ)にとりわけ寄与しているのはどの指標でしょうか。

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シングルCDセールス指標50位、およびダウンロード指標10位の今年度の推移をみると、双方とも緩やかに下降していることが解ります。その一方、ストリーミング再生回数は見事な右肩上がりとなっています。

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(ちなみに再生回数と記したのは、ストリーミング指標については再生回数がそのままポイントに落とし込まれるわけではないため。各サブスクサービスの有料会員による1再生と無料会員とのそれとでウェイト付けが異なります。)

ここ数週はLiSA「炎」のストリーミング再生回数が凄まじいのですが、一方で今年度最終週における10位の再生回数は最初の週の2.48倍、2年前に比べると実に6倍近くに達しています。8月17日付…それこそ米津玄師さんが『STRAY SHEEP』リリースのタイミングでサブスクを解禁し、アルバムの首位初登場に加えて様々な楽曲がソングスチャートで急伸を遂げた週以降は、10位の再生回数が1週を除いて400万台を超え、最新11月30日付に至っては過去最高となる470万台を叩き出しました。よって、ストリーミングの急伸がソングスチャートのポイント底上げに最も影響を与えているものと断言してよく、ここでのヒットが他指標にも波及しロングヒットに至るとも言えそうです。言い換えれば、サブスク未解禁や後回しという施策が如何にヒットの芽を育てられないかということも解ります。

 

今年度のソングスチャート、1位から3位までの曲を順位毎に一覧化してみると。

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トップ3入りした翌週のポイント前週比をみれば、先述したストリーミングに加えて動画再生やダウンロードといった指標群でトップ10入りした曲が高く推移していることが解ります。

その一方で、首位獲得曲における翌週のポイント前週比が2位および3位に比べて低く、如何にロングヒットに至れていないかもまた解ります。首位におけるあたかもとっかえひっかえ的なこの状況は、シングルCDセールスに長けながら他指標が振るわない(中にはデジタル自体解禁していないため加点できない)ためにCDセールス加算2週目に他指標が補填できず急落することの表れです。

日本の興行収入記録を塗りかえんとする映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の主題歌で、首位登場からわずか6週で年間ソングスチャートトップ10入りが見込まれるLiSA「炎」の初週CDセールスが6万5千枚であることを踏まえれば、(作品ではなく歌手の)コアなファンが主体となって購入され首位獲得の原動力となるCDセールスについては、現状30万と言われている係数適用の売上枚数を、極端に言えば10万に設定し直すことも議論していいかもしれません。首位獲得曲は翌週の推移を見て真の社会的なヒット曲かを判断することを以前から勧めていますが、そこまで意識してチャートをチェックする方が多いかは不明であり、ならば1週間のチャートのみでも真のヒット曲が解る仕組みを構築すべきだと考えます。

 

最後にTwitter指標の動向について。

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この2年間の毎月最終週のTwitter指標上位20曲について歌手名を記載し、またその歌手のジャンル毎に色付けをしています(なお、たとえばLiSA「炎」「紅蓮華」はアニメ主題歌ながら、歌手の元来のジャンルを踏まえ黄色では表示していない等、ジャンルの括り方は曖昧と思われておかしくないのですが)。これをみると、上位陣はこの2年の間にK-Popアクトや女性アイドルから日本の男性アイドル主体へと移行しています。

弊ブログのTwitter指標に関するエントリーは時折彼らの熱心なファンの方々に参照され、Twitter指標を盛り上げビルボードジャパンソングスチャートにランクインしようとする目的から共有される傾向があります。それ自体は嬉しいと思う一方、たとえば最新11月30日付のTwitter指標2位であるJO1「Shine A Light」は動画再生でも47位に入りながら総合100位には至れていません。おそらくは総合チャートのポイントが大きく底上げされたことにより、Twitter指標でいくらコアなファンが頑張ったとしても総合100位以内へのエントリーが難しくなったものと考えます。それこそ星野源「うちで踊ろう」級のバズがなければ厳しいのかもしれません。

 

 

ストリーミング指標がポイント上昇に大きく寄与し、トップ3獲得の翌週におけるポイント推移をみてもロングヒットの要になることがこの1年でさらにはっきりしたというのが、今回の定点観測の結論です。ビルボードジャパンの記事で数値化されることがほとんどない動画再生指標についても似た傾向があると言えるでしょう。これら接触指標群の充実が如何に重要かは幾度となく申し上げてきましたが、客観的なデータでよりはっきりと証明されたと捉えていいはずです。

優里「ドライフラワー」が初のトップ10入り…その原動力はカラオケ動画? 11月30日付ビルボードジャパンソングスチャートを掘り下げる

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。

11月16~22日を集計期間とする11月30日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)、LiSA「炎」が首位に返り咲きました。

前週はSixTONES「NEW ERA」に首位の座を奪われた「炎」が、通算5週目となる首位を獲得しています。各指標の動向は以下に。

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ポイント前週比は84.2%となりこれまでで最大の落ち込みとはなっていますが、所有指標の前週比が同水準以下なのに対しストリーミングは91.7%であり、やはりポイントのキープには接触指標の存在が欠かせないことが解ります。一方、わずか1週で首位のみならずトップ10入りを逃したSixTONES「NEW ERA」の、シングルCDセールス加算2週目におけるポイント前週比13.4%となっており、所属するジャニーズ事務所の歌手では平均的な数値となりました。ちなみにデビュー曲「Imitation Rain」は前週比18.2%、続く「NAVIGATOR」は同18.0%を記録しています。

 

 

今週特筆すべきは、総合チャートの振り返り記事でも紹介されている優里「ドライフラワー」。

前週のチャート、およびSpotifyデイリーチャートの動向を踏まえ、同曲については次なるブレイク候補として先週ブログに取り上げました。

ここからわずか1週で、同じく今月にブレイク候補として紹介した平井大「Stand by me, Stand by you.」(紹介エントリーはこちら)を上回り、一気にトップ10入りを果たした形です。

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ストリーミング指標における再生回数は前週比174.3%。前週は同185%と急上昇を遂げていますが、今回のトップ10入りの要因はストリーミングの急上昇のみにとどまりません。

注目すべきはカラオケ指標。今週56位に初登場を果たしていますが、この勢いには目を見張るものがあります。

優里さんは公式Youtubeチャンネル(→こちら)の他、”優里ちゃんねる【公式】”というチャンネルも設けています(→こちら)。こちらはいわゆるYouTuber的な要素が強いのですが、そのチャンネルで今週のチャート集計期間前半にアップされたのが上記の動画で、ブログ執筆段階で25万を超える再生回数を記録しています。元々TikTokで人気を博した優里さんですが、このカラオケ動画がTikTokYouTubeでの歌ってみた動画投稿やカラオケ(行動)を促したのではないかというのが自分の見解です。さらに動画説明欄の”Streaming: https://lnk.to/PO4pBF”と記載されたリンク先を辿ると下記キャプチャの画面が登場。デジタルプラットフォームへ繋げるフレンドリーな仕組みの構築もまた見事と言えるでしょう。

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優里「ドライフラワー」のヒットにおいては、動画の積極的な投稿がストリーミングや動画再生、カラオケといった接触指標群に影響を及ぼした可能性が高く、その中でもカラオケ等動画がとりわけ高い効果を発揮したと捉えて好いのかもしれません。

 

その優里さんが、優里ちゃんねる【公式】にて11月23日にアップした下記ツイート内の動画が現段階で22万弱という再生回数を叩き出しています。そしてその効果は同日の日本におけるSpotifyデイリーチャートにも反映。祝日ゆえ再生回数が高くなる傾向にはあるのですが、それを差し引いても凄いことです。

この効果は次週発表の12月7日付ビルボードジャパンソングスチャートに表れます。

 

 

なお、その12月7日付チャートより2021年度となるビルボードジャパン各種チャート。この2021年度より、歌ってみた等のUGC(ユーザー生成コンテンツ)は動画再生指標およびストリーミング指標でのカウント対象から外れるため、チャート全体の動向がどう動くかが気になります。そしてその中で、優里「ドライフラワー」がどこまで上昇に至るかに注目しましょう。

(追記あり) 米グラミー賞ノミネート発表…主要部門ノミネートの傾向および”不在”への私見

第63回グラミー賞のノミネーションが、現地時間の11月24日(日本時間の11月25日2時)に発表されました。

主要4部門は以下の通り。

● 最優秀レコード賞 (Record Of The Year)

 ・ビヨンセ「Black Parade」

 ・ブラック・ピューマズ「Colors」

 ・ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

 ・ドージャ・キャット「Say So」

 ・ビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」

 ・デュア・リパ「Don't Start Now」

 ・ポスト・マローン「Circles」

 ・メーガン・ザ・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」

● 最優秀アルバム賞 (Album Of The Year)

 ・ジェネイ・アイコ『Chilombo』

 ・ブラック・ピューマズ『Black Pumas (Deluxe Edition)』

 ・コールドプレイ『Everyday Life』

 ・ジェイコブ・コリアー『Djesse Vol.3』

 ・ハイム『Women In Music Pt.III』

 ・デュア・リパ『Future Nostalgia』

 ・ポスト・マローン『Hollywood's Bleeding』

 ・テイラー・スウィフト『Folklore』

● 最優秀楽曲賞 (Song Of The Year)

 (※ここでは歌手名を記載。実際はソングライターに授与されます。)

 ・ビヨンセ「Black Parade」

 ・ロディ・リッチ「The Box」

 ・テイラー・スウィフト「Cardigan」

 ・ポスト・マローン「Circles」

 ・デュア・リパ「Don't Start Now」

 ・ビリー・アイリッシュ「Everything I Wanted」

 ・H.E.R.「I Can't Breathe」

 ・ジュリア・マイケルズ & ジェイ・ピー・サックス「If The World Was Ending」

● 最優秀新人賞 (Best New Artist)

 ・イングリッドアンドレ

 ・フィービー・ブリジャーズ

 ・チカ

 ・ノア・サイラス

 ・D・スモーク

 ・ドージャ・キャット

 ・ケイトラナダ

 ・メーガン・ザ・スタリオン

 

グラミー賞はある種、『NHK紅白歌合戦』のようなものかもしれません。すべての人気作品を網羅しているわけではないこと、グラミー賞ならではのノミネート傾向があることがそう考える理由。ただし紅白とは異なり、グラミー賞はノミネート作品が追加されることはありません。

 

グラミー賞は以前から保守と(時に揶揄まじりに)言われることもあり、十二分にヒットした作品の中に玄人好みと言えそうなものも混ぜ込むことが毎年のように発生します。今年で言えばブラック・ピューマズがその筆頭かもしれません。昨年のグラミー賞で最優秀新人賞にノミネートされた彼らは、主要2部門を含む3部門にノミネート。上記以外のノミネートが最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス賞であることから(そして他の顔ぶれにブリタニー・ハワードやノラ・ジョーンズ&メイヴィス・ステイプルズ等がいることからも明らかなように)、これはグラミー賞特有の玄人好み感が表れた内容と言えそうです。他にも最優秀アルバム賞にノミネートされたジェイコブ・コリアー『Djesse Vol.3』等、米ビルボードの下記記事でいうところの”サプライズ(ノミネート)”と指摘される作品がみられ、グラミー賞だからこそ見つけてくれたと好意的に捉えることができるでしょう。

 

だからこそ同様に選外も発生し、上記記事では”snub (鼻であしらう、冷たく扱う、期待を裏切る等の意)”と表現されています。Twitterのタイムライン上でも顕著だったのが、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」およびBTS「Dynamite」が主要部門に入っていないことへの不満。ザ・ウィークエンドはアルバム『After Hours』も同様、いやザ・ウィークエンド自体一部門もノミネートされていないのです。

実際、この数日でザ・ウィークエンドの偉業は大きく報じられています。米ビルボードでは最新11月28日付ソングスチャートで「Blinding Lights」がポスト・マローン「Circles」を抜き、史上最長となる通算40週目のトップ10入りを果たしています。

さらには現地時間で11月22日日曜に開催されたアメリカン・ミュージック・アワードでは最多タイとなる3部門を受賞。これらの絶妙なタイミングも踏まえれば尚の事、ザ・ウィークエンドが一部門もノミネートを許されなかったことを不当と思う方が多いのは当然かもしれません。

 

またBTS「Dynamite」についても、日本のファンは勿論のこと、音楽関係者等の間でも期待混じりにノミネートが半ば当然という声がありましたが、蓋を開ければ最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にノミネートされたのみ。これを不服とする方がいらっしゃるのは解ります。

この「Dynamite」は米ビルボードソングスチャートで初登場首位を獲得しましたが、「Dynamite」同様にグラミー賞対象期間(昨年9月~今年8月)に初登場で首位を獲得した曲のうち主要部門にノミネートされたのはテイラー・スウィフト「Cardigan」のみなのです。

上記リンク先は米ビルボードソングスチャートにおける初登場での首位獲得曲一覧ですが、今回のグラミー賞ノミネーション対象期間に初登場でチャートを制した9曲のうち、ドレイク「Toosie Slide」、トラヴィス・スコット&キッド・カディによるユニット名義での「The Scotts」、アリアナ・グランデジャスティン・ビーバー「Stuck With U」、シックスナイン&ニッキー・ミナージュ「Trollz」、カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」は主要部門どころか一部門もノミネートされていないのです。

弊ブログでの米ビルボードトップ10速報記事を追いかければ解るかもしれませんが、初登場で首位を獲得した曲においては所有指標が非常に高いのです(ただし「Toosie Slide」を除く)。その大半は米ビルボードのチャートポリシー改正前にチャート上昇策として有効だったフィジカル施策(歌手のホームページでレコード等を販売し発送ではなく購入段階でダウンロード指標に加算、さらには到着までの間に別途用意されたデジタルダウンロードも加算という改正前のチャートポリシーを活用した方法)を用いたことで所有指標の強さが目立ちます。しかし首位獲得の翌週には所有指標の急落を接触指標群がカバーできず、チャートで急落する曲が大半なのです。これらの曲の多くは、近日中に発表されるであろう米ビルボード年間ソングスチャートでも上位進出が厳しいことが予想され、フィジカル施策を中心とした所有指標振興策は週間チャートの1位という称号の形骸化(価値の低下)を起こしたとすら言えるかもしれません。BTS「Dynamite」は最新週にラジオエアプレイで11位まで上昇したとのことで、総合でトップ10には留まっていないものの次週アルバム『BE』が初登場するタイミングでのトップ10復活も予想されるのですが、トップ10在籍時にリミックスバージョンの複数投入等に因り所有指標が強すぎた一方で接触指標が安定もしくは上昇せず、所有指標と接触指標群で乖離が発生しバランス良くポイントを稼いでいたとは言えなかったかもしれません。ダウンロードやフィジカルセールスが重要ではないとは言いませんが、ストリーミングやラジオエアプレイが安定して強く、ロングヒットした曲こそ主要部門ノミネートへの近道であるというのが、今回のノミネート一覧から捉えることができそうです。

なお、主要4部門ノミネート作品ではテイラー・スウィフト「Cardigan」、ドージャ・キャット「Say So」およびメーガン・ザ・スタリオン feat. ビヨンセ「Savage」もフィジカル施策を用いていますが、テイラー・スウィフトはアルバムとの同時リリースで且つアルバムも主要部門にノミネート、また「Say So」「Savage」は元の楽曲のリリースからしばらく経ってのフィジカルリリースとなり、楽曲解禁時からのフィジカルリリースとは性質が異なります。ただし「Cardigan」は最優秀レコード賞ではなく最優秀楽曲賞へのノミネートであり、この点から見えてくるものがあるはずです。そしてこの『ストリーミングやラジオエアプレイが安定して強く、ロングヒットした曲こそ主要部門ノミネートへの近道』という傾向を踏まえれば、先述したザ・ウィークエンド「Blinding Lights」の不在はやはりおかしいとも思うのですが。

 

「Blinding Lights」およびザ・ウィークエンドの不在については別の米ビルボードによるグラミー賞10の疑問を取り上げた記事でも指摘されています。そこにはジャンルを超越した存在ゆえ的なことが記されているのですが、一方ではラッパーのポスト・マローンによる「Circles」および『Hollywood's Bleeding』がヒップホップではなくポップとしてですがきちんとノミネートされていることもあり、主要部門どころか一部門もノミネートが許されないというザ・ウィークエンドへの冷遇は、やはり疑問が拭えない気がします。

 

 

グラミー賞への不満がある方がTwitter等で散見されますが、先述したグラミー賞の紅白的傾向を踏まえ、問題があれば直接グラミー賞運営側に冷静な視点でもって問題提起や意見表明をすることが一番でしょう(ただしその際は同時に、客観的なデータ等の提示が必要と考えます)。なお、弊ブログでは米ビルボード年間チャート発表後数日以内に、米音楽業界の今年の傾向を記す予定です。ザ・ウィークエンドやBTSについても取り上げようと考えています。

 

 

(※追記 (12時26分))

ザ・ウィークエンドのノミネートゼロという事態について、ひとつ浮かんだ事象があります。それは『After Hours』における矢継早なデラックス・エディション投入という問題です。

それでも「Blinding Lights」のスルーとも言える状況には疑問を抱きますが、グラミー賞側が”アルバムとは?”と疑問視したことがこの件に反映されているのではという気がします。個人的には、プリンスのグラミー賞におけるスピーチを思い出した次第です。

グラミー賞がザ・ウィークエンドをノミネートに至らせない事態はさすがに不自然が過ぎるとは思いつつ、しかしこの仮定が正しいとしたならば、今後アルバムの正しい販売促進が成されていくこと、すなわち後出しジャンケンが起こりにくい状況がつくられる必要があるものと考える自分がいます。

ビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」が2位に躍進した11月28日付米ビルボードソングスチャートおよびグローバルチャートトップ10をチェック

ビルボードソングスチャート、現地時間の11月23日月曜に発表された最新11月28日付ソングスチャート(Hot 100)。24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」が通算5週目の首位を獲得、またビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」が前週から92ランクアップし2位に到達しました。

集計期間はストリーミングおよびダウンロードが11月13日金曜から、ラジオエアプレイが16日月曜からの1週間。「Mood」は前週、ジャスティン・ビーバーとJ. バルヴィンを迎えたリミックス(→YouTube)を6日金曜にリリースしたことでデジタル2指標が大きく伸びましたが、今週はその反動が表れた形。ストリーミングは前週比12%ダウンの2230万(同指標2位)、ダウンロードは同35%ダウンの8000(同指標5位)となり、またラジオエアプレイは前週比1%ダウンとなる8450万(同指標1位)。ラジオエアプレイでもピークを超えたと捉えることが可能であり、次週以降ポイント下降幅が大きくなる予感がします。

「Mood」はロック&オルタナティブソングスチャートおよびオルタナティブソングスチャートで13週目、ラップソングスチャートで6週目の首位を獲得したほか、ポップソングスエアプレイチャートでも5週目の首位に。そのポップソングスエアプレイチャートでは、集計対象となるラジオ局で今週17748回もOAされています。このチャートが1992年に始まって以降、これまでエド・シーラン「Shape Of You」が2017年4月15日付で持っていた17707回OAという最高記録を、「Mood」が塗り替えた形です。

 

ビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」が2位に急上昇。リリースは11月12日木曜であり、前週はラジオエアプレイ4日、ストリーミングとダウンロードはわずか1日という集計期間でありながら94位に初登場。そして3指標はじめて1週間フルに集計された今週、総合2位に到達しました。ストリーミングは310万→2420万(同指標1位)、ダウンロードは5000→14000(同指標2位)、ラジオエアプレイは1170万→1830万(同指標43位)を獲得。ビリー・アイリッシュにとっては「Bad Guy」(2019 1位)、「Everything I Wanted」(2019 8位)、「My Future」(2020 6位)に続く4曲目のトップ10入りとなります。

なお、「Therefore I Am」の92ランク上昇は歴代4番目となる上昇幅。95ランクアップ(96→1位)にブリトニー・スピアーズ「Womanizer」(2008年10月25日付)、96ランクアップ(97→1位)にケリー・クラークソン「My Life Would Suck Without You」(2009年2月2日付)、そして最も上昇幅が大きい98ランクアップ(100→2位)はテイラー・スウィフト feat. ブレンドン・ユーリー「Me!」(2019年5月11日付)。なお「Me!」はリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」に阻まれ、首位を獲得するには至れませんでした。

 

首位の「Mood」、2位の「Therefore I Am」は共に2000年代生まれの歌手による作品であり、トップ2を同世代が制したのは初となります(24Kゴールデンは2000年11月13日、ビリー・アイリッシュは2001年12月18日生まれ。なおイアン・ディオールは1999年3月25日生まれであるため、あくまで主演歌手に絞った記録となります)。2000年代以降の歌手で首位を獲得したのはこの2名および、BTS参加版に伴い「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」が10月17日付で首位に到達したジョーシュ・シックスエイトファイヴ(2002年11月5日生まれ)となります。

 

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」は2ランクダウンしながらも7位にとどまり、40週目のトップ10入りを果たしました。これにより、ポスト・マローン「Circles」が持っていた39週を上回り、トップ10入り歴代最長記録を更新しています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

2位 (94位) ビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」

3位 (2位) アリアナ・グランデ「Positions」

4位 (3位) ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

5位 (4位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

6位 (7位) ジャスティン・ビーバー feat. チャンス・ザ・ラッパー「Holy」

7位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

8位 (6位) インターネット・マネー & ガナ feat. ドン・トリヴァー & ナヴ「Lemonade」

9位 (8位) バッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」

10位 (10位) ポップ・スモーク feat. リル・ベイビー & ダベイビー「For The Night」

ビルボードではクリスマスソングもリエントリーを果たしています。

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」が29位に再登場。ストリーミングは前週比50%アップの1170万、ダウンロードは同54%アップの4000、ラジオエアプレイは同51%アップの1570万を獲得しています(情報はbillboard chartsのTwitterアカウントによるツイート(こちらおよびこちら)より)。

ブレンダ・リー「Rockin' Around The Christmas Tree」が43位に再登場。ストリーミングが前週比79%アップの880万、ダウンロードが同790%アップの7000、ラジオエアプレイが同45%アップの1320万を獲得しました(情報はbillboard chartsのTwitterアカウントによるツイート(こちらおよびこちら)より)。

この2曲は、昨年のクリスマスシーズンで特に大ヒットし、今年1月4日付米ビルボードソングスチャートでワンツーフィニッシュを達成しています。

一方で翌週となる1月11日付チャートではクリスマスソングが一掃されたことで、一定週数以上在籍した曲が一定の順位を下回れば今後チャートには登場できないという米ビルボードソングスチャート特有のリカレントルール適用に伴い、特に強いクリスマスソングの再登場はないのではないかと考え(また米ビルボードの記事でも最後と表現されていたものと捉えていたため尚の事)、同日付のチャート紹介時に”有終の美”と記しました。が、それは当たっていなかったことになります。リカレントルールについては、今月記載したこちらの内容をご確認ください。

 

 

グローバルチャート速報も紹介。200を超える地域の主要デジタルプラットフォームによるストリーミングとデジタルダウンロードで構成され、歌手のホームページでの販売分を含まないグローバルチャート。11月28日付ではGlobal 200、そしてGlobal 200から米の分を除いたGlobal Excl. U.S.共にバッド・バニー & ジェイ・コルテス「Dákiti」が連覇を達成。また両チャート2位にはビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」が入りました。

ビルボードソングスチャートで9位に入った「Dákiti」は、Global 200ではストリーミングが前週比6%ダウンの1億370万、ダウンロードが同14%ダウンの4000を、Global Excl. U.S.ではストリーミングが前週比5%ダウンの8390万、ダウンロードが同6%ダウンの1000を獲得。特筆すべきなのはGlobal 200におけるストリーミングの高さで、前週(1億1020万)に続き2週連続で1億回超えを果たしたのは「Dákiti」が初となります。

ビリー・アイリッシュ「Therefore I Am」は2つのグローバルチャートで2位に初登場。Global 200ではストリーミング7280万およびダウンロード26000、Global Excl. U.S.ではストリーミング4930万およびダウンロード13000を獲得。「Therefore I Am」は「Dákiti」よりダウンロードが大きく勝っているものの、ストリーミングの差を逆転するには至れませんでした。

Global 200とGlobal Excl. U.S.ではトップ10のうち9曲が、順位は異なれど同じ曲で占められています。唯一異なるのはGlobal 200におけるカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」(10位)、そしてGlobal Excl. U.S.におけるLiSA「炎」(7位)。「炎」はゆっくりダウンしているものの2→3→4→6→7位と推移し、5週連続でGlobal Excl. U.S.トップ10入りを果たしています。