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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ラグビー特需があったとはいえない? 嵐「BRAVE」のチャート動向を前作およびサブスク等解禁の5曲と比較すると

最新ビルボードジャパンソングスチャートでOfficial髭男dism「Pretender」が遂に首位を獲得したタイミングで、その首位獲得曲のほとんどはシングルCDセールス指標に特化したもの多いことを一昨日のエントリーで示しました。その上で、そのようなタイプの楽曲が翌週以降急落する状況を踏まえ、ビルボードジャパンに対しシングルCDセールス指標のウェイト減少を検討することを提案しています。

その際、『ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)』と書きました。首位獲得はならずとも嵐「BRAVE」はジャニーズ事務所所属歌手の楽曲でも特筆した動きをみせている一方、しかしその「BRAVE」の動きは芳しくないのではという思いを抱き、今日のエントリーでまとめてみます。

 

「BRAVE」がタイアップに用いられた、日本テレビラグビーワールドカップ中継は視聴率が軒並み高く、対スコットランド戦は39.2%(関東地区 ビデオリサーチ調べ)を叩き出しています。

ならばその視聴率とまではいかなくとも、嵐「BRAVE」がこれまでの彼らの楽曲以上に注目を集めるのではと思ったのですが、チャートをみると思ったよりもラグビー特需はないと考えます。昨秋リリースの『君のうた』(ドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日)主題歌)とでリリースタイミングでのCHART insightを比べると、各指標も総合でも順位はさほど変わりません。シングルCDセールス加算前後の11週の動向を抽出すると。

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では数字の上ではどうでしょうか。

 ※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

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総合ポイントは「BRAVE」が「君のうた」を上回るものの、今年度カラオケ指標が導入されたタイミングで各指標毎のウェイトも変更された可能性があるため単純比較は出来ません。突出しているのはシングルCDセールス加算初週の売上枚数ですが、加算2週目以降の4週間の売上は「君のうた」が39817枚に対し「BRAVE」が38776枚となり、「BRAVE」が敗れています。ラグビー特需があるならば、日本が敗退した直後あたりまで「BRAVE」が売れ続けてもよかったはずです。

「BRAVE」のシングルCDセールス加算初週の売上が「君のうた」の185.1%となったのは『封入されたシリアルナンバーを使ってコンサート(ツアー)予約が可能なことから、複数買いが生まれた』ものと捉えています(『』内はシングルCDセールス2位も総合で逆転、米津玄師「馬と鹿」が嵐「BRAVE」に勝った理由は? 9月23日付ビルボードジャパンソングスチャート"頂上決戦"をチェック(9月19日付)より)。ただし、今回抽選予約対象となるコンサート【ARASHI SPECIAL SHOOTING "5×20" at Tokyo Dome 2019.12.23】については、『2019年9月11日(水)発売『BRAVE』ご購入者様かつ、嵐ファンクラブ会員様』のみ応募可能であり、CDに封入された『ユーザーコード【1つ】と、嵐ファンクラブ会員番号【1つ】で、【1回】のエントリーが可能』というシステムとなっています(『』内は2019年12月23日(月) 「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」開催決定!!「ARASHI SPECIAL SHOOTING “5×20” at Tokyo Dome 2019.12.23」 チケット抽選応募エントリー/申し込みのご案内 | J Storm OFFICIAL SITEより)。コンサートがツアーではなくプレミアム感があること、CD購入者且つファンクラブ会員でなければ応募出来ないこと、さらにCD封入のユーザーコードを使った(事前の)チケット抽選応募エントリーの締切が9月15日日曜いっぱいでありビルボードジャパンソングスチャート(およびオリコンシングルCDランキング)のCD加算初週の終了時間と重なることを考えると、今年1月末で250万、現在では280万とも300万とも言われているファンクラブ会員の大半が前倒しでCDを買ったことが『BRAVE』のシングルCDセールス初週売上増加、および以降のセールス微減につながったと考えられます。

(ちなみに、活動休止発表直後に会員数は激増し、1月末の段階でおよそ250万であると報じられています(嵐休止発表ファンクラブ爆増10万人 国内外に波紋 - ジャニーズ : 日刊スポーツ(1月29日付)。一方でジャニーズ事務所所属歌手やタレントのファンクラブ会員数はあくまで累計数であるという話を耳にします。それでも現在も加入している会員数が100万を大きく上回るようで、その数字には驚かされます。)

シングルCDセールスの上昇については仮説を立てることが出来ましたが、しかしこれではコアなファンの動向判明にすぎず、歌手や楽曲に興味はあれど必ずしも購入するわけではないライト層の動向はシングルCDセールスにはっきり示されているとは言えません(尤も、コンサートの応募総数が判明すればそこからコアなファンの数を引いたライト層の購入数がある程度想像出来ます。またコアなファンが前倒しで購入した分、シングルCDセールス指標加算2週目以降はライト層が少なからず売上を支えた可能性はあるでしょう)。そのライト層の動向、通常はシングルCDセールスよりも接触指標群(サブスクリプションサービスでの聴取およびYouTube等での動画視聴、それらが反映されるストリーミングおよび動画再生が主な指標)に表れるのですが、嵐については『BRAVE』は未解禁。しかも彼らはシングルCDリリース後の10月9日に突如、ダウンロード未配信はそのままながら5曲をサブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁したものの、そこに『BRAVE』は含まれていませんでした。

5曲限定での解禁はあくまで『CDや映像盤等フィジカルセールスのための施策であり、歌手やレコード会社側にとってはあくまでフィジカルが最優先なのかもしれません』というのが上記エントリーでの自分の見方。事実、ベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』は限定解禁日を集計期間に含む前週のチャートではOfficial髭男dismやスピッツ等の新譜やBiSHの大量エントリーに阻まれ順位を落とすものの、今週は3週ぶりにトップ10に返り咲いています。

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また最新10月28日付のオリコンのDVDおよびBlu-rayランキングではミュージックビデオ集『5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019』が初登場1位となり、今年最高の売上を達成しています。ちなみにこのミュージックビデオ集に『BRAVE』は含まれていません。

サブスクリプションサービスおよびYouTubeで解禁された嵐の5曲は前週のビルボードジャパンソングスチャートで躍進していますが、「BRAVE」は裏腹にダウンしてしまったのは、まさにライト層を中心に接触指標群を動かしたかどうかが如実に解る証明と言えます。

前作「君のうた」と動きが重なっている「BRAVE」はコアなファンの動きを活性化させてもライト層を動かしたと断定出来ない、且つライト層の動向は接触指標群に如実に反映されることを踏まえれば、「BRAVE」にラグビー特需があったとは言い難いでしょう。接触指標群の中でジャニーズ事務所所属歌手の作品を唯一上げることが出来るルックアップは3位以内をキープしていますが、前作「君のうた」とは大差ないように思われます。またラジオエアプレイは前作より伸びていますが、OAする曲を選ぶのがラジオ局である点において他の指標群とは性質が異なります。

 

仮に「BRAVE」が5曲同様に解禁されたならばチャートでも有利に働いただろうことを考えると、歌手側やレコード会社はなぜ「BRAVE」をサブスク等で解禁しなかったのかが気になります。おそらくはシングルCDセールスを伸ばすための解禁見送りだったと想像出来ますが、解禁効果でCDやミュージックビデオ集が売れ解禁楽曲もチャートを上昇していることを踏まえれば、むしろ解禁したほうが売上増、チャート上昇という双方の活性化につながったのではないかと思うのです。

明日のラジオ、"ゴスペル的J-Pop"特集回を担当します

明日放送のラジオ番組、『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時 サイマル放送で全国どこからでも聴取可能ですのでこちらをチェックしてください)ではメインDJ且つ音楽特集を担当します。その特集とは【ゴスペル的J-Pop】。実は番組のスタッフである弘前大学ラジオサークルのメンバーが、今週末開催の弘前大学総合文化祭に参加(サークルとして出店、さらにはイベントの司会等)するため最少人数での番組運営となり、喋り手として唯一動ける自分が責任編集することになりました。2週間前にOfficial髭男dism特集を担当したばかりなのですが、学園祭で頑張っているラジオサークルのメンバー共々どうぞご贔屓に、よろしくお願いいたします。

ゴスペルについては、もう10数年も前になりますが自分が歌っていたこともあり、いつか特集したいと考えていました。弊ブログではゴスペルについて幾度となく取り上げていますが、ここ最近面白い動きが続出していることもありこのタイミングで取り上げることに。その動きについては後日取り上げるとして、今日は邦楽でゴスペル的要素を含む作品をまとめたSpotifyプレイリスト、【J-Pop like Gospel】を紹介します。 

紹介します、といっても自分で作成したのですが、これまでApple Music一辺倒だった身にはSpotifyの使い勝手の良さは感動的で、ならばとこのプレイリストを作成した次第。とはいえSMAP「FLY」やRADWIMPS feat. 三浦透子「グランドエスケープ」、YUKI「tonight」等はサブスクリプションサービス未解禁ゆえ完全たるプレイリストではありませんが、これを聴いてゴスペルのエッセンスを汲み取っていただけたならば幸いです。この中からもいくつか、明日の番組で取り上げようと思います。

サブスク再生回数を伸ばしたのはテレビだった、動画再生指標未カウントおよび初カウント問題…10月28日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

一昨日発表された最新10月28日付ビルボードジャパン各種チャートから、ソングスチャートを中心に振り返ります。通常は木曜に記載していますが昨日はOfficial髭男dism「Pretender」の初の首位獲得に絡めて、今年度首位を獲得した楽曲を一覧化した上で"シングルCDセールス指標のウェイト減少の必要性"を説きました。

 では今回、以下の内容をチェックしていきます。

 

・テレビ効果は絶大、ストリーミング指標が上昇

歌詞サイトの閲覧回数もあるものの、サブスクリプションサービス(一部を除く)の再生回数に基づくのがストリーミング指標。今週同指標でトップ10入りを果たした楽曲はすべて数字を伸ばしています。過去2週のビルボードジャパンの記事を元にまとめたものが下記の表。

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今週のストリーミングソングスチャートの解説は下記に。

アルバム『Traveler』が発売されたことで「Pretender」をはじめとする収録曲のストリーミング指標がダウンするかと思ったのですが杞憂でした(もしかしたら明日レンタルが解禁されることで、影響が及ぶかもしれません)。むしろアルバムの評判が広がったことで聴く方が増えただろう結果、インタールードを除く13曲が同指標100位以内にランクインしています。

また上記ビルボードジャパンの解説でも触れられていますが、King Gnuが『さんまの東大方程式』(フジテレビ 10月19日放送)で取り上げられたことで、新曲「傘」のみならず「白日」も伸びている状況。また昨日のブログエントリーでも触れましたが、『ミュージックステーション』(テレビ朝日 10月18日放送)で今夏のサブスクリプションサービス再生回数ランキングを紹介したことがサービス自体の認知度向上や利用増進につながったものと考えていいでしょう。そう考えるとテレビの効果は絶大と言えます。

 

ちなみに、ソングスチャートにおける各指標毎のトップ10ランクイン曲のうち、総合チャートに最も多くランクインしているのがストリーミングの7曲。次いでダウンロードおよび動画再生の6曲、ルックアップの5曲となり、接触指標群と総合チャートとの密接な結び付きが解ります。他方カラオケは3曲、シングルCDセールスおよびラジオエアプレイは2曲、そしてTwitterはゼロという結果に。ここからTwitter指標とヒット曲との乖離もみえてきます。

 

UVERworld「ROB THE FRONTIER」、フルサイズ公開を遅らせた判断はチャート的に誤りだったと言える動画再生指標未カウント問題

今週ソングスチャートで6位に入ったのがUVERworld「ROB THE FRONTIER」。シングルCDセールス指標の4位をはじめ3指標がトップ10入りしています。しかしCHART insightをみると、動画再生指標が300位以内にすらランクインしていないのです。

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(下のCHART insightは動画再生指標のみ抜き出したもの。赤のグラフが全く表示されていないことが解ります。)

実は公開されたミュージックビデオはショートバージョン。

動画の説明欄には『フルサイズミュージックビデオは近日公開!!』とあります。そして。

公式Twitterアカウントでは『大人の事情』とはっきり記載。一方で『フルで観て欲しいと思ってます』とも書いているため、CDに同梱された映像盤を手に入れてほしいというCD購入誘導が目的ではと考え調べてみると、3種リリースされたバージョンのどれにも映像盤は同梱されていません。

そこで浮かんだのは、この大人の事情とは『YouTube Premium会員が使用出来るYouTube Musicサービスにて同曲を”ストリーミングとして聴くことが出来る』ことでCDが手に取られにくくなることへの対抗措置ではないかということ。とはいえ、仮説が当たっていたとしても『ビルボードジャパンではYouTube Musicでの再生回数は動画再生指標としてカウントされます』ので、そこまで目くじらを立てる必要はないと思うのです(『』内はどちらも、欅坂46「黒い羊」CD発売直前のチャートアクションが優れない理由はYouTubeに有り?(2月27日付)より)。YouTube PremiumやYouTube Musicについてはリンク先をご参照いただきたいのですが、そこで例示した欅坂46sumika、そして今回のUVERworldはすべてソニー・ミュージックであるのは果たして偶然でしょうか。

ちなみにショートバージョンが動画再生指標を伸ばさないという例は何度か載せていますのでこちらもご参照ください。

 

・Foorin「パプリカ」、動画再生指標が遂にカウントされる

一方でこちらは遂に動画再生指標が遂に初カウント。遂にというか、ようやくという感じです。

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(下のCHART insightは動画再生指標のみ抜き出したもの。赤のグラフが最新週で遂に登場したことが解ります。)

Foorin「パプリカ」は1億回を超えるYouTubeでの再生回数を達成しながら、前週まで一切動画再生指標がカウントされませんでした。これはISRC(国際標準レコーディングコード)が未付番だったためで、これにより逃したポイントは数万単位になるのでは?と、再生回数が大台に乗ったタイミングで予想していました。

おそらくはFoorin「パプリカ」を掲載したYouTubeアカウントがNHKであり、同局にISRCに詳しいスタッフがいなかったことが原因でしょうが、動画再生指標未カウントをそのままにしていたレコード会社にも疑問が浮かびます。

現段階でFoorin「パプリカ」の動画説明欄に登録動画についての説明がないため、動画再生指標が"何の動画によってカウントされたのか"や"公式ミュージックビデオにISRCは付番されたのか"、さらにカウント対象がUGC(ユーザー生成コンテンツ)だった場合に"そもそもISRC未付番の作品がUGCの対象になり得るのか"等の疑問は残ります。しかしながら仮に公式ミュージックビデオにISRCが付番されたならば次週以降のランクアップは確実であり、仮に『NHK紅白歌合戦』に2年連続で出場を果たしたならばさらなるヒットも期待出来るでしょう。

Official髭男dism「Pretender」の首位獲得を踏まえてあらためて考える、ビルボードジャパンソングスチャートにおけるシングルCDセールス指標のウェイトを下げる必要性

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点をソングスチャート中心に紹介するのですが、今週はソングスチャート首位曲に注目し、その他の点については明日紹介します。

 

最新10月28日付ビルボードジャパンソングスチャートを制したのはOfficial髭男dism「Pretender」でした。100位以内に登場してから27週目、半年以上を経て遂に頂点に立ちました。

前週アルバムチャートを制した『Traveler』(今週4位)の影響もさることながら、集計期間中に放送された『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で今夏のサブスクリプションサービス再生回数ランキングが発表され、Official髭男dismのサブスク人気(且つ彼らのサブスクに対する良好な捉え方)が紹介されたことでも、彼らの楽曲が躍進した要因かもしれません。とりわけ、番組で披露した「イエスタデイ」(今週2位 最高位更新)以上の伸びを示したのが「Pretender」でした。

「Pretender」のチャートアクションをみると、非常に安定していることが解ります。

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 ※各指標について

 ・P:総合ポイント

 ・前週比:総合ポイントの前週比。前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・上記の理由により50位未満、総合ポイントで比較不能時は?で表示

 ・各指標について

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生

   KA:カラオケ

 ・各指標毎順位において

   [-]:ランク圏外(101~300位)

   [ ]:(ブランク):ランクインせず(カウント対象前を含む)

   [?]:未表示もしくは計算不能

※これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

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しかしながらこの曲は今週まで首位に立つことはありませんでした。

その理由を見る前に、今週ライバルになると思われたONE N' ONLYの動向を見てみましょう。前作「Dark Knight」で首位を獲得した彼らですが、今作「Category」は5位にとどまっています。

シングル・セールスではONE N' ONLYの「Category」が59,868枚を売り上げて1位となった。それでも、他指標ではルックアップ66位、Twitter 50位、ラジオ80位と振るわず、総合5位に。

【ビルボード】Official髭男dism「Pretender」「イエスタデイ」が総合ワンツー・フィニッシュ | Daily News | Billboard JAPAN(10月23日付)より 

ONE N' ONLYについては、前作「Dark Knight」が首位を獲得したものの他指標が振るわなかったこと、および翌週には100位圏外となってしまった事態について、似た事例と共にまとめています。

さすがにONE N' ONLYの動向は極端ではあるものの、とはいえ「Pretender」が今週まで首位を獲得出来なかったのは、この"シングルCDセールスのみに特化"した楽曲の相次ぐ登場に因るものが大きいと考えられるのです。

 

それを裏付けるのが、今年度(2018年12月10日付以降)の首位曲の動向をまとめた下記の表。[前週]は前週の順位、左の[P]は首位獲得週の総合ポイント、[CD]は同週のシングルCDセールス指標の順位、[翌週]は翌週の順位、右の[P]は翌週の総合ポイント、そして[前週比]は翌週におけるポイント前週比を示します。

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これをみると、アイドルおよびK-Popアクトの楽曲が大半を占めていることが解ります。一方、それら以外の楽曲では米津玄師さんが『NHK紅白歌合戦』効果で「Lemon」が年末年始のチャートを席巻し、元号の変わり目且つ連休中ゆえリリースの少なかった5月13日付(集計期間は4月29日~5月5日)であいみょんマリーゴールド」が首位を獲得したのが目立つくらいです。

今年度首位を獲得したアイドルやK-Popアクトの楽曲群ついて、いくつか特徴がみられます。まずは【前週の順位が低い】こと。これは前もって段階に解禁していない可能性があります(逆に言えば、前週トップ20内に入っている乃木坂46は見事だと言えます)。次いで【翌週の順位が低い】こと。坂道グループがトップ10内に残っているのはアイドルの中でも特筆すべきですが、他方ジャニーズ事務所所属歌手で今年度首位を獲得した楽曲はすべて、その翌週にトップ10から姿を消しているのです(なお、9月23日付で米津玄師「馬と鹿」に敗れ2位となった嵐「BRAVE」は翌週5位となり、同事務所所属歌手の中で存在感を示しています)。そして最後の特徴が【首位を獲得した翌週のポイント前週比が低い】こと。坂道グループは10~30%、ジャニーズ事務所所属歌手は10~20%内である一方、AKB48は5%未満に。さらに先述したONE N' ONLYや祭nine.、ラストアイドルそしてSTU48「大好きな人」は翌週100位未満となり計測が出来ません(51位以下のポイント数は公表されていないため)。K-PopアクトにおいてはBTSが4割を超え、TWICEも坂道グループ並の数字となった一方、IZ*ONEはAKBグループ程度にとどまっているのも特徴といえます。

一方、アイドルやK-Popアクトの楽曲に共通するのが【シングルCDセールス指標の高さ】。2位の楽曲もあれど、そのほとんどが首位をマークしているのです。しかし前週の順位、翌週の順位、首位を獲得した翌週のポイント前週比という3つの低さを踏まえるに、シングルCDセールス以外に弱くない指標があったとしてもチャート構成比の大半をシングルCDセールス指標に頼っていることが、アイドルやK-Popアクトの楽曲が急落し且つロングヒットに至れない要因と言えるでしょう。一方で米津玄師「海の幽霊」はデジタルのみのリリースでありシングルCDセールス指標は未カウント、またあいみょんマリーゴールド」は首位獲得週における同指標が71位と高くありません。さらにOfficial髭男dism「Pretender」は今週のシングルCDセールス指標が100位未満。「Pretender」が次週どうなるかは判りかねますが、これらの作品の大半は前週の順位や翌週におけるポイント前週比も高いことから、シングルCDセールス指標に頼らない作品がきちんとヒットしていることが解ります。

(あと、強い私見と前置きして書きますが、シングルCDセールスが強い作品が同週リリースという形でバッティングすることはないのが不思議です。坂道グループとAKBグループ、AKBグループとジャニーズ事務所所属歌手等。流石に何かしらの取り交わしがあるとは思いませんが、スケジュールがうまく出来ているという印象があります。)

 

「Pretender」が首位を獲得するとしたら今週しかなかったというのが私見。昨日はSexy Zone麒麟の子」がリリースされ、この曲が次週確実にトップを獲得するでしょうからなおのことです。しかし「麒麟の子」もトップを獲得した翌週に急落するのであれば、首位曲がとっかえひっかえとなる今のビルボードジャパンソングスチャートはまだまだ不健全と言わざるを得ないでしょう(2018年度よりシングルCDセールス指標に係数の概念が用いられ、アイドルやK-Popアクトの楽曲がかなり是正されることにはなったとはいえ)。となると、やはりシングルCDセールス指標のウェイトを下げることを検討してほしい…ビルボードジャパンに対してそう強く唱えたいと思います。特に今年度首位楽曲の動向一覧表は、先日のエントリーの補足資料として十分な説得力を帯びるものだと思うゆえ尚更です。

台風情報へシフトした編成を機に、ラジオ聴取率調査の見直しを希望する

今月発生した台風19号被害に関連して、上陸および通過した前後でのテレビ局の報道姿勢についてまとめた、境治さんのYahoo!記事は必読です。NHKおよび民放テレビ局でどれだけの時間を台風情報に割いたのかがわかりやすく可視化されています。

NHKの報道が優れていたのは10月12日土曜の編成でよく解ります。私見を付け加えるならば、この日の放送は同時多発的に発生した台風被害を伝え続けるためか、原稿に格好つけ感(体言止め等)や演出過剰がなかったことも、NHKがより信頼出来るメディアだと考える理由となっています。

 

さて、この日はラジオも一部編成を変更して対応していました。通常番組でも台風情報を随時お伝えしたほか。

たとえばTBSラジオでは『荻上チキ Session-22』(月-金曜 22時)を担当する荻上チキさんを土曜夜(上記時間および23-24時)に迎えて台風情報を流したほか、日曜も朝枠に特別番組を設定。またニッポン放送では。

土曜夜の生放送を休止するという措置を採りました。特に『オードリーのオールナイトニッポン』(土曜 25時)については高い聴取率を誇る番組であり休止を残念に思うファンも多かったでしょうが、ラジオが災害時の情報源になるという役割を果たすことを優先したわけです。

 

実は台風が日本を直撃した12日と13日は、首都圏ラジオ局の聴取率調査週間の最後の2日間とみられます。

TOKYO FM聴取率調査週間の日曜19時台に必ず『村上RADIO』を流します。

今回は以前の回の再放送を含み2時間連続でOAしていたため、この週が聴取率調査週間と言っていいと思います。

 

今回の聴取率調査においては台風情報を優先することで、結果に少なからず影響が及ぶかもしれません。特に、聴取率の結果判明の度にその好調っぷりが報じられる『オードリーのオールナイトニッポン』(土曜25時)をカットしたニッポン放送には痛手だったかもしれませんが、おそらく他局も同様の台風対策編成を組んだであろうことから数字の増減はあれど、局のランキングはさほど変わらない気がします。

 

しかし今回を機に、そろそろ本気で聴取率調査方法を精査してはどうかと思うに至った自分がいます。

たとえば近年、TBSラジオJ-WAVE聴取率調査週間向けのスペシャルウィーク、すなわち豊富なプレゼントの放出や豪華ゲストの登場を取りやめたこともそう思い至った理由ですが、聴取率調査が日記式というアナログ方式のために結果判明が翌月まで判明しないというのもその理由(日記式調査についてはラジオ個人聴取率調査 - ビデオリサーチをご確認ください)。他方、デジタルのradikoにおけるアクセス数やシェアについては翌日すぐに判明することから、その差はあまりに大きいと言えるでしょう。下記記事の掲載時間は今週月曜11時11分であり、試合から24時間も経っていないのです。

ラジオは電波(アナログ)で聴く方が多いため聴取率調査に時間がかかるのはやむを得ないかもしれず、また電波での聴取者とradiko利用者では聴取者層に特徴や隔たりがあるかもしれませんが、それを考慮したとしても現行の聴取率調査の結果判明は遅いと言わざるを得ません。radikoはタイムラグが発生するため災害発生の瞬間(特に緊急地震速報発令時)には不向きかもしれませんが、スマートフォンの普及によりラジオを聴くならradikoでという人は確実にいらっしゃるはずです。仮にビデオリサーチ社が現行の聴取率調査を続けるのならば結果公表までの時間短縮に努めること(調査方法の見直し等)を望みますし、また調査会社は異なれどradikoの数字も聴取率と同様に重要な位置付けにすべきです。また、公表しなくなったことで人々のラジオへの意識が下がりつつあると肌で感じる身としては、radikoのアクセス数やシェア、ならびに現行の聴取率調査結果はある程度発表したほうが良いと考えます。

 

今回の聴取率調査週間では、NHKラジオ第一が台風情報の関連で少なからず上昇するかもしれません。民放局はイレギュラーな事案だからと意に介さないかもしれませんが、台風が来たからという記憶は薄れども数字ははっきり残るわけでそれが言い訳にしかなりません。仮にその言い訳にこだわるのならば、2ヶ月に1度とは言わずに常日頃から聴取率を調査すればいかがでしょう。そうすればスペシャルウィークという手段を採る必要はなく、普段のタイミングで豪華にすればいいのです。またその週にこだわる必要がないためラジオ関係者は普段から高い意識を持つことも可能。ひとつの指標のみにこだわる姿勢はそろそろ止めたほうが良いと思うのです。

リゾ、女性ラッパー最長タイとなる7週目の首位獲得…10月26日付米ソングスチャートをチェック

ビルボードソングスチャート速報。現地時間の10月21日月曜に発表された、10月26日付最新ソングスチャート。前週初登場でトップの座に就いたトラヴィス・スコット「Highest In The Room」が6位に後退、リゾ「Truth Hurts」が通算7週目の首位に輝きました。

Truth Hurts」は女性ラッパー単独曲の最長記録を既に更新していましたが(それまでの記録はカーディ・B「Bodak Yellow (Money Moves)」(2017)の3週)、今回7週目の首位に立ったことで、客演有りを含む女性ラッパーの楽曲でイギー・アゼリア feat. チャーリーXCX「Fancy」(2014)と並び最長タイに。次週の動向に注目です。

Truth Hurts」はラジオエアプレイが強く1億1530万を獲得、同指標首位ながら前週比4%ダウンしています。その他、ダウンロードは前週比29%ダウンの20000(同指標2位)、ストリーミングは同9%ダウンの2340万(同12位)と全指標ダウンしておりピークは過ぎているのですが、首位に返り咲いたのは前週首位に初登場を果たしたトラヴィス・スコット「Highest In The Room」の陥落が要因。

ラジオエアプレイは前週比61%アップしたものの1110万で同指標50位未満、一方でストリーミングは首位をキープしているものの前週比37%ダウンの3720万、ダウンロードは前週比87%ダウンの7000(同20位)というように、デジタル2指標が大幅減となっています。実は「Highest In The Room」が前週5万を超えるダウンロードセールスを成し遂げたのにはからくりが。ビルボードジャパンによる前週のチャート解説をみると。

セールスも好調で、週間51,000枚を記録してデジタル・ソング・セールス・チャートでは2位に初登場した。「ハイエスト・イン・ザ・ルーム」は、CD、カセットテープ、LP盤のパッケージ販売もあり、それらを購入するとダウンロードができるようになっている。

フィジカルで購入した方はダウンロードも可能とのことで、前週の数字に対するユニークユーザー数は少ないかもしれません。それが今週の売上減→チャートダウンにつながっているのならば前週の数字はからくりと呼ばれてもおかしくなく、今後米ビルボードが何かしらのチャートポリシー改正を行うかもしれません。

 

10位には、ジュース・ワールド&ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン「Bandit」が前週から1ランクアップしトップ10入り。

前週初登場しながら惜しくもトップ10入りを逃した「Bandit」。ストリーミングは前週比3%ダウンの3750万、ダウンロードも同49%ダウンの3000と減少していますが、前週4位に初登場したダン+シェイ feat. ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」が11位にダウンしたことで入れ替わるようにトップ10入りを果たしました。ジュース・ワールドにとっては昨秋最高2位を記録した「Lucid Dreams」以来2曲目、ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインは初のトップ10入りとなります。そのヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲインは最新ミックステープ『Al YoungBoy 2』が今週米ビルボードアルバムチャートを制しており、ソングス/アルバムチャート双方で結果を残したことに。ただし「Bandit」はミックステープ未収録となっています。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) リゾ「Truth Hurts

2位 (3位) ショーン・メンデス & カミラ・カベロ「Señorita」

3位 (5位) ルイス・キャパルディ「Someone You Loved」

4位 (6位) ポスト・マローン「Circles」

5位 (7位) クリス・ブラウン feat. ドレイク「No Guidance」

6位 (1位) トラヴィス・スコット「Highest In The Room」

7位 (8位) リル・テッカ「Ran$om」

8位 (9位) ビリー・アイリッシュ「Bad Guy」

9位 (10位) リル・ナズ・X「Panini」

10位 (11位) ジュース・ワールド&ヤングボーイ・ネヴァー・ブローク・アゲイン「Bandit」

11位以下を見ると、マルーン5「Memories」が20→12位となり最高位を更新。ダウンロードは前週比3%アップの21000を獲得し同指標トップとなっています。

また17位にはハリー・スタイルズの新曲「Lights Up」が初登場。ダウンロードは20000を獲得し同指標3位、ストリーミングは2150万で同13位に。次週の動向に注目です。

 

その次週ですが、たとえばSpotifyデイリーチャートをみると凪の状態となっており、上位に初登場する曲は少ないものとみられます。そんな中、日曜付でフランク・オーシャン「DHL」が4位に初登場したことは気になります。

もうひとつの注目は、リゾの次のシングル(と位置付けされている模様の)「Good As Hell」。前週から4ランクアップし20位に入りました。ラジオエアプレイが好調で前週比35%アップの4310万を獲得、同指標16位に上昇しています。「Truth Hurts」と同時トップ10入りの可能性も充分です。

「イエスタデイ」→『Traveler』→「ビンテージ」…Official髭男dismの発表タイミングはKing Gnuを彷彿させる件

Official髭男dismの快進撃が止まりません。アルバム『Traveler』がスピッツやBABYMETAL、渋谷すばるさん等強力なラインナップを抑えて10月21日付ビルボードジャパンアルバムチャートを制し、昨日はラジオ業界の中でも注目度の高い『J-WAVE TOKIO HOT 100』(J-WAVE 日曜13時)チャートで「イエスタデイ」が頂点に輝きました。

「イエスタデイ」は映画『HELLO WORLD』主題歌として9月11日に配信リリース。アルバム『Traveler』からのリード曲としての位置付けにもなり、アルバムセールス(からは1曲)がカウント対象となるJ-WAVEを制したわけです。シングルCDとしてのリリースはなかったものの、10月21日付ビルボードジャパンソングスチャートでは最高位となる3位に上昇しています。

Official髭男dismは10月9日にリリースされた『Traveler』から、新たに「ビンテージ」のミュージックビデオを10月15日に公開しました。

FODで配信されるバラエティ番組、『あいのり: African Journey』主題歌となったこの曲ですが、アルバム後にミュージックビデオを配信するというスタイルは、Official髭男dism同様に今年ブレイクを果たしたKing Gnuを彷彿とさせます。

最新曲「傘」のリリースゆえでしょうか、最近弊ブログで人気のエントリーがこちら。アルバム『Sympa』(2019)直後に未収録の新曲「白日」を発表、その後発表したミュージックビデオがアルバム収録の「The hole」であり、「白日」および「The hole」の投入によりアルバム共々チャートを再浮上且つKing Gnuの認知度上昇につながったと結論付けています。

Official髭男dismについてもそれと似たことが言えるかもしれません。「イエスタデイ」でアルバムへの機運を高め、同曲をアルバム『Traveler』からのリード曲に据えたことでJ-WAVEチャートを制しラジオ聴取者のバンドファンを増加、そしてアルバムリリース後「ビンテージ」のミュージックビデオ公開によりアルバムの勢いを持続させるという流れ。アルバムを出して終わりではなくシングルカット的な手法を採り入れることはアメリカのそれと似ている気がしており、歌手の認知度上昇のみならず彼らの芸術表現の最高形であるオリジナルアルバムの地位向上にも繋がり得るこの手法を高く評価したいところ。たとえば日本レコード大賞等、日本の賞レースにおいてアルバムへの光の当たり方があまりに弱いと思う故、尚の事です。