ゴスペル界、そしてヒップホップ界では先週末リリースされたカニエ・ウェスト『Jesus Is King』が賛否両論を呼んでいるようです。私見を述べるならば、伝統的なゴスペルとは呼びにくいものの、カニエの革新性ーカニエがゴスペルの新しい宗派を作っていると言ってもしっくりくるようなーは、11曲27分強という短さゆえに繰り返せば繰り返すほど染み込んでくるように感じます。
Wikipediaによるレクレーのディスコグラフィー(→こちら)をみると、2017年リリースのアルバム『Let The Trap Say Amen』以降は米ビルボードゴスペルアルバムチャートに登場していません。これまではクリスチャンアルバムチャートと共に登場していましたので、違和感が生じます。楽曲においても「Can't Stop Me Now (Destination)」(2016)以降は同様に、クリスチャンソングスチャートには登場してもゴスペルソングスチャートには登場しない状態です。
また、この10年におけるクリスチャンミュージック界を代表するラッパーといえるNFについても似た事態が発生(Wikipediaによるディスコグラフィーはこちら)。アルバムについては『Perception』(2017)以降クリスチャンアルバムチャートから、楽曲については「No Name」(2018)以降クリスチャンソングスチャートからそれぞれ除外されています(ただし「No Name」は米ビルボードクリスチャンAC/CHRチャートには登場。以降数曲が同様の状態となっています)。総合チャート、クリスチャンソングスチャート共にランクインしたのが『Perception』収録の「Let You Down」(全米12位、クリスチャンソングスチャート1位)ですが、この次のチャートイン楽曲が「No Name」であることを踏まえれば、「Let You Down」がきっかけになっているのかもしれません。
レクレーによるチャート上の違和感の表明を記事にしたのがそのチャートを取り扱う米ビルボードというのが複雑な心境ではありますが。これを機に思い出したのがリル・ナズ・Xによる「Old Town Road」です。米ビルボードソングスチャートで19週連続首位となり最長記録を更新したこの曲は、当初その音使いからカントリーソングスチャートでもランクインしたものの、米ビルボードの方針転換により除外されたのです。それを不服としたベテランカントリー歌手のビリー・レイ・サイラスが客演参加したことで"よりカントリーっぽく"なり記録を達成したというのは痛快ではあるのですが。
ゴスペルチャートやクリスチャンスチャートにおけるラップの除外は、「Old Town Road」がヒットの兆しをみせたタイミングでカントリーソングスチャートから除外されたことと同様、「Let You Down」がヒットしたことでラップ×ゴスペルもしくはクリスチャンミュージックに違和感を覚え始めた人がそれを表明したことで米ビルボードがフレキシブルに対応したのかもしれません。ジャンル決めについてのチャートポリシー(変更)のアナウンスがみられないゆえ、楽曲毎の個別対応と捉えるのが自然でしょう。
(ただそうなると、スヌープ・ドッグが昨年リリースしたゴスペルアルバム『Snoop Dogg Presents Bible Of Love』収録曲が米ビルボードゴスペルソングスチャートにランクインしたこと(→こちら)の説明は難しくなりますが、ランクインした4曲は全て歌手が客演しているため、歌モノとして判断されたのかもしれません。)
弊ブログでは今夏、森口博子さんによる『機動戦士ガンダム』シリーズ使用楽曲のカバー集『GUNDAM SONG COVERS』について幾度となく記載しました。
『GUNDAM SONG COVERS』はビルボードジャパンアルバムチャートで初登場5位、オリコンアルバムランキングでは同3位を記録。CDは売切状態が続く等人気にもかかわらず、青森県のほぼ全てのレンタル店舗では解禁日に未導入という事態が発生。TSUTAYAでは旗艦店と位置付けされたMORIOKA TSUTAYAでも同様なのは問題だと指摘しました。その後ようやく、自分の住む近隣のTSUTAYAでも取り扱いがはじまり、おそらくは全国的にも同様の措置が採られたこともあってか、『GUNDAM SONG COVERS』は最新11月4日付ビルボードジャパンアルバムチャートで66位をマーク。CDセールスとルックアップ(パソコン等に取り込んだ際にインターネットデータベースへアクセスする数)の順位が拮抗していることから、購入者の取込率やレンタル動向は高いとみていいでしょう。
(上記は『GUNDAM SONG COVERS』のCHART insight。折れ線グラフの黒は総合順位、黄色はアルバムCDセールス、紫はダウンロード、オレンジはルックアップを示します。)
鮎川麻弥さんも以前『機動戦士ガンダム』シリーズで楽曲が用いられており(テレビアニメ『機動戦士Ζガンダム』(1985-1986 名古屋テレビ / テレビ朝日)前期オープニング「 Z・刻をこえて―Better Days Are Coming―」等)、このタッグでのリリースは『GUNDAM SONG COVERS』同様話題になるかと思ったのですが、「追憶シンフォニア」はシングルCDセールス指標が初めて加算された11月4日付ビルボードジャパンソングスチャートで100位以内に入ることは出来ませんでした。
弘前地区のTSUTAYAは上記弘前店の他、弘前樹木店とも未入荷(他方MORIOKA TSUTAYAの導入は確認)、GEO弘前安原店でも同様でした。GEO青森柳川店は青森県のレンタル店で最も品揃えが多く、『GUNDAM SONG COVERS』もレンタル解禁日より導入したこともあってか今回のシングルもきちんと入っていたのですが、他店舗の状況を踏まえるに『GUNDAM SONG COVERS』の教訓が生きていない…厳しくもそう言い切っていいでしょう。1枚でも導入されていたならば、そして『GUNDAM SONG COVERS』と同時展開していたならば…と、その機会損失っぷりを強く残念に思います。
「追憶シンフォニア」はダウンロードサービスのiTunes Storeで未導入、サブスクリプションサービスのSpotifyでも未解禁を確認…その状況は、『GUNDAM SONG COVERS』が発売から1ヶ月以上経ってデジタルを解禁した展開をなぞっているように思われます。おそらく「追憶シンフォニア」等も後日デジタル解禁されるものと思われますが、この展開手法にも疑問が。ビルボードジャパンアルバムチャートは3指標で構成されているのに対し、ソングスチャートは8指標に基づくもの。今回加算対象となっているシングルCDセールス、ルックアップ(この2指標は乖離してはいますが)、ラジオエアプレイ(対象ラジオ局のOA回数に人口を加味したもの)、Twitter(ひとつのツイートに歌手名と曲名と共に記載したもの)は比較的強いと言える一方、ダウンロード、ストリーミング(サブスクリプションサービスの再生回数および歌詞サイトの閲覧回数)、動画再生、そしてカラオケ(この指標はリリースから数週経ってランクインするのが通常ですが)という4つの指標が未加算ゆえ、総合チャートでの100位以内ランクインを逃してしまったのでは、と考えます。
『GUNDAM SONG COVERS』の好調っぷりを踏まえ、森口博子さんは今年の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合ほか)に復帰を果たす可能性があるのではと考えていました。しかし制作側が仮にアルバムのみで判断を保留した場合、今回のシングルで見極めるだろうと想像出来、今回のシングルがビルボードジャパンソングスチャートで十分な成績を残せなかったことで出場の可能性は微妙となったのではと懸念しています。『NHK紅白歌合戦』出演者の選出基準がオリコンよりビルボードジャパンのチャート成績にあると考えるゆえ、尚の事です。
アルバム『Traveler』が前週末からレンタル解禁となったことで、アルバム収録曲の「Pretender」をはじめ「宿命」「Stand By You」のシングルCDセールスおよびルックアップ指標は今後収束するだろうとは思われます。しかしながら既にロングヒットの波に乗っていることや、今後年末年始の歌番組出演、『NHK紅白歌合戦』への出演(これは間違いないでしょう)を機に、米津玄師「Lemon」同様にOfficial髭男dismが年始のチャートを席巻する可能性があるかもしれません。
先週末、遂にリリースされたカニエ・ウェスト初のゴスペルアルバム『Jesus Is King』はチャート上でも好調で、米ビルボードソングスチャートでは前作『Ye』(2018)を上回る初動を獲得すると予想されています。ソングスチャートについてはブログ等で記載する予定です。
この『Jesus Is Kingにはタイ・ダラー・サインやクリプス、意外なところではサックスプレイヤーのケニー・Gが参加していますが、「Hands On」におけるゴスペル歌手のフレッド・ハモンドの客演クレジットにはいい意味で驚かされました。たしかにカニエ・ウェストは『The Life Of Pablo』(2016)でゴスペル歌手のカーク・フランクリンを招聘した過去があり、いや遡ればファーストアルバム『The College Dropout』収録のシングル、「Jesus Walks」ではARC(・ゴスペル)・クワイア「Walk With Me」をサンプリングしたことを考えれば、ゴスペルへの傾倒は昔からあるのですが。そんな中で今回カニエが客演に迎えたのはフレッド・ハモンドでした。
フレッド・ハモンドは1960年生まれで現在58歳。1985年、ゴスペルグループのコミッションドのオリジナルメンバーとしてデビュー。同グループには「Never Would Have Made It」で大ヒットを飛ばすマーヴィン・サップも在籍していたことで知られています。コミッションドとしてデビューする前にはゴスペルトリオのワイナンズにベースプレイヤーとして参加しており、フレッドは1980年代前半からゴスペル界で認知されているのです(フレッドがベース弾きであることは後のソロアルバム『Somethin 'Bout Love』(2004)のジャケットをみると解ります)。コミッションドを脱退した後、フレッドは自身のクワイアであるラディカル・フォー・クライストを率いてアルバム『The Inner Court』(1995)をリリース、以降ソロとしてのキャリアを築いていきます。フレッドはゴスペル音楽界における3大音楽賞…グラミー賞(ゴスペル部門)、ステラ-賞およびドーヴ賞を全て受賞し、現在も活動を続けるゴスペル界の大御所なのです。
実はつい先日、スタッフの一員を務めるラジオ番組『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時)でゴスペル的J-Popという音楽特集を担当した際、自分が一時期在籍していたHIRO's MASS CHOIRのオリジナル曲を紹介したのですが。
クワイアではフレッドの楽曲もカバーしていて、個人的にはかなり好きな一曲でした。それが「Glory To Glory To Glory」。
「Someone You Loved」については、なかなかトップ10出来ない状況であったことからこの曲に特化したエントリーを書いたことがあります。
その際も紹介したのが、上記ミュージックビデオとは異なる新たな作品。
この2つ目のミュージックビデオ公開が功を奏し、エントリー記載の翌週(9月21日付)では9位に上昇。初のトップ10入りを果たした後は4→3→3→5→3位と順調に推移し、遂に今回初の首位を獲得したのです。ソングスチャート(Hot 100)初登場から24週目での1位獲得は、ローンスター「Amazed」(2000 31週)、ジョン・レジェンド「All Of Me」(2014 30週)、クリード「With Arms Wide Open」(2000 27週)、ヴァーティカル・ホライズン「Everything You Want」(2000 26週)に次ぐ歴代5位の遅咲き記録となります。
ソングスチャートを構成する3指標をみると、ラジオエアプレイは前週比2%ダウンの1億560万(同指標2位)、ストリーミングは同2%アップの2520万(同8位)、そしてダウンロードは同41%大幅アップの24000(同2位)に。ダウンロードの急伸は、アメリカのテレビ局ABCで放送されたダンスリアリティ番組『Dancing With The Stars』で用いられたことが大きいと見られます。
前週返り咲きで通算7週目の首位を獲得したリゾ「Truth Hurts」は2位に後退。ラジオエアプレイは前週比3%ダウンの1億1190万(同指標首位)、ストリーミングは同7%ダウンの2170万(同11位)、ダウンロードは同15%ダウンの17000(同5位)となり、「Someone You Loved」にはラジオエアプレイで勝るもののデジタル2指標で逆転された形となりました。
セレーナ・ゴメス「Lose You To Love Me」が15位に初登場を果たしました。リリースは前週水曜であり、デジタルの集計期間はわずか2日のみ(ラジオは日曜〆のため5日間)ですが、ダウンロードは36000を獲得し同指標首位、ストリーミングは1530万で同20位にそれぞれ初登場。ラジオエアプレイは50位未満ながら1410万を獲得しています。実はセレーナ、この翌日には新曲「Look At Her Now」もリリース。
Spotifyデイリーチャートを見る限りでは「Lose You To Love Me」が「Look At Her Now」よりも勢いがあることから、次週は「Lose You To Love Me」のトップ10入り、「Look At Her Now」も高位置に登場することが予想されます。
さて次週は、なんといってもカニエ・ウェスト初の(フル)ゴスペル作『Jesus Is King』の動向に注目。前作『Ye』(2018)は初登場でアルバムチャートを制し、同週のソングスチャートで8~36位に収録曲が軒並み登場したのですが。
『Jesus Is King』のSpotifyの動向をみると、アルバム収録の全11曲は10月27日付デイリーチャートにおいて1~26位に登場(それも「Jesus Is Lord」が26位で、その他は14位以内に10曲ランクイン)。『Jesus Is Lord』の初動が前作超えとなるのではという見方もあり、次週のソングスチャートはカニエ・ウェストとセレーナ・ゴメス、リゾによって一気に動くかもしれません。特に『Jesus Is King』からリリックビデオが公開された「Follow God」はサブスクリプションサービスで最も聴かれているゆえ要注目です。
「Oh Happy Day」は日本でヒットした映画『天使にラブ・ソングを2 (原題:Sister Act 2: Back in the Habit)』(1993 日本では翌年公開)でも用いられたゴスペル有名曲。今回はエドウィン・ホーキンス・シンガーズによるオリジナルバージョンをOA。リリースからちょうど半世紀が経過しました。
「主の御名をたたえよ」は、自分が関東在住時代に在籍していたゴスペルクワイア、HIRO's MASS CHOIRのファーストアルバム『Unconditional Love』収録曲。自分がラジオで紹介するのは初めてかもしれません。レコーディングや大舞台でのライブも経験する等、沢山の刺激をいただきました。このことについては何度かブログで記載していますが、代表的なエントリーを下記に。以下、楽曲毎にエントリーを紹介します。
中島美嘉「ALL HANDS TOGETHER」はゴスペル的J-Popというよりもはやゴスペル。リリース前年に発生したハリケーン、カトリーナで甚大な被害を受けたニューオーリンズへのチャリティシングルとしてリリース。前作のブルースナンバー「Cry No More」と合わせて彼女の本気度を強く感じたのは勿論のこと、作曲で参加したCOLDFEETのロリ・ファインさんとの相性の良さを実感。このタッグで一枚アルバム出してほしいくらいです。
今年を代表する歌手となったOfficial髭男dismが昨秋リリースしたEPの表題曲「Stand By You」。ミュージックビデオで描かれるのはバンド仲間と共に歩む姿ですが、アコースティックバージョンではシンプルにピアノとコーラス、ハンドクラップのみで構成。シンプルながらふくよかな音の鳴りがゴスペル的だと思ったのですが、とあるインタビューで録音(録画)場所が教会だと知り深く納得。しかも「Stand By You」自体、昨年観たチャンス・ザ・ラッパーのライブに感化されてゴスペル的にアレンジし直したとのこと。元々ソウルアプローチに長けているOfficial髭男dismですが、ゴスペルを手掛けても本格的で、実力派であることがよく解ります。 無論、歌詞の"You"を神様に置き換えても成立しそうですね。
実は先週末リリースされた、ラッパーのカニエ・ウェストの最新アルバム『Jesus Is King』は、タイトルからも解るように全編がゴスペル。今年のコーチェラ・フェスティバルでもゴスペルパフォーマンスを披露したカニエが本格的に取り組んだこの作品は、サブスクリプションサービスで高い再生回数を誇っています。加えてこの1年でAIさん、Official髭男dism、RADWIMPSによるゴスペルアプローチ作品が用意され、またFoorin(および曲を手掛けた米津玄師さん)もゴスペルを想起させる作品を作っていることから、今後ゴスペルがトレンドとなるかもしれません。