イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

9月14日付ビルボードジャパンソングスチャート、BTS「Dynamite」のストリーミングが急落した理由を探る

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。 8月31日~9月6日を集計期間とする9月14日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、STU48「思い出せる恋をしよう」がシングルCDセールスを武器に首位を獲得しました。

一方で、チャート構成比を勘案するに、次週の急落は確実と思われます。

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シングルCDセールスが全体の9割を超え、一方でダウンロード、ストリーミングおよび動画再生は300位未満のためにポイントは未加算。ルックアップは24位でCDセールスと大きく乖離しレンタル数やユニークユーザー数の多くなさが想像できることから、今週の所有指標の反動が次週如実に表れそうです。前作「無謀な夢は覚めることがない」はCDセールスに伴い今年2月10日付で首位を獲得しながら翌週は83位に急落しましたが、今作はどうなるでしょう。尤も、「思い出せる恋をしよう」のCDセールス自体が前作の半分に満たないのが気になります。

 

さて、米ビルボードソングスチャートで2連覇を達成したBTS「Dynamite」は日本において首位獲得には至れていないものの、3週連続でトップ10入りを果たしています。

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BTS「Dynamite」の米チャートの動向において、特に所有指標であるダウンロードが強いことについては昨日のブログをご参照ください。

日本ではBTS「Dynamite」がCD未リリースのため、所有指標はダウンロードに限られます。ダウンロードでは3週連続トップ10入りを果たしているものの、25842(2位)→12420(10位)→8857(9位)とダウン。初週は金曜午後の解禁ゆえ2日半でこの売上を記録したことになりますが、上記チャート推移(CHART insight)における構成比率をみると、日本においては「Dynamite」が接触指標群に支えられており、とりわけストリーミング指標が強いことがよく解ります。

とはいえニュースには気になる文言が。

前週、YOASOBI「夜に駆ける」、NiziU「Make you happy」に次ぐ史上3曲目となる週間1千万再生を記録した「Dynamite」は、今週その再生回数が3分の2に。接触指標は所有指標より急落することが少ないためこの数値には驚かされたのですが、これは確実にLINE MUSICが実施する"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンの反動と言えます。ちなみに日本のSpotifyにおけるデイリー再生回数の推移をみるとBTS「Dynamite」は高値安定していることから、LINE MUSICの影響はやはり確実だと思うのです。

キャンペーンの概要はこちら。

「Dynamite」解禁日を含む1週間、LINE MUSICで500回以上聴いた方の中から30名にメッセージ&サイン入り未公開フォトが当たるというのがキャンペーンの内容。ビルボードジャパンにおいては前週の集計期間のうち前半4日分が当該キャンペーンと重なっていたため、いわば"ブーストがかかった"状態になったのです。参加賞が用意されていることも再生回数増加を促した要因と言えます。そしてキャンペーン終了後はその反動が表れた形に。

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8月より前からもみられていたこの"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンは、先月に入りより多くみられるようになった印象があります。このキャンペーン実施曲のLINE MUSIC自体と、ビルボードジャパンストリーミングおよび総合の週間チャートを比較してみると、【キャンペーン対象曲はLINE MUSICチャートに登場するもののビルボードジャパンでの順位は高いとは言えない】そして【LINE MUSIC内でもキャンペーン終了後は週間順位が極端に下がる】という2つの特徴がみえてきます。その特徴の中にあって上位をキープするBTS「Dynamite」は素晴らしいとは思うものの、LINE MUSICでは週間1位(8月26日~9月1日)→9位(9月2~8日)とダウンしているのはやはりキャンペーンブーストの反動と言えるでしょう。

 

LINE MUSICについては先日、このようなインタビューが公開されています。

上記は前編のインタビューですが、特に後編に対し自分は強い引っ掛かりを感じています。

『LINE MUSICのユーザーはランキングから聴く傾向がある (中略) ランキングを入り口に曲をチェックして、自分が気に入った曲をライブラリに入れて聴くというサイクルが多い』『昨年まで無名だったアーティストの楽曲がTikTokでのバズをきっかけに、LINE MUSICのランキング上位に次々と入ってくる流れが生まれています』(後半の『』の部分はインタビュアーの問いかけですが、受け手が『まさにそうですね』と同意していることからLINE MUSICおよびTikTokの意見と受け取れます)…LINE MUSICのランキングの重要性がいわゆる中の人に強く認識されている一方で、そのランキングが"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンによって大きく変貌してしまったことをLINE MUSIC側はどう捉えているのか気になります。インタビューの時期は不明ですが仮に先月実施されていたとしたら、LINE MUSIC側はこのキャンペーンに伴うチャートの変化を少なからず理解していたのではないかと思うのです。

 

中長期的にランキングをチェックすれば、いやデイリー単位だとしても、LINE MUSICが他のサブスクサービスより若年層に支持される曲がランクインしやすい傾向にあることは、たとえば下記ブログエントリーにおける主要3サービスでの順位比較からも明らかです。

しかしながらそのチャートが極端になりすぎると、"この曲は本当に人気なのか?"という疑問が芽生え、不信感として育ちかねません。BTS「Dynamite」のように人気の曲がキャンペーン対象曲によって埋もれることも出てきます。LINE MUSICのキャンペーンは自らのチャートの特性(さらには他サービスにはないであろう、ユーザーがどれだけその曲を聴いたかが可視化される仕組み)を用いた点で面白い取組かもしれませんが、このキャンペーンの連発は"諸刃の剣"と言えるかもしれないと感じる自分がいます。

BTS「Dynamite」が2連覇を達成、カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」を抑えた要因は?…9月12日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の9月7日月曜が祝日のため翌8日に発表された9月12日付最新ソングスチャート、前週初登場で首位を獲得したBTS「Dynamite」が連覇を達成しました。

ビルボードソングスチャートを予想する方にはカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」が首位奪還を果たすと捉えていた方もいらっしゃいましたが、BTS「Dynamite」は「WAP」を抑えることができました。

BTS「Dynamite」

 ストリーミング:1750万(前週比49%ダウン 同指標9位)

 ダウンロード:182000(前週比31%ダウン 同指標1位)

 ラジオエアプレイ:1600万(前週比38%アップ 同指標50位未満)

・カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

 ストリーミング:5850万(前週比10%ダウン 同指標1位)

 ダウンロード:20000(前週比20%ダウン 同指標3位)

 ラジオエアプレイ:2450万(前週比31%アップ 同指標32位)

ストリーミングおよびラジオエアプレイという接触2指標では「WAP」がリードし、ストリーミングについては3倍以上となっているのですが、「Dynamite」はダウンロードが9倍以上となっており、これが「WAP」を上回る原動力となったことは間違いありません。

「Dynamite」は前週、フィジカルセールスを除いても265000もの売上を記録していますが、ダウンロードが2週連続で185000以上を売り上げたのはザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」が2016年9月17日付で208000、翌週199000を売り上げて以来の記録となります。また初週から2週連続で185000以上を売り上げた例としてはジャスティン・ティンバーレイク「Can't Stop The Feeling!」が挙げられます(2016年5月28日付で379000、翌週204000を記録)。

このダウンロード指標の大記録に貢献したのは、「Dynamite」に"プールサイド" "トロピカル"という新たなリミックスが追加されたこと。リリースは今回のチャートにおいてダウンロード指標の加算初日にあたる8月28日であり、また普段は0.99ドルもしくは1.29ドルといった価格設定を0.69ドルに抑えたことも功を奏しています。安価販売はオリジナルバージョンやそのインストゥルメンタル、EDMおよびアコースティックリミックスでも前週から引き続き行われており、これらリミックスは米ビルボードソングスチャートにおいてオリジナルバージョンに合算されます。また今週の集計期間(先述したダウンロード、およびストリーミングは8月28日金曜から。ラジオエアプレイは8月31日月曜から)には、現地時間の8月30日日曜に開催された『MTVビデオ・ミュージック・アワード』におけるBTSのパフォーマンスも影響していることは間違いないでしょう。

 

 

その『MTVビデオ・ミュージック・アワード』で最優秀ビデオ賞(Video Of The Year)を獲得したザ・ウィークエンド「Blinding Lights」は5位をキープ。ラジオエアプレイでは前人未到となる最多首位獲得週を22に伸ばし(前週比1%のダウンながら7960万を獲得)、アワード効果でダウンロードは前週比54%アップとなる13000を獲得しました。そして今回の5位登場により「Blinding Lights」は26週もの間、5位以内に在籍。これはポスト・マローン「Circles」(2019-2020)と並ぶ歴代3位タイであり、エド・シーラン「Shape Of You」(2017)、ザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」(2016-2017)の記録まであと1週と迫っています。

 

8位には24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」が前週から4ランクアップし初のトップ10入り。24Kゴールデンにとって総合ソングスチャート(Hot 100)ランクインは「Valentino」(2019 92位)以来2曲目、イアン・ディオールにとってはHot 100ランクイン自体も初となります。その「Valentino」はTikTokから火が付き、TikTokではこの曲を用いた動画が現段階で82万本を突破。そして「Mood」も現段階で85万本以上作られています。「Mood」を用いた下記動画には500万もの"いいね"が付いているのです。

@tiernvn

ASKING A STRANGER FOR A KISS IF I COULD PLAY HER FAVORITE SONG ON PIANO BLINDFOLDED PT 1😳😂 LIKE FOR PT2 ##foryou ##CoupledUp ##fyp ##xyzbca ##viral ##mood

♬ Mood - 24KGoldn

24Kゴールデンの経歴等については、DJ YANATAKEさんとライターの渡辺志保さんによる『INSIDE OUT』(block.fm)にて昨秋紹介されています。また同時期には渡辺さんが『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)でも紹介していました

「Mood」は既にストリーミングで3位を記録し、しかも前週比13%アップとなる2360万を獲得。米ビルボードソングスチャートにおけるストリーミング指標は定額制音楽配信サービスでの再生回数に加えて動画再生回数も含まれるため、TikTokで人気となった曲はこの指標にまず大きく影響するのです。ダウンロードは前週比7%アップの8000(同指標12位)、そしてラジオエアプレイは同105%アップの1600万(同指標50位未満)となり、3指標の数値をみるに次週以降極端にダウンすることはないと思われます。

 

最新のトップ10はこちら。

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (1位) BTS「Dynamite」

2位 (2位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

3位 (3位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

4位 (4位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

5位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

6位 (7位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

7位 (6位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

8位 (12位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

9位 (9位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

10位 (10位) ルイス・キャパルディ「Before You Go」

トップ10圏外では、BLACKPINK with セレーナ・ゴメス「Ice Cream」が13位に初登場。BLACKPINKは自身の最高位を更新しました。

ダウンロードで2位を獲得している「Ice Cream」(同指標の順位はこちらで確認できます)。ダウンロードは唯一の所有指標であり、次週接触2指標(特にラジオエアプレイ)が上昇しなければ急落も有り得ます。

 

次週は「Dynamite」が首位をキープできるか、それとも「WAP」が3週ぶりにその座に返り咲くかが見どころ。このブログを執筆する現段階においてBTS「Dynamite」はリミックス等も含め、iTunes Storeでも、また米におけるBTSの公式ストアでも0.69ドルで販売されています。ラジオエアプレイを伸ばしている「WAP」に追いつかれないようにするためにはダウンロードも引き続き高水準をキープする必要があるでしょうが、BLACKPINK with セレーナ・ゴメス「Ice Cream」でも述べたように、所有指標が伸び続けるには限度があります。そのため如何に接触2指標を伸ばすかが「Dynamite」3連覇の課題であり、とりわけラジオエアプレイにおいては自身初の同指標50位以内ランクインがロングヒットの鍵だと考えます。

外部メディアへの寄稿等をまとめました (随時更新していきます)

(最終更新:2024年1月16日)

 

 

これまでに外部メディアに寄稿した記事等をまとめています。是非チェックしてください。

 

 

●ピンズバNEWS掲載 (電話取材)

・2024年の要注目アーティストについて (2024.1.14)

 

●ピンズバNEWS掲載 (電話取材)

NHK紅白歌合戦の動向について (2023.12.30)

 

サイゾーウーマン (電話取材)

SMAP解散以降の”ジャニーズ音楽”について (2023.12.14)

 

●ピンズバNEWS掲載 (電話取材)

NHK紅白歌合戦出場歌手予想 (2023.11.3-2023.11.5)

 

●音楽ナタリー掲載

紅白歌合戦 出場者予想2023 ミセス? NewJeans? 10-FEET? サザン? 今年のラインナップをライター4人が徹底予想 (2023.10.26)

 

INTERNET Watch掲載

・みんなの在宅ワーク 第97回:音楽チャートアナライザー Keiの在宅ワークスタイル (2023.04.11)

 

Impress Watch掲載

・紅白は音楽の“いま”を反映? ビルボードジャパンチャートとヒットの仕組み (2023.02.03)

 

●日刊大衆掲載 (電話取材)

NHK紅白歌合戦』は本当に「老人切り捨て」「若者重視」なのか?「出てもおかしくなかった」アーティストの名前 (2022.12.09)

 

TOKION掲載

・「J-POPは海外に通用するのか?」を音楽チャートから考える (2022.06.17)

 

●uDiscoverJP:音楽サイト掲載

・4年前の楽曲、グリフィンの「Tie Me Down」が日本でブレイクし洋楽チャートを席巻している理由 (2022.04.06)

 

● 音楽ナタリー掲載

ビルボードジャパン年間チャート座談会 (2021.12.10)

 

● NumberWeb掲載

NHK紅白歌合戦 (2020.12.31)

 

● Real Sound掲載

・SiM、Aimer、YOASOBI……可視化される日本アニメソングの海外人気 グローバルチャートの動向から考察(2022.05.28)

 

・gnash(ナッシュ)「imagine if」(2020.11.21)

チャーリー・プース「Girlfriend」(2020.07.09)

マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」(2019.12.17)

アリゾナ・ザーヴァス「Roxanne」(2019.12.01)

ブラック・アイド・ピーズ「RITMO (Bad Boys For Life)」(2019.11.24)

カニエ・ウェスト『Jesus Is King』(2019.11.09)

・嵐「Turning Up」(2019.11.08)

・illion「GASSHOW」(2019.10.31)

・ブラックベアー「hot girl bummer」(2019.10.22)

・ダン+シェイ & ジャスティン・ビーバー「10,000 Hours」(2019.10.08)

・Novelbright「Walking with you」(2019.10.03)

・トーンズ・アンド・アイ「Dance Monkey」(2019.09.28)

マルーン5「Memories」(2019.09.24)

 

 

○ メディア出演

FMアップルウェーブ『わがままWAVE It's Cool!』DJ(2006~2020.06 不定期出演)

音楽特集関連でのブログ掲載を以下に。

・YOASOBI特集(サポート担当)を踏まえた、YOASOBI「夜に駆ける」でのブレイクの理由 (2020.06.14OA)

・ゴスペル的J-Pop特集 (2019.10.27OA)

RHYMESTER特集 (2019.06.30OA)

安室奈美恵特集 (2017.11.12OA)

三浦大知特集 (2017.03.26OA)

 

日米の音楽チャートを中心とする現在の流行について、毎日弊ブログにて紹介しています。ご依頼などがございましたら、faceknk @ gmail.com宛にお願いいたします。

首都圏ラジオ局の聴取率調査週間が開始、ニッポン放送の秘技とは

首都圏ラジオ局は2ヶ月に1度、聴取率調査週間の実施対象となります。聴取率調査は通常偶数月に行われるのですが、今年はオリンピックやパラリンピックが行われることを見越して、8月の分が9月にずれ込むという噂がありました。そして8月末、ニッポン放送によるスペシャルウイーク告知により9月7~13日が聴取率調査週間であることを確認。つまり、本日より開始となります。

 

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(※下記リンク先(紹介ページ)は聴取率調査週間の度に内容が変わるため、9月のスペシャルウイークのページを紹介する意味でキャプチャさせていただきました。問題があれば削除いたします。)

ニッポン放送のスペシャルウイーク紹介ページで今回冒頭に登場する番組は、この秋スタートする『ザ・ラジオショー』(月-金曜 13時)。この番組に差し替わる前の番組で中川家も出演していた『DAYS』(9月2日終了)については、月曜担当だった山口智充さんが2月に降板したことに強い違和感を覚え、以前ブログに取り上げました。

ただしこの時は、通常の4月改編とは異なり3月にいち早く改編したニッポン放送について、ラジオ業界の通例に従っていないことは悪いことではないと思う部分もありました。しかし『DAYS』について、問題は続きます。

2020年2月10日をもって、月曜のパーソナリティであった山口が降板し、空いた月曜を日替わりパーソナリティ扱いにしていたが、木曜と兼ねた安東が4月から正式に月曜にスライドし、木曜に新しいパーソナリティが据える予定だったが、特番として『辛坊治郎ズーム そこまで言うか!』が編成され、特番期間を経てそのままレギュラー復活することが決定され、放送曜日が削減された。その後、同年6月11日に『ズーム』が、7月6日から長兄番組に当たる『ザ・ボイス そこまで言うか!』のかつての放送枠であった、平日夕方に移動する事が発表された。7月以降の木曜の当該時間帯については当番組の放送枠に戻らず単発特番枠に変更された。

DAYS (ラジオ番組) - Wikipediaより

1曜日分が削られ、放送時間も30分短縮させられるという扱いの酷さ、さらに個人的にはその30分を与えられた新番組におけるカラーや、パーソナリティの重用度合いにも疑問を抱きます。最終的には『DAYS』をどうしたかったのか…放送局への疑念は強まるばかりです。

そして始まる番組についても。

ラジオ局の通常の改編期である4月と10月に番組の開始を必ずしも合わせる必要はないというのは先程も記載しましたが、聴取率調査開始日に合わせた番組スタートは"秘技"かもしれませんが言い換えれば"反則"と思われても仕方ないのではないでしょうか。番組のスタートが気になって一度聴いてみようとする”ご祝儀”聴取が調査に反映される可能性は高いはずであり、そうなると出てくる数値に不自然さが生まれると思うのです。

 

元来、ラジオの聴取率はラジオが如何に人々の生活(習慣)に定着しているかを示すものではないでしょうか。ニッポン放送は以前から聴取率調査週間にレギュラー放送を排し特番を組み続けてきたことで、レギュラー放送の出演者やスタッフさらにリスナーを大事にしない姿勢を感じてきましたが、遂にここまで…という疑問を抱かずにはいられません。同局の姿勢への私見こちらから確認できます。

 

なお、TOKYO FMにおいても、聴取率調査週間における『村上RADIO』OAは変わりません。

同番組については通常聴取率調査週間が行われた8月にも放送されました

しかしながら土曜16時は本来『リリー・フランキー「スナック ラジオ」』がレギュラー番組として放送されており、そちらを差し替えてでも『村上RADIO』にこだわった(と捉えられてもおかしくない)TOKYO FMからは、様々な番組を差し替えることに躊躇がなくなってしまったのではないかという姿勢を感じざるを得ません。この『村上RADIO』推しについては以前から記載していますが、ニッポン放送と同様にレギュラー放送の出演者やスタッフさらにリスナーからの信頼失墜を招きかねないのではと危惧しています。

この手法を歓迎する向きがあるならば、同種の手段をされた側に立って考えてみては如何でしょうか。

TBSラジオの秋改編は金曜のプレミアム化と平日の時間認識強化にある

TBSラジオがこの秋、大改編を実施します。

有馬隼人とらじおと山瀬まみと』(金曜8時30分)が終了、『ジェーン・スー 生活は踊る』(月-金曜11時)が月-木曜に変更し、この2枠を用いて『金曜ボイスログ』がはじまります。

また『ACTION』(月-金曜15時30分)が終了し、同枠には『荻上チキ・Session-22』(月-金曜22時)が『荻上チキ・Session』として移動。

荻上チキ・Session-22』の後枠には新番組『アシタノカレッジ』が登場。『ACTION』金曜担当の武田砂鉄さんが同曜日を、月-木曜をキニマンス塚本ニキさんが担当します。

他にも新番組が登場するものと思われますが、何よりこれら生放送枠の改編は非常に大きいと思われます。

 

TBSラジオの今回の改編の目的は、【平日における金曜のプレミアム化】そして【月-木曜のメインパーソナリティ固定】という2つの目的があると考えます。後者についても、金曜の特別感を演出する意味で前者を補強していると言えそうです。

【平日における金曜のプレミアム化】については、聴取率で追随するJ-WAVEが月-木曜と金曜がほぼ完全に別番組(6-27時が別)となっており、金曜は他の平日と異なることを強く訴求しています。ニッポン放送においては明日開始の新番組に伴い、8時28分から夕方までが異なる形に。そしてNACK5では小林克也さんによる長時間番組『FUNKY FRIDAY』が四半世紀以上放送されています。首都圏ラジオ局の多くは金曜を他の平日とは異なる編成にしているのですが、TBSラジオは今回の改編で8時30分から15時半枠を変更する形となり、ラジオ局の全体の流れに合わせてきたと言えそうです。

他方、『ACTION』の終了も大きな意味を持ちます。それは同枠に報道番組が帰ってくるということでもありますが、大事なのは月-木曜においてメインパーソナリティが全て統一されるということ。『ACTION』全曜日に出演していた幸坂理加さんはアシスタントの位置付けであり、秋以降金曜夜枠を担当する武田砂鉄さんが(メイン)パーソナリティという立場となります。『たまむすび』でも月-木曜と金曜で(メイン)パーソナリティが異なることから、TBSラジオは改編のタイミングで【月-木曜のメインパーソナリティ固定】という形を採ります。

このふたつの変更により、TBSラジオを金曜に聴くと”(土日休みの方にとっては)明日は休み”という意識が高まり、また平日の(メイン)パーソナリティが固定されることでリスナーに”今だいたい○時だ”という認識がより強まることになるでしょう。この認識は、日々の生活に寄り添うメディアにとって重要なものであるはずです。

 

ラジオ局は、テレビ局の平日生ワイド番組ではほぼ見られない金曜プレミアムシフトを徹しつつあります。あたかもプレミアムフライデーと形容されるかもしれないその仕様は、ラジオが聴取者にとって、他メディア以上に寄り添っているからこそ生まれたのではと感じています。無論、番組の成功がなければまた元に戻るのかもしれませんが、その推移を見守っていきましょう。 

2020年8月の私的トップ10ソングス+α、選びました

1月からはじめた【私的トップ10ソングス+α】企画。前の月にリリースされた曲を中心に、しかしその縛りは出来る限り緩くした上で選んでみました。ミュージックビデオ等動画がない曲は巻末のプレイリスト(Spotify)でチェックしてみてください。過去の私的トップ10ソングス、および2020年上半期の邦楽ベストソングスについてはこちらをご参照ください。

ちなみに個人的に毎回チェックしているプレイリストは現時点において主に、New Music WednesdayNew Music Friday JapanNew Music FridayおよびMonday Spinとなっています。

 

 

10位 Negicco「午前0時のシンパシー」

アレンジをPARKGOLFさんが、ソングライトを一十三十一さんが担当したNegiccoの新曲。十一さんにセルフカバーしてほしいという思いも強く抱きつつ、しかしアイドルソングとして不思議と違和感がありません。これはひとえにNegiccoの持つ変わらない鮮度ゆえにあらゆる曲をアイドルらしい瑞々しさに昇華できるゆえでしょう。

 

9位 PJ・モートン feat. J・モス「Repay You」

マルーン5のメンバーとしても活躍するR&B歌手、PJ・モートンの初となるゴスペル作『Gospel According To PJ』収録曲。牧師でゴスペルシンガーでもある父の流れを受け継いだかの如き作品はカーク・フランクリンやクラーク・シスターズ等客演も豪華。R&Bプロデュースも行うJ・モスを迎えた曲はJ・モスらしいコーラスワークが活き、特に終盤の高揚感が堪らない一曲。

 

8位 カルヴィン・ハリス feat. ザ・ウィークエンド「Over Now」

ジャンルの壁がいい意味で壊れたこの数年の音楽を代表する2組のコラボレーション。カルヴィン・ハリスの傑作アルバム『Funk Wav Bounces Vol.1』(2017)の流れを組むと思しきこの曲で、同作の第2弾を期待せずにはいられません。なにより、1980年代シンセポップの要素が活きた「Blinding Lights」で米ラジオソングスチャート首位記録を更新中のザ・ウィークエンドをフィーチャーしたこの曲が悪い訳ないのです。

 

7位 バイ・アレクサンダー feat. Tanerélle「Stalling」

(※”Tanerélle”についてはカタカナ表記が不明のため英語にて記載しています。)

イマジン・ドラゴンズやエミネム等を手掛けたプロデューサー、アレックス・ダ・キッドがバイ・アレクサンダー名義でジャズアルバムをリリース。ジャンルにとらわれない活躍も素晴らしいながら、ジャズに馴染みがない方でもヒップホップ的ドープな質感に身震いすること間違いありません。アウトロの展開も見事。

 

6位 fox capture plan feat. おかもとえみ「甲州街道はもう夏なのさ」

Lantern Paradeによる2005年曲のカバー。フレンズのおかもとえみさんの気怠げなボーカルとジャズになりすぎないfox capture planのアレンジが絶妙。そして歌詞にはいい意味で驚かされます。 

 

5位 蓮沼執太フルフィル「FULLPHONY IV : Faces」

蓮沼執太フィルに公募による10名を加えた総勢26名のフルフィルとして生まれたアルバム『FULLPHONY』収録。同名の4楽章の最後を飾るこの曲におけるオーケストラとヒップホップの豊かな融合よ。この曲を楽章の最後に据えたセンスの良さにも脱帽です。

 

4位 (G)I-DLE「Tung-Tung - Empty」

ザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」的なサウンドをより内省的にした感があるこの曲は、K-Popアクトの(G)I-DLEによる日本向けミニアルバム『Oh My God』に収録された日本オリジナルナンバー。個人的にはK-Popアクトに、J-Pop特有の歌謡曲的落とし込みが一切ない曲を求めていたので、この曲の登場を心から嬉しく思います。日本語の発音も流麗であり、一方で韓国語的発音が感じられるラップパートではその発音が説得力を高めプラスに作用しているというのも素晴らしいですね。

 

3位 レデシー feat. サー・ロック「Wake Up」

R&Bやゴスペル界において、8月28日はベテランの新譜が多数リリースされた重要日。先月上位に登場したケム、そのケムに客演参加したトニ・ブラクストン、先に取り上げたPJ・モートン等…そしてレデシーもそのひとり。3年ぶりのアルバム『The Wild Card』からの先行曲は攻めのジャジーなナンバーで、インディ時代にジャズアルバムをリリースしたことのあるレデシーにとっては余裕とすら言える歌声を披露しています。ピアノはロバート・グラスパーとのことで、音のふくよかさに納得。

 

2位 ビリー・アイリッシュ「My Future」

リリースは7月末。本来当該月に選ぶべきでしたが、一度手放したもののその曲の良さが忘れられなかったこと、R&Bに精通した音楽評論家の林剛さんの賞賛コメントを読み納得したこと、この曲そして彼女のスタンスに共感したこと等によりこの位置にて選出した次第。政治について真剣に考え、より良い未来を選ぼうとするスタンスについては下記をご参照ください。

 

1位 リアン・ラ・ハヴァス「Please Don't Make Me Cry (Jordan Rakei Remix)」

オリジナル版は先月の7位に選出していますが、リミックスはそれをさらに上回る素晴らしさ。リミックスを1位に据えたのは他が優れていないというわけではなく、この曲があまりに見事だったから。別エントリーにて取り上げていますのでよろしければ。

 

 

以下、次点として10曲。

・Gorilla Attack「隔世 gorilla」

坂本真綾「躍動」

・BAD HOP feat. T-Pablow, Tiji Jojo & Benjazzy「Bayside Dream」

・BBHF「君はさせてくれる」

・デュア・リパ&ザ・ブレスド・マドンナ feat. グウェン・ステファニー「Physical (Mark Ronson Remix)」

ファイヴ・セカンズ・オブ・サマー「Kill My Time」

・アイコナ・ポップ「Feels In My Body」

・ジェイデン with ジャスティン・ビーバー「Falling For You」

・ジェフ・ブラッドショウ feat. マーシャ・アンブロージアス「I Do (Sincerely)」

ザ・ロックス feat. T-ペイン「Miss You」

タイトルに狙った感を抱きつつも、何らいやらしく感じさせないBBHFの心地よさ。遂に音楽活動本格復帰と思しきあの方が所属する(一応正体は濁しておきますが)Gorilla Attackのその人らしさ全開のトラック。そして以前記しましたがジャスティン・ビーバーの客演の見事さ…8月も良曲に溢れていました。

 

Spotifyのプレイリストはこちらに。

今月も素晴らしい音楽に出逢えることを願っています。

(追記あり) ビルボードジャパンのYouTubeデータ取扱変更について、ポッドキャストではさらに細かな説明が行われていた

(※追記(2023年3月18日5時9分):はてなブログにてビルボードジャパンのホームページを貼付すると、きちんと表示されない現象が続いています。そのため、表示できなかった記事についてはそのURLを掲載したビルボードジャパンによるツイートを貼付する形に切り替えました。)

 

 

 

一昨日発表された9月7日付ビルボードジャパンソングスチャートについて、翌日になってビルボードジャパンがチャートの訂正を実施(欅坂46「誰がその鐘を鳴らすのか?」がダウンロード1→21位に訂正。これに伴い総合ソングスチャートも8→23位となり、9位以下が繰り上がり)。それに基づき、昨日のブログエントリーについてはキャプチャおよび表を一部変更しました。

 

さて、その9月7日付ビルボードジャパンソングスチャートより、YouTubeの取り扱いが変更となっています。

全て同じ係数で反映されていたYouTubeについて、ビデオとオーディオとに区別、また有償サービスの会員による1再生が無償会員のそれに比べてウェイトが大きくなるのが今回のチャートポリシー変更の特徴です。

この変更がはじめて反映された9月7日付ビルボードジャパンソングスチャートを紹介するポッドキャストにて、YouTube側で様々なデータの切り出し方ができるようになってきたことを踏まえて下記の詳細な説明が行われていましたので、勝手ながら文字起こしさせていただきます。詳しくは下記ポッドキャストをお聞きください。

主に語られたのはYouTubeにおける【オフィシャルコンテンツとUGC(ユーザー生成コンテンツ)との違いについて】です。

●オフィシャルコンテンツとUGC(ユーザー生成コンテンツ)の違いとは?

・オフィシャルコンテンツを決定する4つの条件

① 対象の動画がサウンドレコーディングアセットが正しく埋め込まれたミュージックビデオアセットにより申し立てされたもの。

(サウンドレコーディングアセット:日本レコード協会が出しているISRC(国際標準レコーディングコード。レコーディングの識別に用いられる唯一の国際標準コード)、アルバムのメタデータと呼ばれるもの(楽曲名やアーティスト名の情報等)、音声のマスターレコーディングで構成。ミュージックビデオアセット:音声と映像で構成された音楽コンテンツ。)

② ミュージックビデオアセットの90%以上が動画に利用され、且つ動画の90%以上がミュージックビデオアセットによって構成されているもの。

③ 動画をアップロードするのがオフィシャルチャンネル発であること。オフィシャルチャンネルはYouTubeアルゴリズムにより決定。人的に(人が確認して承認するプロセスを経て)オフィシャルチャンネルとしているものもあるとのこと。

④ 動画が単一の楽曲で構成され、且つその動画の目的が楽曲を表現することにフォーカスされていること。この点もYouTubeアルゴリズムで判定。

※①~④を満たさない場合でも、YouTubeが独自の判断でオフィシャルに区分する動画もあるとのこと。

 

UGCは ”song UGC”と”non-song UGC"の2つに区分される

・”song UGC”を決定する4つの条件

① オフィシャルコンテンツの4つの条件を満たしていない、すなわちオフィシャルコンテンツではないこと

サウンドレコーディングアセットによって申し立てはされていること。

サウンドレコーディングアセットの90%以上が動画に利用され、且つ動画の90%以上がサウンドレコーディングアセットによって構成されているもの。

(※ポッドキャストでは先述したオフィシャルコンテンツの②と同様として述べられていますが、上記③においてはミュージックビデオアセットではなくサウンドレコーディングアセットとして語られています。)

④ 動画のタイトルにサウンドレコーディングアセット(メタデータ等)が一定程度適切に含まれているもの。

 

・”non-song UGC”を決定する条件

サウンドレコーディングアセットやミュージックビデオアセットの申し立ては入っているものの、”song UGC”の要件を満たしていないもの。

 

・複数の楽曲が含まれている動画の取扱について

コンテンツIDによる申し立てが付いているものは”non-song UGC”になる可能性が高い。

 

YouTubeの取扱変更について取り上げた弊ブログでは、米ビルボードソングスチャートでのさらに一歩進んだ取り組みとして、今年1月18日付よりUGCを”song UGC”と”non-song UGC"とに区分し前者のウェイトを変更、後者をカウント対象から除外したことについて紹介しました。

今回のポッドキャストにおける説明の終わりに、動画の3つの区分について『これをどうチャートに活かしていこうか、みたいなところは、後々いろいろ発表させていただくことになるかもしれない』と語っていたことから、今回のチャートポリシー変更では言及されず変更の対象外であったUGCの区分化についても近いうちに改定されるものと考えます(『』内については、なるべく口語に沿って記載しています)。仮に米ビルボードソングスチャートと同じ扱いになれば、たとえば歌ってみた動画が多い作品ほどポイント獲得が抑えられるかもしれません。個人的には米に倣ったUGCの区分化は必要ではないかと感じています。

 

 

最後に、ビルボードジャパンには今回の情報を文章化してほしいと強く願います。非常に分かりにくい内容であり整理してほしいというのが理由のひとつ、また説明においてオフィシャルコンテンツの条件②と”song UGC”条件の③は同じとしながら、アセットがミュージックビデオなのかサウンドレコーディングなのかよく分からなかったのがもう一つの理由です(出演者が純粋に間違えたのか混同されていたのかは解りかねます)。おそらくテレワークでの録音のためか、音質も芳しくなく聞き取りにくい点もみられますので、尚の事文章化を切に願うばかりです。