イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

嵐の新曲「Whenever You Call」を手掛けたブルーノ・マーズの提供曲集、その4つの特徴とは

今年いっぱいで活動を休止する嵐が明後日デジタルリリースする新曲を、ブルーノ・マーズが書き下ろしています。

この曲名でしかもバラード(音楽ナタリーの記事では”ミディアムバラード”と記載)となればマライア・キャリーブライアン・マックナイトのデュエット(→YouTube)を思い出す自分がいますが、当然ながら同名異曲。それにしても今回のインパクトは大きいですね。アナウンスの段階で"ブルーノ・マーズ"がTwitterでトレンド入りしていることから、これまでのデジタルシングル以上に大きなリアクションが生まれるのは確実。尤も、「Turning Up」も「IN THE SUMMER」も名うてのソングライターが手掛けているのですが。

いや、ブルーノ・マーズは歌い手としても、自身の曲を構築するのも巧いながら、他者への提供曲も見事なのです。なるほど嵐がブルーノ・マーズに頼んだのも納得と言えます。そんなブルーノ・マーズの提供曲における”4つの特徴”を以下にまとめてみます。

 

ブルーノ・マーズアジアとの親和性が高いのが特徴。たとえば以前も紹介したSHINeeのテミンによる初のフルアルバムからのリード曲「Press Your Number」(2016)はブルーノ・マーズステレオタイプスが手掛けた作品。

またBTS「Dynamite」以前にアジア系の歌手として米ビルボードソングスチャートを制した(ただしメンバー全員が米国在住のため、厳密にはアジア人ではない)ファーイースト・ムーヴメントにも曲作りに参加。米チャートを制した「Like A G6」に次ぐ「Rocketeer」(共に2010)は最高7位を獲得。客演にはワンリパブリックのライアン・テダーが招かれています。

 

そのライアン・テダーはブルーノ・マーズ同様にソングライターとしても人気なのですが(ビヨンセ「Halo」(2008)、アデル「Turning Tables」(2011)等)、ブルーノはソングライター兼歌手との共作が多いことも特徴。2013年にはアリシア・キーズと「Tears Always Win」(2013)を共作。

2年後にはアデルの現段階での最新作『25』に収録された「All I Ask」(2015)で、彼女と共にペンを執ります。

昨年にはエド・シーランのコラボ集にて、カントリー界のクリス・ステイプルトンと共に「Blow」に参加。ブルーノ・マーズはプロデューサーも担当しています。

ちなみにアリシア・キーズは今週リリースのニューアルバム『Alicia』に、エド・シーランと共作した先行シングル「Underdog」を収録。才能溢れる者同士のコラボレーションは期待度が高まりますし、実際にその期待を軽く超える作品が生まれているように思います。

 

嵐は昨日ニューアルバム『This is 嵐』をアナウンスしたことにより、ブルーノ・マーズによる嵐への提供曲は活動休止前の最後のシングル曲になるのかもしれません。となると、歌手にとってモニュメントとなる曲を手掛けているのもブルーノの特徴と言えそうです。たとえば来月ニューアルバム『Cherry Blossom』をリリースするイギリスのバンド、ザ・ヴァンプスが7年前にリリースしたデビューシングルにはブルーノ・マーズが関与。ボーカルのブラッド・シンプソンの声がどことなくブルーノに似ている気がするのは気のせいでしょうか。

リリースの度にソウル色を高めていくシーロー・グリーンに、ブルーノ・マーズはFワードを堂々と冠した曲を10年前に提供。シーローはこの曲でナールズ・バークレイの一員としてリリースした「Crazy」に並ぶ米ビルボードソングスチャート最高2位を獲得しています。なお下記ミュージックビデオはクリーンバージョンの「Forget You」。

 

この「F**k You!」や先述したアリシア・キーズに代表されるように、ブルーノ・マーズ懐かしのソウルミュージックを現代風にブラッシュアップすることにも余念がなく、そのことは自身の3枚目のアルバム『24K Magic』(2016)におけるファンクの復権からも明らかですが、今年はチャーリー・ウィルソン御大にステッパーズを提供。

ステッパーズといえば、性的スキャンダルによる数々の事件で収監中のR.ケリーによる「Step In The Name Of Love」(2003)を真っ先に思い出す方は多いはず。ブルーノはカーディ・Bとの「Please Me」(2019 →YouTube)でR氏的な佇まいを魅せていたことから、ソングライティング面でR氏の影響を大きく受けたのかもしれません。 

 

 

自身の客演作品も含め、ブルーノ・マーズの提供曲には4つの特徴があると考えていますが如何でしょう。ちなみにブルーノの仕事は日本にも影響を与えていると感じていて、たとえば7月に新作『B7』をリリースしたブランディについては以前2004年以降の仕事についてまとめていますが、そこでも取り上げた「Long Distance」(2008)にもブルーノが関与。そしてこの曲の美しさはBoA「Milestone」(2011)にも受け継がれているように思います。

嵐が「Whenever You Call」で大ヒットに至れば尚の事、追随する日本の作品が出てくるようにも思います。とにかく、嵐の新曲がどのような感じになるのか今から楽しみです。

BTS「Dynamite」とカーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」の争いの行方は? そして米ビルボードがYouTube取扱を変更…9月19日付米ビルボードソングスチャートをチェック

ビルボードのソングスチャートをチェック。現地時間の9月14日月曜に発表された9月19日付最新ソングスチャート、初登場から2週連続で首位を獲得していたBTS「Dynamite」は2位へ後退、カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」が首位に返り咲きました。

「WAP」および「Dynamite」の3指標の動向をみると。

・カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

 ストリーミング:4820万(前週比18%ダウン 同指標1位)

 ダウンロード:16000(前週比20%ダウン 同指標2位)

 ラジオエアプレイ:2730万(前週比11%アップ 同指標27位)

BTS「Dynamite」

 ストリーミング:1330万(前週比24%ダウン 同指標16位)

 ダウンロード:136000(前週比25%ダウン 同指標1位)

 ラジオエアプレイ:1830万(前週比14%アップ 同指標49位)

ダウンロードでは「Dynamite」が大きく勝るものの、ラジオエアプレイで1.5倍、ストリーミングに至っては3.6倍もの差が生じて「WAP」が総合で逆転した形です。「WAP」によりカーディ・Bは自身のデビュー曲「Bodak Yellow (Money Moves)」(2017)に並ぶ通算3週目の首位を獲得しました。なお客演では、マルーン5に参加した「Girls Like You」(2018)が7週首位を獲得しています。

「WAP」も「Dynamite」も、デジタル2指標の2桁ダウンをラジオエアプレイではカバーしきれないようにみえるのが現状ですが、しかしBTSは「Dynamite」によりキャリア初となるラジオエアプレイ指標50位以内ランクインを達成。最も伸びるのが遅いラジオエアプレイ指標で50位以内に入るというのは、BTSアメリカで受け入れられた何よりの証拠だと個人的には捉えています。またダウンロードにおいては3週連続で大台をキープしており(265000→182000→136000。初週分はフィジカルセールスを除く)、3週連続で136000以上売り上げたのはザ・チェインスモーカーズ feat. ホールジー「Closer」(2016)以来、チャート初登場からとなるとジャスティン・ティンバーレイク「Cant't Stop The Feeling!」(2016)以来となります。なお「Dynamite」はオリジナルバージョンのリリースから3週連続で、インストゥルメンタルや後日追加されたリミックスも含め計6バージョンが69セントの安価販売を続けており、これがダウンロード増の一因になったと言えるでしょう。

ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」が今週も5位をキープ。ラジオエアプレイでは自己最多となる首位獲得週数を23に伸ばし(前週とほぼ変わらず7990万を獲得)、さらには総合チャートで27週目のトップ5入りを果たしました。これは先述した「Closer」(2016-2017と年をまたいで記録達成)、そしてエド・シーラン「Shape Of You」(2017)に並ぶ歴代最長タイとなります。勢いのある初登場曲がない限りは最多トップ5記録の単独最多を更新する可能性もありますが、前週初のトップ10入りを果たした24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」が今週は2ランクアップし6位につけ、しかもラジオエアプレイでは前週比46%アップとなる2330万を獲得(同指標37位に登場)した勢いを踏まえれば、次週順位が入れ替わることも考えられそうです。

10位にはDJキャレド feat. ドレイク「Popstar」が前週の24位からジャンプアップし、8月1日付で3位に初登場を果たして以来となるトップ10返り咲きを果たしています。ストリーミングは同107%アップの1960万(同指標7位)、ダウンロードは同323%アップの7000(同指標7位)、ラジオエアプレイは同15%アップの3330万(同指標19位)。デジタル2指標が強い理由は、この2指標の集計開始日にあたる9月4日金曜にミュージックビデオが公開されたため。DJキャレドからのミュージックビデオ制作の誘いを断るドレイクに代わりジャスティン・ビーバーがドレイク役を引き受けるというビデオが人気再燃につながったことは間違いありません。

 

さてビデオといえば、今週9月19日付より米ビルボードではYouTubeの取り扱いを変更しています。

ビルボードソングスチャートのみならずアルバムチャートにおいても、今週よりYouTubeにおけるsong UGC(ユーザー生成コンテンツ)をカウント対象から除外し、"公式の"オーディオおよびビデオのみを集計対象とするとアナウンスしています。なおUGCのうちnon-song UGCについては米ビルボードソングスチャートおよび各種ソングスチャートにおいて今年1月18日付からカウント対象外となっていましたが(ビルボードジャパンで記事になっています)、今回はsong UGCも、そしてアルバムチャートからも除外という措置が採られています。

 

最新のトップ10はこちら。

 

[今週 (前週) 歌手名・曲名]

1位 (2位) カーディ・B feat. メーガン・ザ・スタリオン「WAP」

2位 (1位) BTS「Dynamite」

3位 (3位) ドレイク feat. リル・ダーク「Laugh Now Cry Later」

4位 (4位) ダベイビー feat. ロディ・リッチ「Rockstar」

5位 (5位) ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」

6位 (8位) 24Kゴールデン feat. イアン・ディオール「Mood」

7位 (6位) ハリー・スタイルズ「Watermelon Sugar」

8位 (7位) ジャック・ハーロウ feat. ダベイビー、トリー・レーンズ & リル・ウェイン「Whats Poppin」

9位 (9位) ジョーシュ・シックスエイトファイヴ × ジェイソン・デルーロ「Savage Love (Laxed - Siren Beat)」

10位 (10位) DJキャレド feat. ドレイク「Popstar」

BTS「Dynamite」は3週目の首位を逃しましたが、「WAP」を逆転するためには所有指標のダウンをラジオエアプレイおよびストリーミングでカバーする必要があります。「WAP」はその歌詞の過激さゆえかラジオエアプレイで伸びていない印象がありますが、逆にその世界観が投影されたミュージックビデオが支持されストリーミングが未だ強いのはたしか。「Dynamite」はラジオエアプレイが軌道に乗りはじめた印象があるため、ストリーミングでどう挽回するかが次週以降の見どころと言えるでしょう。

"Get Wild退勤"トレンド入りで「Get Wild」がヒットする予感…しかし勢いにブレーキをかけかねない指標が存在する

先週末に突如トレンド入りを果たした"Get Wild退勤"は音楽業界に大きなインパクトを与えていきそうです。

きっかけとなった上記ツイートが先週木曜夜に発信され後にトレンド入りを果たすと、ダウンロードの購入やサブスクの再生回数が大きく上昇しているのです。iTunes Storeでは金曜22時のリアルタイムチャートでBUMP OF CHICKEN「Gravity」に次ぐ2位に到達。その後しばらくの間トップ10内をキープしています。

そしてSpotifyでは日本のデイリーチャートにおいて、11日金曜には前日の200位圏外から61位に浮上翌日は110位に急落しますが、出勤者が多くなる本日以降は再浮上の可能性もあるでしょう。

 

TM NETWORKGet Wild」にはここ数年で幾度となく注目が集まっていました。9月6日に放送された『国民13万人がガチ投票!アニメソング総選挙』(テレビ朝日)では『シティーハンター』エンディングテーマのこの曲が8位にランクイン。この総選挙を制した高橋洋子残酷な天使のテーゼ」は9月14日付ビルボードジャパンソングスチャートのTwitter指標で47位に登場しているのですが、同日付ソングスチャートは放送日の6日までが集計期間であるため、総選挙ランクイン曲は明後日発表予定の9月21日付ソングスチャートにて、より大きく反映されるはずです。

Get Wild」に話を戻すと、2017年に"すべて「Get Wild」"というコンピレーションアルバム『GET WILD SONG MAFIA』がリリース。また昨年映画『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』のエンディング曲に「Get Wild」が起用されたことで、昨年2月25日付ビルボードジャパンソングスチャートで23位まで上昇します。

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上記チャート推移(CHART insight)は、昨年2月25日付を中心に前後30週分をキャプチャしたもの(詳細はこちらから確認できます)。総合ソングスチャートは黒の折れ線グラフで表示され、それ以上に高い順位となっているのが濃い紫色で示されるダウンロード指標であることから、所有指標が牽引していることが解ります。青色のストリーミング指標も緩やかな弧を描いていますが、しかし総合で最高位を獲得した週に急浮上した赤の折れ線が、翌週には100位圏外(300位以内)に急落。この赤の折れ線は、ストリーミング同様に接触指標である動画再生を示します。

この映画公開のタイミングで「Get Wild」はミュージックビデオをショートバージョンながら公開、上記ブログでも紹介したのですが後に削除されています(ブログ作成時に貼付できた動画やリンク先が後に削除されると、その跡だけが残ります)。おそらく貼り直したのでしょう、映画公開のちょうど2ヶ月後に下記動画がアップされたものですが、以前と同様ショートバージョンとなっているのです。

ミュージックビデオがショートバージョンで公開されることがビルボードジャパンソングスチャートにおいて大きく寄与しないことについては、先週Perfumeの新曲「Time Warp」がショートバージョンで公開されたタイミングでツイートしたばかりです(ツイートの一連の流れはこちらから確認できます)。

 

"Get Wild退勤"に触れ、先週金曜にこの曲を聴きながら実際退勤してみようと思った方はどのようにして「Get Wild」に触れたでしょうか。CDショップは以前に比べて身近ではなくなり、またポータブルCDプレイヤーを持っている人は極少数だろうことを考えれば、CDを購入もしくはレンタルする方は少ないでしょう(レンタルするとして、それを実施するのは退勤後、職場もしくは自宅の最寄り駅周辺にあるレンタル店でという方が多いはずです)。ダウンロードの可能性は十分ありますし実際売れていますが、価格設定を考えればベストアルバム等のレンタルで代替しようと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。サブスクサービスに入っていればすぐに聴くことはできますが、実はサービスの未利用者がかなり多いのです(このことは昨年発表されたICT総研による"2019年 定額制音楽配信サービス利用動向に関する調査"から判ります)。となると認知度が高く、無料で楽しめるYouTubeで…という選択肢を採る方が少なくないとは思いますが、しかしその唯一の選択肢がショートバージョンとあっては、一度視聴したとして継続には至れないという心理が発生する気がします。

この聴取プロセスやショートバージョンと判った際のユーザーの心理は何も"Get Wild退勤"に限らず、気になる曲をすぐに聴きたいと思った際のベースにあるものではないかと思うのです。一昨日のブログではOfficial髭男dismのSNSにおける、テレビパフォーマンス後のフォローの上手さとそれが実際にチャートアクションにつながった例を書きましたが、サブスクをきちんと解禁しYouTubeもフルバージョンでアップしていることが接触の強さの大前提にあり、それが所有指標にもつながっていることは今年8月31日付ビルボードジャパンアルバムチャートで彼らの『Traveler』が推定売上40万枚を突破したことから明らかです。

 

"Get Wild退勤"はTwitter発のトレンドですが、TikTokYouTube発でトレンド入りした曲は今年に入り大挙登場しています。その中には"2週間で10キロ痩せるダンス"のBGMであるフィッツ&ザ・タントラムズ「HandClap」やインターネットミームで用いられたイエス「Roundabout」等、数年から数十年前の曲が突如ブームとなることも少なくありません。以前とあるインタビューで、サブスクの興隆に伴い特に若年層は曲の新しさ/古さに関係なく聴いているというのを目にしましたが、たしかに古い曲だからといってブレイクしないということはありません。いつ何時、突如注目を集めてもいいように、特に接触媒体を充実させることがレコード会社や芸能事務所等には求められているのです。

YouTubeチャンネル"THE FIRST TAKE"、平井大の出演が大きなステップアップの契機となる

コロナ禍の状況は続いていますが、少しずつながらもエンタテインメント業界は歩みを進めている印象があります。その象徴のひとつとして、一発録りにこだわったYouTubeチャンネル、"THE FIRST TAKE"は自宅等での録音による"THE HOME TAKE"を7月いっぱいで終わらせ、通常の"THE FIRST TAKE"仕様に戻してきました。

そしてこの"THE FIRST TAKE"、一昨日公開された最新回に登場したのが平井大さんであることに驚いたのです。

出演者を一覧化すると。

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"THE FIRST TAKE"最終回(現在のところ)に登場した清竜人さんは個人的にはEMIのイメージが強かったのですが、様々なプロジェクトを経て今年5月に本人名義でリリースされた『COVER』はSony Music Labelsよりリリース、つまり現在はソニー・ミュージック系列所属だと判明。最新作関連曲ではなくEMI時代のベストアルバム収録曲を披露ということに疑問を抱きつつも、しかしこれでソニー・ミュージック系列以外のメジャーレコード会社所属歌手で"THE FIRST TAKE"に初めて出演したのが平井大さんだということがはっきりしました。

 

YouTubeチャンネルの"THE FIRST TAKE"はその運営元がいまいちはっきりとはしないものの、ソニー・ミュージック関連ではないかと以前記しました。

一方で、ソニー・ミュージック系列で運営しているからこその問題点もあるのではと考えそれらを明記した上で、改善することによるチャンネル進化の4つのステップについて7月に記載しました。

ステップ1:ソニー・ミュージック系列の所属歌手がラインアップを独占

ステップ2:インディーズもしくはレコード会社未所属の歌手が登場

ステップ3:他のメジャーレコード会社の歌手が登場

ステップ4:他のメジャーレコード会社が同種のチャンネルを用意

Tani Yuukiさんが「Myra」を歌う段階で上記を記載し、執筆段階では"THE FIRST TAKE"がステップ3に近い2だと捉えていました。そして一昨日、平井大さんの登場によりステップ3と断言しても差し支えなくなったと考えています。さらに、当時インディーズ所属だった神はサイコロを振らないやマカロニえんぴつが、後にソニー・ミュージック系列以外のメジャーレコード会社と契約を結んだほか、その神はサイコロを振らない「夜永唄」については"THE FIRST TAKE"の音源もリリースされ、それが契約先であるVirgin Music(ユニバーサルミュージック)発というのも、上記ステップの3に到達したと考える理由として十分です。

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仮にステップ3の状況が強化されれば、ステップ4は不要と言えるかもしれません。とはいえ、インディーズ所属の方がほぼ1曲しか披露できていない状況をみると、やはり他のメジャーレコード会社がたとえ真似事と揶揄されようと"THE FIRST TAKE"的な企画は用意する必要があるのではと考えます。そうすることで"THE FIRST TAKE"側もさらに奮起し、より好い生の音楽を届ける姿勢が強化されれば、それが日本の音楽業界全体のスキルアップにつながるかもしれません。

『THE MUSIC DAY』に10組出演するジャニーズ事務所所属歌手、6月以降のチャート動向を確認しテレビ出演をより反映させるためのポイントを考える

一昨日の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)に森崎ウィンさんが出演しました。

先月リリースのEP『PARADE』("MORISAKI WIN"名義)はマイケル・ジャクソンジャミロクワイ等への憧れが詰まった作品で宇多丸さんも絶賛。放送中に番組内のライブコーナー出演要請を二つ返事でOKした森崎ウィンさんは、しかしながらテレビ番組でのパフォーマンスがないと語っていて、それを耳にした自分はこの好い作品を伝えるメディアがないことを強く憂いた次第です。

森崎ウィンさんの公式YouTubeチャンネルには「パレード」「WonderLand」のミュージックビデオの他、全曲のオフィシャルオーディオも用意という、海外では一般的になったアプローチが施されています。これだけでも非常に素晴らしことであり、彼の真っ直ぐな思い(ラジオから如実に人柄が伝わってきます)共々もっと多くの方に知られてほしいと感じています。自分のこのツイートにも数多くの反応があることから、同様の思いを抱いた方はきっと多いはずです。

 

特に地上波テレビと言及したのは、その影響力が極めて強いため。通常のレギュラー番組でも視聴率に対するTwitterでの反応が凄まじいのですが、長時間特番になると尚更。そして長時間特番といえば、日本テレビで『THE MUSIC DAY』が本日放送されます。

ブログ執筆段階において番組のTwitterアカウントでトップに固定されているのが上記ツイート。NiziUの初パフォーマンスやBTS「Dynamite」の日本初披露等トピックもありながら、強く押し出されているのはジャニーズ事務所所属歌手による自社作品のメドレー。NiziUやBTSの出演決定が上記ツイートの後だとして、1ヶ月前のツイートを固定化しているのは番組の一押しがそこにあるからと言えるでしょう。となると、今回の長時間特番を機に当該事務所の作品がどこまで伸びるかが注目されます。

下記に、ジャニーズ事務所所属歌手による6月以降の作品のビルボードジャパンソングスチャートの動向をまとめました。CDセールス初加算から、配信のみの場合はダウンロード等初加算から3週分を、そしてTwenty★Twenty「smile」については配信開始からCDセールス加算3週分までを取り上げています。

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ジャニーズ事務所所属歌手については基本的にリリース前後にテレビ出演しているため各指標に影響が出ているだろうものの、それでもCDセールス初加算の翌週におけるポイント前週比が基本的に10~20%の範囲内に収まっている状況は、コロナ禍以前と変わらないと感じています。

 

一方で、最近テレビでのパフォーマンスが大きくチャートに寄与したのがOfficial髭男dism。8月10日放送の『CDTVライブ!ライブ!』(TBS 通常放送は月曜22時)特番における1時間弱のいわゆる"ヒゲダンフェス"は、彼らの曲のチャートアクションに大きな影響を与えました。下記リンク先に一覧表を設けています。

ストリーミングや動画再生といった接触指標群の上昇、Twitter指標の100位以内登場、そしてそれらによるポイント前週比の上昇等、テレビの影響が大きく反映されているのです。たとえばサブスク再生回数に基づくストリーミング指標においては、下記ツイートが大きく反映されたと言えるでしょう。

プレイリストのリンク先は各サブスクサービスにつながります。Spotifyはこのような感じ。

CDTVライブ!ライブ!』もジャケットとして用いられているのですから素晴らしいですね。注目が集まったタイミングで御礼ツイートがなされ、そこからプレイリストでおさらいすることでコアなファンの喜びが高まり、ライト層がコアなファンとなってさらに再生数が伸びていくわけです。各サブスクサービスのリンク先を用意することもさることながら、接触できる場所をきちんと用意することがポイント上昇につながる鍵と言えます。この"接触できる場所をきちんと用意すること"についてはギターの小笹大輔さんがインタビューで語っていたことと合致するのではないでしょうか。

(全文確認には読売新聞の会員登録が必要です。)

またOfficial髭男dismで例示した、接触可能なサービスへの遷移については下記インタビューで押さえるべきポイントとして語られています。この取組についても、やはりOfficial髭男dismが突出していることが解ります。

 

話をジャニーズ事務所所属歌手に戻し上記表を確認すると、サブスクについては嵐が「カイト」において未だ解禁に至らず、その他の歌手も大半が未解禁のままですが、しかし動画再生指標ではいくつかの曲が100位以内に入っています。

上記はCDリリースされた作品で動画再生指標300位以内に入った曲。すべてショートバージョンですがランクインを果たしており、また10月7日リリースのSnow Man「KISSIN' MY LIPS」も、ショートバージョンながら最新9月14日付ビルボードジャパンソングスチャート、動画再生指標において11位に登場しています。

ジャニーズ事務所所属歌手はデジタルに明るくない、ゆえにミュージックビデオはCDに同梱される映像盤でしか確認できないという認識は未だ少なからずあることでしょう。実際にフルバージョンは映像盤でしかみられないことがほとんどですし、ショートバージョンはフルバージョンよりもチャートへの貢献度が低いことについては以前から述べてきました。しかし、ショートバージョンであったとしても映像を用意することでチャート上昇に寄与することは上記表から明らかです。

だからといってシングル表題曲のミュージックビデオをフルバージョンでアップするのを発し手側は躊躇うと思います。ただ、フルでYouTubeにアップされたからと言っても、特にアイドルの作品についてはファンがCDをグッズとして捉える向きもあるゆえ買い控えは起きにくいでしょう。ならば少なくともショートバージョンを用意し、また対外向けのSNSを開設しているならばOfficial髭男dismのような動画リンクの用意と誘導を行うところからはじめてみては如何でしょう。ライト層はなかなかCD購入までには至らないと思いますが、まずは接触する方向に誘導させ、いずれコアなファンになるためのベースを作ることが必要だと思うのです。短尺版のみでも動画再生指標100位前後に入ること、またルックアップが高くレンタルが多いだろうと予想され、ライト層が一定数いることが想像できるゆえ尚の事です。そうすればテレビ出演の効果はより如実に表れるだろうと考えます。

Reol「第六感」、LINE関連のキャンペーン対象曲が安定したチャートアクションをみせる理由は

最新9月14日付ビルボードジャパンソングスチャートを紹介した昨日、BTS「Dynamite」のサブスク再生回数の急落の要因がLINE MUSIC独自のキャンペーンにあると記載しました。

8月に入ってからLINE MUSIC独自の"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンについて調べており、対象曲の順位の変遷をまとめています。その表については昨日掲載したのですが、実はこの表にもうひとつ追加したい曲があります。

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現在のリンク先はこちらに。Reol 「第六感」については一連のキャンペーン対象曲を確認する途中で、厳密にはLINE MUSICではありませんがLINE BGMのキャンペーン対象曲と知り追加。途中で知ったためにキャンペーン中のLINE MUSICでの順位は判りかねるのですが、キャンペーン終了後も順位が落ちていません。【キャンペーン対象曲はLINE MUSICチャートに登場するもののビルボードジャパンでの順位は高いとは言えない】そして【LINE MUSIC内でもキャンペーン終了後は週間順位が極端に下がる】という2つの特徴が"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーン対象曲にはあると昨日書きましたが、これらが該当しないのが「第六感」の特徴と言えます。

LINE BGMキャンペーンについてはReolさんのツイートでは言及されなかった模様であり、上記レコード会社のツイートへの反応も限りなく小さいため、このキャンペーンが功を奏したかは判断が難しいところです。ただし上記の表、さらにはビルボードジャパンのチャート推移(CHART insight)をみると「第六感」がLINE MUSICの他のキャンペーン曲よりも如何に安定しているかがよく解ります。

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初週は所有指標のダウンロードが17位に入り総合46位を記録。その後はストリーミングが安定、さらには下記ライブ映像の追加公開等もあって前週には動画再生指標が急伸し(ただしライブ映像がオリジナルバージョンの動画に合算されるわけではなく、相乗効果をもたらしたという意味)、総合チャートの安定性を高めています。前週はYouTubeのカウント方法変更開始のタイミングでもあり、それもプラスに作用したと言えるかもしれません。

 

実はReol さん、「第六感」のリリースから現在に至るまで様々な施策を行っています。公式YouTubeチャンネルでは上記ライブ映像を含め、「第六感」関連動画が複数公開。全6回のラジオ放送が特に目を惹きます。

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(今回の紹介に用いるために公式YouTubeチャンネルの動画一覧をキャプチャしました。問題があれば削除いたします。)

また「第六感」リリースのタイミングでTikTokチャンネルを開設しチャレンジモノを投入。

さらにはヒプノシスマイクへの楽曲提供を行ったり、生配信ライブを開催したりと、話題を次々に提供しています。上記ライブ映像は生配信ライブのものです。

以前、YOASOBI「夜に駆ける」が大ヒットに至った一例として、Twitterでのファンとのエンゲージメントの徹底した確立について記載しました。Reolさんについては多くはないと感じますが、たとえばミュージックビデオ再生への御礼の言葉をみるとファンは嬉しくなり、曲が気になる方は視聴行動を採るかもしれません。

 

Reol「第六感」の安定したチャート推移は、これら様々な施策がリリースから1ヶ月以上もの間投入され続けたことにあると言えるでしょう。LINE MUSIC独自の"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンでは極端な動きが強まるものの、LINE BGM(設定方法はこちら)で用いられると長く聴かれる、もしくは注目される可能性があります。さらにReolさんは新たなアニメタイアップ曲が今週初めて放送され、これも「第六感」を含む旧譜への注目度上昇に寄与するはずです。

LINE MUSICのキャンペーンに参加する歌手は、今回取り上げたLINE BGM設定についても検討してみてはいかがでしょう。そしてこのキャンペーンに頼らないスケジュールの策定も必要です。尤も、冒頭で記載したBTS「Dynamite」についてはLINE MUSICキャンペーンの際、『LINEの新機能、"トークBGM"にこの楽曲を設定する毎に更に当選の確率があがります』と謳っていたため、LINE MUSIC関連のキャンペーンがどこまで影響を及ぼすのかそれとも及ぼさないのかは今後も注視する必要があるのですが、しかし参加者が一過性になりにくいかもしれないLINE BGM設定キャンペーンは検討の価値があると思うのです。

9月14日付ビルボードジャパンソングスチャート、BTS「Dynamite」のストリーミングが急落した理由を探る

毎週木曜は、前日発表されたビルボードジャパン各種チャートの注目点を紹介します。 8月31日~9月6日を集計期間とする9月14日付ビルボードジャパンソングスチャート(Hot 100)は、STU48「思い出せる恋をしよう」がシングルCDセールスを武器に首位を獲得しました。

一方で、チャート構成比を勘案するに、次週の急落は確実と思われます。

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シングルCDセールスが全体の9割を超え、一方でダウンロード、ストリーミングおよび動画再生は300位未満のためにポイントは未加算。ルックアップは24位でCDセールスと大きく乖離しレンタル数やユニークユーザー数の多くなさが想像できることから、今週の所有指標の反動が次週如実に表れそうです。前作「無謀な夢は覚めることがない」はCDセールスに伴い今年2月10日付で首位を獲得しながら翌週は83位に急落しましたが、今作はどうなるでしょう。尤も、「思い出せる恋をしよう」のCDセールス自体が前作の半分に満たないのが気になります。

 

さて、米ビルボードソングスチャートで2連覇を達成したBTS「Dynamite」は日本において首位獲得には至れていないものの、3週連続でトップ10入りを果たしています。

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BTS「Dynamite」の米チャートの動向において、特に所有指標であるダウンロードが強いことについては昨日のブログをご参照ください。

日本ではBTS「Dynamite」がCD未リリースのため、所有指標はダウンロードに限られます。ダウンロードでは3週連続トップ10入りを果たしているものの、25842(2位)→12420(10位)→8857(9位)とダウン。初週は金曜午後の解禁ゆえ2日半でこの売上を記録したことになりますが、上記チャート推移(CHART insight)における構成比率をみると、日本においては「Dynamite」が接触指標群に支えられており、とりわけストリーミング指標が強いことがよく解ります。

とはいえニュースには気になる文言が。

前週、YOASOBI「夜に駆ける」、NiziU「Make you happy」に次ぐ史上3曲目となる週間1千万再生を記録した「Dynamite」は、今週その再生回数が3分の2に。接触指標は所有指標より急落することが少ないためこの数値には驚かされたのですが、これは確実にLINE MUSICが実施する"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンの反動と言えます。ちなみに日本のSpotifyにおけるデイリー再生回数の推移をみるとBTS「Dynamite」は高値安定していることから、LINE MUSICの影響はやはり確実だと思うのです。

キャンペーンの概要はこちら。

「Dynamite」解禁日を含む1週間、LINE MUSICで500回以上聴いた方の中から30名にメッセージ&サイン入り未公開フォトが当たるというのがキャンペーンの内容。ビルボードジャパンにおいては前週の集計期間のうち前半4日分が当該キャンペーンと重なっていたため、いわば"ブーストがかかった"状態になったのです。参加賞が用意されていることも再生回数増加を促した要因と言えます。そしてキャンペーン終了後はその反動が表れた形に。

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8月より前からもみられていたこの"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンは、先月に入りより多くみられるようになった印象があります。このキャンペーン実施曲のLINE MUSIC自体と、ビルボードジャパンストリーミングおよび総合の週間チャートを比較してみると、【キャンペーン対象曲はLINE MUSICチャートに登場するもののビルボードジャパンでの順位は高いとは言えない】そして【LINE MUSIC内でもキャンペーン終了後は週間順位が極端に下がる】という2つの特徴がみえてきます。その特徴の中にあって上位をキープするBTS「Dynamite」は素晴らしいとは思うものの、LINE MUSICでは週間1位(8月26日~9月1日)→9位(9月2~8日)とダウンしているのはやはりキャンペーンブーストの反動と言えるでしょう。

 

LINE MUSICについては先日、このようなインタビューが公開されています。

上記は前編のインタビューですが、特に後編に対し自分は強い引っ掛かりを感じています。

『LINE MUSICのユーザーはランキングから聴く傾向がある (中略) ランキングを入り口に曲をチェックして、自分が気に入った曲をライブラリに入れて聴くというサイクルが多い』『昨年まで無名だったアーティストの楽曲がTikTokでのバズをきっかけに、LINE MUSICのランキング上位に次々と入ってくる流れが生まれています』(後半の『』の部分はインタビュアーの問いかけですが、受け手が『まさにそうですね』と同意していることからLINE MUSICおよびTikTokの意見と受け取れます)…LINE MUSICのランキングの重要性がいわゆる中の人に強く認識されている一方で、そのランキングが"沢山聴いた方が当選もしくはその条件に該当する"再生回数上位対象プレゼントキャンペーンによって大きく変貌してしまったことをLINE MUSIC側はどう捉えているのか気になります。インタビューの時期は不明ですが仮に先月実施されていたとしたら、LINE MUSIC側はこのキャンペーンに伴うチャートの変化を少なからず理解していたのではないかと思うのです。

 

中長期的にランキングをチェックすれば、いやデイリー単位だとしても、LINE MUSICが他のサブスクサービスより若年層に支持される曲がランクインしやすい傾向にあることは、たとえば下記ブログエントリーにおける主要3サービスでの順位比較からも明らかです。

しかしながらそのチャートが極端になりすぎると、"この曲は本当に人気なのか?"という疑問が芽生え、不信感として育ちかねません。BTS「Dynamite」のように人気の曲がキャンペーン対象曲によって埋もれることも出てきます。LINE MUSICのキャンペーンは自らのチャートの特性(さらには他サービスにはないであろう、ユーザーがどれだけその曲を聴いたかが可視化される仕組み)を用いた点で面白い取組かもしれませんが、このキャンペーンの連発は"諸刃の剣"と言えるかもしれないと感じる自分がいます。