イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【Diggin'】06. Do You Like ”Re-Package” Albums ?

勝手に仮想ラジオ番組を立ち上げ、中心となる特集を”見えるラジオ”としてブログに掲載していく金曜日。今週は、【CDのリパッケージ盤】を取り上げます。

 

 

今週リリースされるアルバムのひとつに、AI『INDEPENDENT - DELUXE EDITION』があります。通常、”デラックス・エディション”といえば日本では、(複数種発売において、CDのみの盤ではなく)CD+DVDなどの豪華盤を指しますが、今回のAIのアルバムの位置づけは、日本では珍しいタイプの、いわゆる”リパッケージ”と呼ばれるタイプのものです。

”リパッケージ”とは、『既に発売されているアルバムに新曲・未発表曲を追加し、ジャケットをリニューアルするなどして新たに売り出す手法』(Wikipedia - Re:package Album "GIRLS' GENERATION" 〜The Boys〜(少女時代のアルバム)より)と定義できるもので、アメリカや韓国では一般化した販売手法ですが、日本では引用した少女時代の作品ではじめて登場しています。特に特筆すべきは、

「リパッケージ」というくくりのため、2ndアルバムではなく1stアルバムの別形態としての扱いとなり、日本レコード協会の正味出荷数認定ではこのアルバムの出荷数は1stアルバムのものに加算されている。

WikipediaRe:package Album "GIRLS' GENERATION" 〜The Boys〜(少女時代のアルバム)より

という点であり、セールスのテコ入れや上乗せに用いることができます。ただしこれは米ビルボードチャートでも同様だと認識しています。

 

…と書くと、リパッケージアルバムにはマイナスイメージばかりが先行しかねませんね。では今回は7つのリパッケージアルバムを取り上げてみましょう。なお、動画についてはリパッケージアルバムのみ収録の曲となります。

 

 

Katy Perry「Part Of Me」

◯オリジナルアルバム『Teenage Dream』(2010.08.24発売)

◎リパッケージアルバム『Teenage Dream : The Complete Confection 』(2012.03.26発売)

新曲3曲。別ヴァージョン3曲。メガミックスの合計7曲。曲順入れ替えなし(ボーナストラックとして追加曲を配置)。

追加曲のうち、カニエ・ウエストを客演に迎えた「E.T.」は、客演有ヴァージョンにて全米チャート制覇。

 

 

・Nicki Minaj feat. Cassie「The Boys」

Nicki Minaj

◯オリジナルアルバム『Pink Friday...Roman Reloaded』(2012.04.02発売)

◎リパッケージアルバム『Pink Friday...Roman Reloaded Re-Up』(2012.11.19発売) 収録内容はWikipediaを参照

新曲8曲(ただしそのうちの1曲は、オリジナルアルバムの豪華盤(通常盤と同時リリースし、3曲曲数が多い)に既に収録済)。曲順入れ替えなし(ディスク1に新曲、ディスク2にオリジナルアルバム通常盤そのものを配置)。またディスク3はDVD。

 

 

・Naughty Boy feat. Emeli Sandé「Wonder」

Emeli Sandé

◯オリジナルアルバム『Our Version Of Events』(2012.02.23発売)

◎リパッケージアルバム『Our Version Of Events (Expanded Edition)』(2012.10.08発売)

新曲4曲(うち2曲はエミリーが客演)。別ヴァージョン1曲。曲順入れ替えなし(ボーナストラックとして追加曲を配置)。

 

 

・少女時代「The Boys (Japanese ver.)」

◯オリジナルアルバム『GIRL'S GENERATION』(2011.06.01発売)

◎リパッケージアルバム『Re:package Album "GIRLS' GENERATION" 〜The Boys〜』(2011.12.28発売)

新曲2曲。「MR.TAXI」のリミックスを加えた他、「THE GREAT ESCAPE」「BAD GIRL」はリミックス盤に差し替え。曲順入れ替え。

「The Boys」は少女時代と初タッグを組むテディ・ライリーによる作品。韓国では2011年10月にこの曲を冠したオリジナルアルバムをリリース。日本ではこの曲を日本語版にてリパッケージ盤の冒頭に収録。

 

 

・AI「ハピネス (LIVE in BUDOKAN 2012)」

◯オリジナルアルバム『INDEPENDENT』(2012.02.22発売)

◎リパッケージアルバム『INDEPENDENT DELUXE EDITION』(2012.11.07発売)

新曲1曲(初CD化)。「ハピネス」のリミックス2曲と同曲の英語版を追加収録。曲順入れ替えなし(ボーナストラックとして追加曲を配置)。

ディスク2に武道館公演のライヴ音源を、CD収録順に収録。ボーナストラックとしてリパッケージアルバム収録の新曲と、マイケル&ホイットニートリビュートメドレーを収録。なお、同作品の映像盤はDVDよBlu-rayで12/7に発売。

 

 

・嵐「エナジーソング~絶好調超!!!!~」

 (動画検索結果はコチラ )

◯オリジナルアルバム『Beautiful World』(2011.07.06発売)

◎リパッケージアルバム『Beautiful World (セブンネットオリジナル盤)』(2011.11.28発売) 

新曲1曲。曲順入れ替え無し。既発のシングル5曲を削除し18→14曲。フェイスタオル付属。

 

 

リパッケージアルバムではないですが、こういうのも。

Lady Gaga「Bad Romance」

◯オリジナルアルバム『The Fame』(2008.8.19米国発売)

◎EP『The Fame Monster』(2009.11.18米国発売)

新曲8曲のみで構成された1枚組EPの他、EPとオリジナルアルバムの2枚組扱いで『The Fame Monster』をリリース。

なお国内盤では、EPと「Bad Romance」PV等を収録したDVDの2枚組の他、米同様EPとオリジナルアルバムでの2枚組の2種類にて発売。

 

 

他にもまだまだありますが、オリジナルアルバムとリパッケージアルバム、どちらを購入したいと思いますか。 
 
 
さて、嵐のリパッケージアルバムに関しては、このような報道が。
サイゾーウーマン - 年間1位の奪取のため? 嵐のセブンネット限定盤に疑惑の声(2011年12月付。詳細な日にちは不明)
 
記事自体が”関係者発言”やジャニーズ蔑視的な非中立的視点を持ちあわせているため受け入れがたい部分は無くはないのですが、しかしながらたしかに、”公式発表なし”、”年間チャートにギリギリ加算される11月末の発売”は疑われてもおかしくないかもしれません。現に、リパッケージアルバムリリースで1日に6.4万枚を売り上げオリコン昨年の年間チャートでも1位となっています。
 
とはいえ、リパッケージ手法については、自分はさほど問題とは思っていません。先述したように既に他国では一般化しており、たとえば米ヒップホップ界では11月末までにニッキー・ミナージュの他にもフロー・ライダーやファー・イースト・ムーヴメントもリパッケージ盤をリリースするわけです。
 
ただ、今回取り上げた作品のうち、嵐や少女時代が他と異なるのは、曲を”差し替えた”こと、それが問題だと考えます。リパッケージアルバムのリリースにより、当初オリジナルアルバムに入っていた曲が割愛されれば、結局元来のオリジナルアルバムを購入しないと曲を完全に揃えることはできません。オリジナル曲+ボーナストラックというリパッケージアルバムならばまだ、リパッケージアルバムを買うだけで曲が揃います。
(リミックスや客演有りのヴァージョンに差し替えることも問題ですが、ならばケイティ・ペリーのようにオリジナル曲とリミックス等を両方入れる方が好いのではないでしょうか。その方が、聴き手に選択を委ねることができます。)
 
最も好ましいと思うのは、レディー・ガガが採ったEP手法でしょう。新曲等をEPとして用意し、その他にEP+オリジナルアルバムという形でのリパッケージアルバムも用意することで、既にオリジナルアルバムを購入した方はEPのみ買えば済みますし、新たなファンはリパッケージアルバムを購入することで両方揃えることが可能。オリジナルアルバムを持っている/持っていないに関わらず、双方が経済的にもそこまで損をしないという手法ではないでしょうか。無論、EP盤はオリジナルアルバムのセールスには加算されませんが、EP盤別途リリースという形が最も”ファン思い”であるはずです。
 
 
きっと、熱心なファンならばオリジナルアルバム・リパッケージアルバムの双方を購入するでしょう。しかし少しでも熱意が下がれば、もしくは特に興味のないアーティストがその手法を採ればそれを疑うのではないでしょうか。そして、そこまで熱心なファンではない方はもっと敬遠するのでは。”どうせリパッケージアルバム出るだろうからオリジナルアルバムはとりあえず買わない方向で”としてスルーする、購買(しない)心理を植え付ける可能性も否定できません。無論、リパッケージアルバムのみ収録される曲に魅力がないといけないわけで、”高いお金を出してオリジナルアルバムがダブってでもいいから買いたい”と思わせないといけませんよね。そういう意味においては、経済的にも精神的にも、実はリパッケージアルバムってかなりリスキーな商売だといえるかもしれません。ファン思いという視点を忘れずに、アーティストもレーベルも臨んでほしいと思います。