イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【Diggin'】18. 広がっていく”J-Pop × ゴスペル”

毎週金曜日恒例の【Diggin'】。その週にリリースされる作品からひとつをピックアップし、それを元にちょっと広く、ちょっと深く掘り下げていきます。

 

 

ドラマ『夜行観覧車』(TBS系)の主題歌として今週リリースされたAIのシングル「VOICE」カップリングに、昨年末行われた彼女初の"ゴスペルディナーショー”の音源が収録されています(ゴスペルディナーショーの記事はコチラ)。彼女自身、『LAに住むおばに連れて行ってもらったゴスペルに感銘し、First AME教会の「クワイア」のメンバーとなる』(Wikipediaより。また彼女がゲスト出演した今週放送の『坂本美雨のディア・フレンズ』(TFM・JFN系)でも同様の話が) という経緯があり、ゴスペルを実際歌っていたわけで、実に堂々とした歌声を響かせています。

自分も(以前ブログに書きましたが)ゴスペルを歌っていた身として、このように日本にゴスペルが広がっていくことは凄く嬉しく思っています。そこで今回は、徐々に広がっている【J-Pop × ゴスペル】の音世界を掘り下げてみます。

 

さて、ゴスペルはキリスト教の信仰に用いられる音楽であり、物凄く真面目に考えるならばキリスト教に属さないと説得力を宿さないものだと言えるでしょう。実際にゴスペルを歌いはじめて間もなく、(自分自身は無宗教ですが)その矛盾に苛まれましたし同様の悩みを持つ方は少なくなかったようですが、自分は歌い続け触れ続けることで、『ゴスペルとは歌唱の力強さ、神様を賛美する曲であると同時に、バックボーンに神様の存在があることで前向きに進むことができるという心の拠り所や支えでもあると(あくまで個人的ながらそう)最終的に解釈』(弊ブログより)した次第。なので今回は、クワイアが参加する曲のみならず、ハンドクラップが挿入されていたり、歌詞がポジティヴ…というような、”心を解放させてくれる、前向きになれる曲”を集めてみました。

 

 

・AI「AI - ハピネス - LIVE in BUDOKAN 2012」(from『INDEPENDENT DELUXE EDITION』(2012))

コカ・コーラクリスマスキャンペーンCMソング(2011 別ヴァージョンで翌2012年も起用)。シリアスな側面、バラード歌いとしての側面も強い彼女ですが、彼女の性格の人懐っこさがこういった曲に深い説得力などをもたらしているかのようです。

 

RADWIMPS「いいんですか?」(from『RADWIMPS4~おかずのごはん~』(2006))

500人ものファンがRADWIMPSを囲み、ハンドクラップと笑顔そして”持参したお弁当”で囲む(アルバムのサブタイトルがおかずのごはんだから?)という、ユニークさと温かさに溢れたPV。

 

中島美嘉「ALL HANDS TOGETHER」(from『YES』(2007))

2006年のシングル。その前年に発生したハリケーンカトリーナ”で被害を受けたジャズ発祥の地、ニューオーリンズへの思いを込めて制作。アラン・トゥーサン等参加し、シングル売上の一部を同市へ寄付しています。

アルバム『YES』のタイトルトラック的要素の強い「THE DIVIDING LINE」の歌詞(中島美嘉作詞)は”迷いから希望へ”というテーマであり、こちらもゴスペル的。両曲に共通するのはCOLDFEET(のLori Fine)であり、彼らと中島美嘉との相性の良さが伺えます。

 

中島みゆき「おだやかな時代」(from 『歌でしか言えない』(1991))

PVがあった自体知りませんでした。「ファイト!」にも通じる歌詞の世界観かもしれません。サビのフレーズ(毎日 Broken my heart~)だけを聞くと後ろ向きに聞こえるかもですが、傷ついたからこそ駆け出すのだという心を描くための有効なコントラストになっています。

ちなみに自分がゴスペルに触れたきっかけの一つは、まさにこの曲です。

 

浜崎あゆみ「Bold & Delicious」(from 『(miss)understood』(2006))

個人的に【J-Pop × ゴスペル】の最高峰と信じて疑わない曲。以前弊ブログにて記載しています。

 

安室奈美恵「PINK KEY」(from『PLAY』(2007))

GIANT SWINGとNao'ymtが6曲ずつ手掛け、全曲が圧倒的なクオリティを放つアルバム『PLAY』においてNao'ymtが提供したゴスペル的アンセムジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)「Enjoy」が薄く敷いてあるような、幸せな心地よさと前向きさを運んでくるナンバー。

 

ちなみに『PLAY』ではGIANT SWING側も「SHOULD I LOVE HIM?」という歌詞は異なるものの彼らなりのゴスペル的コーラスワークを用いた重厚な曲を提供。名曲です。

 

・GIANT SWING feat. ORITO「LIFE TIME STORY」(from 『GIANT SWING DELI』(2007))

そのGIANT SWINGのアルバム、(ボーナストラックを除く)ラスト2曲がゴスペル的(特にMICHICOがヴォーカルを務めた「CAN'T LIVE WITHOUT YOU」は歌詞自体も完全なるゴスペル)ですが、ORITOによる作品は彼独特の味わい深い歌声やアレンジの音色も相俟って優しさや温かさが溢れています。歌詞は自身の人生を振り返り妻子に感謝の思いを伝える内容となっています。

ORITOは、この作品のリリースの翌年、2008年2月23日に亡くなりました(ソウル・サーチン ブログより)。自分はGIANT SWINGの作品で彼の優しさ溢れる声に触れ、いつか生で聴いてみたいと思ってたので非常に残念です。

 

 

他にも、たとえば平井堅やSuperfly、AYUSE KOZUEなどもゴスペルライクな曲を発表しており、ゴスペルは様々なミュージシャンの音楽の一要素になっているのかもしれません。さらにはゴスペラーズがゴスペル界の大御所であるカーク・フランクリン(Kirk Franklin)をカヴァーしたり、そのカークやカート・カー(Kurt Carr)などがビルボードライブ東京などで来日公演を行う等により、日本人のゴスペルに触れる機会が徐々に増えていると言えるでしょう。ゴスペル(そしてゴスペルライクなJ-Pop)に触れることにより、少しでも前向きに、そして少しでも笑顔になる機会が増えれば嬉しいなと思いますし、自分もそのような明るい気持ちを絶やさずにいたいものです。