イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

(追記あり) 高い動画再生回数を記録する曲がビルボードジャパンチャートに反映されない理由

6月2日に弊ブログで紹介した安室奈美恵さんの「Golden Touch」(アルバム『_genic』(2015)収録)。今朝の段階で、YouTubeでの再生数が771万回を突破しており、紹介時以降およそ340万回もの再生があったということに。勢いの凄さを感じます。

(※追記 (2019年6月20日):フルバージョンは既に削除されています。現在はショートバージョンのみ公開→こちら)

しかしながらこの曲、再生数がありながらも最新のビルボードジャパンHot100にランクインしていないのみならず、Hot100を形成する指標のひとつであるYouTubeの国内における再生回数のランキングにも登場していません。これが非常に気になっており、以前UNISON SQUARE GARDEN紹介の際にも簡単に触れました

6月22日付け Billboard Japan Hot 100 | Charts | Billboard JAPAN

 

同日付けで初登場首位を獲得したアルバムからは、「Birthday」が唯一36位にランクインしています。

各指標毎のチャートはCHARTinsightに掲載。そこでYouTubeの国内における動画再生回数指標で並べ替えてみました。

6月22日付 CHART insight | Billboard JAPAN

たとえば国内動画再生回数で5位にランクインしたSuperfly「Beautiful」は現段階で269万回再生。「Golden Touch」の2週間以上前の公開でこの数値であることを考えれば、本来であれば「Golden Touch」はもっと上位に来てもおかしくはないはずです。

 

そこで疑問に思い、Billboard JAPANのお問い合わせページから質問を送信したところ、送信の翌日までに回答をいただきました(迅速な回答に感謝申し上げます)。ブログ掲載の許可をいただいていないので詳細な引用は控えますが、要約するならば下記のとおり。

・"ISRC"の登録楽曲が集計の対象

・"ISRC"は現段階において推奨ではあるが必須ではない

・動画に"ISRC"が割り振られる前に、プロモーションのスケジュール等を理由にアップされることもある(ただしアップ後でも割り振りは可能)

・各レコード会社へ、チャート精度の上昇を目指すべく鋭意働きかけを行っている

"ISRC"については、実はビルボードジャパンのチャートリニューアル時に弊ブログで紹介した下記のページに掲載されていました(安室さんの件を疑問に思った段階でまずコチラを確認すれば好かったなと反省しています)。

ISRCとは何ですか。

 YouTubeの再生回数を抽出するときに、楽曲名とアーティスト名を正確に適合させる方法を検討した結果、それぞれの音源や画源(ビデオクリップ)に付番されるISRCのマッチングが一番正確であることが分かりました。ISRCは国際標準規格として国内各社が採用している、楽曲マスターそれぞれに付番されたコード番号です。日本国内での再生回数は一旦米国に送られ、それぞれISRCが付番されたオフィシャル動画や権利者の許諾を受けたユーザー動画を合算して日本に戻ってきます。例えば、テレビ放送を録画した動画がアップロードされた場合、それは正式な権利許諾が無くISRCが付番されていないので、その再生回数はカウントされません。

ビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPAN

 "ISRC"は国際標準規格のコードなのですね。指標に国際標準規格が用いられると知り、ビルボードジャパンチャートの格が自分の中で一段階アップしたような気がします。国際標準規格コードを取り入れることなどは米ビルボードでも準拠している(ビルボードジャパンの自問自答 - YouTubeについて - ③再生回数をカウントするときのルールはありますか? | Special | Billboard JAPANより)ことから、たとえばアメリカにおいて"ISRC"付番の邦楽が再生回数を稼げば米ビルボードチャートに登場するわけで、セルとは違ったアプローチでヒットに至る道筋が拓けているわけです。

 

レコード会社にとって、ともすれば"ISRC"の登録には時間がかかるかもしれませんし、料金が発生するのかもしれません(そこは未調査ゆえ厳密には判りかねますが)。しかしながら日本の総合チャート、さらには米ビルボードにもランクインする可能性を踏まえれば、全てのミュージックビデオに"ISRC"を付番させることは必須でしょう。その上で、フルバージョンの公開もお願いしたいところです。