イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

【夏の魔物】観戦記&雑感

青森を代表する音楽フェス、【夏の魔物】が終了してから8日も経ったのですが、あの日が楽しすぎて、未だにその余韻に浸っております。

 

これまでも幾度となく記載していますが、とにかく会場のゆったり感が素晴らしかったのです。休みたいときにはテントを持ってきてそこで休めばいい。テント等に無人の状態で荷物が置かれているのを不安視したものの誰も無礼なことしないだろうという確証があってのことだと考えると、互いが信じ合えているんだろうなあと実感。ピースフルな空間が広がっている何よりもの証拠なのです。そして、これは当日合流した知人が言っていたのですが、とにかくこんなに距離感が近いフェスはないよ、と。各ステージが1~2分で移動できる物理的な意味での近さのみならず、休んでいても気になるアクトが登場したらダッシュすればすぐに到着。確かに自分もジョニー大蔵大臣(水中、それは苦しい)が♪安めぐみ〜と歌い始めた瞬間、吸い寄せられる様にステージに駆けつけ前から数列目で観ること出来たのですが、それまでわずか20秒。これ、他のフェスならあり得ないかもしれません。トイレの数も10個超あり、もう少し観客が集まれば少ないってことになるのだろうけど、並んでいたのは多くて十数名。むしろ男子の数が足りなかったため途中から女性のマークのところに男性用のマークを書き足すという形に。一度手洗いの水がなくなってたことはあったものの特に不満はありませんでした。

 

 

以下はライブアクトについて自分が観た順に。

 

●二丁ハロ(にちょハロ)

朝7時ちょうどに会場に入るとやっていたのは”ゲイだってアイドル”という3人組。アイドルのコリオグラファーも務めるメンバーがいることから、踊りも往年のアイドルの印象的な箇所を取り入れていて楽しめるし、そして曲自体も激キャッチー。青担当のきまるモッコリさんと他二人のいい意味での温度(立ち位置の)差もまた面白く、去年のこの時間に担当していたベッド・インが大化けしたことを踏まえれば今後化ける予感。

 

●ジョニー大蔵大臣(from 水中、それは苦しい)

高速バスで来ざるを得なかった等の悲哀感が表情から伝わりまくるものの、聴いた後の爽快感は谷川俊太郎さん原詩の曲で最後に感動させたゆえか。友人の乙武さんに愛あるディスしまくっていたのは、それが愛だと知っていたゆえ心から笑えたし、最後マイクに止まるとんぼを見て”ドローンだ。乙武って書いてある”というアドリブも秀逸。

 

The Idol Formerly Known As LADYBABY

ネーミングが元プリンスっぽい彼女たち。レディビアードが抜けたことを恥ずかしながら知らなかった(ふたりが”外国のおじさん”と行っていたあの髭の方)。11/21メジャーデビュー決定だが、おじさんが抜けた後の新曲がメタルから離れた感じなのがチョット残念。それにしても煽りおよび挑発するときの眼力はフェス向き。ちなみに冒頭いきなりモッシュあると知らず、前列にいて即座にダウン。

 

●DJ Michelle Sorry~掟ポルシェ

急遽決まったミッツィー申し訳改めミシェルソーリーさんは、その前までの15分押しの状況を踏まえ20分の予定を10分弱に自ら狭めるというナイスアシスト。RHYMESTER人間交差点」やサ上とロ吉をかけるので『タマフル』好きにはニヤリ。

掟ポルシェさん...初観賞の自分には衝撃過ぎる展開。DJのセオリーを無視したクロスフェード無視なつなぎ方、この後登場するライブアクト(こぶしファクトリー)を我先に流す潔さ?、そしてビールかけたりロースハムを投げたりやりたい放題な感じ...そしてそれらでみんなと楽しみ合いながらなぜか最後は自分にブーメランがという構図も◎。誰も傷つけないしみんなで馬鹿騒ぎ出来る、これぞフェスという空間がそこに。

それにしても、「アキハバラブ」での観客の反応がいまいちだったのは勿体無いというか、自分は心の中でガッツポーズ決めてました。

 

生ハムと焼うどん

彼女たちを最初に知ったのがEテレというのがそもそもカオスだったのだけど、2曲目での10分以上の寸劇は見事。正直何を話しているか解りにくいところが少なくなかった(音響の問題かそれとも自分の耳が悪いのか疑問は残る)けれど、それを補って余りあるほどの顔芸がヒキョーで。そして1曲目がきちんとしたアイドルソングだった、その落差もまた巧い。顔立ちもかわいらしく、自分たちの魅せ方、セルフプロデュース能力に長けていると実感。それにしても最後の曲でのサークルといい、確実にファンの心をガッチリ掴んでいるにもかかわらず、”ワンマンライブ、チケットまだ2枚しか売れてません!”としきりに叫ぶふたりの、悲壮感のない悲壮感もまた楽しかったですね。

 

こぶしファクトリー

1曲目から「チョット愚直に!猪突猛進」でめちゃめちゃアゲてくれるハロプロ8人組アイドルグループ。生ハムと焼うどんもかわいらしいと思ったけど、かわいさの”格”がとにかく違い過ぎる。そしてアイドルがロックフェスに?と思っていた人は是非彼女たちを見ていただきたいものです。「...猪突猛進」や、メロン記念日This is 運命」カバーでのロックな音は完全フェス向き。そしてリングステージ特有の不安定な足場を物ともしない足腰の強さも見事。

 

清竜人25

私立恵比寿中学のぁぃぁぃに似てる夫人(新幹線に衣装忘れた)がツボだったけど、それ以上に清竜人さんのはじけっぷり、オラオラ感が凄まじく、それゆえソロ時代の「Morning Sun」は二度とやらないんだろうなあと。そして岡村ちゃんを目指しているだろうこともまた確信。夫人というアイドルではありえない結婚という制度を用いているゆえか、スカートめくり等が許されるのはずるいです。

 

藤井隆

個人的ベストアクト。1曲目から「ナンダカンダ」という最も認知度高い曲で観客を惹き付けた後の完璧な”今の藤井隆プレゼンテーション”。松田聖子提供曲のアルバム収録版リミックスがここまでアガるとは...!実はオリジナルのほうが断然好きだったのだけどフェスに行ったらEDM仕様リミックスにハマってしまいました。「YOU OWE ME」にTommy february6提供曲、そしてtofubeatsさんとの「ディスコの神様」もやってくれるのは嬉しい限り。常に笑顔と、芸人らしいほんの少しのシニカルも相俟ったステージングを展開し、物販もきちんと宣伝するあたり立派なレーベルオーナーです。

 

早見優

とにかく綺麗、そして瑞々しい。色んなアイドルが参加しているフェスですが、最も”アイドルらしい”のは間違いなく彼女ではないかと(ちなみに年齢は言うな!と藤井隆さんに念押ししてましたが)。こちらもステージは誰もが知ってる「夏色のナンシー」の、しかもオリジナル版でスタート。昔を完全に封印しない姿勢、新旧の名曲を織り交ぜた構成で魅了し、往年のファンも満足気でした。それにしても声が衰えないのは一歌手としても素晴らしいことです。

 

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

ZAZEN BOYSの曲も披露するというのは潔いですね。そしてMCほぼなく曲と”This is 向井秀徳”という声の刻印だけでその場を支配出来る侠気。惚れ惚れします。音を重ねていくルーパーという機材を使った曲がとにかく格好良く、自分、ルーパー使用曲がやっぱ大好きなんだなあとあらためて実感。

 

夏の魔物 with ヒャダイン + 大槻ケンヂ

良くも悪くもグダグダなMCに苦笑いしつつ、またバンドでのメジャーデビュー経験のある主催者の成田大致さんの新たな方向性に驚きつつ。とはいえ、その成田大致さんが不器用ながらも如何に実直で、そして愛されているかが判った気がしたステージでした。やりたいことがいっぱいあって、それを叶えていく瞬間を観ることが出来、来年開催出来るか解らないと言っていた夏の魔物を絶対やってほしい!と心から応援せずにはいられなくなりました。寸劇は生ハムと焼うどんから習ってほしいと思いつつ、来年も激しく期待します。

 

●ベッド・イン

よくぞここまで思いつくよなあと感心するほどのエロ&バブルネタ全開のトークに笑ってしまったものの、音合わせ時で見せる(エロを交えつつ)真剣な姿勢、その両極が彼女たちの魅力なのだなあと。その真剣さはバンドでのパワフルな音にダイレクトに反映されひたすら格好良く。本人たちは思った以上に華奢だったけど音はめちゃめちゃ骨太。そしてまさか最後にSHOW-YA限界LOVERS」を持ってくるとは! 大サビでちゃんまいに顔面騎乗されながら歌ってたのに呆れ半分感心半分でしたが、何もかもが想像のひとつ上イッていたステージ。是非彼女たちのおギグで、フルで観たいと思わせるパフォーマンスでした。

 

 

自分が見たのはここまで。あとは体力ゲージを上げて来年に備えます。

 

 

強いて不満を上げるならば、夏の魔物(ユニット)のMCでゲイネタをぶっ込んできたアントーニオ本多さんくらいかなと。おそらくゲイかもしれないけどカムアウトしてない芸能人を実名公開するやり方(ある種のアウティング)は非礼極まりないよなあと悲しくなった次第。たしかにゲイアイドルの二丁ハロがいたり、ゲイネタを行うライブアクトもいる(掟ポルシェさんはポッキーゲーム的なノリで男性とキスしてもいる)けれども、彼らはそれをパフォーマンスとして割り切ってやっていたりもしくはカミングアウトをきちんとした上でやっているわけで、そうではない人、さらにはここにいない人をネタにするのは、はっきりいって嫌です。このネタについては観客の反応が薄く、時代がいい方向に変わったのかもと実感できたのは救いでした。

 

それともうひとつ気になったのは、青森のフェスにもかかわらず青森を代表する食べ物がほぼなかった気がすること。飲み物では地酒があったものの、食べ物はどうでしょう。特に県外からの観客も少なくないわけですから、地元平内町のほたてのみならずB級グルメがあってもよかったはず。これはフェス側の力の入れよう問題もあるかもしれないのですが、前にも書いたように特にメディアの協力体制が不十分なのが大きな問題ではないかと。メディアがきちんとフェスを特集・宣伝する→地元企業がフェスの面白さに気付き協力を名乗り出る、という流れが出来ていないと強く思います(尤も、その源流にはフェス側の働きかけも必要ですが)。もしくは、過去に『アウト×デラックス』に成田さんが出演した際に特に金銭面の問題が明らかになったようで、利益面において協力したくてもギャンブルだよなと躊躇する企業は少なくないのかもしれないけれど、主催も変わった(きちんと主催者がついた)ようですしその点は安心して出店してもいいのではないかと。あくまでメディアや出店する側に問題があると前提した上で書きますが、消極的な姿勢、チャレンジ精神を自ずと潰えさせた結果が青森の活気のなさだと思います(し、特にFM局の停滞だと強く実感しています)ので、まずは立ち上がって欲しい!と期待というか祈るような気持ちです。というか、自分が担当する番組では【夏の魔物】特集を(直前ではありますが)きちんとやりましたし、いい番組やコーナーが出来るという自負があるので、夏の魔物をより広める意味での下支えになりたいしならないといけないと強く思った次第。

 

 

 

そんなわけで、遅ればせながらの【夏の魔物】観戦記および雑感でした。また来年!