イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

水森かおりコンサートに触れて演歌の楽しさを知る

先週火曜は弘前市にある弘果の、市場移転45周年記念謝恩コンサートへ。津軽の市場として親しまれている弘果では、お得意さまやお客さまへ感謝の意味を込めて、著名な歌手を招いた無料コンサートを行うのですが、今年来てくださったのがあの”ご当地ソングの女王”水森かおりさん。演歌好き、特に実力派が大好きな(というか、実は結構プロに厳しい耳を持っている)母親を連れて行ってきたのですが、その母親も、そして自分も大満足の一日に。自分は水森さんはおろか、演歌歌手のコンサート自体はじめてだと記憶しています(以前地元でのイベントにボランティアで参加した際、袖から西尾夕紀さんの40分近いコンサートを見たことはあります)が、新しいジャンルに触れることって大事なのだと学んだ次第。

 

この日の公演は昼夜2回×2時間。会場となった第3市場は普段はりんごの競り市で使われているため空調は期待出来ず(?)、熱のこもり具合が半端なかったのですが、その熱が本番では水森さんへの熱気に変わったと実感。コンサート後の水森さんのブログからはコンサートの充足感がひしひし伝わってきたのですが、それにしても3500人収容とは!昼夜公演ゆえ合計7千人ものお客さまが来場...青森県では屈指の動員人数ではないかと。そしてその会場奥まで握手しに行った水森さんの体力たるや。しかも2回。並大抵の体力ではありませんね。

 

それにしても、演歌のコンサートってなんて楽しいのでしょう。

まず、なんといっても歌唱力の高さ。演歌歌手は他ジャンルより歌が上手いのは当たり前かもしれませんが、その中でも水森さんの安定感たるや。特に第2部(とでもいうべきか)、過去の名曲のカバーコーナーで取り上げた楽曲における低音の重厚感。りんごの名産地ということで取り上げた、美空ひばり津軽のふるさと」の完璧なまでのカバーも圧倒的でした。演奏陣も素晴らしかった、とは母親の談。

先述したように水森さんの魅力はご当地ソングの数々にあるわけですが(後半には青森県を題材とした「五能線」も披露)、一曲目の「安芸の宮島」の披露後立て続けにご当地ソングが...と思いきや、曲の倍の時間を使って司会の藤沢一義さんと掛け合い。嬉しいときはぴょんぴょん跳ね、楽しいときはガハハと笑う...その姿が実年齢よりはるかに若い! とにかくかわいらしいのです。ちなみに女性の年齢について書くのは失礼かもしれないのですが、たとえば会場の男性とやり取りするコーナーにおいてその男性の未婚の息子の年齢が自身と近いことが判明するや”紹介してください”と言う、演歌歌手鉄板のネタ?も披露したり、会場の年齢層を踏まえてか”私を皆さんの娘だと思っていただければ嬉しい”みたいなことを言ったりしていて、なるほど年齢を公表するのはより親近感を抱いてもらうということなのかと納得。彼女の話術、親しみやすい雰囲気作りは演歌の伝統なのかもなあと。更には第2部後半、客席に降りて観客と触れ合う際に会場の端から端まで渡り歩き、汗をかきまくっても音程ブレることなく名曲を心地よく歌い上げ、握手に応じまくるその姿。ちょっとしたアクシデントや無礼だった観客の立ち居振る舞いも笑いのネタに、それも決してその人を傷つけることない形で昇華していたのも巧いなあと。ちょっとした謙譲の姿勢というか、こちらが気持ちよくなるような世界観を構築していているのが印象的でした。

 

水森さんを見て思ったのは、演歌歌手はゆるキャラだということ。可愛さがあり動きに茶目っ気がある、そして誰かを傷つけることがなく見るものを癒やす…水森さんについては跳ねること、そして全国各地に自身の作品を残しているという意味で、”ふなっしーがキティちゃんを着ている”と感じたのですがいかがでしょう? 

 

音楽面から言えば、演歌歌手が如何に『NHK紅白歌合戦』を大事にしているかを強く理解。この曲は何回目の紅白にとか、「鳥取砂丘」で初めて出場することが出来たとか、演歌歌手の知名度や浸透度に今も紅白が大きく左右していることに加え、それが目標になっているんだというモチベーションを実感しました。今年の勝負曲、「早鞆ノ瀬戸」を応援したいという思いで1枚CDを買わせていただき、母親に渡したところそのCDを手に取って水森さんに振り、水森さんに見つけてもらった、目が合った!と喜んでいました。

 

 

実力の高さ、かわいらしさと愛嬌たっぷりのところ、そしてご当地ソングの質の高さ…一度触れたら間違いなく応援したくなるのが水森さんの魅力なんだろうなと感じ、ほんわかな気持ちで帰路に。ゆえに今年の紅白出場を心から応援したくなりました。そして、演歌というジャンルのエンタテインメント性の高さに、今後また行ってみたいなと考えています。