イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

NHKの音楽ソフト売上報道が浮かび上がらせた、2018年に改善必至な諸問題

ちょっと不可解な報道に接しました。12月24日日曜、担当するラジオ番組を終え、移動中に聴いたNHKのラジオニュース。

12月24日16時20分に掲載されたこの報道、元になっているのはオリコンのこの記事。前日の4時付けで掲載されています。

『アーティスト別の総売り上げで5年連続、通算7回目の1位となり、グループが持つ歴代最多記録を更新』した嵐が『動画でコメントを寄せ』たとのことで、おそらくテレビニュースでは動画が流れていたものと考えます(『』内はNHKニュースより)。翌日朝のテレビニュースでもこの報道がありましたが、自分が確認出来たのは後半の安室奈美恵さんの部分のみで、嵐の動画は見逃してしまいました。

 

さて、この報道を見て自分は強い違和感を抱いたのです。

その違和感を辿っていくうちに、厳しい物言いですが【保身】【忖度】【旧態依然】という姿勢が浮かび上がり、そしてそれは《(報道)メディア》《芸能界》《音楽業界》に蔓延る問題...そう考えるようになりました。

 

①のタイムラグ。報道を元記事から1日以上紹介しないことは、即時性の観点からみておかしなことです。事件や事故ではないため即時性が低いと言われればそれまでですが、さすがに遅すぎます。そこで推察したのが”NHK紅白歌合戦の宣伝ではないか?”ということ。白組司会に嵐のメンバー、二宮和也さんが出場(ちなみに白組司会は昨年も嵐のメンバーであり、5年をかけて一人ずつ担当するのでは?とみています。他の方からも同様の声があがっています)、安室奈美恵さんは特別枠で出場するわけです。原稿には謳っていなくともこの報道から紅白を自然と想起する視聴者は多いはず。その報道を、土日午後の視聴率が高くないであろう時間より月曜朝の時間、より多くの方が局へチャンネルを固定するのに合わせて報じるほうがNHKにおいて有益では?と。そう考えるとこの報道は、NHKの【(自己)保身】のために敢えて遅く報じたと思われてもおかしくないでしょう。

 

②の動画割愛の件。NHKのリンク先の動画をみると安室奈美恵さんの部分からはじまっており不自然です。つまりは嵐の部分が(コメント動画のみならず)丸々カットされているのですが、これはネットに懐疑的な所属事務所への配慮なのは間違いないでしょう。ただ今回はあくまで"報道"であり、NHKが悪しき使い方をするわけではありません。にもかかわらず削られるというのは、事務所側のクレームを恐れたメディアの必要以上の配慮、すなわち【忖度】と言えるでしょう。ジャニーズWESTがネット配信ドラマに出演して以降でしょうか、同事務所のネットへのスタンスが徐々に変わってきていると感じるのですが、直接契約関係を結んだ企業以外での使用は認めない等のスタンスがあるのかもしれません。しかしながら報道については契約云々は存在せず、本来公平になされるべきであり、圧力をかけたのだとしたら事務所側の問題ですがそうでなければメディアの過度の忖度といえます。

(ちなみにメディアにおいて、事務所の所属タレントを写真付きで報じることがあるとすればそのタレントが不祥事を起こした場合のみ。実はこれも大きな問題で、不祥事の際に普段写真が使えない鬱憤を晴らすかの如く写真を派手に用いるそのやり方には気味悪さを覚えます。メディアは過度な忖度も、過度なバッシングも特に報道の点では不要であり、事務所への進言をすればいいのに…と思うのです。)

 

③について…これはそもそもオリコンの記事への違和感なのですが、ここにおけるセールスとはあくまで音楽ソフト(フィジカル)のみ。デジタルダウンロードおよびストリーミングは含まれていません。このブログでは事ある毎に、今の社会的ヒットの鑑はシングルCDセールスに特化したオリコンよりもデジタルダウンロード等(以下デジタル)を含めた複合指標によるビルボードジャパンであると記載しているのですが、オリコンは未だ頑なに音楽ソフトにこだわるという状況です。2016年のデジタル売上は前年比112%と伸長、また音楽全体の売上におけるデジタルの比率は18%弱のシェアを占めていることから(データは定額配信は'16年音楽配信売上の4割に伸長。RIAJ発表 - AV Watch(2月21日付)参照)、デジタルを無視するのが元来おかしなはずで、ゆえにこの発表自体が【旧態依然】と言わざるを得ません。この記事は、デジタルのシェアが高い世界の音楽環境に対して異質、異様と言われてもおかしくないでしょう。この記事の存在はもしかしたら、レコード会社にとってもデジタルは未だ軽視される存在であり音楽ソフトのセールスこそ大事であることの証明なのかもしれませんが、それは確実に間違っています。

 

①~③について考えるうちに、この報道1つだけで各業界における諸問題が見えてきました。2018年は諸問題へメスをいれること、そして各業界の自浄が大きな課題であり、それが出来なければ日本のレベルはどんどん下がっていくだけでしょう。