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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ビルボードジャパンソングスチャート、アイドル曲の明暗を分けたもの、そして首位曲に足りないもの

昨日発表された、最新9月24日付ビルボードジャパンソングスチャート。

チャートを見た第一印象のままに、自分はこうつぶやきました。

総合ポイントにおいて、星野源「アイデア」(4→9位)は前週比68.2%。他方DA PUMP「U.S.A.」(2→4位)は順位を下げながらも前週比105.4%と上昇。またCM効果も相俟ってか米津玄師「Lemon」(7→5位)は前週比117.5%と3週連続でポイントが上昇し、「アイデア」を逆転。前週、ロングヒットの条件は前週比80%以上と書きましたが、「Lemon」「U.S.A.」と「アイデア」で明暗が分かれてきた気がします。そして関ジャニ∞「ここに」は前週比13.3%という結果となりました。1割台というのは実に厳しい数字です。

 

そのアイドルやK-Pop、アニメ関連においてはシングルCDセールスに特化したチャートアクションが垣間見えます。最新9月24日付シングルCDセールスチャートではNEWS「「生きろ」」をトップに、以下BOYS AND MEN(東海地方のアイドルグループ)の「炎・天下奪取」、MONSTA X(韓国のアイドルグループ)の「LIVIN' IT UP」、GANG PARADE(女性アイドルグループ)の「CAN'T STOP」、虹のコンキスタドール(女性アイドルグループ)の「ずっとサマーで恋してる」と続きます(枚数にはやや大きな違いがあれど、同日付オリコンシングルCDランキングでも順位は同じ)。が、総合チャートとなると上位3曲は同じながらGANG PARADEは13位、虹のコンキスタドールは18位と大きく落ち。またシングルCDセールスにおいて「「生きろ」」が159676枚、「炎・天下奪取」が137807枚、「LIVIN' IT UP」が100333枚という差に対し、総合チャートでのポイントは順に18200、12783、9629となり、シングルCDセールス以上に差が開いている格好です。

この、NEWS「「生きろ」」と他のアイドル曲に大きな差が生じた理由は2つ(CHART insight | Billboard JAPANで表示週を2018年9月10~16日を指定し更新すると解るので是非御覧ください)。ひとつはルックアップの順位の差。「「生きろ」」がルックアップでも1位を獲得しているのに対し、他はシングルCDセールス順位とルックアップがあまりに開いているどころか、「炎・天下奪取」と「ずっとサマーで恋してる」はトップ100にも入っていません。これはBOYS AND MEN研究生が和田アキ子さんをバックアップした「愛を頑張って」や、同じく東海地方を拠点とするアイドルグループ、MAG!C☆PRINCEの今夏のシングル「SUMMER LOVE」についても同様の動きでしたね。

ルックアップはCDをパソコンに取り込んだ際のCDデータベースへのアクセス回数に基づくもの。CDを購入した方全てがパソコンに取り込むわけではありませんが、ここまで乖離があると実際の購入枚数と購入者数に大きな乖離があることは容易に想像出来ますし、またCDレンタルも回転しているとは言い難いでしょう。

そしてもうひとつの理由は、ルックアップも含めではありますが、シングルCDセールスに頼りすぎていること。下記はCHART insight | Billboard JAPANの最新チャートから曲名をクリックした際に出てくるチャート構成比。

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「「生きろ」」以外の曲はシングルCDセールス指標が全体の80%以上を占めています。とりわけ「ずっとサマーで恋してる」は98%ほどがシングルCDセールスで構成されているんですよね。

アイドル等の曲はシングルCDセールスにポイントが特化していることが証明されましたが、さらにはそのセールスも(リリースイベントやファンの購入心理を踏まえれば)初週に集中するというわけで、他指標がきちんと補えなければ次週は急落するでしょう。もしかしたら今回紹介した5組のアイドルの楽曲の中で、次週トップ100に残っていないものがあるかもしれず、これではアイドル曲がロングヒットとなりその歌手の知名度を高めることは難しいですよね。シングルCDセールスがレコード会社や事務所の経営の柱になるのかもしれませんが、アイドルを長く活躍させたいと思うならばそれ以外の指標も伸ばし社会的なヒットを作り、それをきっかけとしてメディア露出に至らせることがより大事かと思われます。

 

ちなみにNEWS「「生きろ」」はTwitter、ルックアップ共に1位、そしてラジオ11位。ただしデジタル指標(デジタルダウンロード、ストリーミング、動画再生)が全てランクインしていません。これは事務所の方針なのでしょうが、曲を社会により浸透させる意味においても、またチャートのポイントをより押し上げる点においても、実に勿体無い気がするのです。ルックアップの高さは、コアなファン以外がレンタル等を利用し楽曲を追いかけようとしている表れだと考えれば、その行動をデジタルに促すこともひとつの策だと考えます。