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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

最新ビルボードジャパンソングスチャートにみる、AKB48「センチメンタルトレイン」のチャートアクションの乏しさ

昨日発表された、最新10月8日付ビルボードジャパンソングスチャート

DA PUMP「U.S.A.」(2位)が前週比93.5%、米津玄師「Lemon」(4位)に至っては同139.3%の総合ポイント推移となっており底力をみせています。そんな中、首位に立ったのはハロプロ・オールスターズ「YEAH YEAH YEAH」。

モーニング娘。’18、アンジュルム、Juice=Juice、カントリー・ガールズ、こぶしファクトリおよびつばきファクトリーの6組が参加するまさに”オールスター”盤で、シングルCDの初回生産限定盤にはDVDが同梱、さらにイベント抽選応募券が封入。通常盤には各歌手毎に[トレーディングカードソロ数種(歌手の人数による)&集合1種]よりランダムにて1枚封入されているという仕組み。ゆえに、お目当てのメンバーのカードを手に入れる確率は非常に低く、またイベントへ参加するには別途初回生産限定盤を買わなければいけないシステムになっているのです。それゆえでしょう。

シングルCDセールス以外の指標によるポイントが500未満らしいと分析された方がいらっしゃるのですが、それも納得。ラジオエアプレイ95位、Twitter63位と低く、デジタルダウンロード、ストリーミング、YouTubeはランクインせず。シングルCDセールスでは2位の5倍以上も稼ぎながらルックアップで18位というのは、CDがグッズとして消化されている可能性が高く、ユニークユーザーが少ないかの証明といえるでしょう。ハロー!プロジェクトの実力は女性アイドルグループの中でも高いだけに、この売れ方ではその実力がほぼ伝わらず実に勿体無いと思うのです。他指標の低さをみるに、次週は急落する可能性が高いのもまた勿体無いと強く感じています。

 

さて、「YEAH YEAH YEAH」の今後の動きを憂いたのは、同じ女性アイドルグループでシングルCDセールスに特化した楽曲が今週同様の動きをみせていたため。

今年の”AKB48 53rdシングル 世界選抜総選挙”で上位に選ばれたメンバーによるシングル。センターの松井珠理奈さんが体調不良により休業したため十分なプロモーションが出来なかったと言われればそれまでですが、それでもリリースの2週前には復帰しテレビ番組でパフォーマンス済。休業はさほど影響なかったのかもしれません。

しかし今回の落ち込みは、ここ最近のシングルの中でも特段大きいのです。昨年以降リリースしたシングル、および2016年の選抜総選挙上位メンバーによるシングルの、シングルCDセールス加算週とその翌週の推移をみてみると。

※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されない)

 ・各指標

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生。

 ・各指標毎順位における[-]はランク圏外、[ ](ブランク)はランクインせず。これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

曲名 日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV

LOVE TRIP

(総選挙メンバー)

2016/9/12 143932 1 1 7   8 1 6  
2016/9/19 4563 3.2% 9 6 17   22 2 17 22
シュートサイン 2017/3/27 45819 1 1 23   8 1 4  
2017/4/3 3744 8.2% 12 5 54   40 2 23  

願いごとの持ち腐れ

(投票ナンバー付)

2017/6/12 57369 1 1 27   3 3 6 15
2017/6/19 6643 11.6% 2 2 43   38 6 18 35

#好きなんだ

(総選挙メンバー)

2017/9/11 47781 1 1 12   17 2 4 38
2017/9/18 3057 6.4% 13 13 48   53 6 7 38
11月のアンクレット 2017/12/4 48138 1 1 20   9 3 4  
2017/12/11 2444 5.1% 17 9 91   27 7 19  
ジャーバージャ 2018/3/26 40325 1 1 42   30 4 5 90
2018/4/2 4319 10.7% 7 4 79   25 7 11

Teacher Teacher

(投票ナンバー付)

2018/6/11 56934 1 1 23   5 2 16
2018/6/18 12608 22.1% 2 2 60   10 5 35

センチメンタルトレイン

(総選挙メンバー)

2018/10/1 44473 1 1 31   20 3 1  
2018/10/8 1660 3.7% 22 13 88   77 10 42  

「LOVE TRIP」におけるポイントの高さは、シングルCDセールスに”係数”が用いられる前ゆえ(係数については合算ランキングの詳細を発表したオリコンへの2つの疑問(9月22日付)をご参照ください)。その係数取り入れ前とさほど変わらない推移となっているのが今回の「センチメンタルトレイン」であり、2017年以降のシングルでは最大の落ち込みとなっています(なお、投票シリアルナンバー付シングルにおいては投票期間の関係上翌週もシングルCDセールスが(ランク的に)急落しておらず、ゆえに前週比10%以上をキープ)。今回のシングルCDセールス指標での落ち込みは「#好きなんだ」以来ですが、その「#好きなんだ」よりシングルCDセールスを除く全指標が低いゆえ、総合順位も20位台にまでダウンしてしまいました。

ではこれを、選抜総選挙のない坂道グループの今年のシングルと比較してみます。

曲名 日付 ポイ
ント
前週
総合
順位
CD DL ST RA LU TW MV
乃木坂46
シンクロニシティ
2018/5/7 45209 1 1 4 3 6 1 1 24
2018/5/14 13651 30.2% 2 2 10 3 45 2 5 24
乃木坂46
「ジコチューで行こう!」
2018/8/20 41870 1 1 5 6 9 1 1 26
2018/8/27 10287 24.6% 3 3 17 11 46 3 8 49
欅坂46
「ガラスを割れ!」
2018/3/19 45449 1 1 2 3 17 1 1 3
2018/3/26 11534 25.4% 3 3 5 1 36 2 7 5
欅坂46
アンビバレント
2018/8/27 42352 1 1 1 5 24 1 1 13
2018/9/3 8593 20.3% 5 2 9 3 32 2 9 25

上記で取り上げたAKB48のシングルでは「Teacher Teacher」が唯一前週比20%以上となっていましたが、坂道グループの今年のシングルは全て前週比20%以上を達成。シングルCDセールスに特化していながらも他指標も高いゆえキープ出来ているのです。デジタルダウンロードのフィジカルに先駆けた解禁やストリーミングの実施もさることながら動画再生の指標も高く、楽曲自体が愛され注目されていることが判ります。他方AKB48は、近年の楽曲でストリーミングを解禁していない模様であり、さらに動画再生指標の成績がどんどん降下、今作「センチメンタルトレイン」ではランクインすらしていません。シングルCDに映像盤が基本的に同梱されているゆえコアなファンはそちらで観るのでしょうが、ライトなファン等がYouTube等をほぼスルーしている状況は、楽曲の推進力が低い以前にともすればAKB48との距離感が(コアなファンに比べて)相当広がっているとも言えるかもしれません。

 

シングルCDセールスの高さは、レコード会社的にもまた芸能事務所にとってもたしかに潤います。しかしユニークユーザーが少ないとコアなファンの金銭面の負担は大きく、彼らがファンをやめた時に次のファンがつかないと人気もセールスもどんどん下降線を辿るばかりでしょう。ゆえにシングルCDセールスに特化したいわば短期的戦略よりも、CDをグッズとして捉えることをやめ楽曲として売る、そして彼ら彼女らの良さを徐々に浸透させることで魅力を伝え次のシングルCD以降で自然な購入を促すような中長期的戦略にシフトしたほうがいいでしょう。これはアイドルに限らず、シングルCDセールスに特化したジャンルの歌手に総じて言えることです。