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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

King & Prince「シンデレラガール」が2018年楽曲でも屈指のチャートアクションを示した件…しかし勿体無い点が

先週、ブログにてKing & Princeがビルボードジャパンソングスチャートにおける総合ポイント、およびルックアップにおいて他のアイドルと異なる売れ方をしていると書きました。

ジャニーズ事務所所属のアイドルはデジタル未解禁ゆえ、デジタル3指標であるデジタルダウンロード、ストリーミングおよび動画再生は基本的に加算されません。ゆえにCDレンタルへ流れる人が少なくなく、またレンタル店側は他事務所のアイドルより圧倒的に多く在庫を取り揃えるため、さらにルックアップが高くなる傾向があります。

とはいえKing & Princeについては事務所所属のアイドルの中でも抜きん出ていると思うのです。そこで、デジタル3指標やルックアップの仕組みも踏まえた上で、今年度のジャニーズ事務所所属アイドルのチャート推移(3週分)をまとめてみました。なお、今週チャートを制覇した嵐「君のうた」は、現段階においてセールス指標反映後3週に満たないため、下記には記載していません。

 

※各指標について

 ・ポイント:総合ポイント

 ・ポイント前週比:前週および当週共に50位以内にランクインした場合のみ計算(50位未満は総合ポイントが表示されないゆえ)。※は計測不能を示す

 ・各指標

  (詳細はビルボードジャパンの自問自答 | Special | Billboard JAPANをご参照ください)

   CD:シングルCDセールス

   DL:デジタルダウンロード

   ST:ストリーミング

   RA:ラジオエアプレイ

   LU:ルックアップ

   TW:Twitter

   MV:動画再生。

 ・各指標毎順位における[-]はランク圏外、[ ](ブランク)はランクインせず。これらはCHART insight | Billboard JAPANから曲名をクリックすると確認可能

曲名 日付 総合
順位
ポイ
ント
前週
CD DL ST RA LU TW MV
Kis-My-Ft2
「赤い果実」
2017/12/11 1 18410 1     2 1  
2017/12/18 16 1980 10.8% 11     87 8 8  
2017/12/25 66 26       10 40  
A.B.C-Z
「終電を超えて〜
Christmas Night」
2017/12/25 5 4157 3     64 4 13  
2018/1/1 46     37 65  
2018/1/8 81       77    
Hey!Say!JUMP
White Love
2018/1/1 1 28801 1     52 1 13  
2018/1/8 8 3186 11.1% 2       1 30  
2018/1/15 17 2162 67.9% 6     2 7  
NEWS
「LPS」
2018/1/29 1 14055 1     12 1 7  
2018/2/5 10 2383 17.0% 5     45 3 20  
2018/2/12 94 27       10 67  
KinKi Kids
「Topaz Love」
2018/2/5 1 22126 1     16 1 3  
2018/2/12 12 3048 13.8% 10     29 1 7  
2018/2/19 24 1479 48.5% 18     58 6 7  
Hey!Say!JUMP
「マエヲムケ」
2018/2/26 1 27088 1     34 1 9  
2018/3/5 13 2601 9.6% 6     59 2 41  
2018/3/12 43 1161 44.6% 22     4  

「Find The Answer」
2018/3/5 1 32062 1     39 1 5  
2018/3/12 6 5106 15.9% 7     49 2 24  
2018/3/19 18 2166 42.4% 16       2 87  
ジャニーズWEST
プリンシパルの君へ」
2018/3/19 2 15611 2     45 3 9  
2018/3/26 34 1312 8.4% 17     11 78  
2018/4/2 32       17  
KAT-TUN
「Ask Yourself」
2018/4/30 1 14610 1     54 2 11  
2018/5/7 23 1679 11.5% 8     7 17  
2018/5/14 25       9 78  
King & Prince
「シンデレラガール」
2018/6/4 1 34324 1     5 1 4 82
2018/6/11 4 7431 21.6% 4     22 1 7 -
2018/6/18 10 3874 52.1% 9     25 2 8  
V6
「Crazy Rays」
2018/6/11 3 8079 2     21 4 37  
2018/6/18 52 18     47 15 69  
2018/6/25 38     48 19  
Sexy Zone
「イノセントデイズ」
2018/6/18 1 16293 1     1 1  
2018/6/25 14 2689 16.5% 14     85 4 4  
2018/7/2 96 32       7 49  
NEWS
「BLUE」
2018/7/9 1 19194 1     25 1 1  
2018/7/16 6 2795 14.6% 8     76 3 2  
2018/7/23 20 1653 59.1% 28       5 8  
Kis-My-Ft2
「L.O.V.E.」
2018/7/23 1 18514 1     1 1  
2018/7/30 12 2505 13.5% 9     4 9  
2018/8/6 79 27       12 56  
KEN☆Tackey
「逆転ラバーズ」
2018/7/30 1 10131 1     20 1 3  
2018/8/6 19 2086 20.6% 11     37 10 16  
2018/8/13 41     15 49  

「夏疾風」
2018/8/6 1 35316 1     33 1 2  
2018/8/13 7 7006 19.8% 6     24 2 11  
2018/8/20 7 3409 48.7% 10     30 2 30  
Hey!Say!JUMP
「COSMIC☆HUMAN」
2018/8/13 1 23820 1     91 1 1  
2018/8/20 8 3325 14.0% 9     88 3 3  
2018/8/27 35 1119 33.7% 16     8  
ジャニーズWEST
「スタートダッシュ!」
2018/8/27 2 13622 2     10 4 19  
2018/9/3 37 1251 9.2% 16     15 91  
2018/9/10 37     22  
ENDRECHERI
「one more purple funk... -硬命 katana-」
2018/9/3 4 8602 1     36 7 2  
2018/9/10 51 20     13 25 42  
2018/9/17 40     57 50 100  
A.B.C-Z
「JOYしたいキモチ」
2018/9/10 5 5081 1     93 10 2  
2018/9/17 31 1332 26.2% 15     30 7  
2018/9/24 82       54 63  
関ジャニ∞
「ここに」
2018/9/17 1 23680 1     6 1 17  
2018/9/24 14 3141 13.3% 6     36 4 39  
2018/10/1 47 1110 35.3% 18     92 13 62  
NEWS
「「生きろ」」
2018/9/24 1 18200 1     11 1 1  
2018/10/1 15 2439 13.4% 11     18 2 18  
2018/10/8 26 1476 60.5% 27     34 4 14  
Kis-My-Ft2
「君、僕。」
2018/10/15 1 21359 1     6 1 1  
2018/10/22 11 2411 11.3% 8     65 2 9  
2018/10/29 65 24     5 58  
King & Prince
「Memorial」
2018/10/22 1 32259 1     15 1 1  
2018/10/29 6 4533 14.1% 5     37 1 8  
2018/11/5 14 2361 52.1% 13     2 55  

まずなにより、全ての曲がトップ5入りを果たしているのは流石といえます。CDレンタルにおいては、先述した事情もさることながらおそらく全シングルのレンタル解禁を発売日と同日に設定していることでルックアップも高いものと考えます。

他方、シングルCDセールス指標加算週から3週連続でトップ10入りしているものはKing & Prince「シンデレラガール」および嵐「夏疾風」のみ。加算の翌週に100位圏外となってしまう曲もあり、アイドルの中でも差が生じています。加算週に総合ポイントが3万を超えたのがKing & Princeと嵐だけ(なお今週首位を獲得した嵐「君のうた」も3万を突破)、そして加算から2週後に3000ポイントを超えているのが「シンデレラガール」と「夏疾風」のみという状況。セールスに最も長けた嵐に、King & Princeは並んだと言っていいでしょう。

 

さて、「シンデレラガール」のチャート構成指標で気付いたことが…実は動画再生指標がトップ100入りを果たしているのです。

わずか1分のティーザー的なものではありますが、動画を用意したのが功を奏した形といえます。しかもリリース前も2週に渡り動画再生指標において100位以内にランクインしていたのです。

というわけで、総合チャート初登場からシングルCDセールス指標加算後10週間迄のチャート推移を出してみます。

 

・King & Prince「シンデレラガール」

  (5月23日発売  5月7日YouTube解禁)

日付 総合
順位
ポイ
ント
前週
CD DL ST RA LU TW MV
2018/3/26 37 1271           3  
2018/4/2 65           4  
2018/4/9           20  
2018/4/16                
2018/4/23                
2018/4/30 97         9  
2018/5/7       85   14  
2018/5/14 56       42   10  
2018/5/21 25 1630         3 24
2018/5/28 31 1260 77.3%       80   8 55
2018/6/4 1 34324 2724.1% 1     5 1 4 82
2018/6/11 4 7431 21.6% 4     22 1 7
2018/6/18 10 3874 52.1% 9     25 2 8  
2018/6/25 13 2766 71.4% 11     36 1 19  
2018/7/2 15 2212 80.0% 14     53 1 18  
2018/7/9 7 2984 134.9% 14     57 2 5  
2018/7/16 10 2322 77.8% 14     1 9  
2018/7/23 10 2195 94.5% 18       2 14  
2018/7/30 30 1452 66.2% 18       2 39  
2018/8/6 38 1302 89.7% 30       2 33  

(※太字はシングルCDセールス指標加算初週)

主題歌に起用された『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS)の最終回が放送された週を集計期間としたチャート(7月9日付)では前週比100%超えを達成しています。シングルCDセールスポイント加算の翌週(6月11日付)には一度急落していますが、翌週以降は前週比5割以上のポイントを維持。トップ10入りは都合6週しかありませんが、ここまで高い位置をキープ出来ているのはジャニーズ事務所の中でも驚異的です(ちなみに嵐「夏疾風」のトップ10入りは合計4週)。

で、実はこれに近い動きをみせているのが、ビルボードジャパンの今年上半期ソングスチャートで2位を記録した欅坂46「ガラスを割れ!」。こちらも初登場からシングルCDセールス指標加算後10週分迄をチェックしてみると。 

欅坂46「ガラスを割れ!」

  (3月7日発売  2月13日YouTube解禁)

日付 総合
順位
ポイ
ント
前週
CD DL ST RA LU TW MV
2018/2/19 48 990           6  
2018/2/26 21 2187 220.9%           4 3
2018/3/5 23 1848 84.5%         4 8
2018/3/12 18 2076 112.3%       97   4 9
2018/3/19 1 45449 2189.3% 1 2 3 17 1 1 3
2018/3/26 3 11534 25.4% 3 5 1 36 2 7 5
2018/4/2 4 7501 65.0% 3 11 3 48 3 8 10
2018/4/9 4 4478 59.7% 10 16 5 3 18 22
2018/4/16 5 3904 87.2% 6 10 5 73 3 27 27
2018/4/23 7 4278 109.6% 9 8 4 57 3 24 17
2018/4/30 7 4541 106.1% 6 15 7 70 5 22 22
2018/5/7 10 2679 59.0% 11 31 9   5 52 28
2018/5/14 8 3542 132.2% 7 44 8   6 18 29
2018/5/21 17 1910 53.9% 28 45 10   5 32 29

(※太字はシングルCDセールス指標加算初週)

シングルCDセールスに差はあれど(「シンデレラガール」622701枚、「ガラスを割れ!」893632枚。ただしビルボードジャパンではユニークユーザー数等を考慮して”係数”という概念を用いているため、枚数の通りにはカウントされません。)、ラジオエアプレイやルックアップ、Twitterはそこまで大差ないように思われます。シングルCDリリース後に前週比100%超えを果たしたのが3週あるというのはタイアップ等の強さだと思いつつ、その総合ポイントの推移も「シンデレラガール」とそこまで大きくは変わらない気もするのです。

 

一方で「シンデレラガール」と差がついた原因は、やはりデジタル3指標(デジタルダウンロード、ストリーミングおよび動画再生)でしょう。極論かもしれませんが、「ガラスを割れ!」からデジタル3指標を抜けば、「シンデレラガール」と総合ポイントが拮抗したと思われるゆえ、ジャニーズ事務所側がデジタルに未だ明るくないというのは非常に勿体無い気がするのです。今回「シンデレラガール」においてはいくらかの動画再生ポイントが付いていましたが、出来ればティーザーではない(また途中に宣伝を挟まない等)、いわゆるフルバージョンで動画を解禁し、そして少なくともデジタルダウンロードを解禁すればデジタルポイントが上乗せされ、もっと上位に来ることが出来たはず。デジタルによってシングルCDが売れなくなるという懸念もあるかもしれませんが、アイドルファンがシングルCDからデジタルダウンロードに移行するのは、シングルCDがグッズとしての役割を果たしていることを踏まえれば考えにくいと思うのです。むしろデジタル解禁によって、(アイドルのファンではないと言う意味での)ライト層にさらに広がっていくと思うんですよね。

その一例として、たとえばジャズミュージシャンの菊地成孔さんは自身のラジオ番組『菊地成孔の粋な夜電波』(TBSラジオ 土曜28時)で「シンデレラガール」を絶賛しており。

この日の放送は、みやーんさんが文字起こしを実施。上記記事と併せて多くの方の目に触れたと思われます。

しかしながら、その「シンデレラガール」を聴くための手段が限られることで、機会損失を起こしていないかと思うのです。これは音楽番組出演でも同じことで、今では出演のタイミングでTwitterのみならずデジタル3指標も伸びることが自然な現象となっていますが、このままジャニーズ事務所所属歌手が事務所の意向でデジタルNGとあっては曲が広がる可能性は低いままですし、更には事務所のクローズな姿勢に不満を覚えた人が所属歌手にも不信を抱いてしまう可能性があり、それでは歌手側が不憫でなりません。

 

「シンデレラガール」はデビュー曲ゆえ特例でYouTubeに上がった可能性が?と考えていましたが、続くシングル「Memorial」でもティーザー的動画があり、レコード会社の方針が活きたのかもしれません。ちなみにレコード会社はユニバーサルミュージックの中のジャニーズレーベル。

そういえば、V6についても同様に、ティーザー的短さながらミュージックビデオが上がっています。

King & PrinceやV6の動画はあくまで特例なのかもしれませんがしかし、「シンデレラガール」の動画再生指標がわずかながら反映されていることを踏まえれば、デジタルを解禁することにそろそろ前向きになってもいいと思うのですがいかがでしょう。好い曲はたくさんあるわけですから、ジャニーズ事務所側にはお願いしたいところです。

(ちなみに、仮にデジタル全面解禁の可能性があるとすれば、この冬オリコンが複合指標に基づくランキングを用意するタイミングに合わせてではないかと睨んでいる自分がいます。)

 

話が事務所への方針転換の願いに変わってしまいましたが、もしも「シンデレラガール」がデジタル解禁済だったなら「ガラスを割れ!」にさらにポイントが近づいたと思われ、ゆえにビルボードジャパン年間ソングスチャートでのトップ10入りは間違いなかったと思われます。デジタル解禁について、どうか英断を下していただきたいものです。