イマオト - 今の音楽を追うブログ -

旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

曲が"いつ・どこ視点"なのか、曲名に惑わされずに見極めよ

自分がスタッフの一員を務める『わがままWAVE It's Cool!』(FMアップルウェーブ 日曜17時。サイマル放送で全国どこからでも聴取可能です。詳しくはFMアップルウェーブのホームページをご確認ください)、3月3日の放送は当日が"桃の節句"ということで、音楽特集は【桃】でお送りしました。その中でリスナーの方から、菊池桃子「卒業-GRADUATION-」のリクエストをいただいたですが、桃子さんが大好きなDJ佐々木さんの指摘にもあったように、この曲は"4月視点"の曲なんですよね。

菊池桃子 卒業-GRADUATION- 歌詞 - 歌ネット

♪4月になるとここへ来て卒業写真めくるのよ、というサビのフレーズで、この曲の立ち位置が解ります。1985年2月リリースであること、『ほぼ同じ時期に、斉藤由貴さん、尾崎豊さん、倉沢淳美さんの3人が、同じタイトルでシングルをリリース』したこと(『』内は「卒業-GRADUATION-/菊池桃子」 - 食卓ON楽(2012年3月16日付)より。カタカナを半角から全角へ変更しています)もあって、この曲があたかも卒業式視点だと捉えられた節があるかもしれません。

 

たとえば季節や(季節特有の)イベントといった特定の時期によく聴かれる曲の中には、実は曲中の視点がタイトル(から想起させる季節等)とは異なることが珍しくありません。

有名どころではアース・ウインド & ファイアー「September」(1978)が12月から過去(9月21日夜)を振り返る歌だったり。

 

今年のバレンタインデーに放送された『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ 月-金曜18時)を埋め尽くした「バレンタイン・キッス」。オリジナルは1986年にリリースされた国生さゆりさんのソロデビュー曲ですが、歌い出しから解るようにバレンタインデーの当日ではなくその前日を描いた曲。

国生さゆり バレンタイン・キッス 歌詞 - 歌ネット

 

今年映画化された中島美嘉雪の華」。サビでは♪今年、最初の雪の華を と歌われています。が、雪国での今年最初の雪は元日か、1月初旬が相場。以前この曲については"東京視点で書かれた曲"と予想しましたが(下記エントリー参照)、映画の公開日が2月1日だったことで予想が確信に変わりました。

中島美嘉 雪の華 歌詞 - 歌ネット

この「雪の華」はいつの視点かではなく"どこの視点か"という問題ですが、この違和感は卒業ソングに桜が多用されることへのそれに似ています。青森では4月下旬に咲き、北海道では5月というところもありながら、桜イコール別れという曲が多いのは、その曲があくまで北国以外の視点であることが解ります。

 

…と、挙げだすとキリがないのがこの類なのです。そしてその最たる例がやはりこの曲ではないでしょうか。別れてしまった後という"時間"と、もう一緒にいないという"場所"、その双方のギャップを満たす曲。

♪エンダーはもはやその意味を知っててネタと化しているのかもしれませんが、歌詞の意味をきちんと知ることの重要性は「I Will Always Love You」が最も強く示していると言っていいでしょう。