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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

「ワタリドリ」「青と夏」は大ブレイク予備軍? 2曲を支える指標とは

先週水曜に発表された、6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート。Official髭男dismが「Pretender」の上昇を機に旧譜もチャートを上昇していることについては一昨日述べました。

ではこの2曲は何をきっかけに伸びているのか…その明確な理由はつかめなかったものの、ここに来て伸びているのは間違いありません。

 

・[ALEXANDROS]「ワタリドリ」(37位)

・Mrs.GREEN APPLE「青と夏」(44位)

「ワタリドリ」は2015年に年間62位、「青と夏」は昨年年間84位とそれぞれビルボードジャパン年間ソングスチャートトップ100にランクインを果たしており既に実績を残しているのですが、ここに来て再浮上。といっても瞬発力でチャートインを果たしたというわけではなく、”着実に”というのが両曲のCHART insightからみえてきます。

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(※「ワタリドリ」については直近の150週分を表示しています。)

2曲共に、楽曲を大きく動かしているのがストリーミング(青の折れ線グラフ)および動画再生指標(赤)。「ワタリドリ」は共にチャート構成比の3割前後、「青と夏」はストリーミングだけで半分近くを稼いでいます。ストリーミングは両曲共に以前から常に高位置でランクインしており、それが総合チャート(黒)を下支えすることで「ワタリドリ」は2015年3月16日付以降、「青と夏」は2018年7月23日付以降常に300位以内をキープしていたと想像出来ますが、今年に入ってからは動画再生指標も上昇し、2つの指標で総合チャートを牽引しています。このブログエントリー執筆段階で9429万の再生回数を誇る「ワタリドリ」は実は今年2月11日付になってはじめて動画再生指標で300位以内にチャートインしたのですが、これはおそらくISRCの付番がきちんと行なわれていなかったことによるものではないかと思われ(ISRCの付番については以前記載しています。高い動画再生回数を記録する曲がビルボードジャパンチャートに反映されない理由(2015年6月18日付)参照)、おそらくクリアしただろう後、最新6月3日付では動画再生指標13位まで上昇。「青と夏」も同指標18位となり、ストリーミング共々大きな力となっているのです。他方最新チャートにおいて、シングルCDセールス指標は共に300位未満。「青と夏」は昨年の楽曲であり実店舗でレンタル可能な状況にあるゆえか、ルックアップ指標が最新チャートで55位と高い位置にいますが、「ワタリドリ」はルックアップも300位未満、それも2年以上その状況であることを踏まえれば、ロングヒットにおけるシングルCDの重要度はかなり低いことがよく解ります(ジャンルにより重要度は異なりますが)。

 

先に「ワタリドリ」と「青と夏」の上昇要因について、”明確な理由はつかめなかった”と書きましたが、おそらくは[ALEXANDROS]が現在公開中の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』日本版主題歌の「Pray」を先月、Mrs.GREEN APPLEシーブリーズCMソングの「ロマンチシズム」をこの春リリースしたことで、その楽曲を機に旧譜を掘るというOfficial髭男dismと同様の流れが生まれているのかもしれません。 

「ワタリドリ」「青と夏」は以前から長きに渡り支持され続け、おそらくは両バンドにとって代名詞的な楽曲と言えるでしょう。共にストリーミングおよびフルバージョンでのミュージックビデオが解禁されているため、両バンドにとってさらなるブレイクのきっかけとなる曲が誕生すれば新曲と共に大ヒットに至れるという下地(新曲を機に”見つけやすい”という環境)が「ワタリドリ」「青と夏」には整っていると言えます。あいみょんさんの大ブレイクやOfficial髭男dismがその流れに乗りつつあるその環境を考えるに、ストリーミングやフルバージョンのミュージックビデオの解禁はその下地を形成するのに間違いなく必要だというのが自分の見方です。