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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

ベストアルバムのデジタル未配信はソングスチャートに爪痕を残さない?…7月8日付ビルボードジャパンソングスチャートをチェック

6月24~30日を集計期間とする、7月8日付のビルボードジャパン各チャートが昨日発表され、ソングスチャートはIZ*ONE「Buenos Aires」が制しました。

しかしながら、チャート構成比をみるに次週は急落必至とみています。

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無論、次週のチャートがどうなるかはまだ誰にも解りませんが、しかしながら韓国版楽曲とは特に接触指標の差が異なりすぎるゆえ、IZ*ONEが他のK-Pop歌手のようなファン層を獲得しているのか、もしくは韓国版楽曲を好きなファンが日本版楽曲を果たして好意的に捉えているのか、疑問に思う自分がいます。

 

 

さて、今週は面白い動きが。6月16日日曜にダウンロード配信および一部サービスにてストリーミングを解禁した、安室奈美恵さんのベストアルバム『Finally』(2017)が、ダウンロードアルバムチャートでトップに立ちました。総合アルバムチャートでは7位につけています。

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(総合アルバムチャートは黒の折れ線で、ダウンロード指標は紫で表示。)

発売から1年半以上を経て遂にデジタル解禁に至った『Finally』ですが、発売から15日で2万ダウンロードを突破しており、デジタル化を待ち望んだ方が少なくないことが解ります。またデジタル解禁に伴い楽曲単位でのダウンロードも可能となった影響で、アルバムタイトル曲の「Finally」がソングスチャートで前週33位に再浮上を果たしています(今週は70位にランクイン)。

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「Finally」はベストアルバムが初登場でミリオンセールスを獲得した週、2017年11月20日付のビルボードジャパンソングスチャートで30位にアップし最高位を記録しています。アルバムタイトルと曲名が同じことも功を奏してかTwitter指標は2位に(ひとつのツイートの中に歌手名と曲名を入れると同指標のカウント対象となります)。しかしデジタル未解禁、未シングルCD化ゆえ他指標ではラジオエアプレイが30位に入ったのみで、総合では30位に落ち着く形となりました。同日付ソングスチャートでは他にも「Hero」(31位)、「Baby Don't Cry」(76位)、「Just You and I」(89位)と、「Finally」を含む計4曲が、いずれも前週の100位圏外から上昇していますが、アルバムの初週ミリオンという強烈なインパクトとはかけ離れたチャートアクションに。「Finally」以外はいずれも過去にデジタル解禁されていたため、アルバムがダウンロード出来ないことを知った方が代わりにシングル等を購入した結果、上昇に至ったものとみられます(ただし「Baby Don't Cry」は新録バージョンとして『Finally』に収録されたため、当時はオリジナルバージョンのみが加算対象に)。今回デジタル解禁されたことでソングスチャートにも影響が波及しており、仮にCDリリースのタイミングで解禁されていたならば、ソングスチャートでのトップ10入りも成し得たのではないでしょうか。

 

さて、今週のアルバムチャートは嵐のベストアルバム『5×20 All the BEST!! 1999-2019』が初週ミリオンセールスを突破し、堂々の首位に立ちました。それも2010年代で最高の初週セールスとのことで、CDショップ等では嵐の展開が凄まじかったものと思われますし、ミリオン突破のニュースに触れて嵐の凄さを実感した方も多いはずです。

しかしながら今回のベストアルバム、先述した『Finally』同様にCDリリースと同週にデジタル解禁されておらず、また所属事務所関連のレコード会社に所属しているためミュージックビデオの1分尺のティーザーは用意されていません(ティーザーの取扱等、ジャニーズ事務所所属歌手のレコード会社別の対応の差については6月3日付ビルボードジャパンソングスチャート首位曲からはじまる、ジャニーズ事務所所属歌手のシングルCDの展開手法を疑問に思う(5月30日付)で記載しています)。そのため、アルバムタイトル曲と言っていい「5×20」はTwitterとラジオエアプレイの2指標のみがカウントの対象となるのですが後者が300位に満たないため、Twitter指標3位と好記録を残しながら他指標がカウントされなかった「5×20」は、今週のソングスチャートで58位という成績に。

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50位のDAOKO×米津玄師「打上花火」が1302ポイントであることを踏まえればTwitter指標だけでおそらく1200ポイント前後稼いだこととなり、これはこれで立派な数字なのですが、ソングスチャートで目立った記録が生まれずアルバムチャートと乖離しているのは寂しい…という私見を強く抱いた次第です。

また、今週のソングスチャートにおいて嵐のランクインは「5×20」の1曲のみにとどまりました。デジタルを全く解禁していない嵐の場合、「5×20」以外の楽曲がソングスチャートを駆け上がるためにはシングルCDセールスやルックアップ指標で稼ぐ必要があるのですが、シングル表題曲は全てベストアルバムに収録されているためシングルCDを手にする必要性は乏しく、シングルCDを在庫として抱えるレンタル店舗も少ないためルックアップの上昇は難しく、結果としてソングスチャートでのランクインが厳しいものとなってしまったわけです。

おそらくは、ソングスチャートの動向はある程度想像出来たでしょうし、ソングスチャートにこだわる必要はないと言われればそれまでです。しかしながら仮に、「5×20」だけでもティーザーでいいのでミュージックビデオを用意したり、ジャニーズ事務所所属歌手特集が設けられているレコチョクでフルバージョンでのダウンロードが出来るようにしておけば(ちなみに現段階でレコチョクの嵐のサイトをみると、最新曲は曲を分割した形でもダウンロード解禁されていません)、「5×20」がダウンロードや動画再生指標も獲得しソングスチャートでより存在感を示せただろうのみならず、それらデジタルで触れたりもしくはソングスチャートでの「5×20」の動きを見て嵐に興味を持った方がアルバム購入やレンタル等に至ろうとするのではないかと思うのです。無論デジタル解禁する/しないは歌手やレコード会社、芸能事務所側の自由ではありますが、オリコン以上に社会のヒットの鑑と言って間違いないビルボードジャパンのソングスチャートで嵐の楽曲がほぼ入っていない状況は社会現象と大きく乖離し至極勿体無い…というのが私見です。ベストアルバムリリース関連ではありませんが、同じジャニーズ事務所所属歌手の山下智久さんが前週「CHANGE」でデジタル2指標(ダウンロードおよび動画再生)を武器に好調なチャートアクションを示したことを踏まえると尚の事、なのです。