ビリー・アイリッシュが、大ファンとするジャスティン・ビーバーを迎えた「Bad Guy」のリミックスを、現地時間の今週木曜夜に急遽リリースしました。
ビリー・アイリッシュ、憧れのジャスティン・ビーバーとのコラボ「bad guy (with Justin Bieber)」をリリース https://t.co/2ptAhg4NHK pic.twitter.com/C6V8ULQqNv
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) July 12, 2019
この動き、再来週の米ビルボードソングスチャートにどう影響するか、非常に楽しみです。
最新7月13日付チャートにおいて、ビリー・アイリッシュ(ソロバージョンの)「Bad Guy」は2位につけていますが、14週連続で首位を走るリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」とはおよそ2倍近い差がつけられています。
「Old Town Road」と「Bad Guy」の7月13日付米ビルボードソングスチャートでの差
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) July 11, 2019
ストリーミング 8930万:4100万
ダウンロード 57000:20000
ラジオエアプレイ 7580万:7570万https://t.co/v3S9g4tey7
ラジオエアプレイは逆転必至、ダウンロードは拮抗か逆転、あとはストリーミングが追いつくか https://t.co/EpIGqtuBHB
ここにジャスティン・ビーバーが助太刀で参加するのですから、非常に面白いことになりそうです。
ジャスティンといえば、自身の楽曲以外にも多数の客演曲が大ヒット。昨日アルバム『No.6 Collaborations Project』をリリースしたエド・シーランの、アルバムからの最初のリード曲となる「I Don’t Care」にジャスティンが参加し最高2位、現在もトップ10内をキープしています。
とりわけ強烈な印象を放ったのは、ラテンブームをムーブメントに押し上げたと言っていい、ルイス・フォンシ & ダディー・ヤンキー「Despacito」に客演参加したこと。オリジナルはこちら。
そしてジャスティン・ビーバー参加版はこちら。
ジャスティン・ビーバー参加後首位に立った「Despacito」は、ジャスティン参加版が初めて加算された2017年5月6日付米ビルボードソングスチャート でダウンロードが前週比510%もの大幅アップ、ストリーミングも倍以上となり総合で48→9位と上昇。その後4→3位を経て、5月27日付で首位に(日付のリンク先は弊ブログの米ビルボードソングスチャート速報)。5月27日付において「Despacito」ダウンロードの7割強がジャスティン参加版ということもあり、火付け役がジャスティンだったことは間違いありません。「Despacito」はここから16週ものナンバーワンという最長記録を達成しています(同じく16週首位にはマライア・キャリー & ボーイズ・II・メン「One Sweet Day」(1995-1996)も)。
尺を長く(もしくは短く)することはあっても基本のオケはほぼ変えず、新たな客演を招いたバージョンを“リミックス”と称して発売することは、今回の「Bad Guy」(厳密にはリミックスと謳ってはいませんが)や「Despacito」にとどまりません。近年全米1位を獲得した例だけでも、ブルーノ・マーズ feat. グッチ・メイン「That’s What I Like」(それこそ「Despacito」がジャスティンの尽力によりチャートを駆け上がっていく2017年5月13日付で首位に)、エド・シーラン feat. ビヨンセ(もしくはアンドレア・ボチェッリ)「Perfect」、マルーン・5 feat. カーディ・B「Girls Like You」などが該当します。たとえば「That’s What I Like」はその前週にアルバムが初登場した勢いでソングスチャートも制したケンドリック・ラマー「Humble.」が次週ダウンするだろうことを見越して(デジタルの瞬発力が高い作品はラジオエアプレイが伴っていないことが多く、次週デジタルの下降分をラジオエアプレイが補えない限り失速するのは定番のチャートアクション)、見計らったかのようなタイミングでリミックスを用意し、見事にチャートを制したのです。
ブルーノ・マーズは他にも、アルバム『24K Magic』から「Finesse」をシングルカットする際にカーディ・Bを招いています。またBTSは昨年「Idol」にニッキー・ミナージュを新たに招いたバージョンを用意。このように、新たに客演を招いた形でのリミックスがアメリカにとっては定番と化しているのです。
リミックスの投入はチャートアクションの活性化につながることは先述した「Despacito」や「That’s What I Like」から解るでしょう。またリミックスを機にオリジナルバージョンの存在を知り、元のバージョンが収録されたアルバムに触れる方も増えるかもしれません。ビリー・アイリッシュは「Bad Guy」がラジオを中心に今も伸びていますが、ジャスティン・ビーバーの尽力はさらなる高みへ登るために有効だと考えます。
「Bad Guy」のリミックスがデジタル2指標(ストリーミングおよびダウンロード)で集計期間1週丸々カウントされるのは、日本時間の再来週火曜に発表される7月27日付ソングスチャート。ダウンロードは「Despacito」の例を踏まえれば50000を超えるかもしれず、ラジオエアプレイは次週の段階で既に逆転するものとみられるため、あとはストリーミング次第と言えそう。となると、仮にリル・ナズ・X feat. ビリー・レイ・サイラス「Old Town Road」が次週ポスト・マローン feat. ヤング・サグの新曲「Goodbyes」の追随を許さず15週目の首位を記録出来ても、その翌週にビリー・レイ・サイラス with ジャスティン・ビーバー「Bad Guy」に敗れ最長タイ記録が潰える可能性も出てきました。だからでしょうか、「Old Town Road」側も新たな対策を施し、ポスト・マローンの新曲に参加したばかりのヤング・サグを迎えたさらなるリミックスを昨日発表しています。というか元々「Old Town Road」はリル・ナズ・Xのみによる曲であり、ビリー・レイ・サイラスが加勢した”リミックス”が後に登場したことで14週連続首位(うちビリー加勢版は2週目以降カウント対象に)の原動力になったのですが。
ヤング・サグと共に参加したメイソン・ラムジーは12歳のカントリー歌手で、昨年ウォルマートで歌っている動画がきっかけとなりコーチェラ・フェスティバルにも出演した、話題の歌手なのです。
なにげにここもジャスティン・ビーバーつながりだったりするのですね。「Old Town Road」が引き離すことが出来るか、「Bad Guy」が追い越せるのか…再来週発表のチャートに注目です。
最後に、レコード会社およびビルボードジャパンに対する個人的な願いを2つ記載します。
ひとつは、リミックスが作られる曲は主にアルバムからのリード曲ではなくシングルカット曲が多いことから、CDでリミックスを手に入れることは非常に困難なため、リミックスEP的な作品を用意していただけたならばと。現状では、リミックスをアルバムのボーナストラックとして収録する後出しのデラックスエディションとして出ることが少なくなく、元来アルバムを持っている身には収録曲がダブってしまいます。在庫問題があるため難しいと言うのであれば、オリジナル盤を持っている方向けにネットで注文販売し、CDと簡易なブックレットだけ送付するのでケースに差し込んでくださいと促すのはいかがでしょう。
そしてもうひとつは日本のビルボードジャパンソングスチャートにおけるリミックスの取扱を米ビルボードと統一してほしいということ。日本においては先述したBTS「Idol」についてもオリジナルバージョンとリミックスが別扱いになっている他、最新7月15日付ビルボードジャパンソングスチャートを制した「Lights」とダブルAサイドを成す「Boy With Luv」についても、その日本語バージョンにはオリジナル版に参加していたホールジーが不在のために客演の有無で別扱いとなっています。
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) July 10, 2019
ソングスチャート、Twitter指標は #BTS「#Lights」および「#BoyWithLuv」がワンツーフィニッシュ。しかし「Boy With Luv」は動画再生未加算。これは元の動画がホールジーをフィーチャーしたのに対し日本語バージョンは客演がなく別曲との扱いになるため
#ビルボードジャパン最新チャート速報
— Kei / BreastKonaka (@Kei_radio) July 10, 2019
ソングスチャートでシングルCDセールス指標が「#Lights」に加算されたことで同指標は稼げないながら17位に入った #BTS「#BoyWithLuv」の日本語版。35位にはホールジーを招いたオリジナル版も登場し、仮に米方式でまとめて計算したならば3978ポイント。7位相当に
日本におけるリミックスの取扱は米と異なります。以前問い合わせ、ブログに掲載しました。
個人的には、リミックスも合算してほしいという思いがあります。聴き手の側はオリジナルバージョンもリミックスも、(オケがほぼ変わらない場合は特に)ひとつの楽曲の多様なバリエーションとして親しんでいるのではないでしょうか。捉え方は人それぞれかもしれませんが、リミックスをオリジナルと一緒にすれば歌手側やレコード会社側がチャートアクションに「Bad Guy」や「That’s What I Like」ような“仕掛け”を施すことも出来、新たなマーケティングの形が生まれるのではないかと考えます。同じビルボードの看板を掲げながら日米で差があることも違和感があるゆえ、ビルボードジャパンにはチャートポリシーを見直すか、一度議論していただきたいと切に願います。