遅ればせながら昨日気付いたのですが、今月からOAされているNONIOのCM、カバーバージョンですがYUKI「うれしくって抱きあうよ」を取り上げているのですね。NONIOのセンスに惹かれます。
CMに過去の楽曲が用いられる場合、その曲を愛聴した世代をメインターゲットにすると聞いたことがあります。とはいえ、YUKIさんの数多くの楽曲の中で「うれしくって抱きあうよ」を選ぶというのはなんと素敵なことなのでしょう。
CMバージョンはユニゾンで多くの方が歌う、尺に合わせるという理由からBPM速め且つ疾走感強めなアレンジになっており元のバージョンとは結構異なります。個人的には曲を取り上げてくださったことは嬉しいながらも、原曲が気になったならばオリジナルバージョンから溢れ出るフリーソウル感も是非聴いてほしいなと。フリーソウルなコンピレーションアルバムを過去にリリースしたNONA REEVESのメンバーがレコーディングに参加しているからでしょう、ピースフルな雰囲気が尚の事溢れ出ていると思うのです。
さて、「うれしくって抱きあうよ」の歌詞についてはセクシーな方向に深読みすることも可能ですが、”ハレルヤ”というフレーズが楽曲に美しさを纏わせているように思います。”ハレルヤ”、元来はキリスト教で用いられる言葉で神様を褒め称えよという意味があり、ゴスペルでは歌唱中の掛け声等で用いられているのですが、J-Popにおいては宗教的にではなく、神々しさや美しさを示す際に用いられる傾向があるのではないでしょうか。そんな”ハレルヤ”が印象的な楽曲をいくつか集めてみました。
・米津玄師「パプリカ」(2019)
Foorinに提供しロングヒットとなっている楽曲のセルフカバー。コード進行やメロディの改変でアレンジに不穏さが生まれたことで、”ハレルヤ”を含むサビ全体がより強く希望を謳うように聴こえてきます。
・Da-iCE「パラダイブ」(2016)
突き抜ける明るさ! 夏到来!という感じがサビ頭の”ハレルヤ”に込められています。元来の言葉の意味からいい意味で大きく逸脱している点ではベッド・イン「ジュリ扇ハレルヤ」(2017)も同様。アイドルソングにおける”ハレルヤ”の使い方は面白いですね。
高見沢俊彦さんが楽曲を提供した、鈴木彩子さんのデビュー曲。学校を舞台とした歌詞はドラマ『テニス少女夢伝説!愛と響子』(1990 フジテレビ)主題歌に起用されたからとも言えそう。若さゆえの衝動と脆さが”ハレルヤ”に表れているかのようです。
・奥井亜紀「晴れてハレルヤ」(1995)
”ハレルヤ”をダジャレ的に用いるのはゆず「雨のち晴レルヤ」(2013)も該当しますが、30~40代にはこの曲が刺さるかもしれません。アニメ『魔法陣グルグル』(テレビ朝日)に用いられ彼女最大のヒットとなっています。
・畠山美由紀「若葉の頃や」(2006)
この7年後にレナード・コーエンの有名曲「Hallelujah」をカバーした畠山美由紀さんによる楽曲(「ハレルヤ」として配信リリース)。「Hallelujah」はオリジナルバージョン共々、ジェフ・バックリィによるカバーも有名です。
「若葉の頃や」の作曲は堀込泰行さん。キリンジ在籍時代には”ハレルヤ”がサビに登場する「スウィートソウル」(2003)を発表しています。キリンジらしい言葉の紡ぎ方が美しく、今日紹介した楽曲の中では”ハレルヤ”の元来の意味を最も強く踏襲したように思います。
この他にもMr.Childrenやサザンオールスターズといった日本を代表するバンドから、SMAPやAAAといったアイドルまで様々な歌手が”ハレルヤ”という言葉を用いています。それぞれの楽曲における言葉の意味を比較してみるのも面白いかもしれません。
ちなみに”ハレルヤ”が元の意味と最もかけ離れて用いられたのは郷ひろみ「Hallelujah, Burning Love」(2000)ではないかと。聖愛ではなく完全に”性愛”を謳う上に、ゴスペルで用いられる”pray (祈る)”も用いるというのが凄いなと。そして2000年リリースを意識した歌詞、噛み締めたくなりますね。紹介したいのですがデジタルに一切明るくないのが実に残念です。