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旧ブログ名:face it。音楽チャートアナライザーとして、ビルボードジャパンや米ビルボードのソングチャートなどを紹介します。

2019年の大ブレイク筆頭株、ダベイビーが米ソングスチャートで今年最多ランクインを果たす

日本時間で昨日発表された米ビルボードソングスチャートではトップ10入りを逃したものの、ダベイビー(DaBaby)の勢いが凄まじいことになっています。

10月12日付アルバムチャートで初登場首位を獲得したのがダベイビー『Kirk』。自身の名字を冠した作品が自身初となる首位に。前作『Baby On Baby』は今年3月1日のリリースゆえ、わずか半年での新作リリース自体がダベイビーの勢いを物語っています。そして前作収録曲で、悪名高きヒップホップ界の大御所(にして現在収監中)であるシュグ・ナイトの名を借りた「Suge」が米ソングスチャート7位を記録したことで、今回のアルバムへの期待やダベイビーの認知度がさらに高まったと言っていいでしょう。

先行シングル「Intro」はアルバムリリースの8日前となる9月19日にリリース。直前のリリースは近いうちにアルバムが出るのかもという興味を抱かせると共に(ここ数年はリリースの直前にSNSで告知する傾向にありますが、先行シングルがアルバムリリースを匂わせる効果をより高めるものと思われます)、アルバムに先立ってシングルを切ることで熱の上がりにくいラジオエアプレイを少しでも上げておくという作戦のように見受けられます。これはポスト・マローンが、大ヒット中のアルバム『Hollywood's Bleeding』(2019)のちょうど1週間前に「Circles」をシングルリリースした手法と似ており、事実「Circles」はソングスチャートトップ10入りを継続中。「Intro」はポスト・マローンのように大ヒットとまでは至っていませんが、前週17位に初登場を果たし今週は13位にアップ、アルバムのお膳立ては十分だったと言えます。

アルバム『Kirk』は初登場で首位を獲得。前作『Baby On Baby』が最高7位だったため、わずか2作目且つメジャーデビューした年にアメリカを制覇したわけです。そして今作の『週間ユニットは145,000で、そのうちアルバムの純粋な売上枚数はわずか8,000枚、ストリーミングによるユニット数が136,000と、全体の9割以上を占め』(上記ビルボードジャパンの記事より)、”所有<接触”の差が明確になっています。

その結果。

今作収録の全13曲(「Intro」含む)が最新10月12日付米ソングスチャート100位以内に登場しました。

No. 13, "Intro" (up from No. 17, new peak)

No. 19, "Bop"

No. 20, "Suge" (down from No. 18; hit No. 7 in July)

No. 21, "Vibez" No. 26, "Baby," with Lil Baby (down from No. 21 peak)

No. 28, "Toes," feat. Lil Baby & Moneybagg Yo

No. 43, "iPhone," with Nicki Minaj

No. 44, "Cash Shit," Megan Thee Stallion feat. DaBaby (down from No. 41; hit No. 36 in September)

No. 47, "Off The Rip"

No. 49, "Pop Star," feat. Kevin Gates

No. 51, "Raw Shit," feat. Migos

No. 52, "Enemies," Post Malone feat. DaBaby (down from No. 36; hit No. 16 in September)

No. 55, "Gospel," feat. Chance The Rapper, Gucci Mane & YK Osiris

No. 63, "Really," feat. Stunna 4 Vegas

No. 69, "XXL"

No. 73, "Prolly Heard"

No. 79, "Baby Sitter," feat. Offset (down from No. 71 peak)

No. 89, "There He Go"

(上記記事より引用。前作『Baby On Baby』収録曲および客演参加曲は斜体で記載。)

しかもこの大量エントリーにより、ダベイビーは2019年ソングスチャートに計20曲をエントリーさせ、ポスト・マローンと並んで最多エントリー曲数を達成しました。しかも、ノンクレジットながら現在ソングスチャートトップ10入りしているリゾ「Truth Hurts」やリル・ナズ・X「Panini」リミックスに参加しており、実際は22曲と言えるかもしれません(アメリカではリミックス版はオリジナルバージョンに加算されますが、より再生やOAされるほうが優先されるため、ダベイビー参加版はノンクレジットとなっています)。リミックス版の参加により「Truth Hurts」は首位に、「Panini」はトップ10入りを達成。ダベイビーは両曲のチャートを押し上げたのです。

 

ダベイビーの大ブレイクの要因は何と言ってもストリーミングであり、その中でもサブスクリプションサービスは大きな役割を果たしています。デイリーチャートが発表されるSpotifyではアルバムリリース日に上位を占拠していたのが印象的であり、今後はベテラン新鋭に限らず、特にストリーミングに強いジャンル(ヒップホップ中心)はSpotifyサブスクリプションサービスの動向を追いかけていくと面白いなと、今回の『Kirk』の動向から感じた次第です。

 

日本においてはまだまだこの動きが出ていません(し、ビルボードジャパンアルバムチャートにはストリーミングが反映されません)が、Official髭男dismが今日リリースするメジャーファーストアルバム『Traveler』が各サブスクリプションサービスでロケットスタートを切るかどうか、こちらにも注目しようと思います。